アクアリウム(水槽飼育)に必須の持ち物完全ガイド
~初心者からベテランまで、失敗しないための全知識~
はじめに:アクアリウムの世界へようこそ
部屋の中に小さな生態系を創り出すアクアリウム。揺らめく水草、色鮮やかに泳ぐ魚たち、そして静かに流れる水の音。アクアリウムは単なる「魚の飼育」を超え、私たちの生活に癒やしと潤いを与えてくれる素晴らしい趣味です。
しかし、いざ始めようと思っても「何を買えばいいのか?」「どう維持すればいいのか?」と不安になる方も多いでしょう。この記事では、アクアリウムを始めるために必要なすべての持ち物から、長く楽しむためのノウハウ、便利なデジタルツールまで、圧倒的なボリュームで徹底解説します。
水槽本体と専用台
アクアリウムの土台となるのが水槽とそれを支える台です。ここを妥協すると、後々のトラブル(水漏れや落下の危険)に直結するため、慎重な選択が必要です。
水槽(ガラス・アクリル)
水槽の素材には主に「ガラス」と「アクリル」の2種類があります。それぞれの特性を理解して選びましょう。
| 素材 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| ガラス水槽 | 傷がつきにくい、透明度が長く維持される、安価なものから高級品まで豊富。 | 重い、衝撃に弱く割れる可能性がある、大型化すると非常に高価。 |
| アクリル水槽 | 軽い、衝撃に強く割れにくい、加工しやすいため大型水槽に向く。 | 傷がつきやすい(掃除で傷つく)、経年劣化で白濁することがある。 |
一般的に、60cm以下の標準的な水槽であれば、傷に強く鑑賞性に優れたガラス水槽がおすすめです。特にフレームレスの「オールガラス水槽」はデザイン性が高く人気です。
専用台の重要性
「普通のカラーボックスや机の上に置けばいいのでは?」と考えるのは非常に危険です。水槽は想像以上に重くなります。例えば、60cm規格水槽(約60リットル)の場合、砂利や器具を含めると総重量は70kg〜80kgにも達します。
- 水平の確保: 水平でない場所に置くと、特定の箇所に水圧が集中し、水槽の崩壊を招きます。
- 耐荷重: 一般的な家具は、長期間これほどの荷重を支えるようには設計されていません。
- 防水性: 専用台は水が跳ねても腐食しにくい加工が施されています。
注意: 必ずアクアリウムメーカーが販売している「水槽専用台」を使用してください。
ろ過フィルター
魚の排泄物や餌の食べ残しによって汚れた水を浄化するのが「ろ過フィルター」の役割です。これは魚の命を支える「心臓部」と言えます。
ろ過の3要素
- 物理ろ過: 糞やゴミをスポンジなどで直接取り除く。
- 生物ろ過: バクテリアの力を借りて、毒性の強いアンモニアを分解する(最も重要)。
- 化学ろ過: 活性炭などを用いて、水の濁りや臭い、黄ばみを吸着する。
フィルターの種類
-
- 外掛け式: 水槽の縁に掛けるタイプ。設置が簡単で小型水槽向け。
-
- 上部式: 水槽の上に置くタイプ。酸素供給能力が高く、金魚や肉食魚に最適。
-
- 外部式: 水槽の下に置く密閉型。静音性が高く、CO2を逃がさないため水草水槽に最適。
-
- 投げ込み式: エアーポンプに繋いで沈めるタイプ(通称:ロカボーイ等)。サブ用として優秀。
-
- 底面式: 底砂をろ材として利用する。非常に強力な生物ろ過が得られる。
メンテナンス用品(基本)
日常の管理を「楽」にすることが、アクアリウムを長続きさせる秘訣です。
水換え用ホース・プロホース
水換えは、サイフォンの原理を利用したホースを使います。特におすすめなのが、水作の「プロホース」シリーズです。砂利の中の汚れだけを吸い出し、砂利は水槽内に戻すことができるため、底床掃除と水換えが同時に行えます。
