ベタ水槽の立ち上げ手順|購入前に準備しておきたいこと
ベタは小さな容器でも飼えると紹介されることが多い魚です。それ自体は間違いではありません。でも「小さくても飼える」と「小さいほうが簡単」はまったく別の話で、ここを取り違えると最初の数週間で調子を崩してしまいます。
この記事では、ベタを迎える前に何をどこまで用意しておけばいいのか、そして水槽をどう立ち上げていくのかを順番に整理していきます。ベタならではの事情、たとえば空気呼吸ができること、水流を嫌うこと、水量が少なくなりがちなことが、立ち上げの進め方をどう変えるのかも一緒にお伝えしますね。
- ベタの立ち上げが他の熱帯魚と違う理由
- 購入前にそろえておくべき道具と選び方の基準
- 設置から注水、から回しまでの具体的な手順
- 迎える当日の水合わせと最初の2週間の管理
ベタ水槽の立ち上げが他の魚と違う3つの理由

まず押さえておきたいのが、ベタの立ち上げは一般的な熱帯魚水槽とは前提が少し違うという点です。ここを理解しておくと、この後の道具選びも手順も、なぜそうするのかが腑に落ちます。
空気呼吸ができても水質の問題は残る
ベタにはラビリンス器官と呼ばれる特殊な器官があります。エラだけでなく、水面から直接空気を吸って酸素を取り込めるという仕組みですね。原産地である東南アジアの浅い水域は水温が高く、水に溶けている酸素が少なくなりがちです。その環境に適応した結果と考えられています。
この性質があるため、ベタはエアレーション、いわゆるブクブクがなくても酸欠になりにくい魚です。「だからベタは小さな瓶でも飼える」と言われるわけですね。
ただ、ここで注意したいことがあります。酸素が足りることと、水がきれいなことは、まったく別の話です。ベタも餌を食べれば排泄しますし、食べ残しは水中で分解されてアンモニアになります。アンモニアは少量でも魚に強い毒性があり、これを分解してくれるのがろ過バクテリアです。
もう少し具体的に見ておきましょう。魚が出すフンや食べ残しは、まずアンモニアという物質に変わります。これは魚のエラを傷める毒性の強い物質です。次にバクテリアがアンモニアを亜硝酸に変えます。亜硝酸もまだ毒性がありますが、アンモニアよりは穏やかです。さらに別のバクテリアが亜硝酸を硝酸塩へ変えると、ようやく比較的無害な状態になります。硝酸塩は水換えで薄めていくというのが、水槽管理の基本的な流れです。
この一連の変換を担う2種類のバクテリアは、水を入れただけの水槽にはほとんどいません。数週間かけて少しずつ増えていくものなので、時間を飛ばすことができないんですね。
つまりベタの立ち上げで用意すべきなのは、酸素ではなくアンモニアを処理してくれるバクテリアの住処ということになります。空気呼吸ができるからといって、水づくりを飛ばしていいわけではないんですね。ここが最初の分かれ道です。
水流を嫌うのでろ過の選び方が変わる
ベタのもうひとつの特徴が、強い水流を嫌うことです。ヒレが大きく発達しているぶん泳ぎは得意ではなく、流れの強い場所では体力を消耗してしまいます。自然界でも、ベタが暮らすのは流れのほとんどない浅い水域です。
一般的な熱帯魚水槽なら、外掛けフィルターや上部フィルターを回して水を循環させます。ところがベタの場合、この標準的な選択がそのまま使えません。フィルターの吐出口から出る水流が強すぎると、ベタが流されて水草の陰にじっと隠れたままになったり、ヒレを傷めたりします。
かといって、ろ過をまったく入れないという選択にも代償があります。前の項で触れたとおり、水をきれいに保つ仕事はバクテリアが担っていて、その住処になるのがろ材だからです。ろ過なしで飼う場合は、その代わりに頻繁な水換えで水質を維持することになります。
結論としては、止めるのではなく弱めるという発想が正解です。スポンジフィルターを弱いエアーで動かす、外掛けフィルターの吐出口に水流を拡散させる工夫をする、といった方向ですね。どのタイプが向いているかはベタ向けのフィルターを水流の弱め方から比較した記事にまとめてありますので、道具を買う前に目を通しておくと選びやすくなりますよ。
水量が少ないほど立ち上げは難しくなる
ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところかもしれません。ベタは小型容器で飼えると紹介されがちですが、水量が少ない水槽ほど立ち上げの難易度は上がります。
