水槽の水温計が壊れる?症状と対策、おすすめの選び方
こんにちは。THE AQUA LAB、運営者の「所長」です。
ふと水槽を見たとき、表示されている温度がおかしい、あるいはアナログ水温計の赤い液が途切れているといった経験はないでしょうか。水温は魚や水草の命に関わる重要なパラメータですが、意外と水温計のトラブルや捨て方、精度の確認方法については知られていないことが多いです。故障かなと思ってすぐに捨ててしまう前に、実は簡単に直せるケースもありますし、逆に放置すると危険な状態も存在します。デジタルとアナログの違いや寿命を含め、正しい知識を持つことが大切です。
- 水温計の「液切れ」を自分で直す安全な手順
- 万が一破損して中身が漏れた際の緊急対処法
- デジタルとアナログそれぞれの故障サインと寿命
- トラブルを防ぐための最適な設置場所と選び方
水槽の水温計が壊れる主な症状と原因
「壊れた!」と思う瞬間は人それぞれですが、実は故障ではないケースも多々あります。ここでは、よくあるトラブルの症状別に、それが本当に故障なのか、どう対処すべきメカニズムなのかを解説していきます。
赤い線が切れた液切れの直し方
アナログ水温計を使っていると、赤い線(感温液)が途中でプツンと切れて、離れ離れになってしまうことがあります。これは「液切れ」と呼ばれる現象で、この状態を見ると「もう壊れたから捨てよう」と考える方が非常に多いのですが、実はこれ、故障ではありません。

液切れは故障ではない(NG対処あり)
液切れは、物理的な「故障」ではなく、修正可能な「現象」です。主に輸送中の激しい振動や、設置場所の急激な温度変化(エアコンの風が直撃するなど)によって、管の中の液体の結合が解け、その間に微細な気泡が入り込むことで発生します。気泡が入ると、その体積の分だけ液柱が押し上げられるため、表示される温度が実際よりも2℃〜5℃ほど高く表示されてしまうのが特徴です。「水温が急に上がった!」と焦ってヒーターを切る前に、まずは液切れしていないかよーく観察してみてください。
おすすめの修復方法:冷却法
では、どうすれば直るのか。ネット上には「お湯につける」とか「体温計のように振る」といった情報もありますが、私が最も推奨する、安全かつ確実な方法は「冷却法」です。

冷蔵庫で直す「冷却法」5ステップ
- 水温計を水槽から取り出し、水分を拭き取ります。
- そのまま冷蔵庫(症状が重い場合は冷凍庫)に入れます。
- 30分〜1時間ほど放置し、中の赤い液体が下の「液溜まり(球部)」まで完全に縮こまるのを待ちます。
- 全ての液体が液溜まりに戻った状態で、垂直に立ててトントンと軽く指で叩き、入り込んだ気泡を上部に逃がします。
- ゆっくりと室温に戻し、液柱が一本に繋がったまま上昇することを確認します。
この方法の最大のメリットは、ガラスに無理な力をかけないことです。液体の「冷やすと縮む」という性質だけを利用しているので、破損のリスクが極めて低いです。
逆にお湯につけて気泡を押し出す「加熱法」は、うっかり限界温度(50℃など)を超えてガラス管を破裂させる事故が多いので危険です。また、手首のスナップで振る「遠心力法」も、水槽用の水温計は医療用体温計ほど頑丈ではないため、ポキっと折れたり、周囲の家具にぶつけたりするリスクが高いです。私は過去にこれで一本無駄にしたことがあるので、絶対におすすめしません。
割れて赤い液が出た時の対処法
掃除中に手が滑ったり、大型魚が暴れて体当たりしたりして水温計を割ってしまった場合、水槽内にガラス片と「中の赤い液体」が散乱することになります。この時、真っ先に頭をよぎるのは「この赤い液は毒じゃないのか?魚は死なないのか?」という恐怖ですよね。

