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オーバーフロー水槽は停電であふれる?落水と逆流の2方向と平時の対策

ⓘ 広告 水槽セットアップ
上部の水槽と台下のサンプ・配管を写した写真に、停電であふれる前に見ておきたい配管という主題を重ねた表紙スライド

停電でオーバーフロー水槽は洪水になる?あふれる前に見る配管の話

THE AQUA LAB 所長(イラスト)

こんにちは。THE AQUA LAB、運営者の所長です。

停電のニュースが流れるたびに、オーバーフロー水槽の前で冷や汗をかいている方は多いと思います。結論から言うと、停電であふれるかどうかは運ではなく、配管の作り方でほとんど決まっています。あふれ方は落水と逆流の2方向。上の水槽からサンプへ落ちてくる水と、揚水ポンプが止まった瞬間に揚水管を戻ってくる水です。さらに、電気が戻ってポンプが回り出した瞬間にも別のあふれ方があります。この3つを押さえて、平時のうちに点検と実測をしておけば、停電のときに動く水の量はあらかじめ把握できますよ。

オーバーフロー水槽は、上の水槽で鑑賞して、下のサンプ(水槽の下に置く、ろ過と水をためる役目の水槽のこと)でろ過する仕組みです。ろ過槽としての容積が大きく、水量も多い。そのぶん、循環が止まったときに動く水の量も多くなります。三重管やコーナー加工といった落水管の作り、揚水管の出口の位置、サンプの空き容積。洪水になるかどうかは、このあたりの条件の組み合わせで決まります。海水水槽なら塩害もついてくるので、なおさら気になるところかなと思います。

この記事では、配管の口径や落水量といった具体的な数字は書きません。製品と施工で変わるうえ、他人の水槽の数字はあなたの水槽の答えにならないからです。代わりに、どこを見れば自分の水槽の答えが出るのかという構造の話をします。地震で揺れてポンプが止まったときにも同じ理屈が効くので、順を追って読んでみてください。

この記事で理解できること

  • 停電であふれるのが落水と逆流の2方向になる理由
  • 上からサンプへ落ちてくる水の量が何で決まるのか
  • 揚水管の逆流を構造で止めるサイフォンブレイクの考え方
  • 平時にポンプを止めて実測し、水位線を決める手順
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オーバーフロー水槽が停電であふれる仕組み

この章では、停電したときにオーバーフロー水槽で何が起きているのかを、水の通り道に沿って追いかけます。まず押さえたいのは、あふれ方が1種類ではないこと。上の水槽からサンプへ落ちる水と、揚水管を戻ってサンプへ流れ込む水は、別々の理由で起きて、しかも足し算になります。落ちてくる量を決めているのは水槽の大きさそのものではなく、水面と吸い込み口の高さの差です。三重管やコーナー加工といった落水管の作りで、その高さが変わります。さらに、危ないのは停電中だけではありません。電気が戻ってポンプが回り出した瞬間にも、あふれる可能性が残っています。最後に、水が止まっている間は酸素とろ過も同時に止まっているという話まで、ひと通り見ていきましょう。読み終わるころには、自分の水槽のどこを見ればいいかが決まっているはずです。

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あふれ方は落水と逆流の2方向ある

落水と逆流の2方向について、あふれる場所・起きる条件・平時に見るところを行ごとに並べて比べた表のスライド
落水と逆流であふれ方と見る場所が違う

停電でオーバーフロー水槽があふれるとき、水の来かたは2方向あります。1つは、上の水槽からサンプへ落ちてくる水。もう1つは、揚水管の中に残った水が動いて、サンプへ流れ込んでくる水です。どちらも行き先はサンプなので、受けきれなければサンプからあふれます。まずはこの2方向を分けて数えるところからです。

