黒メダカにはどんな種類がいる?野生のクロメダカから改良品種まで違いと選び方を整理
黒メダカを飼ってみたいと思って調べ始めると、クロメダカ、ブラックメダカ、オロチ、ブラックダイヤと、似た名前がたくさん出てきて混乱しませんか。野生のメダカと同じものなのか、改良品種なのか、値段の差はどこから来るのか。黒メダカの種類について知りたい方の多くが、まずここでつまずくかなと思います。
先に結論をお伝えすると、黒メダカと呼ばれるものは大きく3つに分けて考えると整理しやすいです。1つ目は川や田んぼに暮らす野生のメダカ、2つ目は野生と同じ黒い色素を持つ定番の飼育品、3つ目は黒さやラメ、ヒレの形を追求した改良品種です。同じ黒でも、この3つは手に入れ方も、黒さの保ちやすさも、扱うときの注意点も違います。
この記事では、図鑑や研究機関の資料、改良品種の作出の経緯を伝えた記事をもとに、黒メダカの種類ごとの特徴を比較表で並べました。体色が黒くなる仕組み、容器や光で黒さが変わる理由、ヒメダカとの掛け合わせで出る色の割合の計算、オロチやブラックダイヤの違い、そして野生の黒メダカを川に放してはいけない理由まで、順番に見ていきます。
- 黒メダカの種類を3つに分ける考え方と、それぞれの特徴
- オロチ・ブラックダイヤ・ブラックリムなど黒系改良品種の違い
- 容器の色や光で黒さが変わる仕組みと保ち方
- ヒメダカとの掛け合わせで出る色の割合と、放流してはいけない理由
黒メダカの種類は大きく3つ|野生・定番・改良品種の違い
この章では、黒メダカの種類を“野生のメダカ”“定番の黒い飼育品”“黒系の改良品種”の3つに分けて、それぞれがどんな魚なのかを整理します。ポイントになるのは、黒さの正体が同じ黒色素胞という細胞だということです。つまり、どの黒メダカも黒い色素を持つ細胞のおかげで黒く見えていて、違いはその量や出方、ほかの特徴との組み合わせにあります。まずは「黒メダカ」という呼び名がどこまでを指すのかを確かめ、野生のメダカ、定番の黒、改良品種の順に見ていきましょう。最後に、種類ごとの特徴を比較表にまとめています。どの黒メダカを選べばよいか迷ったら、その表に戻ってきてくださいね。名前だけで判断せず、どの層の黒メダカなのかを意識するのが第一歩です。
「黒メダカ」という呼び名が指す範囲

黒メダカという言葉には、決まった1つの品種名があるわけではありません。人によって、野生のメダカのことを指したり、ショップで売られている黒っぽいメダカのことを指したり、漆黒の改良品種を指したりします。ここが混乱のもとなんですよね。
まず押さえておきたいのが、ある大学の総説では、野生の体色をしたメダカを「クロメダカ」と呼ぶことがある点です。筑波大学の研究者がまとめた総説では、学生実験で観察したメダカを野生(クロ)メダカと書き、黒色素胞を持つ野生型をクロメダカとしています。野生型というのは、自然の中で暮らすメダカがもともと持っている性質のことです。
一方、観賞魚の世界では、黒い色に重点を置いて選んできた改良メダカを「ブラックメダカ」と呼ぶことが多いです。All Aboutの熱帯魚ガイドの記事では、ブラックメダカを改良メダカのベースとなる品種の一つとして紹介し、品種やグレードによって黒さは様々だと説明しています(出典:All About「メダカは種類がたくさん!写真で見る人気の改良メダカ」)。
整理すると、黒メダカという言葉は次の3つのどれかを指していることがほとんどです。
- 川や田んぼなどに暮らす野生のメダカ(自然の中の在来種)
- 野生と同じ体色を受け継いだ、定番の黒い飼育品
- 黒さやラメ、ヒレの形を追求した黒系の改良品種