理由はシンプルで、水の量が少ないほど水質も水温も急激に変わるからです。同じ量のフンや食べ残しが出たとき、10リットルの水槽と1リットルの瓶では、アンモニアの濃度がまったく違ってきます。10倍濃くなるわけですね。水温も同じで、部屋の温度が動けば小さな容器の水温は簡単に引っ張られます。
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| 水量の目安 | 水質の安定しやすさ | 水温の振れ方 | 向いている人 |
|---|---|---|---|
| 1〜3L(小型ボトル) | とても不安定・こまめな水換えが前提 | 室温にすぐ引っ張られる | 毎日世話ができて経験もある人 |
| 5L前後 | やや不安定・ろ過があると安定しやすい | ヒーターの選択肢が限られる | 置き場所が狭い人 |
| 10L前後 | 比較的安定する | ヒーターで管理しやすい | はじめてベタを飼う人 |
| 20L以上 | 安定しやすい | 変化がゆるやか | 水草や混泳も考えたい人 |
あくまで一般的な目安ですが、はじめてベタを飼うなら10リットル前後を確保できると管理がぐっと楽になります。省スペースを優先して小さくしすぎると、立ち上げの段階から難易度の高い状態に自分を追い込むことになるんですよね。
水量の差は、日々の手間にもそのまま跳ね返ります。小型のボトルでろ過なしの場合、水質を保つには数日に一度、それも比較的多めの水換えが必要になると案内されることが多いです。一方10リットル前後でろ過を回している水槽なら、週に一度、3分の1程度の交換で維持できる場面が増えます。容器を大きくすることは、そのまま水換えの回数を減らすことでもあるわけですね。
もうひとつ、水量が効いてくるのが失敗したときの余地です。餌を入れすぎた、水換えを1回飛ばした、といったことは誰にでも起こります。水量に余裕があれば濃度が薄まって時間を稼げますが、余裕がないと数値がすぐに危険域まで動きます。初心者ほど大きめの容器を選んだほうがいいと言われるのは、この「やり直しのきく幅」の差が大きいからです。
迷ったら、置き場所に収まる範囲でいちばん大きい容器を選んでください。水量が増えて困ることはほとんどありませんが、少なすぎて困る場面は毎週やってきます。水換えの回数も減るので、結果として手間も減りますよ。
購入前にそろえておく道具と選び方

ここからは具体的に何を用意するかです。ポイントは、ベタを連れて帰る日までにすべてが動いている状態を作っておくことですね。順番を間違えると、迎えた初日にバタバタすることになります。
水槽の大きさと水量をどう決めるか
前の章で触れたとおり、水量は多いほど管理が楽になります。そのうえで、ベタならではの条件がもうひとつあります。それは水深です。
ベタは水面まで空気を吸いに上がってくる魚なので、極端に水深のある水槽だと往復が負担になります。ヒレの大きい個体ほどこの傾向が出やすいですね。目安としては水深15〜20センチ程度に収まる形が扱いやすく、縦に深い水槽より横に広い水槽のほうが向いています。
市販の水槽なら、20〜25センチクラスのキューブ水槽か、高さを抑えた横長タイプの小型水槽が候補になります。30センチクラスのキューブを選ぶ場合は、満水にせず水位をやや低めに調整すると先ほどの水深に収まります。フタは必須と考えてください。ベタは驚いたときに水面から飛び出すことがありますし、フタがあると水の蒸発と水温の低下も抑えられます。
水槽と道具をひとつずつ選ぶのが大変なら、必要なものがまとまったセット品から入るのも合理的です。ベタ用の水槽セットを必須条件から比較した記事で選び方の基準を整理していますので、あわせて確認してみてください。何が入っていて何が足りないのかが分かると、買い足しの失敗が減ります。
ヒーターと水温計は最優先でそろえる
ベタの飼育で妥協できないのが水温です。ベタは熱帯性の魚で、適水温はおおむね25〜28度とされています。この記事では、そのなかでも安定させやすく立ち上げも進みやすい26〜28度を目安として扱いますね。日本の室内は季節によって10度以上動くので、ヒーターなしでこの範囲を保つのは現実的ではありません。