ネット(魚用網)
生体の移動や、浮いているゴミを取り除くために必要です。大きさの異なる2種類(魚用とゴミ取り用)を持っていると便利です。魚を掬う際は、魚の粘膜を傷つけないよう、網目の細かいソフトなものを選びましょう。
電源まわりとタイマー
水槽周辺は、ライト、ヒーター、フィルターなど多くの電化製品が集中します。
防滴電源タップ
水回りでの電源使用は常に漏電・火災のリスクが伴います。コンセント部分に水滴が侵入するのを防ぐカバー付きのものや、トラッキング防止機能がついた防滴電源タップの使用を強く推奨します。また、コードには必ず「たわみ」を作り、水滴がコードを伝ってコンセントに入らないように工夫してください(ドリップループ)。
照明用タイマー
ライトの点灯時間を一定に保つことは、魚の生活リズムを整え、コケの発生を抑制するために不可欠です。毎日手動でスイッチを入れるのは大変ですので、自動でオン・オフができるスマートプラグや、アナログ式のプログラムタイマーを導入しましょう。1日の照射時間は8〜10時間が目安です。
水質・温度管理ツール
魚は変温動物であり、周囲の水質に命を預けています。人間にとっての空気を管理するのと同じくらい重要です。
水温計
熱帯魚の適温は一般的に25℃〜26℃前後です。わずかな温度変化でも体調を崩すため、毎日確認できる位置に設置しましょう。デジタル式は見やすいですが、誤差が少ないのはアナログのアルコール水温計です。
水質テストキット(試験紙・試薬)
水が透明に見えても、目に見えない毒素(アンモニアや亜硝酸)が溜まっていることがあります。特に水槽立ち上げ初期は、試験紙を使ってこれらの数値をこまめにチェックしましょう。pH(ペーハー)値を知ることも、飼育できる魚種を決める上で重要です。
カルキ抜き(粘膜保護剤)
日本の水道水には消毒用の塩素(カルキ)が含まれており、これは魚のエラに深刻なダメージを与えます。水換えの際は必ずカルキ抜き剤を使用しましょう。最近では、カルキを抜くだけでなく、魚の粘膜を保護する成分が含まれたものが主流です。
生体のための常備薬・調整剤
魚が病気になってから薬を買いに行っても、間に合わないことがあります。最低限の常備薬を揃えておくのが飼い主の責任です。
病気治療薬(グリーンF、メチレンブルー等)
代表的な病気である「白点病」や「尾ぐされ病」に対応できるよう、以下の成分を含む薬をストックしておきましょう。
-
- メチレンブルー: 白点病、水カビ病などに。
-
- グリーンFゴールド顆粒: 細菌性感染症(尾ぐされ、穴あき病)に効果的。
-
- アグテン: 水草が入ったまま使えるため、初期の白点病に便利。
塩(人工海水・あら塩)
「塩浴(えんよく)」は、魚の自己治癒力を高める最も基本的な治療法です。0.5%程度の濃度で塩分を加えることで、魚の浸透圧調整を助けます。食塩ではなく、ミネラルを含む「あら塩」や、アクアリウム専用の塩を使用してください。
粘膜保護剤
移動時のストレスや、水換えによる環境変化から魚を守るために、魚の体表の粘膜を補強する調整剤(エーハイム 4in1など)を水換え時に添加すると病気の予防になります。
バクテリア剤
水槽を立ち上げたばかりの時は、水を浄化するバクテリアが不在です。市販のバクテリア剤を投入することで、生物ろ過の立ち上がりを早め、魚が死んでしまうリスクを大幅に下げることができます。
アクアリウムを成功させる秘訣は、最初から「命を守るためのインフラ」をケチらないことです。特に水槽台、フィルター、カルキ抜きは、その後の飼育の難易度を大きく左右します。
その他メンテナンス用具
基本セットに加えて、持っていると劇的に作業効率が上がる、あるいはトラブルを未然に防げる用具について解説します。