どれも見た目は黒っぽいので、売り場や記事で名前だけを見ても区別がつきにくいです。購入するときや情報を調べるときは、“野生の個体の話か”“飼育品の話か”“改良品種の話か”を意識するだけで、ずいぶん分かりやすくなりますよ。なお、メダカの品種全体を体色やラメ、ヒレで絞り込む考え方は、メダカの品種一覧を4つの軸で見る方法でも詳しく解説しています。
野生のクロメダカはキタノメダカとミナミメダカ
川や田んぼにいる野生のメダカは、今では2つの種に分けられています。京都府のレッドデータブックの解説では、これまでの研究で、日本海側にいるキタノメダカと太平洋側にいるミナミメダカの2種に分かれることが分かったと説明されています。京都府はこの両方が生息している、全国でも珍しい地域だそうです。
野生のメダカの体色は、真っ黒というより地味な色合いです。日本大百科全書の解説では体色は淡黄灰色とされていて、熱帯魚のガイド記事でも原種は灰褐色の地味な体色の魚だと書かれています。黒メダカという呼び名から真っ黒な魚を想像すると、少しイメージと違うかもしれませんね。
ここで大事なのは、野生のメダカは数が減っているという点です。共同通信のニュース用語解説によると、メダカは生息環境の減少や外来種による捕食を理由に、1999年に環境省のレッドリストで絶滅危惧Ⅱ類に指定されました。環境省のメダカの保全に関するページでも、レッドリストランクは絶滅危惧II類とされています(出典:環境省「メダカ」生息域外保全の事例)。
さらに環境省のページでは、メダカは日本各地で別々の地域集団に分かれていることが遺伝子解析などの研究で明らかにされていると説明しています。同じ野生のメダカでも、住んでいる地域ごとに遺伝的な違いがあるということです。
京都府の解説は、田んぼや川でメダカを見つけても採ったりしないで見守ろうと呼びかけています。黒メダカを飼いたいと考えたとき、野生の個体を採ってくるのではなく、飼育用に繁殖された個体を選ぶのが基本になります。
定番の黒メダカは黒・黄・白の色素胞を持つ体色
ここでは、野生と同じ体色(野生型)の黒メダカと、ショップで「ブラックメダカ」として売られている改良の黒を分けて考えます。改良メダカWEB図鑑によると、改良のブラックメダカは野生の黒メダカとは別物で、野生型の中から黒っぽい個体を選び、さらに黄色素胞の少ない個体を選び続けて作られた体色だそうです(出典:改良メダカWEB図鑑「ブラックメダカ」)。まずは基本になる野生型の体色から見ていきましょう。
メダカの体色は、皮膚にある色素胞という細胞で決まります。筑波大学の総説では、メダカは黒色素胞、黄色素胞、白色素胞を持つことが知られていると説明されています。黒色素胞はメラニンという黒い色素を多く含み、黄色素胞は黄色の色素を持ち、白色素胞は光を散乱させて白く見せる細胞です。基礎生物学研究所の資料では、これに虹色素胞を加えた4種類とされています(出典:基礎生物学研究所 2020年 要覧)。野生型のメダカは、黒と黄の色素をどちらも持つことで、地味な色合いに見えます。
では、ほかの定番の色とはどう違うのでしょうか。世界大百科事典の解説では、ヒメダカは黒い色素を欠き、ほかの品種には黄の色素を欠く青メダカや、黄と黒の色素を両方欠いた白メダカなどがあるとされています。つまり、野生型の黒メダカは“黒と黄の色素がそろった”状態、ほかの定番の色は“どれかの色素が欠けた”状態と整理できます。
次の表は、その関係を並べたものです。
→ 横にスクロールできます
| 定番の体色 | 黒い色素 | 黄色の色素 | 見た目の印象 |
|---|---|---|---|
| 黒メダカ(野生と同じ体色) | あり | あり | 灰色〜黒っぽい地味な色合い |
| ヒメダカ | 欠ける | あり | オレンジがかった黄色 |
| 青メダカ | あり | 欠ける | 青みがかった灰色 |