①の落水は、まだ想像しやすいほうかなと思います。ポンプが止まると、上の水槽へ水が送られなくなります。でも上の水槽の水位は、落水口(水が落ちる穴や管)の吸い込み位置より高い状態のまま。だから水位がその位置まで下がるあいだ、水は落ち続けます。上の水槽の水が全部落ちるわけではなく、吸い込み位置より上にある分が落ちてくる、という理解でだいたい合っています。

直感に反するのが②です。ポンプが動いていないのに、なぜ水が動くのか。鍵になるのはサイフォンという現象です。管の中が水で満たされていて、その両端が水につかっていると、ポンプの力がなくても高いほうから低いほうへ水が流れ続けます。ストローで飲み物を吸い上げて、上の口を指でふさぐと落ちてこない。あの状態から指を離したときのように、条件がそろえば水はひとりでに動き出します。

具体的には、揚水管(ポンプがサンプの水を上の水槽へ送る管)の出口が、上の水槽の水中に沈んでいる場合です。ポンプが止まった瞬間、上の水槽の水がその出口から管へ吸い込まれ、ポンプ側を通ってサンプへ落ちていきます。ポンプが送る向きと逆に水が動くので、逆流と呼ばれる動きです。落水と逆流は別々に起きるのではなく、同じ停電で同時に進み、サンプへ入る水は足し算になります。

2つの違いを、並べて見てみましょう。

あふれ方 どこがあふれる 起きる条件 平時に見るところ
落水 サンプ 上の水槽の水面が、落水口の吸い込み位置より高い状態で運転している 落水口のスリットや穴の下端が、水面からどれくらい下にあるか
逆流 サンプ 揚水管の出口が、上の水槽の水に沈んでいる 出口の位置と、空気が入る穴があるかどうか

この2方向を知らないままだと、片方だけ対策して安心してしまいます。サンプの水位を下げていても、揚水管の出口が沈んでいれば逆流の分が上乗せされる。逆に逆流を止めていても、落ちてくる分を受けられなければサンプはあふれます。水がどこから入ってどこへ抜けるかで結果が決まる、という見方はオーバーフローに限った話ではありません。上部フィルターであふれを防ぐ仕組みの考え方も、同じ目線で読むと腑に落ちると思います。

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上からサンプへ落ちる水の量を決めるもの

三重管の吸い込み口と水面の高さの差を矢印で示し、その差より下の水は停電しても上の水槽に残ることを説明したスライド
落ちる水の量は水面と吸い込み位置の高さの差で決まる

落ちてくる水の量を決めているのは、水槽の大きさそのものではありません。上の水槽の水面と、落水口の吸い込み位置との高さの差です。この差の分だけ、水は下へ落ちてきます。逆に言えば、吸い込み位置より下にある水は、停電しても上の水槽に残ります。ここが分かると、見るべき場所が一気に絞れます。

もう少し丁寧に言うと、落ちてくる量は水槽の水面の面積と、その高さの差の掛け算で決まります。同じ高さの差でも、水槽が大きくなるほど落ちてくる量は増える。だから大きい水槽ほど、サンプ側に用意しておく余裕も大きくなります。感覚で決めるのではなく、面積と高さの差という2つの要素に分けて考えると、見通しがよくなりますよ。

では、その吸い込み位置はどこにあるのか。三重管やコーナー加工のフロー管は、水面より少し下から吸い込む形になっていることが多いです。ただし、どこまで下がるかは製品と施工でかなり違います。同じ型の三重管でも、取り付けの高さや水位の設定が違えば結果は変わるので、カタログを眺めるより、自分の水槽をのぞいて確かめるほうが早いです。

よくある誤解が、停電したら上の水槽の水が全部サンプへ落ちる、というイメージ。実際に落ちるのは吸い込み位置より上の分だけです。とはいえ、その分を受けきれるかどうかは別の問題。サンプの空き容積、つまり普段の水位からフチまでの余裕と並べて比べて、初めて足りる・足りないが決まります。

補足:落ちてくるのは上の水槽の水そのものではなく、吸い込み位置より上にある分だけです。判断するときは、落ちてくる量とサンプの空き容積をセットにして見ます。水量が多い水槽ほど安全、というわけではないので、余裕は自分で作っておきます。

