水槽が停電して3時間、魚は大丈夫?まず見るべき4つの条件
水槽の停電が3時間続いたとき、魚が無事でいられるかどうかは、時間の長さだけでは決まりません。「3時間なら大丈夫」とも「3時間で危ない」とも言い切れない、というのが正直なところです。ただ、見るところははっきりしています。水量、生体の量、水温、水面の状態。この4つを確かめれば、あなたの水槽が余裕のある側なのか、いますぐ手当てをしたほうがいい側なのかは、数分で見分けがつきます。
停電で止まるのは、ろ過とエアレーション、ヒーターによる保温、そして照明の4つです。このうち急ぐのは酸欠につながる最初の2つで、照明はほとんど影響しません。3時間という長さは、余裕のある水槽なら様子を見ているうちに復旧を迎えることも多く、過密な水槽や夏の室温では手当てを前提にしたほうがいい長さでもあります。計画停電のように予告があるなら、できる準備はかなりありますよ。
この記事では、魚種ごとの「何時間もつ」という数字は書きません。よく見かける数字ではあるのですが、出典をたどれるものが見当たらなかったからです。そのかわりに、夏と冬で逆向きになる水温の守り方、オーバーフロー水槽だけに起きる問題、そして復旧のときに気をつけることまで、あなたが自分の水槽で判断するための材料を並べます。
- 3時間で魚が死ぬかどうかが条件で変わる理由
- 酸素が減る速さを決める4つの条件と危ない側の見分け方
- 停電中にまずやる3つのことと電気なしで酸素を送る手段
- 夏と冬で逆になる水温の守り方と復旧後に確認する順番
水槽の停電が3時間続いたときに起きること
まずは、電気が止まった水槽の中で何が進んでいるのかを整理します。停電で落ちる機能は4つありますが、生体への効き方はそれぞれ違っていて、手をつける順番があります。いちばん先に効いてくるのが酸素です。酸素は主に水面から水に溶け込むので、ろ過やエアーポンプが止まって水の動きが消えると、取り込みは静かに鈍りはじめます。その一方で、魚もろ過バクテリアも呼吸を続けるので、水の中の酸素は減っていきます。つまり3時間のあいだに起きているのは、水が持っている酸素の蓄えと、生き物による消費の引き算です。この引き算がどちらに傾くかを決めるのが、水量と生体の量、水温、水面の状態の4つ。ここではあわせて、季節によって逆向きに動く水温のこと、ろ過バクテリアが3時間でどうなるのか、そして自分の水槽が余裕のある側と厳しい側のどちらに当てはまるのかまで見ていきます。
3時間で魚が死ぬかは条件で変わる
結論から言います。3時間という長さだけでは、大丈夫とも危ないとも言い切れません。同じ3時間でも、60cm水槽に小型魚が10匹ほどなら余裕がある側ですし、30cmキューブに大型魚が3匹入っている水槽なら厳しい側です。中身が違えば、3時間という長さの意味もまったく変わります。検索して出てくる答えが人によってバラバラなのは、条件を抜きにして時間だけを答えているからなんですよね。
なぜ一律に言えないのか。停電中の水槽で進んでいるのは、酸素の蓄えと消費の引き算だからです。蓄えは水量と水温で決まります。水が多いほど溶けている酸素の総量は大きく、水温が低いほど水は酸素を多く抱えられます。消費は生体の数と大きさ、それに水温で決まります。魚が多いほど、体が大きいほど、水温が高くて代謝が上がっているほど、酸素は速く減ります。この差し引きが3時間のうちにどこまで進むか、という話なんです。
水に溶ける酸素の量には上限があります。水中に溶け込む酸素は水温が低いほど、また圧力が大きいほど多くなり、1気圧・25℃の条件下では8.26mg/Lほどが溶け込むと考えられている、と説明されています(出典:東亜ディーケーケー株式会社 公式サイト)。ここで覚えてほしいのは数字そのものより、上限が水温で動くという性質のほうです。夏の高い水温では、そもそも水が抱えられる酸素の量が減っている状態からのスタートになります。
そう考えると、いま調べるべきなのは「何時間もつのか」ではありません。自分の水槽の蓄えと消費をざっくり見積もることです。水がたっぷりあって魚が少なく、水温も高くないなら蓄えが勝っている側。水が少なくて魚が多く、夏場で水温も高いなら消費が勝っている側。この見当さえつけば、様子を見ていていいのか、いま何か手を打つべきなのかを自分で決められます。