| 白メダカ | 欠ける | 欠ける | 白っぽい色 |
※世界大百科事典(コトバンク)の解説をもとに、黒メダカの位置づけを記事で整理したものです。見た目の印象は個体や飼育環境で変わります。
こうして並べてみると、野生型の黒メダカはメダカの体色のいわば基本形と考えられます。ヒメダカや白メダカは、そこから色素が欠けた形として生まれてきたわけですね。一方、改良のブラックメダカは、改良メダカWEB図鑑によると黄色素胞が欠如した体色で、白い水槽に入れると5分程度で灰色になる「背地反応する」タイプと、白い水槽でも黒い体色を保つ「背地反応しない」タイプがあるそうです(出典:改良メダカWEB図鑑「ブラック体色」)。定番の黒メダカは、手に取りやすい価格のものもあります。熱帯魚のガイド記事でも、ブラックメダカはベーシックなものでは数百円程度からと紹介されています。
改良品種の黒系|オロチとブラックダイヤ

黒系の改良品種で、名前を聞くことが多いのがオロチとブラックダイヤです。どちらも「黒さ」が魅力ですが、生まれた経緯と特徴が違います。
オロチは室内でも黒が褪めにくい品種
アウトドア雑誌BE-PALに掲載された記事(2019年)によると、オロチは2016年に、奈良県の「飛鳥メダカ」を主宰する谷國昌博氏が作出した、全身が真っ黒なメダカです。普通のブラックメダカの系統では黒色素胞が乗りにくい下あご、お腹側のキールやお腹まで黒くなるのが特徴とされています。
この記事でオロチの最大の魅力として挙げられているのが、室内で飼っても黒色が褪めないことです。多くのブラック系メダカは、太陽光を浴びればさらに黒くなる一方、室内で飼うと体色が薄くなってグレーがかってしまうと説明されています。これに対してオロチは、室内で卵から育てた直系の個体でも太陽光を一切浴びずに真っ黒になり、1.5cmを超えたあたりから稚魚や若魚が真っ黒になるとされています。
また、オロチの目は「パンダ目」と呼ばれる、目の中まで真っ黒なタイプだと紹介されています。オロチの選び方や、黒さ以外に見るべき点は、オロチの選別で失敗しやすいポイントをまとめた記事で詳しく解説しています。
ブラックダイヤはオロチの黒にラメを重ねた品種
ブラックダイヤは、同じくBE-PALの記事によると、神奈川県川崎市の中里良則氏が、青ラメ幹之(星河)とオロチを交配して作った品種です。オロチの黒さに、幹之由来のキラキラ光るラメ鱗を重ねたメダカといえます。
作出の過程も紹介されていて、2代目(F2)ではさまざまな色の個体が出て、オロチの黒さと青ラメ幹之のラメの両方を持った個体は5%程度だったそうです。そこから親を選んで3代目(F3)が生まれ、この段階で仮の呼び名として「オロチラメ」と呼べるまでになったとされています。5代目(F5)では、室内でも真っ黒になりラメ鱗を持つ個体の出現率が80%に達し、2018年3月に全国的にリリースされたときに「ブラックダイヤ」の呼び名が広まったと書かれています。
ウェブメディアPrecious.jpのメダカ専門店への取材記事(2018年)でも、「オロチラメ」は通称「ブラックダイヤ」と呼ばれていると紹介されています。この記事では、取材当時の一般的な価格として1万円が示されていました。2018年時点の取材による価格なので、今の相場とは違う可能性があります。購入するときは、販売店ごとに最新の価格を確かめてくださいね。
鱗やヒレで分かれる黒系|ブラックリムほか
黒系の改良品種は、体全体の黒さだけでなく、鱗の模様やヒレの形でも種類が分かれます。ここでは、取材記事やガイド記事で紹介されている代表的なものを見ていきます。