この比較を先にやっておくと、停電のときに慌てずに済みます。サンプの空きが足りないと分かったら、普段の水位を下げるか、受けられる容積を増やすか。どちらにしても、停電が起きる前、つまり平時にやる作業です。水位線の具体的な決め方は、記事の後半でまとめます。

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サンプから上へ戻る逆流が起きる理由

結論から言うと、揚水管の出口が水に沈んでいる作りなら、ポンプが止まった瞬間に逆流が始まります。ポンプが動いていないのに水が動くので、初めて見たときは理屈が分からないと思います。ここがオーバーフロー水槽の停電で、いちばん誤解されやすいところです。

運転中、揚水管の中は水で満たされています。ポンプが止まると押し出す力は消えますが、管の中の水はつながったまま。管の出口が上の水槽の水中にあると、上の水槽の水が出口から管へ吸い込まれ、ポンプ側を通ってサンプへ落ちていきます。これがサイフォンです。上の水槽の水面が、揚水管の出口の高さまで下がるまで、この流れは続きます。

やっかいなのは、この逆流が落水と同時に起きること。落水口から落ちてくる分に、揚水管から戻ってくる分が上乗せされます。サンプの水位は、あなたが頭のなかで想定しているより上がる可能性があるわけです。落水だけ、逆流だけで見積もっていると、余裕の計算が足りなくなります。

防ぎ方は大きく2つです。1つは、揚水管の出口を水面より上に出してしまう方法。水面に水を落とす形にすれば、ポンプが止まった時点で管に空気が入り、サイフォンはつながりません。もう1つは、水面のすぐ下に小さな穴を開ける方法。ポンプが止まって水位が下がると、その穴から空気が入って流れが切れます。これがサイフォンブレイク(管の中の水の流れを、空気を入れて断ち切る仕組み)です。

シャワーパイプを使っている場合は、穴を上向きにするという手もあります。穴が水面より上を向いていれば、そこから空気が入ってくれるからです。水流の向きや見た目との兼ね合いになるので、レイアウトを崩さない範囲で試してみてください。

注意:揚水管の出口が沈んでいる水槽では、停電のたびに同じ逆流が起きます。前回持ちこたえたから今回も大丈夫、とは考えないでください。落水と逆流は足し算になるので、サンプの余裕は2つの合計で見ます。

どの方法をとるにしても、狙いは同じです。ポンプが止まった瞬間に、管の中の水のつながりを切ること。人の手ではなく構造で切れるようにしておけば、停電のたびに祈らずに済みます。逆流は、知ってさえいれば手を打てるタイプのトラブルです。

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三重管とコーナー加工で落ち方が変わる

落水管の作りによって、停電時に落ちてくる量も、運転中の静かさも変わります。よく使われるのが三重管とコーナー加工です。どちらが優れているという話ではなく、自分の水槽がどちらの方式で、どの高さから水を吸い込んでいるかを知っているかどうかが分かれ目になります。

三重管は、管が入れ子になった構造です。いちばん外側にカバーとなる管があり、その内側に水を落とす管、中心に揚水管が通る形が一般的。外側のカバーが水面付近の水を受け、内側で落とすことで、落水の音や水面の乱れを抑える狙いがあります。掃除のときに分解できるのも、この方式の扱いやすいところです。

三重管の外管の下のほうに、小さな穴や切り込みが入っている製品があります。水面近くだけでなく少し下の水も取り込む経路にするため、水位が下がりすぎないようにするため、空気を通すため。調べると説明が分かれていて、ひとつの答えに決まっていません。だからこそ、自分の三重管に開いている穴が何のためのものかは、取扱説明書やメーカーの案内で確かめるのが確実です。ここを勝手に塞いだり広げたりすると、落ちてくる量そのものが変わります。

