ヒメダカのオスとメスはどこで分かる?ヒレの形と迷ったときの確かめ方
オレンジ色のヒメダカを何匹か迎えたものの、どれがオスでどれがメスなのか分からない。ヒメダカのオスメスの見分け方を調べてみたら、背びれや尻びれの話は出てくるけれど、実際の水槽で見比べるとどれも同じに見える。そんなふうに迷っている方は多いかなと思います。
結論から言うと、ヒメダカのオスとメスの違いはヒレの形に出ます。オスは背びれに切れ込みがあり、尻びれが大きくやや四角に近い形。メスは背びれに切れ込みがなく、尻びれは小さめで後ろの端が丸い。この2か所を横から見るのが基本ですよ。
ただ、稚魚のうちはまだ差が出ていませんし、オスメスの違いが中途半端に見える個体もいます。この記事では、ヒメダカのオスメスの見分け方を部位ごとに整理し、ヒメダカのオスとメスの違いを確かさの順に並べた比較表、稚魚がいつから見分けられるかの目安、繁殖に向けたペアの組み方までまとめました。体の色でオスメスを決められない理由や、メダカの雌雄の研究の歴史にも少し触れていきます。
- ヒメダカのオスとメスを背びれと尻びれで見分ける手順
- 6つの手がかりを確かさで比べた一覧表
- 稚魚がオスメスを見分けられるようになる時期の目安
- 見分けた後のペアの組み方と放流してはいけない理由
| 項目 | 内容 | 資料 |
|---|---|---|
| 種と品種 | ヒメダカはメダカの飼育品種。流通する改良メダカはミナミメダカから派生したもの | 日本大百科全書・共同通信ニュース用語解説 |
| 体色のしくみ(ヒメダカ) | 黒色素胞をほとんど持たない劣性の型(bb)。野生型のクロメダカはBB・Bb | 筑波医療科学(2004) |
| 大きさ(体長・メダカ全般) | 最大体長はオスで3cm、メスで3.5cm程度 | 日本大百科全書 |
| 大きさ(全長・メダカ全般) | 全長4cm | 改訂新版 世界大百科事典 |
| 成熟までの期間(メダカ全般) | 孵化後1.5〜5か月(資料により幅がある=下の章で比較) | 各百科事典 |
| 産卵の水温(メダカ全般) | 水温18℃以上で産卵 | 日本大百科全書 |
ヒメダカのオスメスの見分け方は背びれと尻びれ
まずは、ヒメダカのオスとメスの違いが出る場所を1つずつ見ていきます。ヒメダカは黒い色素が少ないだけで、体のつくりは普通のメダカと同じ。なので、オスメスの見分け方もメダカと共通です。いちばん頼りになるのは背びれと尻びれで、そこにお腹まわり、追星や産卵のときの行動を重ねていくと判断の確かさが上がっていきます。章の最後には、手がかりを確かさの順に並べた比較表を置いたので、迷ったときはそこへ戻ってきてください。観察には、横から見られる透明な容器があると便利です。水槽やプラケースのまま、魚の高さに目線を合わせて見るだけで、上から見るよりずっとヒレの形が分かりやすくなりますよ。
背びれの切れ込みはオスだけにある

ヒメダカのオスメスの見分け方で、最初に見てほしいのが背びれです。オスの背びれには後ろ寄りに切れ込みがあり、メスにはありません。日本大百科全書には、雄では背びれ後部の膜に切れ込みがあり、雌では切れ込みがないと書かれています。改訂新版 世界大百科事典でも、雄は背びれの後縁に深い切れ込みがあると説明されていますよ。
切れ込みというのは、背びれの後ろの方で、ひれを支える骨(鰭条)と鰭条のあいだの膜が深くえぐれている状態のこと。オスの背びれは、後ろの1本が少し離れて立っているように見えます。メスの背びれは膜が後ろまでつながっていて、全体がなめらかな1枚の形です。
ヒメダカは体がオレンジ色で、ヒレは薄く透けています。そのため、真上からだと背びれの形はつかみにくいです。容器の横から、魚と同じ高さに目線を合わせて見るのがコツ。背びれは体の後ろ寄り、尾びれに近い位置にあるので、そこに目を向けてください。
よくある失敗は、ヒレをたたんで泳いでいる瞬間を見て「切れ込みがない」と決めてしまうこと。メダカは泳ぎ方によってヒレを閉じたり開いたりします。ヒレが大きく開いた瞬間を何度か見て、毎回同じ形かを確かめると見間違いが減りますよ。