水槽専用バケツ
「バケツなんて家にあるものでいい」と考えがちですが、アクアリウムにおいては「水槽専用」にすることが鉄則です。理由は、家庭用バケツには洗剤の成分や他の化学物質が残留している可能性があり、それが微量でも魚にとって致命毒になることがあるからです。
- サイズ選び: 10リットル〜12リットル程度のものが扱いやすく、水換えの計量もしやすいです。
- 注ぎ口: 注ぎ口が尖っているタイプは、水槽に水を戻す際に水流をコントロールしやすく、レイアウトを崩しません。
- 目盛り付き: 薬浴やカルキ抜きの計算に不可欠です。
コケ取り用スクレーパー・スポンジ
水槽の壁面に付着するコケは、鑑賞性を著しく下げます。コケの種類に応じて道具を使い分けましょう。
-
- メラミンスポンジ: 軽い茶ゴケや緑のスポット状のコケに有効。ガラス面を傷つけにくく、非常に綺麗になります。
-
- スクレーパー(刃付き): 頑固なヒゲ状のコケや、石灰藻などを削り取るのに使います。ステンレス製の長い柄がついたものは、手を濡らさずに作業できるため重宝します。
-
- マグネットクリーナー: 外側から磁石で操作するタイプ。日常的な「ついで掃除」に最適ですが、砂を噛んでしまうとガラスに傷がつくので注意が必要です。
アクアリウムを快適・便利にするアイテム
ここでは、必須ではないものの、導入することで管理が格段に楽になり、魚たちの生活の質(QOL)を向上させるアイテムを紹介します。
自動給餌器(オートフィーダー)
旅行や出張で数日間不在にする際の必須アイテムですが、普段使いにもメリットがあります。毎日同じ時間に正確な量を与えることで、魚の体調管理が安定し、餌のやりすぎによる水質悪化を防げます。最近ではスマホ連携モデルも登場しており、外出先から給餌の様子を確認できるものもあります。
エアーポンプ(ぶくぶく)
フィルターだけでは酸素供給が不十分な場合や、夏場の高水温時に溶存酸素量が低下するのを防ぐために使用します。また、薬浴中はバクテリアがダメージを受けたり、薬の成分で酸素が消費されやすいため、エアーポンプによる曝気(ばっき)が強く推奨されます。静音性にこだわったモデル(水作「水心」など)を選ぶのがストレスを溜めないコツです。
ピンセット・トリミングバサミ(水草用)
水草を楽しむなら、専用の長いピンセットとハサミは必須です。家庭用の短いものでは、奥まった場所に植栽できず、作業のたびに肩まで水に浸かることになります。
-
- ピンセット: 先が細く、バネが柔らかいものが疲れにくいです。
-
- カーブバサミ: 前景草(芝生のように広がる水草)をカットする際、地面に沿って切れるため非常に便利です。
底砂・ソイル
水槽の底に敷く砂は、単なる飾りではなく、バクテリアの住処であり、水質を決定づける要因です。
| 種類 | 特徴 | 向いている魚・環境 |
|---|---|---|
| 大磯砂 | 最も一般的。半永久的に使え、水質を弱アルカリ性に傾ける。 | 金魚、メダカ、グッピー、アフリカンシクリッド |
| ソイル | 土を焼き固めたもの。水質を弱酸性に保ち、栄養が豊富。 | 熱帯魚全般、水草、ビーシュリンプ |
| 化粧砂 | 白い砂や細かい砂利。鑑賞性が高く、水質への影響が少ない。 | コリドラス(砂を掘る魚)、デザイン重視の水槽 |
水槽用ライト(LED)
現在の主流はLEDライトです。昔の蛍光灯に比べて省エネで寿命が長く、非常にスリムです。水草を育てる場合は、植物の光合成に必要な「赤色」や「青色」の波長が含まれた、高光量のモデルを選びましょう。タイマー内蔵で、夜明けや夕暮れを再現する調光機能付きのものも人気です。
餌(フレーク・赤虫・沈下性など)
魚種に合わせて最適な餌を選びましょう。