コーナー加工は、水槽の隅に箱状の仕切りを作って、その中に落水口をまとめる方式です。この場合は、落水口の位置や仕切りの上端の高さで、吸い込む水位が決まります。仕切りを越えて水が入る形なら、越えていく高さがそのまま吸い込み位置になります。

確認のしかたはシンプルです。落水口をのぞいて、水を吸い込んでいる位置、つまりスリットや穴の下端が水面からどれくらい下にあるかを見る。その差の分が、停電のときに落ちてくる水です。手を入れられる範囲なら、指を沿わせて水面からの距離を目で追うだけでも、見当はつきます。

オーダーメイドの水槽や、業者が施工した配管は、外から見ても全体像がつかめないことがあります。そういうときは、施工した業者やメーカーに配管図を確認するのがいちばん早いです。図面があれば、どこから吸い込んでどこへ抜けるのかが一目で分かります。それでも判断に迷う部分が残るなら、最終的な判断は専門家にご相談ください。方式の名前を覚えることより、自分の水槽の吸い込み位置を知っていることのほうが、停電のときには効きます。

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復旧した瞬間にあふれることもある

危ないのは停電中だけではありません。電気が戻ってポンプが回り出した瞬間に、今度は上の水槽があふれることがあります。停電が終わってひと安心、というタイミングで起きるので、気づくのが遅れがちです。復旧の瞬間まで含めて停電対策、と考えておくと抜けが減ります。

仕組みはこうです。停電中、サンプの水位は落水と逆流の分だけ上がっています。復旧するとポンプはその水を上へ汲み上げます。上の水槽からは落水口を通って水が抜けていくので、普通は送る量と抜ける量が釣り合います。ところが落水管が詰まっていたり、空気を噛んで流れが安定しなかったりすると、送る量が抜ける量を上回って、上の水槽の水位が上がり続けます。

とくに注意したいのが、長い時間止まったあとです。落水管の中に空気が溜まっていると、水が本来の勢いで流れ始めるまでに時間がかかります。その間もポンプは全力で送り続けるので、入ってくる量と抜ける量の差が開いたままになります。止まっていた時間が長いほど、復旧直後は見ておきたいところです。

だから復旧の直後は、その場で数分見ているのがいちばん確実です。上の水槽の水位が上がり続けていないか、いつもの落水音が戻っているか。音は分かりやすい手がかりで、ゴボゴボと空気を噛む音が続くようなら、まだ流れが安定していないサインだと考えられます。おかしいと思ったら、ポンプを止めて落ち着かせます。

留守中の停電が怖いのは、まさにここです。あふれても気づける人がいない。自動で復旧する前提で組むなら、サンプの水位線だけでなく、上の水槽側にもフチまでの余裕を残しておきます。両方に余裕があれば、どちらに水が振れても受け止められる可能性が上がります。

落水管の詰まりは、ある日突然起きるものではなく、ろ材やスポンジの汚れが少しずつ効いてきます。とはいえ洗いすぎると今度はろ過が落ちるので、掃除は頻度と手順のバランスになります。洗いすぎを避けながら目詰まりを防ぐ掃除の頻度と手順は、別の記事で順番に整理しています。

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停電中は酸素とろ過も止まっている

あふれの話に気を取られがちですが、停電中は生体側の問題も同時に進んでいます。止まるのはサンプのポンプ(水の循環)だけではありません。ろ過槽の通水、海水ならプロテインスキマー、ヒーターやクーラー、照明。水槽を支えている機器がまとめて止まります。あふれを止めたら終わり、ではないわけです。

オーバーフロー水槽は水量が多いぶん、酸素の蓄えは小さな水槽より大きいです。ただし循環が止まると、水面の攪拌も止まります。空気と水が触れて酸素が溶け込む場所が減る、ということです。サンプのろ材は水が引いた状態になり、空気に触れる部分が増えます。好気性の細菌にとってすぐ悪いわけではありませんが、乾いてしまうと傷みます。