まずブラックリムです。Precious.jpの取材記事では、ブラックリムは鱗の一枚一枚に黒い縁が見られるメダカで、高級メダカの代表的な種類の一つとして紹介されています。鱗の輪郭が黒くはっきり出ているのが特徴ですね。同じ記事では、頭部のオレンジとブラックリムの特徴を合わせ持つ「オレンジ黒ブラックリム」という品種も紹介されていました。ブラックリムは体色そのものより鱗の模様の名前なので、黒い体色の品種だけを指すわけではない点に注意しましょう。ブラックリムを選別でどう見極めるかは、乙姫メダカでブラックリムを見極める方法も参考になりますよ。
次に、ヒレの形が変わった黒系です。Precious.jpの記事では「ブラックスワローヒカリ」が紹介されていて、黒い体色に、スワローの特徴である長い尾びれと、ヒカリの特徴である大きい背びれとひし形の尾びれを併せ持つとされています。ひれの長さや形が価格に大きく影響する品種で、記事の中では1,000円から1万円までと幅広い値段がつくと書かれていました。
熱帯魚のガイド記事でも、黒い体色をベースに光沢感のあるラメが散りばめられたものや、ヒレの形状などにも変化のある多くの品種が存在していると説明されています。価格はベーシックなもので数百円程度から、高価な品種では数万円と、珍しさやグレードによって幅があるそうです。
黒系の改良品種を見るときは、次の3つの視点で見分けると整理しやすいです。
- 体全体の黒さ:オロチのように、お腹やあごまで黒いか
- 鱗の光や模様:ブラックダイヤのラメ、ブラックリムの黒い縁取り
- ヒレや体型:スワローやヒカリのような長いヒレ・大きなヒレ
品種名は、これらの特徴を組み合わせて付けられていることが多いです。名前が長い品種ほど、いくつもの特徴を重ねたものだと考えると読み解きやすいかなと思います。
種類ごとの特徴を比較表で整理
ここまで紹介した黒メダカの種類を、1つの表にまとめます。黒さの出方、室内での黒さの保ちやすさ、価格の目安、扱いの注意点を並べました。
→ 横にスクロールできます
| 種類 | どんな黒メダカか | 室内での黒さ | 価格の目安 | 扱いの注意点 |
|---|---|---|---|---|
| 野生のメダカ(キタノメダカ・ミナミメダカ) | 川や田んぼに暮らす在来種。体色は淡黄灰色〜灰褐色 | —(飼育品ではない) | —(採集はおすすめしない) | 絶滅危惧II類。採らずに見守る |
| 定番の黒メダカ(ブラックメダカ) | 野生型の中から黒っぽく黄色みの少ない個体を選んだ改良の体色(黒さの程度に幅がある) | 品種による(背地反応するタイプは白い水槽で灰色に・しないタイプは黒を保つ) | 数百円程度から | 背地反応するタイプは、白っぽい砂利や水槽(人工照明下)でぼけた黒になりやすい |
| オロチ | 2016年作出。あごやお腹まで黒い全身真っ黒の品種 | 褪めにくい(太陽光なしでも真っ黒になるとされる) | 販売店で確認 | 黒さ以外の体型や健康も見て選ぶ |
| ブラックダイヤ(オロチラメ) | オロチ×青ラメ幹之。黒い体にラメ鱗 | 作出の過程では、F5で室内でも真っ黒かつラメ鱗の個体が80%に(作出者側の記録で、市販個体の割合ではない) | 2018年の取材時点(専門店1店の一般的な価格)で1万円 | 価格は取材当時のもの。最新は販売店で確認 |
| ブラックリム系 | 鱗の一枚一枚に黒い縁がある模様の品種 | 品種による | 2018年の取材時点(専門店1店)で1匹1万円程度。個体差で変動 | 体色ではなく鱗の模様の名前 |
| ブラックスワローヒカリ | 黒い体色にスワローとヒカリのヒレ | 品種による | 2018年の取材時点で1,000円〜1万円 | ヒレの長さと形で価格が大きく変わる |