ここで気をつけたいのが、ヒーターには使用できる周囲の気温という前提条件があることです。たとえばテトラの26℃ミニヒーター100Wの製品情報では、周囲気温15℃以上の環境で使用することとされ、15℃未満の場合は希望する水温にならない場合があると明記されています(出典:スペクトラム ブランズ ジャパン公式サイト)。
暖房を切ると室温が15度を下回るような部屋では、ヒーターが正常でも設定水温に届かないことがあります。水槽の置き場所を暖かい部屋にする、あるいは水槽まわりを断熱するといった対策が必要です。ヒーターの故障を疑う前に、まず部屋の温度を測ってみてください。
ワット数は水量に対して選びます。小型水槽用のオートヒーター(設定温度固定タイプ)は手軽ですが、水量に対して出力が足りないと温まりきりません。逆に大きすぎると水温が上がりすぎることもあります。適正な組み合わせはベタ用ヒーターを水量別のワット数で整理した記事にまとめてありますので、水槽サイズが決まったら照らし合わせてみてください。
そして水温計。地味ですが、これがないと立ち上げの判断ができません。設定温度どおりに温まっているか、日中と夜間で差が出ていないかを見るのは水温計の役目です。ヒーターとセットで必ず用意してください。
水温計にはいくつか種類があります。ガラス製の棒状タイプは安価で読み取りやすい反面、割れることがあります。デジタル式は数字で読めて見やすく、水槽の外から確認できるタイプもあります。水槽の壁に貼るシール式は場所を取りませんが、精度は参考程度と考えたほうがいいでしょう。立ち上げ中は数値の推移を追いたいので、読み取り誤差の小さいものを選ぶと判断しやすくなります。
ヒーターの設定温度と実際の水温がずれることは珍しくありません。センサーの位置、水流の当たり方、部屋の温度などが影響するためです。だからこそ水温計を別に置いて、実測で確かめる意味があります。設置してすぐは温度が安定しないので、通電から半日ほど置いてから確認してください。
水温計は、水槽の外から数字で読めるデジタル式が確認しやすいです。一例を挙げておきますね。ガラスの棒状タイプでも役目は果たせますので、すでにお持ちならそれで十分です。大事なのは、ヒーターの表示ではなく実際の水温を見る手段をひとつ持っておくことです。仕様や表示範囲は製品によって違うので、購入前に各ショップでご確認ください。
ろ過と隠れ家は水流の弱さで選ぶ
ろ過は前述のとおり、止めるのではなく弱める方向で考えます。ベタ向けに扱いやすいのは、エアーの量を絞れるスポンジフィルターや、吐出口を工夫できる小型の外掛けフィルターですね。底面フィルターも水流が穏やかで、砂利全体がろ材になるという利点があります。
どのタイプを選ぶにしても、立ち上げの観点で大事なのはろ材の量を確保することです。バクテリアはろ材の表面に住み着くので、表面積が多いほど処理能力が上がります。小型水槽でも、可能な範囲でろ材が入るタイプを選んでおくと後が楽になります。
隠れ家も購入前に用意しておきたいものです。ベタは物陰で休む習性があり、隠れられる場所がないと落ち着きません。土管型のオブジェ、流木、水草などが定番ですね。水面近くに浮き草やベタ用のハンモックを置いてあげると、空気を吸いに上がったときに休憩できる場所になります。
底床は必須ではありませんが、敷くならバクテリアの住処が増えるという利点があります。ソイルは水質を弱酸性に傾けるタイプが多く、ベタの好む水質に近づけやすい反面(弱アルカリ性寄りの製品もあるので購入前に確認してください)、時間が経つと粒が崩れて交換が必要になります。砂利は扱いやすく長持ちしますが、フンが粒の間に溜まるので掃除の手間はかかります。何も敷かないベアタンクは掃除がいちばん楽で、その代わりバクテリアの住処はろ材だけに頼ることになります。掃除のしやすさと見た目の好みで決めてください。何を買えばいいのか全体像を確認したい場合は、ベタ飼育に必要なものを費用つきでリスト化した記事が買い物の下敷きになります。
最後に忘れがちなのがカルキ抜き(塩素中和剤)です。水道水に含まれる塩素はバクテリアにも魚にも有害なので、注水の前に必ず用意しておいてください。数百円のものですが、これがないと立ち上げそのものが始められません。