海水やサンゴの水槽は、水流が止まること自体の影響も受けます。水の動きが前提になっている生き物がいるので、淡水と同じ感覚で時間を見積もらないほうが安全です。飼っている生体の種類によって、耐えられる時間の幅は変わります。

魚が水面で口をぱくぱくさせる鼻上げが出てきたら、酸素が足りていないサインだと考えられます。鼻上げが出たときの酸欠の応急処置は、手順ごとにまとめた記事があります。

停電中の酸素の手当ては、電池で動くエアポンプで水面を動かすのが基本になります。手元にないときの選択肢として、酸素の出る石もあります。ただし向き不向きがあるので、使う場面は選びたいところです。酸素を出す石のデメリットと使ってよい場面は、別記事で条件ごとに分けて整理しています。

夏場なら、水温の上昇も同時にやってきます。クーラーが止まれば水温は上がる一方なので、停電が長引きそうなときは、直射日光を避ける、フタを開けて放熱するといった手当てが要ります。夏の高水温対策と、危険とされる水温の目安は、別記事で詳しくまとめています。

酸素まわりは、停電のときだけの話ではありません。普段からどこで酸素が入っているのかを把握しておくと、非常時の判断も速くなります。水槽の酸素を増やす方法の全体像は、別記事でまとめて確認できます。

停電中に酸素を送る道具を1つだけ置いておくなら、電池で動くタイプが確実です。強弱の切替があると、弱に落として長くもたせられます。

オーバーフロー水槽の停電対策と平時の備え

ここからは、実際に手を動かす話です。やることは大きく4つ。サンプの水位線を決めること、揚水管の先を見直すこと、平時に一度ポンプを止めて実測すること、そして電源まわりを安全な形に整えることです。どれも停電が起きてからでは間に合わない作業で、逆に言えば、落ち着いている今のうちにやっておけば、停電の日は見ているだけで済みます。順番にも意味があって、実測をしないと水位線は決まらないし、揚水管の先が沈んだままだと実測の結果も変わります。それぞれの項目で、何を見て、何をどう直すのか、そして作業中の安全をどう確保するのかまで書いていきます。道具は特別なものではなく、バケツとタオル、印をつけるテープがあれば足ります。難しい工具は使いませんし、一度に全部やる必要もありません。気になったところから1つずつ手をつけてもらえたらと思います。

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サンプの水位線を決めて印をつける

対策の中心はこれです。平時のサンプの水位を、停電時に落ちてくる分だけ低く保っておく。落ちてくる量そのものは配管が決めていて、すぐには変えられません。だったら、受ける側にあらかじめ空きを作っておくという発想です。特別な道具も工事も要りません。

やり方は3つの手順に分かれます。まず、ポンプを止めて落ちてくる量を実測する。次に、そのとき上がった水位の位置に印をつける。そして普段は、その線より下で運転する。これだけです。実測の細かいやり方は次の項目で書くので、ここでは印の話をします。

印はビニールテープでも、油性マジックでもかまいません。大事なのは、足し水のときに目をやる場所を作っておくことです。目盛りがなければ、前回どこまで入れたかを人は覚えていられません。線が1本あるだけで、入れる・止めるの判断が一瞬で終わります。家族と共有している水槽なら、なおさら線がものを言います。

上限だけでなく、下限の線も決めておきます。水位が下がりすぎるとポンプが空気を吸って、エア噛みという状態になります。音が大きくなり、ポンプ自体にも負担がかかる。上限と下限の2本を引いて、その間で運転するようにすると扱いやすいです。上限は停電のため、下限はポンプのため、と役割を分けて覚えておくと迷いません。

線を引く場所にも、ちょっとしたコツがあります。仕切りで区画が分かれているサンプでは、停電や蒸発で水位が動くのはポンプが入っている区画であることが多いです。ほかの区画は仕切りの高さで水位が決まっているので、見ていても変化が分かりません。実測のときに、どの区画の水位が動いているかを見ておくと、線を引く面が自然に決まります。正面から見える位置に引いておくと、毎日の確認が習慣になりますよ。