破損時の赤い液の正体と本当の危険
赤い液の正体と毒性について
まず落ち着いてください。現在、アクアリウム用として流通しているほとんどの水温計の「赤い液」は、かつて使われていた猛毒の水銀ではありません。その正体は、着色された「灯油(白灯油)」または「アルコール」です。
これらは、水槽内に漏れ出したからといって、瞬時に魚が全滅するような即効性の致死毒ではありません。しかし、だからといって「無害」かというと、そうでもないのが厄介なところです。
- 灯油の場合:水に溶けずに水面へ浮かび上がり、ギラギラとした油膜を作ります。これがエラに張り付くと魚が呼吸困難になったり、水面からの酸素供給を阻害したりします。
- アルコールの場合:水に溶け込んでしまいます。濃度が薄ければバクテリアが分解してくれますが、小型水槽で大量に漏れると、魚が酩酊状態(泳ぎがおかしくなる)になったり、粘膜が荒れたりします。
緊急対応プロトコル
もし割ってしまったら、以下の手順で冷静に対処しましょう。
- 機材の停止:まずフィルターとエアレーションを止めます。水流に乗ってガラス片や油分が水槽全体に拡散するのを防ぐためです。
- 生体の隔離:魚をバケツや予備水槽に避難させます。この際、網ですくう時にガラス片を一緒にすくわないよう、慎重に行ってください。
- ガラス片の除去:目に見える大きな破片はピンセットで取り除きます。厄介なのは砂利の中に潜った微細な破片です。これらはプロホース(底砂掃除用のポンプ)を使って、周辺の砂ごと吸い出して廃棄するのが一番安全です。(参考:プロホースなど底砂クリーナーの正しい使い方)「もったいない」と思わず、そのエリアの砂は捨てる覚悟が必要です。
- 油分の処理:水面に浮いた油膜は、キッチンペーパーを浮かべて吸着させるか、計量カップなどを静かに沈めて表面の水だけを吸い取るように排水します。処理が落ち着いたら、酸素供給のために水面を揺らす運用も重要です。(参考:油膜を防ぐためのエアレーションの考え方)
- 化学濾過の活用:大量の換水を行った後、仕上げとしてフィルターに「活性炭」を投入してください。活性炭は水に溶け込んだ色素や有機溶剤を吸着する能力に長けているため、残留成分の除去に非常に効果的です。
実は液体以上に怖いのが、水温計の底に入っている「鉛の粒(重り)」や「固定用の赤いワックス」です。これらは魚にとってエサに見えやすく、誤って食べてしまうと腸閉塞や鉛中毒を引き起こします。液体よりも、これら固形物の回収を最優先で行ってください。

液体より危険な「鉛の粒」
デジタル水温計の故障と寿命
デジタル水温計は、パッと見て数字が分かる視認性の良さが魅力ですが、機械的な構造ゆえに「突然死」するリスクを常に抱えています。アナログ式が物理現象を利用しているのに対し、デジタル式は電気抵抗の変化を計算している精密機器です。そのため、水槽周りという過酷な環境下では、どうしても寿命は1年〜2年程度と短い傾向にあります。

デジタル水温計の「突然死」リスク
水槽周りは電子機器の墓場
なぜデジタル水温計はよく壊れるのでしょうか。最大の敵は「湿気」と「塩分」です。
本体が防水仕様でない場合、水槽からの蒸発やエアレーションの飛沫が内部の基板に侵入し、回路を腐食させます。特に海水水槽の場合は、塩分を含んだ湿気が入り込むため、腐食のスピードは倍増します。また、センサーコード(プローブ)の付け根も弱点です。コードの被覆材が経年劣化で硬化し、目に見えないひび割れから水が毛細管現象で内部に吸い上げられ、断線を引き起こすのです。
故障のサインを見逃さない
完全に画面が消える前に、以下のような前兆が現れることが多いです。
- 表示の欠け:「8」の字の一部が消えて読み取れなくなる。
- 数値の乱高下:水温は一定のはずなのに、25.0℃→28.5℃→24.0℃のように数値がパラパラと変わる。
- エラーコード:「HH(High)」「LL(Low)」「Er(Error)」といった表示が出っ放しになる。
画面が薄くなってきたらまずは電池交換を試みますが、それでも直らない場合や、新品の電池を入れてもすぐに切れる場合は、内部回路のショートや漏電が疑われます。「もしかして故障?」と思ったら、粘らずに新しいものに買い替えることを強くおすすめします。数百円〜千円程度の出費を惜しんで、誤った水温表示を信じ続ける方が、生体にとっては遥かに大きなリスクだからです。
温度の精度が狂う原因と確認方法
「ヒーターの設定は26℃なのに、水温計は24℃を指している。どっちが正しいの?」 これはアクアリストなら誰もが一度は直面する悩みです。水温計を信じてヒーター設定を上げるべきか、それとも水温計が壊れているのか。この判断を誤ると、茹で魚事故や低水温症を招きます。