※各行の内容は、環境省・京都府・日本大百科全書・世界大百科事典の解説、筑波大学の総説、BE-PAL(2019年)とPrecious.jp(2018年)の記事、改良メダカWEB図鑑、All Aboutの熱帯魚ガイドの記事をもとに整理したものです。価格はあくまで一般的な目安で、取材時点のものを含みます。正確な情報は販売店や公式の情報をご確認ください。
価格の差については、Precious.jpの取材記事で、血統や色の良し悪しといった個体差によって価格が変動すると紹介されていました。表を見ると分かるとおり、同じ黒メダカでも“室内で黒さを保てるか”が大きな分かれ目になります。屋外で日光に当てて飼うなら定番の黒メダカでも黒さを楽しみやすく、室内の水槽で黒さを楽しみたいならオロチ系を検討する価値がある、というのが一つの目安ですね。この点は、次の章で詳しく見ていきます。
黒メダカの種類に合わせた選び方と飼い方のポイント
この章では、黒メダカの種類が分かったうえで、どう選んで、どう飼えば黒さを楽しめるのかを整理します。選び方は“どこで飼うか”と“何を楽しみたいか”で変わります。黒さを保つには、メダカが周りの色に合わせて体色を変える仕組みを知っておくと役立ちます。さらに、ヒメダカなど別の色と掛け合わせたときにどんな色の子が出るかを、遺伝のしくみから計算してみます。最後に、黒メダカを川や池に放してはいけない理由も確認しましょう。どれも、黒メダカを長く楽しむために知っておきたいことばかりです。飼育環境は家庭ごとに違うので、ここでの内容は目安として、自分の環境に当てはめながら読んでみてくださいね。容器や光の条件を少し変えるだけで、見え方が変わることもありますよ。
目的別に選ぶ黒メダカの種類
結論から言うと、黒メダカの種類は「飼う場所」と“楽しみたいポイント”で選ぶのがおすすめです。高い品種ほど良いというわけではなく、環境に合った種類を選ぶほうが満足しやすいかなと思います。
まず飼う場所です。屋外の容器で日光に当てて飼うなら、定番の黒メダカでも黒さを楽しみやすいです。BE-PALの記事でも、多くのブラック系メダカは太陽光を浴びればさらに黒くなると説明されていました。一方、室内の水槽で照明だけで飼うなら、多くのブラック系は体色が薄くなりやすいとされるので、室内でも黒が褪めにくいとされるオロチ系を選ぶと、黒さを楽しみやすくなります。
次に楽しみたいポイントです。目的ごとの選び方を表にまとめました。
→ 横にスクロールできます
| こんな方に | 向いている種類 | 選ぶときの見方 |
|---|---|---|
| 屋外で手軽に黒メダカを飼いたい | 定番の黒メダカ | 価格が手ごろなものが多い。日光の当たる容器で黒さが出やすい |
| 室内の水槽で黒さを楽しみたい | オロチ系 | あごやお腹まで黒いか。体型や泳ぎ方に異常がないか |
| 黒い体にキラキラした光がほしい | ブラックダイヤ(オロチラメ) | ラメの乗り具合と黒さの両方を見る |
| 模様やヒレの形を楽しみたい | ブラックリム系・ブラックスワローヒカリなど | 鱗の縁取りの出方、ヒレの長さや形 |
| 野生のメダカを身近に感じたい | 採集はせず、飼育用に繁殖された黒メダカを選ぶ | 野生の個体は採らずに見守る |
どの種類を選ぶ場合でも、黒さだけで判断せず、元気に泳いでいるか、体が曲がっていないか、ヒレがたたまれていないかを見ることが大切です。品種の特徴は飼育環境や個体差で変わることもあるので、気になる点は購入前に販売店へ相談してみてください。
黒メダカを飼う容器を通販で探すなら、黒っぽい色の容器や鉢を選ぶと、次で説明する保護色の仕組みを生かしやすいです。容器の大きさと置き場所に合うかも、購入前に確かめておきましょう。
容器と光で変わる黒さの仕組み