-
- フレークタイプ: 水面に浮きやすく、多くの魚が食べやすい。
-
- 顆粒・ペレット: 栄養価が高く、中層や低層にいる魚向けに沈下性のものもある。
-
- 冷凍赤虫: 嗜好性が極めて高く、痩せている魚の体力回復や、人工飼料を食べない魚に。
-
- タブレット: コリドラスやプレコなど、底で生活する魚専用。
水草用肥料
水草も生き物ですので、光とCO2だけでなく栄養が必要です。底砂の中に埋め込む「固形肥料」と、飼育水に直接垂らす「液体肥料」があります。コケの発生状況を見ながら、窒素・リン・カリウムのバランスを考えて添加するのがプロへの第一歩です。
アクアリウムに役立つアプリ・ツール

デジタルツールで管理をラクにする
現代のアクアリウムはデジタル技術を駆使することで、より科学的かつシステマチックに管理できます。
魚種識別アプリ
ショップで見かけた綺麗な魚の名前がわからない時や、病気の特徴を調べたい時に役立ちます。「Picture Fish」などのアプリは、写真を撮るだけでAIが魚種を特定し、その魚の好む水質や飼育難易度を教えてくれます。

水槽管理ログアプリ
「いつ水換えをしたか」「前回のpHはいくらだったか」を記憶に頼るのは限界があります。水槽管理専用のアプリ(または汎用のカレンダー・ノートアプリ)を使い、以下の項目を記録しましょう。
- 水換えの日付と量
- 水質測定の結果(pH, アンモニア, 硝酸塩など)
- 生体の追加や死亡の記録
- 機材のメンテナンス(フィルター掃除、ライト交換)
これにより、トラブルが起きた際の原因特定が劇的に早くなります。

SNS(Instagram/X:情報収集用)
アクアリウムは孤独な趣味になりがちですが、SNSには膨大な「生の情報」があります。ハッシュタグ「#アクアリウム」「#水草水槽」などで検索すると、最新のレイアウトトレンドや、新発売の器具のレビュー、さらには病気の対処法をベテラン飼育者に相談することも可能です。ただし、情報の取捨選択には注意が必要です。
水草図鑑サイト
水草は名前が似ていても、必要とする光量やCO2量が全く異なることがあります。購入前に「水草図鑑」などの専門サイトで、自分の水槽環境で育つかどうかを確認する癖をつけましょう。レイアウトの配置(前景・中景・後景)の参考にもなります。

コケ対策早見表
コケが発生した際、それが「富栄養化」なのか「光の当てすぎ」なのか「ろ過不足」なのかを判断するためのチャートをブックマークしておきましょう。原因に応じた対策(エビを入れる、換水頻度を上げるなど)を迅速に打つことが、水槽崩壊を防ぐ鍵です。

便利なアイテムやアプリを活用することは「手抜き」ではありません。むしろ、人間側の負担を減らすことで、より細かく魚たちの変化に気づけるようになり、結果として長期的な成功に繋がります。
水槽立ち上げ前に知っておきたいポイント
アクアリウムを始める際、器具を揃えることと同じくらい大切なのが「正しい知識」を身につけることです。ここでは、多くの初心者が陥りやすい罠と、長期維持のための鉄則を解説します。
日本の水質(軟水・硬水)と魚の相性
日本の水道水は、世界的にも珍しいほど清潔で飼育に適していますが、地域によって「硬度」が異なります。一般的に日本の水は「軟水」ですが、関東地方の一部や沖縄県など、石灰岩地帯を通る水は「中硬水」になることがあります。
- 軟水を好む魚: ネオンテトラ、ディスカス、エンゼルフィッシュなどの南米原産の熱帯魚。
- 硬水を好む魚: グッピー、プラティ、アフリカンシクリッド、金魚。