サンプの水位は蒸発で毎日下がります。自動給水(フロートスイッチなどで足し水する仕組み)を使っている場合は、停電中はそれも止まっていることを頭に入れておいてください。海水水槽なら、蒸発しても塩分は残るので足し水は真水、という前提も絡んできます。水位線は塩分濃度の管理にもつながるので、引いておいて損はありません。

要点:上限の線は、停電で落ちてくる分を空けた位置。下限の線は、ポンプが空気を吸わない位置。足し水はこの2本の間で行い、配管やポンプを変えて実測をやり直したら、線も引き直します。

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揚水管の先とサイフォンブレイクを見る

揚水管の出口が水に沈んでサイフォン現象が起きる状態と、水面直下の空気穴で水のつながりが断たれる状態を左右に並べたスライド
サイフォン現象とサイフォンブレイクの違い

今この記事を読みながら、すぐにできることがあります。上の水槽をのぞいて、揚水管の出口が水に沈んでいないかを見てください。沈んでいるなら、その水槽は停電のときに逆流する作りになっています。水流を強く当てたくて、わざと深く沈めているケースもよくあります。

直し方は3つあります。1つ目は、出口を水面より上に出すこと。2つ目は、水面のすぐ下に小さな穴(サイフォンブレイクホール)を開けること。3つ目は、シャワーパイプなら穴を上向きにすることです。どれも狙いは同じで、ポンプが止まった瞬間に管のなかへ空気を入れることにあります。

穴を開ける位置は、水面のすぐ下です。深すぎると、水位がその高さまで下がるまで空気が入らず、逆流がなかなか止まりません。浅すぎると、運転中に空気を吸ってしまい、シューという音が出たり、細かい泡が出たりします。運転中に水位が動く幅も考えて位置を決めると、失敗しにくいです。

逆止弁(チェックバルブ)を入れて逆流を止める手もあります。ただ、ゴミや塩で固着して効かなくなることがあるので、頼りきらないほうがいいかなと思います。動く部品に頼るより、空気が入る構造で止めるほうが、点検も楽です。使うとしても、構造で止めたうえでの二重の備え、という位置づけがよさそうです。

もう1つ見ておきたいのが、出口が沈むかどうかは上の水槽の水位でも変わる、という点です。蒸発で水位が下がっているときは出口が顔を出していて、足し水をした直後は沈んでいる。そんな水槽も珍しくありません。停電がどちらの状態のときに来るかは選べないので、いちばん沈んでいる状態を前提に考えておくと、安全な側に倒せます。

ポンプの吐出側にバルブ(コック)が1つあると、流量の調整はできます。ただ、停電時の逆流を止める役目は果たしません。閉じるのは人の手だからです。停電のときに家にいるとは限らないので、バルブを停電対策の1つとして数えないでください。

配管を触る作業は、電源を抜いてから始めてください。ポンプが動いたまま管を外すと、水が勢いよく噴き出します。作業の前に、水が落ちる範囲にタオルを敷き、バケツを足元に用意しておくと、落ち着いて手を動かせます。作業が終わったら電源を入れ、流れが元どおりか、音に変化がないかを確認します。揚水管の先は、一度直せば毎回効く対策です。停電のたびに人が動かなくていいのが、いちばんの利点かなと思います。

構造で止めるのが本筋ですが、二重の備えとして逆止弁を足しておくのも手です。固着することがあるので、こちらだけに頼らないのが前提ですね。

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平時に一度ポンプを止めて実測する

人がいるときにポンプを止めて水位の上がる分を測り、停電対策の上限の線とポンプ保護の下限の線を引くという3手順を示したスライド
実測で上限の線と下限の線を決める手順

ここまでの話を、自分の水槽の答えに変えるのがこの実測です。他人の水槽で上がった水位は、あなたの水槽では当てになりません。配管の作りも、水槽のサイズも、サンプの形も違うからです。しかも測るのは一度で済みます。時間をかける価値のある作業ですよ。