スポンジフィルターを選ぶなら、ろ材が入るタイプだとバクテリアの住処を確保しやすくなります。一例として、小型水槽向けで濾材とエアチューブが付属するものを挙げておきますね。エアポンプは別途必要になるので、手元にあるか確認してください。すでに水流を弱められるフィルターをお使いなら、無理に買い替える必要はありません。適合水量は製品によって違うので、購入前に各ショップでご確認ください。
ベタ水槽の立ち上げ手順と期間の目安
道具がそろったら、いよいよ水槽を立ち上げます。ここからは日を追って何が起きるのかを見ていきましょう。全体像がわかると、待つ時間の意味も理解できるはずです。
初日にやること|設置から注水まで
まず設置場所を決めます。直射日光が当たらず、エアコンの風が直撃せず、床や台が水平で安定している場所が理想です。水を入れた水槽は想像以上に重くなるので、10リットルなら本体と合わせて12キロ前後になります。置いてから動かすのは大変なので、場所は先に決めてください。
次に器具を設置します。底床を敷くなら、まず軽くすすいでから水槽に入れます。ソイルは崩れやすいので強く洗わないでください。続いてヒーター、フィルター、水温計を配置します。ヒーターは水の流れがある位置に置くのが基本で、流れのないところに置くとセンサーが正しく働かないことがあります。
そして注水です。水道水をバケツに汲み、カルキ抜きを規定量入れてよく混ぜます。水槽へ注ぐときは、底床を巻き上げないよう皿や手のひらを当ててゆっくり入れてください。水位はフチから数センチ下、飛び出し防止のために少し余裕を残します。
通電の前に、電源まわりも整えておきましょう。ヒーターとフィルターで最低2口、照明を使うならもう1口が必要になります。コードは水槽の水面より低い位置で一度たわませておくと、伝ってきた水がコンセント側へ流れ込みにくくなります。水槽の真下や真横に電源タップを置くのは避けてください。
最後に通電します。フィルターを動かし、ヒーターの電源を入れて、水温計が設定温度に近づいていくのを確認してください。ここで魚を入れないことが、この記事でいちばん大事なポイントです。水は入りましたが、まだバクテリアがいません。
から回しの間に水槽で起きていること

魚を入れずにフィルターを回し続ける期間を「から回し」や「空回し」と呼びます。この期間、水槽の中では目に見えない変化が進んでいます。
アンモニア源の入れ方も具体的に触れておきます。餌を使う場合は、飼う予定のベタ1匹分の量を目安に、2〜3日おきにひとつまみ落とします。多く入れればバクテリアが早く増えるわけではなく、分解が追いつかないぶん水が傷むだけなので、少量を継続するほうが安全です。市販のアンモニア源を使う場合は製品の指示量に従ってください。どちらも入れたら回収せず、そのまま分解に任せます。
流れはこうです。まずアンモニアが発生します。から回し中は魚がいないので、アンモニア源として餌をひとつまみ入れる、あるいは市販のアンモニア源を使う方法があります。次に、アンモニアを分解するバクテリアが増えて亜硝酸に変わります。亜硝酸もまだ有毒です。さらに別のバクテリアが増えて、亜硝酸が比較的無害な硝酸塩に変わります。ここまで来て、ようやく魚を迎えられる状態になります。
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| 時期の目安 | 水槽で起きていること | やること |
|---|---|---|
| 1〜3日目 | 器具が安定し、水温が落ち着く | 水温を確認する。アンモニア源を入れる |
| 1〜2週目 | アンモニアが増え、分解が始まる | 試薬で測れるなら記録する。水換えはしない |
| 2〜4週目 | 亜硝酸が増え、やがて減っていく | 数値の推移を見る。触りすぎない |
| 4週目以降 | アンモニアと亜硝酸がほぼ検出されなくなる | 硝酸塩が出ていれば完了の目安 |
期間は環境によって幅があり、一般的には数週間から1か月半程度が目安とされます。水温が高いほどバクテリアの働きは活発になるので、ベタ用に26〜28度を保っている水槽はむしろ有利な条件と言えます。から回しそのものの手順や疑問点はから回しのやり方と期間をまとめた記事で詳しく整理していますので、細かい判断に迷ったらそちらも参照してください。
立ち上げ完了をどう見極めるか