背びれの切れ込みは、1匹だけを見ても判断しやすい手がかりです。とはいえ、ヒレの先が傷んでいる個体では形が崩れて見えることもあります。背びれだけで決めず、次に紹介する尻びれと合わせて見るのがおすすめです。
尻びれの大きさと形を横から比べる
背びれと並んで決め手になるのが、お腹の下、肛門の後ろから尾の方へ伸びる尻びれです。オスの尻びれは大きく、やや長方形に近い形。メスの尻びれは小さく、後ろの端が丸くなります。
ブリタニカ国際大百科事典には、雄は尻鰭が大きく、やや長方形になっていると書かれています。世界大百科事典では、雄のしりびれは全長にわたって高いと表現されています。日本大百科全書でも、雄は臀びれが大きく、雌は小さいとされています。つまり、オスの尻びれは後ろの方まで高さがあって大きく見える、ということです。
形の違いはヒレの後ろの端にも出ます。総合研究大学院大学の研究紹介では、雌型の細胞でつくられた女性ホルモン(エストロジェン)が働く雌では、尻びれと背びれの後端が丸くなると説明されています(出典:総研大ジャーナル13号「細胞レベルで“ゆらぐ”性のしくみ」)。同じ資料では、実験で生殖細胞をなくし体が雄型になったメダカの図に、ヒレの後端がとがっている姿が雄の第二次性徴として示されています。
まとめると、尻びれで見るポイントは3つあります。
- 大きさ:オスは大きく、メスは小さい
- 形:オスはやや長方形に近く、後ろの方まで高さがある
- 後ろの端:メスは丸くなる
尻びれは、何匹かを並べて比べると違いが一気に分かりやすくなります。1匹だけだと「大きいのかな?」と迷いがちですが、同じ水槽の中で尻びれが大きい個体と小さい個体を見比べると、差がはっきり見えてきますよ。
お腹のふくらみと泌尿生殖口を見る
ヒレの次に見たいのが、お腹から肛門にかけてのあたりです。メスは肛門付近(泌尿生殖口)が丸く盛り上がってきます。総研大ジャーナルの同じ研究紹介に、エストロジェンが働く雌では肛門付近も丸く隆起してくると書かれています。
泌尿生殖口は、腹びれの後ろ、尻びれが始まる手前にある小さな開口部のこと。オスはこのあたりが平らで目立ちません。メスは小さなふくらみがあるので、横から見ると腹の下に段差があるように見えます。
体型の違いも参考になります。世界大百科事典には、雄の体は比較的細いとあります。日本大百科全書では最大体長がオスで3cm、メスで3.5cm程度とされていて、メスの方がやや大きくなる傾向が読み取れます。
お腹のふくらみだけでメスと決めるのは避けた方が安心です。食べた直後はオスでもお腹がふくらみますし、病気でお腹が張ることもあります。体型はあくまで補助の手がかりとして、背びれと尻びれの形と合わせて見てください。
もう1つ、確実な目印があります。卵をお腹の下に付けて泳いでいれば、その個体はメスです。日本大百科全書によると、受精卵は付着糸で雌の生殖孔付近に付いていて、雌が泳ぎ回るうちに水草などに付き、普通は午前中に雌の体から離れます。産卵期の朝にお腹の下に卵の房をぶら下げている個体がいれば、それはメスと確定してよい場面ですよ。
追星と産卵のときの行動で確かめる
オスの尻びれには、もう1つ目印があります。それが追星(おいぼし)です。世界大百科事典には、雄のしりびれの鰭条に小さい追星を生ずると書かれています。
追星は、ヒレや体の表面にできる小さな粒状の突起のこと。メダカでは雄のしりびれの鰭条に出るとされているので、ルーペや拡大できる写真で尻びれを見ると、小さな粒が並んでいるのが分かることがあります。ただしとても小さいので、肉眼で必ず見つかるものではありません。
行動でも見分けるヒントが得られます。世界大百科事典では、産卵は夜明けとともに起こり、雄が雌と並んで体の後部としりびれを寄せ、全身を震わせて雌の放卵を促すと説明されています。朝、2匹がぴったり寄り添い、体の後ろと尻びれを寄せ合っている場面を見かけたら、体を震わせて寄り添っている大きな尻びれの方がオスと考えられます。