自分の住んでいる地域の水質を知るには、水道局のホームページを確認するか、前述のテストキットで総硬度(GH)を測ってみましょう。 水質に合わない魚を飼うと、色が揚がらなかったり、病気にかかりやすくなったりします。 なお、底床や石などのレイアウト素材が硬度(GH/KH)やpHに影響するケースもあるため、 100均の石が水質(硬度・pH)に与える影響と安全な下処理 もあわせて確認しておくと安心です。
電気代の目安と節電対策
アクアリウムは24時間365日電気を消費します。標準的な60cm水槽(ヒーター、LEDライト、フィルター使用)の場合、月々の電気代は約1,000円〜2,000円程度が目安です。その大部分を占めるのが「ヒーター」です。
節電のコツ:
- 水槽の周りに断熱材(アルミシートやスタイロフォーム)を貼る。
- 冬場は部屋自体の温度を一定に保つ(エアコンの方が効率が良い場合がある)。
- LEDライトの照射時間をタイマーできっちり管理する。
ヒーターの電気代は環境で変動しやすいので、具体的な考え方や節電の工夫は ヒーター導入時の電気代と断熱による節電の考え方(必要なものガイド) も参考になります。
魚の導入手順(水合わせ)
ショップから買ってきた魚をいきなり水槽に放り込むのは厳禁です。これを「pHショック」や「温度ショック」と呼び、最悪の場合数時間で死に至ります。
- 温度合わせ: 袋のまま水槽に30分ほど浮かべ、水温を同じにします。
- 水合わせ: 袋の水を半分捨て、水槽の水を少しずつ(カップ1杯程度)数回に分けて加えます。
- 点滴法: 非常にデリケートな魚やエビの場合、エアチューブとクランプを使って、ポタポタと数時間かけて水を混ぜる「点滴法」が理想的です。
重要: ショップの袋の水には病原菌や薬品が含まれている可能性があるため、魚だけを網ですくって入れ、袋の水は捨てましょう。
点滴法の具体的な手順は、 点滴法で失敗しない水合わせのやり方(ヤマトヌマエビ例) が分かりやすいです。
水槽設置のマナー(床の耐荷重・耐震)
日本の一般的な住宅(木造・賃貸)の床耐荷重は、建築基準法で1平方メートルあたり約180kgと定められています。60cm水槽なら問題ありませんが、90cm水槽以上(総重量200kg超)を設置する場合は、床の補強が必要になることがあります。
- 耐震対策: 水槽の下に「耐震マット」を敷く、水槽台を壁に固定するなどの対策は必須です。
- 水漏れ対策: 賃貸の場合は、階下への漏水トラブルに備え、水槽設置に対応した個人賠償責任保険への加入を確認しましょう。
まずは重量の目安を把握したい場合は 60cm水槽の重さ・水量と設置時の落とし穴 を、90cm以上の床補強の考え方は 90cm水槽の水量と床補強(荷重分散)の考え方 が参考になります。
生物ろ過(バクテリア)の仕組み
アクアリウムで最も重要な概念が「窒素サイクル」です。魚が排泄する有害なアンモニアを、バクテリアが比較的無害な物質に変えてくれる仕組みです。
- 魚の排泄物・餌の残り → アンモニア(猛毒)が発生。
- ニトロソモナス属のバクテリアが、アンモニアを亜硝酸(毒)に分解。
- ニトロバクター属のバクテリアが、亜硝酸を硝酸塩(ほぼ無害)に分解。
- 溜まった硝酸塩を水換えで体外(水槽外)へ排出する。
水槽をセットしてすぐには、これらのバクテリアがいません。最初の1ヶ月は「バクテリアを育てる期間」と考え、魚の数を最小限に抑えるのが成功のコツです。
立ち上げ初期の具体的な進め方は、 水槽立ち上げ「から回し」のやり方と期間(窒素サイクルの基礎) を参照すると、失敗の回避に役立ちます。
生体の混泳相性(ケンカさせないために)
「見た目が可愛いから」と混ぜて飼うと、水槽内が戦場になることがあります。
- サイズ差: 「口に入るサイズのものは餌」というのが魚の世界のルールです。
- 縄張り意識: スマトラやシクリッドの仲間は気が強く、他の魚を追い回すことがあります。