「何日経ったら完了」と日数で決めたくなりますが、実際は日数ではなく水の状態で判断します。同じ2週間でも、水温や環境によって進み方はまったく違うからです。
いちばん確実なのは水質検査試薬を使う方法です。アンモニアと亜硝酸がどちらも検出されず、硝酸塩が出ている状態なら、分解の流れが最後までつながったサインになります。試薬は数百円から千円台で手に入り、立ち上げ以降も水換えの判断に使えるので、持っておく価値はあります。
試薬には試験紙タイプと液体タイプがあります。試験紙は水に浸して色を見るだけで手軽ですが、細かい濃度の読み取りには向きません。液体タイプは試験管に水と試薬を入れて色を比べる方式で、手間はかかるものの精度が高くなります。立ち上げ中は「ゼロかどうか」を見たいので、判別しやすい液体タイプのほうが判断で迷いにくいです。測るタイミングは水換えの直前にそろえると、条件が同じになって推移を比べやすくなります。
もうひとつ覚えておきたいのが、立ち上げ完了はその水槽の今の負荷に対しての完了だという点です。から回しで処理できていたアンモニア量は、ベタが1匹入って餌を食べ始めると変わります。だから完了と判断した後も、最初の2週間は数値を見ておく必要があるわけですね。
試薬を使わない場合の手がかりもあります。水の透明度が上がった、器具のまわりにうっすらぬめりが出てきた、立ち上げ初期にあった濁りが消えた、といった変化ですね。ただしこれらは間接的なサインなので、確実性では試薬に劣ります。バクテリアの定着を見分ける具体的なポイントはバクテリアの確認方法を5つの角度から整理した記事にまとめてありますので、判断に迷ったら照らし合わせてみてください。
どうしても待てない事情がある場合は、市販のバクテリア剤を使う、あるいは既に稼働している水槽からろ材や飼育水を分けてもらうという方法もあります。ただし前者は製品や環境で結果に差が出ますし、後者は病気を持ち込むリスクがあります。近道には必ず代償があると考えて、可能なら素直に待つのが確実です。
立ち上げの完了を数字で確かめたいなら、アンモニアを測れる試薬があると判断がはっきりします。一例として、本文で触れた液体タイプのものを挙げておきますね。試験紙タイプならもっと手軽で安価に始められますが、ゼロかどうかを見分ける精度では液体タイプが有利です。手持ちの試薬で代用できるならそれで構いません。対応する水質項目や測定回数は製品によって違うので、購入前に各ショップでご確認ください。
ベタを迎える当日と最初の2週間
水槽の準備が整ったら、いよいよベタを迎えます。ここで最後の関門が水合わせです。
ショップの袋の中の水と、あなたの水槽の水は、水温も水質も違います。この差をいきなり越えさせると、魚に大きな負担がかかります。ジェックスの公式解説では、購入した魚を持ち帰ったとき、袋のまま水槽に30分ほど浮かべて袋の中の水温を水槽の水温に合わせ、そのあと袋を開けて水面で少しずつ水を混ぜていく手順が案内されています(出典:ジェックス公式サイト)。
ベタの場合、この手順に加えて意識したいのが照明です。移動でストレスを受けた直後に明るい環境へ移すと落ち着きません。導入した日は照明を控えめにして、そっとしておいてあげてください。
そして初日の餌は与えないのが基本です。環境が変わった直後の魚は食欲が落ちていることが多く、食べ残しが水を汚す結果になりがちです。翌日から少量ずつ様子を見て、食べきる量を探っていきます。
最初の2週間は、水槽がまだ完成していない期間だと考えてください。魚が入ったことでアンモニアの発生量が変わり、バクテリアの数がそれに追いつくまで時間差が生じます。この間は餌を控えめにして、週1回程度、水量の3分の1を目安に水換えをしながら様子を見ます。水質検査試薬があれば、アンモニアと亜硝酸が上がっていないかを確認しておくと安心です。
ベタの様子で見ておきたいのは、ヒレを広げているか、水面へ空気を吸いに上がる頻度が極端に増えていないか、餌に反応するか、といった点です。数日たっても物陰から出てこない、ヒレを畳んだままといった状態が続くなら、水温か水質、あるいは水流のどれかを疑ってください。落ち着いてきたら、水換えのペースを通常の運用へ移していきます。
ベタ水槽の立ち上げに関するよくある質問(FAQ)
水槽を用意した当日にベタを買ってきてはいけませんか?