産卵の条件もおさえておきましょう。日本大百科全書には、産卵は水温18℃以上で行われ、本州中部では産卵期は4〜10月とあります。世界大百科事典では東京付近の産卵期を4月上旬〜9月下旬としていて、資料によって幅があります。また世界大百科事典では、水槽の温度を20〜25℃に保ち、1日13時間以上照明すれば季節にかかわりなく産卵させることができるとされています。産卵のときの行動は、こうした産卵に向く条件のときに見られる手がかり。冬の低い水温ではオスらしい行動が見えにくいので、行動で判断するなら春から秋がおすすめです。
産卵に向く水温かどうかは、容器に水温計を1本入れておくと毎日の観察のついでに確かめられます。
なお、メダカは水槽の中で追いかけ合うことがありますが、すべてが求愛というわけではありません。エサの取り合いや順位争いでも追いかけます。追いかけている側がオスとは限らないので、行動は形の手がかりを補うものとして使ってください。
6つの手がかりの確かさを表で比べる

ここまでの手がかりを、確かさと見られる時期で並べてみます。ヒメダカのオスメスの見分け方は1か所だけで決めるより、確かな手がかりから順に重ねていく方が失敗しにくいですよ。
| 手がかり | オス | メス | 見られる時期 | 確かさ | 資料 |
|---|---|---|---|---|---|
| 卵を付けて泳ぐ | 付けない | 受精卵を生殖孔付近に付けて泳ぐ | 産卵期の朝 | 高い(見られればメスで確定) | 日本大百科全書 |
| 背びれ | 後部に切れ込みがある | 切れ込みがない | 成熟が近づいてから | 高い(尻びれと合わせるとより確か) | 日本大百科全書・世界大百科事典・ブリタニカ |
| 尻びれ | 大きく、やや長方形。全長にわたって高い | 小さい。後端が丸い | 成熟が近づいてから | 高い(背びれと合わせるとより確か) | 日本大百科全書・ブリタニカ・世界大百科事典・総研大ジャーナル |
| 泌尿生殖口 | (資料に記載なし) | 丸く隆起する | 成熟が近づいてから | 中くらい(小さく見えにくい) | 総研大ジャーナル |
| 追星 | しりびれの鰭条に小さな追星 | (資料に記載なし) | 資料に時期の記載なし | 中くらい(肉眼では見えにくい) | 世界大百科事典 |
| 体型・大きさ | 比較的細い。最大体長3cm程度 | 最大体長3.5cm程度 | 成長後 | 低い(食べた量や個体差で変わる) | 世界大百科事典・日本大百科全書 |
表の上の方ほど、1つだけで判断しても間違いにくい手がかりです。卵を付けているかどうかは見られる場面が限られますが、見られればメスと確定できます。毎日の観察でいちばん使いやすいのは、背びれと尻びれの2つ。この2つが同じ答えを指していれば、オスメスの判断はほぼ固まりますよ。
表に入れていないのが「体の色」です。ヒメダカでは、オレンジの濃さでオスメスを決めることはできません。ヒメダカは、黒色素胞の発現を決める常染色体の遺伝子がbbの型で、黒色素胞をほとんど持たないメダカです(筑波医療科学に掲載された実習の解説より)。常染色体の遺伝子は性別とは別に受け継がれるので、ヒメダカの色はオスにもメスにも出ます。
ただし、特定の組み合わせや系統では事情が変わります。世界大百科事典には、ヒメダカの雄と白メダカの雌との間に生まれる子の体色は、決まって雄が橙黄色、雌が白色になると書かれています。これは黄色い色素にかかわる遺伝子が性染色体の上にあるため。色で性別が分かるのは、こうした特定の交配から生まれた子どもや、後で紹介するHd-rR系統のような特別な系統の話で、お店で売られている普通のヒメダカの群れには当てはまりません。
色の濃さが当てにならない理由はもう1つあります。メダカには、置かれた背景の色に体の色を近づける「背地適応」という性質があるんです。筑波医療科学の実習の解説では、クロメダカを白い背景から黒い背景へ移すと体色が1〜2分のうちに白から黒へ変わり、逆の場合も同じように速やかに背景の色へ合わせる様子が紹介されています。黄色素胞も黒色素胞とほぼ同じ傾向の反応を示すとされていますが、反応は色素胞の種類や場所によって異なるとも書かれています。
実習で使われたのはクロメダカですが、ヒメダカでも容器の色によって色の見え方が変わる可能性はあります。別々の容器にいる個体の色を比べて「こっちが濃いからオス」と考えるのは、背景の違いを見ているだけかもしれません。