手順はこうです。まずサンプの現状の水位に印をつける。次にポンプの電源を抜く。落水が止まるまで数分待つ。止まったら、サンプの水位がどれだけ上がったかを測る。最後に、その上がった分だけ普段の水位を下げる。これで上限の線が決まります。測るのは定規でも、印を2本つけて幅を見るだけでもかまいません。

この実測は、人がいるときにやってください。バケツ、タオル、水を汲み出す道具を、手の届く場所に用意してから始めます。サンプの水位が上限に近づいたら、すぐにポンプの電源を戻すか、汲み出して止められるようにしておきます。寝る前や外出の直前に試すのは避けてください。目の前で止められる状況を作ることが、この作業の前提になります。

測っている途中で、水位の上がり方が止まらないときは、逆流が効いている可能性があります。落水の音が消えたのにサンプの水位が上がり続けるなら、揚水管の出口を疑ってみてください。この実測は、逆流があるかどうかを見つける検査にもなります。

測った結果は、写真やメモで残しておくと後で効きます。どこに線を引いたのか、そのとき水位がどこまで上がったのか。時間が経つと記憶はあいまいになりますし、家族と水槽を共有しているなら、共有しておくほど動きが速くなります。停電のときにやることを紙に書いてキャビネットの内側に貼っておく、というのも地味ですが効く手です。

引っ越し、配管の変更、ポンプの交換をしたら測り直します。同じ水槽でも、条件が変われば落ちてくる量は変わるからです。レイアウトを大きく変えて運転水位を上げ下げしたときや、三重管を別の製品に替えたときも同じです。

この実測は、地震対策とほとんど同じ動作でもあります。揺れでポンプが止まったり配管がずれたりすれば、起きるのは停電と同じ落水と逆流だからです。地震で水がこぼれない固定のしかたは、別記事で手順ごとにまとめています。

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電源まわりの安全と非常用の電源

停電対策でいちばん先に手を打ちたいのは、実は生体より電気のほうです。水があふれたとき、床が濡れるだけで済むとは限りません。水槽まわりは、電源タップやコードが密集しやすい場所でもあります。

公的な注意喚起も出ています。製品評価技術基盤機構(NITE)は、「水槽の側に設置されたテーブルタップがトラッキングにより発火した事故の再現映像」を公開しています。トラッキング現象というのは、「コンセントに差し込んだプラグの周辺に綿ぼこりや湿気などが付着することにより、差し込みプラグの刃の間に電流が流れ、火花放電を繰り返すことで、炭化し、導電化され、出火する現象」とされています。そのうえで同機構は、「水槽などの近くは水分が付着しやすいため、コンセントやプラグが濡れないようにしてください。」と案内しています(出典:製品評価技術基盤機構〈NITE〉公式サイト)。

電源まわりで今日できることは4つです。①電源タップを水槽より高い位置に置く。②コードは水槽から一度下げて、たわみ(水切り)を作り、コードを伝ってきた水滴がコンセントへ届かないようにする。③プラグまわりのほこりを定期的に払う。④濡れた手でプラグやスイッチに触らない。水にぬれた手や、水びたしの床を経由すると電気が体を通りやすくなり、感電につながります。水がこぼれた直後にとっさに手を伸ばすのがいちばん危ないので、まずはブレーカーや離れた場所のスイッチで電気を切ってから片づけます。

非常用の電源としては、ポータブル電源やUPS(無停電電源装置)が候補になります。選ぶときは、何をどれくらいの時間動かしたいのかから逆算します。ヒーターやクーラーは消費電力が大きく、家庭用のポータブル電源では動かしきれないことも多いです。優先するなら、水を動かすポンプかエアレーションになります。

UPSはもともと、パソコンなどを安全に終了させるために短い時間つなぐための装置です。長時間の停電に備える道具ではないので、そこを取り違えないようにしてください。容量も対応する機器も製品ごとに違うので、購入する前に仕様を確認しておきます。電源の備えは、水槽を守る道具であると同時に、家を守る道具でもあります。