とはいえ、停電の最中に落ち着いて見積もりをするのは難しいと思います。部屋は暗いし、情報も入ってこないし、水槽の前で不安になりますよね。その不安は自然なものです。だからこの先は、迷ったときにそのまま当てはめられる形で条件を並べていきます。生き物が相手なので言い切ることはできませんが、条件によっては3時間でも酸欠のサインが出る場合がありますし、条件がそろっていれば静かにやり過ごせる場合もある。その分かれ目を見に行きましょう。
止まるのはろ過とエアと保温と照明
停電で止まるのは、ろ過フィルター、エアーポンプ、ヒーター、照明の4つです。生体にとっての危険度には順番があって、①ろ過とエア(酸素)②ヒーター(水温)③照明(影響は小さい)と考えてください。まず酸素、次に水温。この順番を頭に入れておくと、停電中に何から手をつければいいのか迷わずにすみます。
ろ過フィルターが止まると、水が動かなくなります。ここで先に効いてくるのは、汚れが溜まることより水面の攪拌が消えることのほうです。酸素は主に水と空気が触れる水面から入ってくるので、水面が揺れなくなると取り込みは鈍ります。さらに、ろ材の中にいる細菌にも新しい水と酸素が回らなくなります。エアーポンプが止まる場合はもっと直接的で、泡が起こす水の循環と酸素の供給がそのまま消えることになります。
エアーポンプには、停電ならではの落とし穴がもうひとつあります。ポンプ本体が水面より低い位置にあると、止まった瞬間に水がチューブを逆流することがあるんです。チューブをつたって水が床まで流れ出たり、ポンプの内部に水が入って壊れたりします。逆流防止弁を入れていない場合は、停電に気づいた時点でチューブの様子を見ておくと安心ですよ。
ヒーターが止まると、冬場は水温が下がります。ただ水はかなり冷めにくいので、3時間くらいで一気に冷え込むことは考えにくいです。照明については、短時間の消灯で生体が弱ることはまず考えにくいですし、水草がある水槽ではむしろ暗いほうが酸素の消費は穏やかになります。光合成は止まりますが、そのぶん水草も魚も細菌も、静かに呼吸を続けるだけの状態になるからです。
そもそもエアーポンプを使っていない水槽もありますよね。その場合、停電で消えるのはろ過による水流だけなので、酸素の入り口が一段ぶん少ないところからのスタートになります。普段からエアレーションが要るのかどうか迷っている方は、エアーポンプが必要な水槽と不要な水槽の見分け方を先に押さえておくと、停電のときの判断も速くなります。
酸素が減る速さを決める4つの条件

酸素が減る速さは、水量、生体の量、水温、水面の状態の4つでほぼ決まります。どれも今その場で確認できるものばかりです。下の表で、自分の水槽がどちら側に寄っているかを見てください。ぴったり当てはまらなくても、「どちらかといえばこっち」で構いません。
| 条件 | 余裕がある側 | 厳しい側 | 理由 |
|---|---|---|---|
| 水量 | 60cm以上など水が多い | 小型水槽・ボトル | 水が多いほど酸素の蓄えが大きい |
| 生体の量 | 少ない・小さい | 過密・大型魚 | 水量に対して消費量が大きくなる |
| 水温 | 低め(冬場の室温) | 高め(夏場30℃近く) | 高いほど溶ける酸素は減り、魚の代謝は上がる |
| 水面の状態 | フタが開いている・水面が広い | 密閉・水面が狭い | 酸素は主に水面から入るため |
判断の線は、4つのうち2つ以上が「厳しい側」に当てはまるなら、3時間でも手当てをする前提で動くところに引いてください。1つだけなら様子を見る余地がありますが、たとえば「水が少ない」と「夏で水温が高い」が重なると、蓄えが小さいところに消費が増える形になります。逆に、水が多くて水温が低く、フタも開けられるなら、条件が味方してくれている状態です。
水草については両面があります。明るければ光合成で酸素を出してくれますが、停電中の室内は暗いことが多く、その場合は水草も呼吸で酸素を使う側に回ります。だから「水草があるから安心」とは考えないほうがいいですね。厚く茂っているほど、暗いときの消費は大きくなります。窓際でカーテンを開けられるなら、明るさを確保しておく意味はあります。
過密かどうかを数字で線引きしようとすると、かえって迷います。水槽の形もろ過の強さも魚の種類も違うので、一律の目安をそのまま当てはめられないからです。それより、普段の水槽を見て「ちょっと多いかも」と感じているかどうか、買ったときにショップで勧められた数を大きく超えていないか。その感覚のほうが当てになりますよ。