黒メダカの黒さは、生まれつきの品種だけでなく、容器の色と光の当たり方でも変わります。黒っぽい容器と日光で黒さが出やすく、白っぽい容器や真っ暗な環境では薄くなりやすい、というのが基本です。ただし、オロチや背地反応しにくい改良のブラックのように、白い容器でも黒さを保ちやすい品種もあります。
この仕組みは背地適応と呼ばれます。背地適応とは、周りの色に自分の体色をできるだけ近づける反応のことです。筑波大学の総説では、学生実験で一昼夜同じ背景に置いたメダカを白い背景から黒い背景へ移すと、体色が1〜2分のうちに白から黒へ変化し、逆の場合も同じように速やかに背景の色へ適応すると説明されています(実験室での観察で、家庭の容器で同じ速さで変わるとは限りません)。
体色が変わる理由は、黒色素胞の中の黒い色素の粒の動きにあります。色素の粒が細胞全体に広がると色が濃くなり、細胞の中央に集まると薄くなるそうです。メダカは目に入る光で周りの明るさを判断していて、白い背景では色素の粒が集まって白っぽく、黒い背景では広がって黒っぽくなります。
注目したいのは、長い期間同じ環境に置いたときの変化です。同じ総説によると、クロメダカを白い背景に数日間置き続けると、黒色素胞の数が減少し、体色はさらに白っぽくなっていくとされています。逆に、黒い背景に長く適応した場合は、黒色素胞が発達すると説明されています。つまり、野生型のクロメダカでは、白い容器でずっと飼っていると、黒さが一時的にだけでなく、細胞の数の面でも薄くなっていく可能性があるということです。
光の量も関係します。同じ総説では、真っ暗な場所に置かれたクロメダカの体色が薄くなる現象も紹介されています。一方、東京大学大気海洋研究所などの研究グループが2025年に発表した研究では、メダカは脳下垂体で太陽光に含まれる紫外線を感じ、強い太陽光の下では体色を黒くすることで紫外線への防御を強めることが分かったとされています。屋外の日光で黒メダカが黒くなりやすいのは、こうした仕組みも関わっているのかもしれません。
黒さを引き出すための環境づくりの目安
- 容器は黒や濃い色のものを選ぶ(背地反応するタイプは白い容器で黒さが抜けやすい)
- 底砂を入れるなら白っぽい砂より暗い色のものにする
- 屋外なら日光の当たる場所に置く(夏の高水温には注意)
- 室内なら黒さが褪めにくいとされるオロチ系を検討する
黒や濃い色の容器は日射で水温が上がりやすいので、夏は直射日光を避けて半日陰にし、水温計で確かめましょう。容器が小さく水量が少ないほど、水温は変わりやすくなります。適した水温の目安は、飼育書や販売店の案内で確認してください。
ただし、日光に当てるときは夏の高水温に注意が必要です。日当たりが強すぎる場所では、すだれや日よけで半日陰を作るなど、水温が上がりすぎない工夫をしてくださいね。発泡スチロールの容器を使っている方は、塗らずに発泡スチロールの内側を暗くする方法も参考になるかなと思います。
ヒメダカとの掛け合わせで出る色の割合

黒メダカとヒメダカを一緒に飼っていると、どんな色の子が生まれるのか気になりますよね。結論として、親の組み合わせによって、子が全部黒くなることもあれば、黒とヒメダカの色が半々になることもあります。これは、黒色素胞を持つかどうかが1つの遺伝子で決まっているためです。
筑波大学の総説によると、メダカの黒色素胞が出るかどうかは常染色体上の1つの遺伝子(B・b)で決まり、典型的なメンデル型の遺伝をします。黒色素胞を持つクロメダカ(BB、Bb)が優性で、黒色素胞をほとんど持たないヒメダカ(bb)が劣性とされています。優性は今の用語では顕性、劣性は潜性といいます(出典:日本遺伝学会「遺伝学用語改訂について」)。顕性というのは、BとbがそろったBbでも、Bの性質(黒)が表に出るという意味です。