許容誤差と0℃チェック(熱湯NG)
なお、ヒーターが「設定温度固定」なのか「温度可変」なのかで、起こりやすい勘違いや対処も変わります。仕組みが曖昧な方は、オートヒーターと温度可変式ヒーターの違いも一度整理しておくと判断が楽になります。
精度(許容誤差)という壁
まず知っておくべきは、どんなに高級な水温計にも必ず「許容誤差」が存在するということです。一般的なアクアリウム用水温計の精度は、パッケージの裏面を見ると「±1.0℃」や「±1.5℃」と書かれています。
これはつまり、実際の水温が「25.0℃」だった場合、水温計Aが「24.0℃」を示し、水温計Bが「26.0℃」を示したとしても、どちらも「正常品」の範囲内だということです。この2本を並べると2℃の差があるため、ユーザーから見れば「どちらかが壊れている!」と感じますが、メーカーの仕様上は故障ではありません。
家庭でできる「0℃校正」チェック
では、自分の水温計が大きく狂っていないか、どうやって確かめれば良いのでしょうか。最も信頼性が高く、家庭で安全にできるのが「氷水を使った0℃チェック」です。
- コップや魔法瓶に、細かく砕いた氷を隙間なくぎっしりと詰め込みます。
- 氷がひたひたになる程度まで冷水を注ぎます。
- マドラーでよくかき混ぜ、氷と水が共存している状態にします。この状態(固液共存)の氷水は、物理的に大気圧下でほぼ正確に「0℃」になります。
- 水温計のセンサー部分を氷水の中央に差し込み、約1分間待ちます。
- この時の表示が「-1℃〜+1℃」の範囲内であれば、その水温計は実用上問題ない精度を持っていると判断できます。
沸騰したお湯(100℃)で測る方法も理屈としては正しいですが、多くのアクアリウム用水温計の上限温度は50℃〜60℃程度です。熱湯に入れると、アナログ式ならガラスが破裂し、デジタル式ならセンサーが熱破壊される恐れがあります。絶対に熱湯でのチェックは行わないでください。
故障した水温計の正しい捨て方
故障した、あるいは古くなった水温計を処分する際、適当にゴミ箱へ放り込んでいませんか?実は水温計の種類や中身によって、環境への配慮や法的なルールが異なります。後でトラブルにならないよう、正しい分別方法を知っておきましょう。
| 種類 | 主な素材・中身 | 一般的な捨て方の区分 |
|---|---|---|
| アナログ式(赤液・青液) | ガラス、灯油、アルコール | 一般的には「不燃ゴミ」や「キケンごみ」。新聞紙や厚紙で包み、「ワレモノ」「水温計」と明記して出します。 |
| アナログ式(銀液) | ガラス、水銀 | 【重要】絶対にごみ集積所に出してはいけません。自治体の回収ボックスや窓口へ。 |
| デジタル式 | プラスチック、金属、基板 | 「小型家電」または「不燃ゴミ」。内部に希少金属が含まれるため、小型家電回収ボックスの利用が推奨されます。電池は必ず抜いてください。 |
水銀体温計・温度計の特別ルール
特に注意が必要なのは、古い学校の実験用温度計や、実家の倉庫から出てきたような古い製品です。もし液体が「銀色」であれば、それは神経毒性を持つ水銀です。これを燃えるゴミや不燃ゴミに混ぜて焼却炉に入ってしまうと、気化した水銀が大気中に放出され、環境汚染を引き起こします。
水銀を使用した製品の廃棄については、環境省および各自治体が厳格な回収ルールを定めています。必ずお住まいの地域のルールを確認し、専用の回収ルートに乗せてください。
(出典:環境省『家庭から排出される水銀使用廃製品の分別回収について』)
水槽の水温計が壊れるリスクへの対策
水温計が壊れること自体は、形あるものとして避けられません。しかし、その結果として「魚が煮えてしまった(高水温事故)」「白点病が蔓延した(低水温)」という最悪の事態は、私たちの工夫次第で100%防ぐことができます。ここからは、リスクを最小限にするためのプロの運用術をお話しします。
故障に強いおすすめの水温計タイプ
結論から言うと、「絶対に壊れない水温計」は存在しませんが、「圧倒的に壊れにくいタイプ」は存在します。それは、電源を必要とせず、物理法則だけで動作する「アナログ水温計(ガラス管)」です。
アナログ水温計は、ガラスさえ割れなければ、10年経っても20年経っても、液体の熱膨張という物理現象に従って温度を示し続けます。電池切れもなければ、回路の腐食もありません。信頼性(Reliability)という点では、最強の計測機器と言えます。
一方、デジタル水温計は「視認性」と「機能性」に特化しています。最高・最低温度を記録してくれたり、大きな文字でパッと確認できたりする利便性は捨てがたいものがあります。しかし、前述の通り電子部品の寿命があるため、長期的な信頼性ではアナログに劣ります。それぞれの特性を理解し、自分の管理スタイルに合ったものを選ぶことが重要です。
正確に測れる水温計の設置場所
高い水温計を買っても、設置場所が間違っていれば全く意味がありません。水槽の水は一見止まっているように見えても、ヒーターの熱対流やフィルターの水流によって複雑に動いています。そのため、場所によって温度ムラ(サーマルクライン)が発生します。
よくある間違いが、「ヒーターの真横や真上」に設置してしまうことです。そこは温められた直後のお湯が上昇してくる場所なので、水槽全体の平均水温よりも明らかに高く表示されます。これを見て「水温が高すぎる」と勘違いし、設定温度を下げてしまうと、水槽の他の場所は冷え切ってしまうことになります。
最も推奨されるのは、ヒーターから一番離れた対角線上の位置で、かつフィルターの水流が程よく当たっている場所です。ヒーターから最も遠いこの場所が適温になっていれば、水槽全体に熱がしっかりと行き渡っているという証明になります。
逆に、水流が全くない岩陰や水草の茂みの中(淀み)に設置するのもNGです。水が循環していないため、ヒーターの熱が届かず、実際よりも低く表示されてしまいます。
デジタルとアナログの併用が最強