ポンプやエアレーションを動かす前提で選ぶなら、定格出力が明記されているものを見てください。ヒーターやクーラーまで動かそうとすると容量が一気に必要になるので、まず何を動かしたいのかを決めてから選ぶのが近道です。

オーバーフロー水槽の停電についてよくある質問

停電から復旧したあと、ポンプはすぐ動かして大丈夫ですか?
電源を入れる前に、サンプと上の水槽の水位を確認してください。落水管が空気を噛んでいないかも見ておきます。入れるときは全部の機器を一度に復帰させるより、ポンプ、ヒーター、照明と順番に入れて様子を見るほうが、異常に気づきやすいです。入れたあとは数分その場を離れず、水位と音を確認します。
地震で揺れたときも同じことが起きますか?
停電しなくても、揺れで水が波打ってこぼれたり、配管の接続部がずれたりすることがあります。ポンプが止まれば、この記事で書いた落水と逆流はそのまま起きます。水位線の管理とは別に、水槽台やキャビネットの固定、配管の接続部の点検も必要になります。
留守中に停電したかどうかは、あとから分かりますか?
家電の時計表示がリセットされていたり、スマートプラグの通電履歴が残っていたりすると、手がかりになります。水槽側では、サンプの内側に残った水位の跡や、床に落ちた水の跡から推測することになります。心配なら、通電の履歴が残る機器を1つ挟んでおくと判断しやすくなります。
サンプの容量は大きいほうがいいですか?
落ちてくる水を受けられる余裕は増えますが、置き場所とキャビネットが支える重さの制約が出てきます。容量そのものより、普段の水位をどこで運転するかのほうが効きます。小さめのサンプでも、上限の線を守っていれば受けられることはありますし、大きくても満水で運転していれば余裕はありません。
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オーバーフロー水槽の停電対策のまとめ

オーバーフロー水槽の停電対策を、もう一度まとめます。あふれ方は落水と逆流の2方向。落ちてくる量は、上の水槽の水面と落水口の吸い込み位置の高さの差で決まっていて、逆流は揚水管の出口が水に沈んでいるかどうかで決まります。どちらも配管の作りが決めている話なので、平時にポンプを止めて実測し、サンプに水位線を引いておくのが対策の中心です。そして電源タップは、水槽より高い位置へ。復旧した瞬間にも目を配れると、なお安心です。

次にやることを並べておきます。

  • 上の水槽をのぞいて、揚水管の出口が水に沈んでいないかを見る
  • 落水口の吸い込み位置が、水面からどれくらい下にあるかを確かめる
  • 人がいる時間帯にポンプを止めて、サンプの水位が上がる分を測る
  • サンプに上限と下限の線を引き、電源タップとコードの取り回しを見直す

配管の仕様や製品ごとの注意点は、メーカーや施工業者が出している情報がいちばん新しいです。正確な情報は公式サイトをご確認ください。水槽の条件は一台ずつ違うので、この記事の考え方をそのまま当てはめるのではなく、自分の水槽で確かめた結果を基準にしてもらえたらと思います。

最後に、平時のチェックリストを置いておきます。

確認すること 見る場所 できていないときにやること
サンプの上限水位の印 サンプの外側 ポンプを止めて実測し、落ちてくる分を空けた位置に線を引く
揚水管の先の位置 上の水槽の中 出口を水面より上に出すか、水面のすぐ下に空気の入る穴を作る
落水口の吸い込み高さ 三重管やコーナーの中 水面との差を目で確かめ、落ちてくる量の見当をつける
電源タップの位置 水槽まわりの配線 水槽より高い場所へ移し、コードにたわみを作る
停電時に動かす機器の優先順位 接続している機器の一覧 ポンプかエアレーションを先に決め、非常用電源の容量と照らし合わせる

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