ヒメダカの中には、黒い点がぽつぽつと入った個体もいます。同じ解説によると、ヒメダカをよく見るとわずかに黒色素胞を持って斑入りになっているものがいて、これを支配するのもBの対立遺伝子(B’)とされています。黒い点の有無も、オスメスの目印ではありません。
ヒメダカのオスメスの見分け方で迷う場面と対処法
ヒレの違いが分かっても、実際には「まだ小さくて分からない」「どっちつかずに見える」といった場面にぶつかります。ここからは、ヒメダカのオスメスの見分け方で迷いやすい場面ごとに、どう考えればよいかをまとめます。稚魚が見分けられるようになる時期の目安、判断に迷う個体の確かめ方、メダカの雌雄の研究の歴史、見分けた後のペアの組み方、そして見分けた後にやってはいけないことまで順に見ていきましょう。迷ったときにいちばん大切なのは、1回の観察で決めきろうとしないこと。成長や季節で見える手がかりが増えていくので、時間を味方にして判断を固めていくのがおすすめです。
稚魚はいつからオスメスが分かるか

生まれたばかりの稚魚では、オスメスはまだ見分けられません。背びれの切れ込みや尻びれの形は第二次性徴なので、体が成熟に近づくまで出てこないからです。総研大ジャーナルでも、思春期に当たる時期を迎えると性ステロイドホルモンが働いて第二次性徴がみられるようになると説明されています。
では成熟まで何か月かかるのか。ここは資料によって書き方に幅があります。
| 資料 | 成熟までの期間 |
|---|---|
| ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 | 孵化後1.5〜2か月で成熟 |
| 百科事典マイペディア | 孵化後約2か月で成熟 |
| 改訂新版 世界大百科事典 | 孵化後2〜3か月で成熟し産卵を始める |
| 日本大百科全書 | 普通、孵化後2〜5か月で成熟 |
いちばん短い資料で1.5か月、長い資料で5か月。水温やエサの量、飼っている密度で成長の早さが変わるので、月齢だけで「もう分かるはず」と決めつけない方がよいかなと思います。目安としては、孵化から2か月を過ぎたあたりから背びれと尻びれを気にして見始め、成熟して産卵が始まる頃までに判断する、くらいの気持ちで待つのがおすすめです。
見始めの頃は、何匹かを並べて尻びれと背びれを見比べてみてください。どちらの特徴が先に目立ってくるかは今回の資料に記載がないので、1か所に差が見えたら、もう1か所も同じ答えを指すようになるまで様子を見るのがおすすめです。
稚魚の時期は、オスメスを見分けることよりも、無事に育てることを優先したい時期です。世界大百科事典には、メダカはかなり貪食で、幼魚のときは共食いもみられると書かれています。大きさに差がついてきたら、オスメスより先に大きさで容器を分けることを考えてみてください。
見分けがつかない個体の判断の進め方
成熟した頃になっても、オスかメスか迷う個体はいます。背びれの切れ込みが浅かったり、尻びれが中くらいの大きさだったりするケースです。そんなときは、次の順番で確かめていくと判断がぶれにくくなります。
- 透明な容器に移し、横から目線を合わせて背びれを見る。切れ込みがはっきりあればオス、まったくなければメスの可能性が高い
- 背びれで決まらなければ尻びれを見る。大きくやや長方形に近いか、小さく後ろの端が丸いかを確かめる
- 背びれと尻びれの答えが食い違うときは、同じ水槽で「明らかにオス」「明らかにメス」の個体と並べて見比べる
- それでも決まらなければ、産卵に向く季節まで待つ。卵を付けて泳いでいればメス、朝に尻びれを寄せて寄り添う側ならオス
- 決まらない個体は「保留」としてメモに残し、無理に分けない
見比べるときは、スマートフォンで横から写真を撮って拡大するのも手です。ヒメダカは体が明るいオレンジなので、黒っぽい背景の前で撮るとヒレの輪郭が分かりやすくなります。複数の個体を同じ角度で撮っておくと、尻びれの大きさを並べて比べられますよ。
手順1で使う容器は、側面が透明で横から中の魚を見られるものを選んでください。メダカ用の観察ケースなら、水ごと1〜2匹を移して目線の高さで見比べられます。