水温は季節によって逆向きに動く
同じ3時間の停電でも、夏は水温が上がって酸素が減る方向、冬は水温が下がって魚が弱る方向に動きます。つまり守るものが逆です。夏は酸素、冬は温度。この向きを取り違えると、良かれと思ってやったことが裏目に出ることもあるので、まず季節を確認してください。
夏の停電は、条件が悪いほうに重なりやすいのが厄介です。室温が高いうえに、冷却ファンも水槽用クーラーも止まります。水温が上がると溶けられる酸素の量は減り、その一方で魚の代謝は上がって消費は増えます。減る側と増える側が同時に進むわけで、この組み合わせが3時間のうちでいちばん注意したい状況です。夏に停電したら、水温よりまず酸素を優先して考えてください。
冬の停電はヒーターが止まります。ただ水は熱容量が大きくて、温まりにくく冷めにくい性質があります。部屋の空気が冷えても水温はゆっくりしか追いかけてこないので、3時間程度なら数度の低下にとどまることが多いです。急に下がりやすいのは水量が少ない容器のほうで、小型水槽やボトル、それに屋内でも窓際に置いてある水槽は冷えが早くなります。部屋そのものが暖まっている状態なら、水温の下がり方はさらに緩やかになります。逆に、暖房を切った部屋や玄関先に置いている水槽では、同じ3時間でも冷え方が変わってくる、ということですね。
熱帯魚は水温の急変に弱い魚が多いのですが、実は下がること自体より、戻すときに一気に上げるほうが負担になりやすいです。復旧してヒーターが働けば、水温は時間をかけて戻っていきます。慌てて熱いお湯を足すような戻し方は避けてください。夏の高水温対策と冬の保温の具体的なやり方は、この記事の後半でまとめて扱います。
ろ過バクテリアは3時間でどうなるか
結論を先に言うと、数時間の停電でろ過が全部だめになり、水槽を立ち上げ直すところまで戻ることは、ふつうは起きません。ただし、フィルターの種類によっては傷む条件があるので、そこだけ押さえておきましょう。
ろ過の主役は硝化細菌(アンモニアを毒性の低い物質に変えてくれる、酸素を必要とする微生物のこと)です。この細菌は酸素が届かなくなると活動が鈍りますが、数時間なら死んでしまうというより、休んでいる状態に近いと考えられています。水が止まったからといって、すぐに全滅するような弱い相手ではありません。
注意したいのは密閉式の外部フィルターです。中に水が閉じ込められた状態になるので、酸素が尽きると嫌気状態(酸素のない状態)になりやすい。そこで別の細菌が働くと、卵が腐ったような匂いのする物質が発生することがあります。長時間止まったあとにそのまま再稼働すると、溜まっていた水がそのまま水槽へ押し出されます。上部フィルターや投げ込み式、スポンジフィルターは空気に触れているので、この心配はほとんどありません。
3時間という長さは、この「嫌気になるかどうか」の境目としてはまだ手前にあることが多いです。とはいえ、夏場の高い室温では水の傷みも早くなります。匂いを一度嗅ぐだけの手間なので、復旧のときのひと呼吸として習慣にしてしまうのがおすすめですよ。
3時間の停電に余裕がある水槽と厳しい水槽

ここまでの条件を、実際の水槽の姿に当てはめて整理します。自分の水槽に近い行を探して、右端の「やること」だけ拾ってもらえれば大丈夫です。
| 水槽の姿 | 3時間の見通し | やること |
|---|---|---|
| 60cm・小型魚が少数・冬・フタを開けられる | 余裕がある側 | 様子を見る/餌を止める |
| 60cm・生体はやや多め・夏 | 条件しだい | 水面を動かす/フタを開ける/餌を止める |
| 小型水槽やボトル・過密ぎみ | 厳しい側 | すぐ酸素を送る手段を用意する |
| 大型魚・海水・サンゴ・オーバーフロー | 厳しい側 | 電源の確保を優先して考える |
オーバーフロー水槽には、酸素とは別の問題があります。停電でポンプが止まると、上の水槽からサンプ(下に置く水槽)へ水が落ちてきます。落ちる量は配管の構造や吸い込み口の高さで変わり、サンプの容量を超えると復旧を待つ前に床があふれることがあります。さらに、落ちた水がサンプに溜まったまま復旧すると、水位のバランスが崩れて今度は上があふれることも。自分の水槽がどこまで落ちるのかは、平常時に一度ポンプを止めて確かめておくのがいちばん確実です。