おすすめできません。注水した直後の水槽にはバクテリアがほとんどおらず、餌を与え始めた時点からアンモニアが蓄積していきます。どうしても同日になる場合は、市販のバクテリア剤を併用したうえで餌を極力控え、こまめに少量の水換えを行うという運用になりますが、負担は大きくなります。可能なら数週間前から水槽だけ先に立ち上げておくほうが、結果的にベタにとっても飼い主にとっても楽です。
ろ過を入れずにベタを飼うことはできますか?
できないわけではありませんが、その分こまめな水換えが必要になります。ろ過がない環境ではバクテリアの住処が限られるため、水質の維持を人の手でまかなうことになるからです。小型容器なら数日に一度の水換えが前提になり、旅行や体調不良のときに対応が難しくなります。ろ過を入れておけば水換えの間隔を空けられるので、続けやすさという点では導入をおすすめします。
から回し中に水が白く濁ってきましたが大丈夫でしょうか?
立ち上げ初期の白濁はよく見られる現象で、バクテリアが急激に増えたときに起こることがあります。多くの場合は数日から1週間程度で落ち着きます。あわてて全部の水を換えると、増え始めたバクテリアまで捨てることになるので避けてください。濁りが長く続く、強いにおいがするといった場合は、アンモニア源を入れすぎている可能性があります。判断に迷うときは、購入した専門店にご相談ください。
ベタは小さな瓶で飼えると聞きましたが本当ですか?
物理的に飼えるかという意味では可能ですが、簡単という意味ではありません。水量が少ないほど水質も水温も急に変わるため、日々の管理の手間はむしろ増えます。ヒーターを入れられるサイズにも制約が出てきます。はじめてベタを飼うなら、置き場所に収まる範囲で水量を多めに取るほうが失敗しにくいです。飼育スタイル全体の考え方は、ベタの飼い方を水槽選びから餌まで通しでまとめた記事も参考にしてみてください。
立ち上げ中に水温は何度に設定しておけばいいですか?
ベタを迎えるときと同じ26〜28度に設定しておくのが合理的です。バクテリアは水温が高いほど活発に働くため、立ち上げの進行という意味でも有利になります。またベタを迎える当日に水温を合わせ直す必要がなくなり、水合わせの温度差も小さくできます。設定した温度どおりになっているかは、必ず水温計で確認してください。ヒーターの表示と実際の水温がずれることもあります。
まとめ|ベタ水槽の立ち上げは購入前に終わらせる
ここまで、ベタ水槽の立ち上げについて、他の魚と違う理由から当日の水合わせまでを整理してきました。最後に要点を確認しておきます。
ベタは空気呼吸ができるためエアレーションがなくても酸欠になりにくい魚です。ただし、酸素が足りることと水がきれいなことは別問題で、アンモニアを処理するバクテリアは他の魚と同じように必要になります。さらにベタは水流を嫌うので、ろ過は止めるのではなく弱める方向で選びます。
そして水量。小さな容器でも飼えるという情報は正しいのですが、水量が少ないほど水質も水温も振れやすくなり、立ち上げも日々の管理も難しくなります。はじめてなら10リットル前後を目安に、置き場所に収まる範囲でできるだけ大きい容器を選んでください。
手順としては、設置と注水を済ませてから数週間のから回しを行い、水質検査試薬でアンモニアと亜硝酸が検出されなくなったことを確認してからベタを迎えます。当日は水温を合わせてから少しずつ水を混ぜ、照明を落として初日の餌は与えません。最初の2週間は水槽がまだ完成していない期間と考えて、餌を控えめに、週1回程度の水換えで様子を見ます。
ベタを買ってから水槽を作るのではなく、水槽が動いている状態を作ってからベタを迎える。この順番を守るだけで、最初のつまずきはかなり減らせます。飼育環境や個体によって最適な条件は変わりますし、ここに挙げた数値はあくまで一般的な目安です。器具の仕様については正確な情報は公式サイトをご確認いただき、ベタの体調に不安があるときの最終的な判断は、購入した専門店や魚を診てもらえる動物病院など、専門家にご相談ください。準備を整えて、気持ちよくベタとの暮らしを始めてくださいね。