二刀流(冗長化)でリスク管理
これが今回、私が最も読者の皆さんに伝えたい核心部分です。生体を守るための究極のリスク管理、それは「デジタルとアナログの2本使い(冗長化)」です。
飛行機の計器システムと同じ考え方です。メインのシステムが故障しても、サブのシステムがあれば墜落を防げます。水槽も同じで、1本の水温計だけに命を預けるのはあまりにも危険です。
- 普段の運用:見やすいデジタル水温計をメインとして使い、毎日の餌やりのついでにパッと確認します。
- 監査の運用:週に一度の水換え時、あるいは「なんかおかしいな?」と違和感を感じた時に、水槽の隅に設置したアナログ水温計の数値を見ます。
もしデジタルが「25.0℃」を示しているのに、アナログが「28.0℃」を指していたら、「あ、どちらかが故障しているな」と即座に気づくことができます。これが1本だけだと、その数字が正しいのか、センサーが狂って嘘をついているのか、絶対に判断できません。数百円のアナログ水温計を一本追加するだけで、全滅のリスクを回避できるなら、これほどコストパフォーマンスの良い保険はないと私は思います。
信頼できるおすすめ水温計3選
最後に、私が長年アクアリウムを続けてきて、実際に使ってみて「これは信頼できる」と感じた水温計を、それぞれのタイプ別にピックアップしてご紹介します。

信頼できる水温計3選(アナログ+デジタル)
1. エヴァリス きっちり計れる水温計(アナログ)
その名の通り、精度にとことんこだわった日本製のアナログ水温計です。多くの水温計が±1.5℃程度の誤差を許容する中、この製品は実測値に近い高精度を維持しています。特に「Sサイズ」などの小型モデルも展開されており、邪魔になりません。私はこれをデジタルの数値を疑うための「基準機(マスター)」として、必ず水槽の目立たない場所に常設しています。
2. ニチドウ マルチ水温計H(デジタル)
この製品の最大の武器は「メモリー機能」です。リセットボタンを押してから現在までの「最高水温」と「最低水温」を記録してくれます。「夜寝ている間にヒーターが故障して冷え込んでいないか?」「昼間の日差しで水温が上がりすぎていないか?」といった、人間が見ていない時間の情報を後から確認できるのは、この機種ならではの強みです。
3. テトラ デジタル水温計(デジタル)
「シンプル・イズ・ベスト」を体現した製品です。余計な機能がない分、文字盤が非常に大きく、離れた場所からでも一目で水温が分かります。価格も非常に安価なので、複数水槽を持っている方でも導入しやすいでしょう。ただし、本体は防水ではないため、水没には注意が必要ですが、センサーコードの長さも十分あり、使い勝手は抜群です。
水槽の水温計が壊れるリスク管理まとめ
水温計は単なるアクセサリーではなく、生命維持システムの状態を私たちに伝えてくれる唯一の通信手段です。「たかが数百円の機械」と思わずに、その特性を理解して正しく使うことが、結果として愛魚の長生きに繋がります。
「水温計 水槽 壊れる」と検索してこの記事にたどり着いた今のタイミングこそ、ご自身の水槽の管理体制を見直す絶好のチャンスです。もし今、水温計が1本しか入っていないなら、ぜひアナログとデジタルの併用を検討してみてください。その小さな変化が、あなたの水槽の安全性を劇的に高めてくれるはずです。

水温計は愛魚からのメッセージ(2本目の生命線)