この関係をもとに、親の組み合わせごとに子の色の割合を計算すると、次のようになります。
→ 横にスクロールできます
| 親の組み合わせ | 子の遺伝子の割合 | 子の体色の割合(理論上) |
|---|---|---|
| 黒(BB)×ヒメダカ(bb) | Bbがすべて | すべて黒 |
| 黒(Bb)×ヒメダカ(bb) | Bb:bb=1:1 | 黒:ヒメダカ色=1:1 |
| 黒(Bb)×黒(Bb) | BB:Bb:bb=1:2:1 | 黒:ヒメダカ色=3:1 |
| 黒(BB)×黒(Bb) | BB:Bb=1:1 | すべて黒 |
※筑波大学の総説にある黒色素胞の遺伝子(B・b)の説明をもとに、記事で計算した理論上の割合です。実際の子の数はばらつきます。
この表から分かる大事なポイントは、見た目が黒い親でも、Bbのようにヒメダカの遺伝子を隠し持っている場合があることです。たとえば黒い親どうしを掛け合わせて、子の4匹に1匹くらいがヒメダカ色になったら、両親ともBbだった可能性が高いと考えられます。黒い子だけを残したいなら、こうした割合を手がかりに親を選んでいくことになります。
ただし、これはあくまで黒色素胞の1つの遺伝子だけに注目した単純な計算です。同じ総説では、ヒメダカに黒い斑が入る斑入りの性質を決める遺伝子(B’)が、Bと同じ場所に入る別の型(対立遺伝子)として紹介されていますし、改良メダカの多くは、黄色の色素や鱗の光、ヒレの形など、ほかの遺伝子も重なっています。オロチやブラックダイヤのような改良品種どうしの交配では、この表どおりにはならないことのほうが多いと考えてください。オロチを使った掛け合わせの考え方は、オロチの掛け合わせと相性をまとめた記事で詳しく紹介しています。
なお、黒メダカの体色の遺伝やメダカの体色の仕組みについてさらに知りたい方は、筑波大学の総説(出典:筑波医療科学「メダカの色素胞と体色変化」)も読んでみると理解が深まりますよ。
黒メダカを川や池に放さない理由
結論として、黒メダカは種類を問わず、川や池、田んぼに放してはいけません。見た目が野生のメダカに似ている定番の黒メダカでも同じです。
理由は、地域ごとのメダカの遺伝的な違いを壊してしまうおそれがあるからです。環境省のメダカの保全に関するページでは、生息している地域の異なるメダカを放流すると、本来その土地に生息していたメダカと交雑して、何万年もかけて形成された地域ごとの遺伝的多様性が失われてしまうと説明されています。同じページでは、飼育用の品種であるヒメダカが放流されている例があることや、関東地方に本来いないはずの関西地域の遺伝子を持つメダカが見つかるなど、多くの生息地で交雑の現状が明らかになっていることも紹介されています。
共同通信のニュース用語解説でも、流通する改良メダカはミナミメダカから派生したもので、環境省は放流することで交雑して在来種が駆逐される恐れがあるとして注意を呼びかけていると書かれています。
よかれと思った放流が問題になることも
環境省のページでは、メダカを復活させるための再放流で、ほかの地域で採集された個体や商業的に繁殖した個体が使われてしまう例があると指摘されています。黒メダカは野生のメダカと見た目が似ているぶん“自然に返してあげたい”と思いがちですが、飼育中のメダカは最後まで飼うか、引き取り先を探すのが基本です。
繁殖して数が増えすぎたときや、事情があって飼えなくなったときは、知人に譲る、販売店に相談するといった方法を考えましょう。具体的な方法は、放流しないメダカの手放し方と引き取り先の探し方で詳しく解説しています。最終的な判断に迷うときは、お住まいの自治体や販売店、専門家にご相談ください。
黒メダカの種類についてよくある質問
黒メダカの稚魚が黒くないのはなぜですか?