- 泳ぐ層を分ける: 上層(ハチェットなど)、中層(テトラなど)、下層(コリドラスなど)と分けることで、衝突を避けることができます。
「追いかけ回す=全部ケンカ」とは限らず、求愛行動の可能性もあるため、 ケンカと求愛の見分け方と対策(追いかけ回す理由) も確認しておくと判断がしやすくなります。
コケが発生する原因と対策
コケは「光・栄養・時間のバランス」が崩れた時に発生します。
| 主な原因 | 具体的な対策 |
|---|---|
| 光の当てすぎ | 照射時間を8時間以内に減らす。直射日光を遮るカーテンを設置する。 |
| 餌のやりすぎ | 数分で食べ切れる量にする。1日1回に減らすか、絶食日を作る。 |
| 生体数が多すぎる | 水槽サイズに見合った数に調整する。ろ過フィルターを強化する。 |
| 水換え不足 | 蓄積した硝酸塩を排出するため、水換えの頻度や量を増やす。 |
また、ヤマトヌマエビやオトシンクルス、石巻貝などの「コケ取り生体」を、コケがひどくなる前から予防的に導入しておくのがスマートな方法です。
コケの種類(例:茶ゴケ)によって原因やNG対策が変わるので、 水槽の茶ゴケが大量発生する原因とやってはいけない対策 を読んでおくと、遠回りを防げます。導入する生体選びは 水槽コケ取り生体の選び方(ランキング形式で得意分野を整理) が役立ちます。
水換えの頻度と量
「水が汚れたら換える」のではなく、「汚れ(硝酸塩)が溜まる前に換える」のが正解です。 目安は「1週間に1回、全体の1/3〜1/4」です。一度に全ての水を換えてしまうと、せっかく定着したバクテリアにダメージを与え、水質が急変して魚がショック死してしまいます。
「3分の1」交換の考え方や、水槽サイズごとの調整の目安は 水換えの頻度と失敗しない基本手順(3分の1交換の黄金則) を参考にしてください。
長期不在時(旅行など)の対応
2〜3日の不在であれば、餌を与えなくても魚は平気です。むしろ、不在前に多めに餌を与える方が、水質悪化を招き危険です。1週間以上の場合は、オートフィーダー(自動給餌器)を使い、照明はタイマー管理に任せましょう。
緊急時の停電対策
停電で最も怖いのは「酸欠」と「冬場の水温低下」です。
- 電池式エアーポンプ: 停電を検知して自動で動くタイプがあれば安心です。
- 使い捨てカイロ: 冬場は水槽の周りに貼り、毛布でくるむことで数時間は温度を維持できます。
生体・用品の購入・情報サイト

生体・用品の購入先の使い分け
アクアリウム用品や生体を購入する際、どこで買うかは非常に重要です。価格、品質、そしてアフターフォローの観点からおすすめのショップやブランドをご紹介します。
チャーム(charm)
日本最大級のペット・ガーデニング・アクアリウムの通信販売サイトです。アクアリストでその名を知らない人はいないほどの存在です。
- 圧倒的な品揃え: 数十円の消耗品から数十万円の大型水槽まで、ほぼすべてのメーカー品が揃います。
- 生体の輸送技術: 魚や水草を通販で買うことに抵抗がある方も多いですが、チャームのパッキング技術は非常に高く、冬場はカイロ、夏場は保冷剤を同梱し、万全の状態で届きます。
- レビューの宝庫: 実際に使用したユーザーの口コミが多く、機材選びの参考になります。
Amazon(アクアリウムカテゴリ)
日用品のついでに買える利便性が魅力です。特に、中国メーカーの安価で高性能なLEDライトや、汎用的な消耗品(ウールマット、活性炭など)を安く手に入れるのに適しています。ただし、生体に関しては専門性が低い出品者もいるため、発送元をよく確認しましょう。
アクアデザインアマノ(ADA)