あふれた水が電源タップやコンセントにかかると、感電や漏電、火災につながる恐れがあります。水槽の下や床に電源タップを置いているなら、平常時のうちに高い位置へ移しておいてください。停電の最中は部屋が暗いうえ、水が漏れていても気づきにくいので、事前の配置がそのまま安全につながります。
海水水槽やサンゴを飼っている水槽は、淡水と同じ感覚で考えないでください。サンゴや無脊椎動物は、酸素だけでなく水流が止まること自体の影響も受けます。時間で線を引くことはできませんが、淡水より早く影響が出やすいとされています。だからこそ海水の方は、様子見ではなく電源の確保を先に考えるのが現実的です。
・4つのうち2つ以上が厳しい側なら、3時間でも手当てを前提にする
・オーバーフローは「落ちる水の量」を平常時に確認しておく
・海水・サンゴ・大型魚は電源の確保を先に考える
水槽が停電したときの3時間の動き方
ここからは実際の動き方です。停電に気づいてから復旧するまで、やることは多くありません。道具がなくてもできることが最初にきて、道具があるならもっと楽になる、という順番で並べます。ポイントは、水槽に手を入れる前に自分の安全を確保すること、そして酸素を最優先にすることの2つです。停電中は情報も限られていて、いつ戻るのかも分からないまま待つことになります。その状況でも迷わないように、まずやる3つのこと、電気なしで酸素を送る手段、夏と冬で変わる水温の守り方、そして電気が戻ったあとの確認手順の順で見ていきましょう。停電中は手元が暗く、細かい作業ほどうまくいきません。ここで挙げるのは、暗がりの中でも進められることだけに絞っています。どれも数分でできることばかりですし、やっておくと復旧後の立ち上がりが違ってきますよ。
停電に気づいたらまずやる3つのこと
順番はこの3つです。①餌を止める ②フタを開けて水面を空気に触れさせる ③水面を動かす。道具はいりません。どれも数分で終わりますし、効く理由がはっきりしているので、迷ったらこの順にやってください。
まず餌です。停電中は与えないでください。魚は消化にも酸素を使いますし、食べ残しが水の中で分解されるときにも酸素が使われます。つまり餌は、いま減らしたい消費をわざわざ増やす行為になります。1食や2食抜いたくらいで魚が弱ることは考えにくいので、復旧して水が落ち着くまでは止めておきましょう。
次にフタです。酸素は主に水面から入ってくるので、密閉していると入り口がふさがれた状態になります。ガラスフタやアクリルのフタは、ずらすか外してしまってください。そのうえで水面を動かします。コップやペットボトルで水をすくって少し高いところから落とす、手をゆっくり入れてかき混ぜる。それだけでも水面が空気に触れる機会は増えます。ただし強くかき混ぜて底床を巻き上げないこと。舞い上がった汚れが分解されるときに、また酸素が使われてしまいます。
あわせて安全の確認です。停電中と復旧時は感電と火災のリスクが上がります。濡れた手でコンセントやプラグに触らないでください。水槽まわりの作業をする前に、手を拭く習慣をつけておくと安心です。そして、ヒーターや水槽用クーラーなど発熱する機器のプラグは抜いておきます。停電から復旧したときに、水位が下がった状態や空気中でヒーターに通電すると、空焚きや火災につながることがあるためです。抜いたプラグは、状況を確認してから差し直してください。
ここまで終えたら、地域の電力会社の停電情報で復旧の見込みを確認します。数十分で戻るのか、数時間かかるのかで、次に打つ手が変わります。すでに水面で口をパクパクさせている、底でじっとしている、といったサインが出ているなら、様子見の段階ではありません。その場合は鼻上げが出たときの酸欠の応急処置を先に読んで、そちらの手順で動いてください。
電気なしで酸素を送る手段をそろえる

電気がなくても酸素を送る手段はいくつかあります。基本になるのは①乾電池式・充電式のエアーポンプ ②酸素を出す石 ③手で水面を動かすの3つ。上から順に確実で、下にいくほど手軽です。手元にあるものから使ってください。
いちばん確実なのは乾電池式・充電式のエアーポンプです。停電中もエアレーションを続けられるので、酸素の入り口が復活します。ただし弱点がひとつあって、停電が起きてから買いに行くのはまず間に合いません。災害と重なれば店頭からも消えます。平常時に1台用意しておく道具だと思ってください。製品ごとの違いや選び方は、この記事では踏み込みません。