迷う理由としてまず考えられるのは、成長途中であることです。成熟までの期間は資料によって幅があるので、同じ日に生まれた兄弟でも、オスやメスの特徴がはっきりする時期にずれが出ても不思議ではありません。迷う個体は時間をおいて見直してみてください。
豆知識として、外から見えるオスらしさやメスらしさは、体の中で働くホルモンによって現れます。総研大ジャーナルの研究紹介では、実験で生殖腺に生殖細胞が入らないようにしたメダカは、性染色体がXX型でもXY型でも第二次性徴が雄型を示したと報告されています。研究室の特別な実験の話で、普通に飼っている個体に起きることではありませんが、ヒレの形がホルモンの働きの結果だと分かる例です。
メダカのオスとメスの研究の歴史
メダカは、オスとメスがどう決まるかの研究で長く使われてきた魚です。ここを知っておくと、なぜ色で性別が分かる組み合わせがあるのかも理解しやすくなります。
出発点は、會田龍雄(あいだ・たつお)の研究です。アメリカ遺伝学会(GSA)のブログ記事によると、會田は1913年ごろからメダカの色の品種に注目し、京都の自宅の庭に水路を巡らせて交配を重ねました。その結果は1921年に学術誌 GENETICS に発表され、メダカがXY型の性決定のしくみを持つこと、オレンジ色にかかわる遺伝子がY染色体に乗っていることを明らかにしました。Y染色体に連鎖した遺伝の初期の例の1つとされています。
色で性別が分かる系統も、性染色体の上にある色素の遺伝子のしくみで説明されています。筑波医療科学に掲載された実習の解説では、黄色素胞がR・rという性染色体上の遺伝子に支配され、Y染色体には優性のRが乗っていると説明されています。そのため、近交系のHd-rR系統は、オスが赤くメスが白いので、体色で性を判別できるとされています。
さらに、山本時男は1950年代に人為的な性転換を見つけました。世界大百科事典によると、孵化したての稚魚に雌性ホルモンを混ぜた餌を与えると遺伝的に雄になるはずの個体が雌になり、雄性ホルモンの入った餌では遺伝的な雌が雄になります。この性転換個体は、正常な雌や雄との交配で子孫を残すことができるそうです。環境省の資料にも、會田龍雄(1921)の「限性遺伝」と山本時男(1953)の「人為性転換」が、メダカの性決定の研究として並んで紹介されています。
そして2002年、メダカのY染色体上で、雄へと分化させる性決定遺伝子DMYが同定されました。総研大ジャーナル13号の解説では、2008年の時点で遺伝子の実体が分かっている性決定遺伝子は、哺乳類のSRY/SryとメダカのDMYだけとされています。
研究の歴史から分かるのは、メダカの性は性染色体の型で決まり、見た目のオスらしさ・メスらしさはホルモンの働きで現れるということ。家庭で飼っているヒメダカでは、遺伝子を調べるわけにはいかないので、ヒレの形を見るのが現実的な方法です。
繁殖に向く雌雄の組み合わせと分け方
オスメスが見分けられたら、次は繁殖のための組み合わせを考えましょう。ヒメダカの繁殖を狙うなら、オスとメスを少なくとも1匹ずつ同じ容器に入れることが前提です。そのうえで、オスばかり、メスばかりに偏らないようにします。
オスが多すぎると、1匹のメスを何匹ものオスが追い回して、メスが落ち着いて過ごせなくなることがあります。逆にメスばかりだと、産卵しても受精卵にならず、卵が増えません。オスだけ、メスだけで飼った場合にどうなるか、雌雄比をどう決めるかは、メダカをオスだけ・メスだけで飼うときの雌雄比といじめの目安で詳しく解説しています。
ヒメダカは安く手に入る品種なので、何匹かまとめて買うことも多いはず。まとめ買いではオスメスが選ばれずに入っていることもあるので、家に迎えてから自分で数えて、偏りを確かめるのがおすすめです。ヒメダカの値段の目安や店頭での選び方は、ヒメダカの値段の相場と通販・店頭の買い方にまとめています。
分けるときは、目印を付けておくと管理が楽になります。例えば、容器ごとに「オス3・メス4」のようにメモを貼る、保留の個体は別の小さな容器に入れて観察を続ける、といった方法です。オスメスを分けて飼うと、繁殖させたいタイミングで合わせられるので、増えすぎを防ぎたいときにも役立ちますよ。