小さいうちは黒さがまだ出きっていないことがあります。BE-PALの記事では、オロチは1.5cmを超えたあたりから稚魚や若魚が真っ黒になると紹介されていて、オロチでは黒さが出るまでに成長の時間がかかることが分かります。ほかの黒メダカの稚魚についても同じかどうかは、今回の資料では確認できていません。また、白っぽい容器や暗い場所で育てていると、背地適応で体色が薄く見えることもあります。黒い容器に移して日光に当てると黒さが出てくることもあるので、まずは成長と環境を見直してみてください。親がBbの組み合わせなら、遺伝的にヒメダカ色の子が混じることもあります。
黒メダカとほかの色のメダカは一緒に飼えますか?
体の大きさが近いメダカどうしなら、色が違っても一緒に飼うこと自体はできます。ただし、同じ容器で飼うと自然に交配して、色の混ざった子が生まれることがあります。黒メダカの黒さを保った子を残したい場合や、品種の特徴を守りたい場合は、繁殖の時期だけでも色ごとに容器を分けておくと安心です。
野生のメダカを採ってきて飼ってもいいですか?
野生のメダカは、環境省の保全に関するページ(2012年の表記)でレッドリストの絶滅危惧II類とされていて、京都府のレッドデータブックの解説でも、見つけても採らずに見守るよう呼びかけられています。採集はおすすめしません。保護の決まりがあるかどうかもお住まいの自治体で確かめたうえで、黒メダカを飼いたい場合は、飼育用に繁殖された個体をショップなどで選ぶのがおすすめです。
黒メダカに色揚げ用の餌は必要ですか?
黒さは、品種(遺伝)に加えて、容器の色や光の当たり方でも変わることが、ここまでの資料から分かっています。色揚げ用の餌が黒さにどの程度関わるかは、今回の資料では確認できていません。まずは容器と光の環境を整えるところから始めましょう。餌は、体の大きさに合った粒の大きさのものを、食べきれる量だけ与えるのが基本です。色揚げ用の餌を使う場合は、商品の表示どおりの量と与え方を守ってください。
毎日の餌は、メダカ用として売られている、粒の大きさが口に合うものを選ぶと与えやすいです。稚魚用と成魚用で粒の大きさが違う商品もあるので、育てている個体の大きさに合わせて選んでくださいね。
黒メダカの種類を知って自分に合う一匹を選ぼう
最後に、黒メダカの種類と選び方の要点をまとめます。
- 黒メダカは“野生のメダカ”“定番の黒い飼育品”“黒系の改良品種”の3つに分けると整理しやすい
- 野生のメダカはキタノメダカとミナミメダカの2種。絶滅危惧II類なので採らずに見守る
- メダカは黒・黄・白(と虹)の色素胞を持ち、野生型の黒メダカは黒と黄の色素がそろった体色。ヒメダカは黒、青メダカは黄、白メダカは黒と黄の色素を欠く。改良のブラックメダカは黄色素胞の少ない別の体色
- オロチは室内でも黒が褪めにくいとされ、ブラックダイヤはオロチに青ラメ幹之のラメを重ねた品種
- 黒さは容器の色と光で変わる。黒い容器と日光で黒くなりやすく、白い容器や真っ暗な環境では薄くなりやすい(白い容器でも黒を保ちやすい品種もある)
- 黒(BB・Bb)はヒメダカ(bb)に対して顕性(優性)。親の組み合わせで子の色の割合が変わる
- 黒メダカは種類を問わず川や池に放さない
黒メダカと一口に言っても、野生のメダカから漆黒の改良品種まで、その中身はさまざまです。どれが一番良いというより、屋外で飼うか室内で飼うか、黒さを楽しみたいのかラメやヒレを楽しみたいのかで、合う種類は変わってきます。
まずは飼う場所を決めて、そこで黒さを楽しみやすい種類を選び、黒っぽい容器と適度な光で育ててみてください。価格や品種の特徴は販売店によって違うので、正確な情報は購入する販売店の説明をご確認ください。飼育で迷ったときの最終的な判断は、販売店や専門家にご相談くださいね。あなたにぴったりの黒メダカが見つかりますように。


COMMENTS
この記事へのご質問・コメント