備えとして1台だけ置いておくなら、強弱の切替があるモデルが扱いやすいです。弱に落とせば同じ電池でも長く動かせます。
酸素を出す石は、電源がいらないのが強みです。封を切って水に入れるだけで、少しずつ酸素を放出してくれます。非常用としてストックしておきやすいのもいいところ。ただしpHが上がる性質があるので、平常時から入れっぱなしにする使い方には向きません。使いどころを整理しておきたい方は、酸素を出す石のデメリットと使ってよい場面を読んでおくと、いざというときに迷いません。
非常用の箱に入れておくなら、個包装で数が入っているタイプが扱いやすいですよ。封を切らなければ保管しておけます。
何もないときの最終手段が、手で水面を動かす方法です。数分おきにコップで水をすくって落とすだけでも、何もしないよりは違います。このほかに、USB給電のエアーポンプをモバイルバッテリーで動かす方法や、ポータブル電源を使う方法もあります。ポータブル電源は容量と出力の確認が要ります。エアーポンプ程度なら余裕でも、ヒーターは消費電力が大きく、機種によっては動かせないことがあるためです。
やってはいけないこともひとつ挙げておきます。オキシドール(過酸化水素水)などを、自己判断で水槽に入れないでください。酸素を発生させる目的で使われることがある薬品ですが、生体への刺激が強く、量を誤ると魚やエビ、ろ過バクテリアにダメージを与えます。水量あたりの適量を停電中の暗がりで計算するのは現実的ではありません。生体の状態に不安が残るときは、かかりつけのショップに相談するのが早道です。最終的な判断は専門家にご相談ください。
手段を一度そろえてしまえば、次の停電からは「箱を開けるだけ」になります。乾電池式エアーポンプと予備の電池、酸素を出す石をひとまとめにしておくのがおすすめです。停電に限らず、酸素が足りない場面は夏場にもよく起きます。全体像を押さえておきたい方は、水槽の酸素を増やす方法の全体像もあわせて確認してみてください。
夏と冬で変わる水温の守り方
水温の守り方は、夏と冬でやることが正反対になります。夏は上がるのを抑える、冬は下がるのを緩やかにする。どちらも共通しているのは、急に動かさないことです。3時間の停電で数度の変化なら、慌てて元に戻そうとしないほうが生体には優しいですよ。
夏はまず部屋の環境から手をつけます。直射日光が当たる場所なら、カーテンやブラインドを閉めて日射を遮ります。窓を開けて風を通せるなら、室温が上がりにくくなるので水温の上昇も緩やかになります。そのうえで、水面を動かして酸素を稼ぐ。夏は水温より酸素が先だと考えてください。水温そのものの下げ方や危険水温の考え方は、夏の高水温対策と危険水温の目安にまとめてあります。
冬は逆に、熱を逃がさない工夫をします。毛布や発泡スチロール、断熱シートで水槽を囲むだけで、冷え方はかなり緩やかになります。全面を囲めなくても、上からかぶせるだけで効果があります。暖かい空気は上に逃げるからです。観察できるように前面だけ空けておくといいですね。ヒーターが使えない状況での水温の考え方は、ヒーターなしで水温が下がるときの考え方が参考になります。
保冷剤とカイロの扱いには注意してください。どちらも水の中に直接入れないでください。保冷剤は水槽の外側に当てるか、フタの上に置いて使います。水に沈めると、その周囲だけ水温が急に下がって生体に負担がかかりますし、袋が破れれば中身が水に混ざります。表面についた結露の水が水槽に落ちるのも避けたいところです。カイロも同じで、水に触れない位置から、外側の壁面や断熱材の内側に貼って使ってください。カイロは酸素を消費して発熱するため、水槽を密閉した中に入れるのも向きません。
そして、水温計を見てから動く癖をつけてください。手を入れた感覚は当てになりませんし、暗い部屋では余計に不安が先に立ちます。数字を見て、下がっているならどれくらいなのかを確かめる。3時間で数度なら、復旧後にヒーターが働けば自然に戻っていきます。急いで温度を動かすほうが、生体には負担が大きくなる場合があります。
停電中に読むことを考えると、電池のいらないアナログ式が確実です。暗くても懐中電灯を当てれば読めますし、電池切れで止まる心配もありません。
電気が戻ったあとに確認すること

復旧したら、確認は①機器が動いているか ②水温 ③水の匂いと濁り ④魚の様子の順に進めます。いきなり魚を見に行きたくなりますが、先に機器です。止まったまま、あるいは異常な状態で動いている機器があると、そこから被害が広がるためです。