世界的な写真家でありアクアリストでもあった故・天野尚氏が設立したブランドです。「ネイチャーアクアリウム」という独自の美学に基づいた製品群は、機能美に優れ、インテリアとしても最高峰です。
※注意: ADA製品は基本的に「対面販売」を原則としており、ネット通販では購入できません。正規特約店(プロショップ)に足を運んで購入する必要がありますが、その分、店主から専門的なアドバイスを受けることができます。
近隣の熱帯魚専門店(ショップ検索)
ネット通販は便利ですが、近所の実店舗(ショップ)を持つメリットは計り知れません。
- 実物を確認できる: 魚の健康状態、水草の茂り具合を自分の目で見て選べます。
- 「生の情報」が得られる: その地域の水道水の性質や、流行っている魚、トラブルの相談などができます。
- 緊急時に助かる: ヒーターが壊れた、薬が切れたといった緊急時に、その日のうちに駆け込める場所があるのは心強いものです。
水槽の設置場所:最終チェックリスト

設置前の最終チェック(リスク管理)
一度水を張った水槽を移動させるのは、魚にとっても人間にとっても重労働であり、リスクも伴います。設置前に以下の項目を必ずチェックしてください。
1. 耐荷重の確認
前述の通り、水槽は非常に重くなります。床の補強が必要ないか、古い日本家屋の場合は根太(床を支える横木)の位置を確認し、その上に置くようにしましょう。
2. 日光の影響(コケ対策)
直射日光が当たる場所は避けましょう。太陽光は照明よりも遥かにエネルギーが強く、爆発的なコケの発生や、夏場の異常な水温上昇を招きます。できるだけ部屋の北側や、カーテンで遮光できる場所を選んでください。
3. 電源の確保
フィルター、照明、ヒーター、クーラー、エアポンプ……水槽1つにつき4〜6個のコンセントが必要になります。壁のコンセントから近い場所を選び、タコ足配線にならないよう防滴タップを活用しましょう。
4. 水換えの動線
「水道から水槽までの距離」は重要です。バケツを持って何度も往復するのは腰への負担が大きくなります。近くにシンクがあるか、あるいは長いホースを引ける経路を確保しておきましょう。
5. 音の問題
寝室に設置する場合、エアーポンプの振動音や、フィルターの落水音が気になることがあります。静音性の高い器具を選ぶか、音が反響しにくい場所に設置する工夫をしてください。
リスク管理:水漏れ・火災保険の確認

さあ、アクアライフを始めましょう
アクアリウムを趣味にする上で、無視できないのが「万が一」への備えです。
- 水漏れ事故: 地震による転倒や、水槽の経年劣化による破損。集合住宅の場合、階下への損害賠償は数百万円にのぼることもあります。
- トラッキング現象による火災: コンセントに溜まったホコリが湿気を吸い、発火する現象です。
- 火災保険の「個人賠償責任特約」が付帯しているか確認しましょう。多くの場合、特約で水漏れ事故もカバーされます。
- 定期的にコンセント周りのホコリを掃除し、水槽にはフタをして湿気が上がらないようにします。
- 10年以上使用している水槽は、見た目が綺麗でもシリコンの寿命が来ている可能性があるため、買い替えを検討しましょう。
素敵なアクアライフを楽しみましょう!
アクアリウムに正解はありません。100人の飼育者がいれば、100通りの水槽があります。
最初は失敗することもあるかもしれません。魚が死んでしまったり、コケだらけになってしまったり。
しかし、それを乗り越えて、自分の水槽の中に一つの「世界」が完成した時の感動は、何物にも代えがたいものです。
毎日の給餌の際、魚たちがあなたに寄ってくる姿。新芽を出した水草から立ち上る酸素の気泡。
そんな小さな命の営みに触れることで、あなたの日常がより豊かになることを願っています。
さあ、あなただけの「癒やしのオアシス」を創り始めましょう!