まず機器。フィルターがきちんと回っているか、ヒーターが作動して水温が上がりはじめているかを見ます。停電中に抜いておいたプラグを差し直すときは、ヒーターが水中にしっかり沈んでいること、水位が下がっていないことを確かめてください。空焚きの状態で通電すると、故障だけでなく火災につながることがあります。エアーポンプは、チューブに水が逆流していないかを見てから電源を入れます。
外部フィルターは、電源を入れる前にひと手間かけてください。ホースやフィルターの口元の匂いを嗅ぎ、卵が腐ったような匂いがしないかを確認します。匂いがある場合は、中に溜まった水をいったん排水してから運転を再開してください。そのまま回すと、酸素のない状態で溜まっていた水が水槽へ一気に押し出されます。匂いがなければ、そのまま運転を再開して構いません。それでも最初の数分は、出てくる水の色と匂いを見ながら回してください。
水温は、復旧直後より少し時間をおいてもう一度見ます。ヒーターが働けば時間をかけて戻っていくので、途中の数字で慌てないでください。餌はすぐに与えず、数時間から半日は様子を見ます。停電のあいだに水質が動いている可能性があるうえ、ろ過が本調子に戻るまでには少し時間がかかるからです。いつも通りに戻すのは、水が落ち着いてからで十分です。
あわせて水そのものも見ておきましょう。普段より白く濁っていないか、鼻を近づけて生臭さや酸っぱい匂いがしないか。濁りや匂いが出ているときは、停電のあいだに水質が動いたサインです。ここでいきなり大量の水換えをすると変化が重なるので、まずエアレーションを効かせて、半日ほど様子を見てから判断してください。
最後に魚の様子を見ます。水面で口をパクパクさせる鼻上げ、底でじっとして動かない、エラの動きが速い。こうしたサインが出ているときは酸欠を疑ってください。ここで水換えから始めたくなりますが、症状が出ているときは水換えより先に酸素です。前の章で触れた応急処置の手順を思い出して、エアレーションや水面の攪拌を先に確保しましょう。
落ち着いたら、次への備えを整えます。乾電池式のエアーポンプ、酸素を出す石、予備の電池を1か所にまとめておくだけで、次の停電の初動がまるで変わります。そして停電は地震とセットで起きることも多いので、この機会に水槽まわりも見直しておきたいところです。台や配管の点検も含めて、地震で水がこぼれない固定のしかたを確認しておくと安心です。
水槽の停電と3時間についてよくある質問
計画停電が予告されているときは、事前に何をしておけばいいですか?
水換えは停電中にしたほうがいいですか?
UPS(無停電電源装置)は水槽に使えますか?
スマホの充電用モバイルバッテリーでポンプは動かせますか?
水槽の停電が3時間続くときの備えのまとめ
最後に整理します。水槽の停電が3時間続いたとき、魚が無事でいられるかどうかは時間では決まりません。決めているのは、水が持っている酸素の蓄えと、生き物による消費の引き算です。その引き算を左右するのが水量、生体の量、水温、水面の状態の4条件で、このうち2つ以上が厳しい側に当てはまるなら、3時間でも手当てを前提に動くのが現実的な線引きになります。
やることの順番はシンプルです。餌を止めて、フタを開けて、水面を動かす。そのうえで、濡れた手でコンセントに触れないこと、発熱する機器のプラグを抜いておくことを忘れずに。水温については夏と冬で守るものが逆になります。夏は水温が上がって酸素が減るので酸素が先、冬は下がる速さを緩めるために断熱が先。どちらの季節でも、復旧後に急いで温度を戻さないことが共通の注意点です。
- いま停電中なら、餌を止めてフタを開け、水面を動かす
- 4条件を見て、厳しい側が2つ以上あるか数える
- 復旧したら、機器→水温→匂い→魚の様子の順に確認する
- 落ち着いたら、乾電池式エアーポンプと酸素を出す石、電池を1か所にまとめる
停電は防げませんが、3時間をどう過ごすかは準備で変えられます。非常用の道具をひとまとめにしておくこと、オーバーフロー水槽なら水の落ち方を平常時に確かめておくこと。この2つだけでも、次の停電はずいぶん楽になりますよ。なお、停電の復旧見込みや計画停電の日時は状況によって変わりますので、正確な情報は公式サイトをご確認ください。あなたの水槽が、静かに電気の戻る時間を迎えられますように。