ペアを組んだら、見分けが合っていたかどうかは卵で確かめられます。オスとメスがそろっていれば、条件のよい時期にはメスのお腹の下に卵が付き、やがて水草などに産み付けられます。日本大百科全書によると、1回の産卵数は50個止まりで、産卵期中に同じ個体が数回産卵します。世界大百科事典では、好適条件下では同じ個体が毎日産卵するとも書かれています。
卵を見つけやすくするには、メスが卵を付ける場所として産卵床を入れておくのも手です。卵が1か所に集まるので、ペアがうまくいっているかを毎朝確かめやすくなります。
卵が見つかったのに何日たっても育たない場合は、オスがいない、またはオスと思っていた個体が実はメスだった、という可能性も考えられます。受精卵は直径1〜1.5mmで、日本大百科全書では水温18℃で20日、25℃で10日で孵化するとされています。孵化までの日数は水温で大きく変わるので、水温を測りながら様子を見てください。メダカの繁殖全体の流れは、メダカの繁殖方法まとめ(産卵条件から針子の育て方まで)で順に解説しています。
メダカ全体に共通するオスメスの見分け方を、品種ごとの見え方の違いまで含めて確かめたい方は、メダカのオスメスを尻びれと背びれで見分ける方法も参考にしてください。
見分けた後に川や池へ放さない理由

オスメスを見分けて数を整理していくと、「増えすぎた分をどうしよう」と悩むことがあります。そんなときでも、ヒメダカを近くの川や池に放すのは絶対にやめてください。
近畿大学農学部の研究チームは、野外に放流されたヒメダカの生態や行動を調べました(出典:近畿大学「野生メダカとヒメダカの生態・行動特性を解明」)。それによると、メダカは体色が黄色か黒褐色かに関係なく産卵・交配の相手を選んでいました。ヒメダカは目立つので放流するとある程度は食べられますが、生き残った一部は野生メダカの群れに混じり、繁殖に自由に参加することが分かっています。
その結果、野生メダカとの交配による遺伝的撹乱が進むと考えられています。遺伝的撹乱とは、人が生き物を持ち込むことで、野生の生き物が持つ遺伝的な多様性が下がったり失われたりすることです。研究チームは、ペットショップで買ったり、別の場所で採ったりしたメダカを絶対に放流してはいけないと呼びかけています。
共同通信のニュース用語解説によると、メダカは1999年に環境省のレッドリストで絶滅危惧Ⅱ類に指定されました。日本の在来種はキタノメダカとミナミメダカの2つで、流通する改良メダカはミナミメダカから派生したもの。環境省は、放流すると交雑して在来種が駆逐される恐れがあるとして注意を呼びかけています。
増えすぎを防ぐ有効な方法の1つが、オスとメスを分けて飼うことです。オスメスの見分け方を覚えておくと、繁殖させたいときも、増やしたくないときも、自分でコントロールできるようになります。どうしても飼いきれないときは、メダカを扱うお店や知り合いに相談してください。
メダカの保全や放流についての考え方は、環境省やお住まいの自治体の案内で最新の情報を確かめてください。正確な情報は公式サイトをご確認ください。また、お腹のふくらみが病気によるものか迷うときなど、体調の判断は魚の病気に詳しい販売店や獣医師に相談すると安心です。最終的な判断は専門家にご相談ください。
ヒメダカのオスメスの見分け方についてよくある質問
ヒメダカとクロメダカでオスメスの見分け方は違いますか?
基本は同じです。ヒメダカは黒色素胞をほとんど持たない型で、野生型のクロメダカとは体の色が違う飼育品種です。背びれの切れ込み、尻びれの大きさと形という見分け方はそのまま使えます。ヒメダカは体が明るい分、背景を暗くするとヒレの縁を追いやすくなります。
1匹しか飼っていなくてもオスメスは分かりますか?
背びれの切れ込みは1匹だけでも確かめられます。切れ込みがはっきりあればオスの可能性が高いです。一方、尻びれの大きさは比べる相手がいないと判断しにくいので、写真を撮って、オスとメスの特徴がはっきりした個体の写真と見比べる方法がおすすめです。
冬でもオスメスは見分けられますか?
背びれと尻びれの形は成熟した個体なら季節を問わず見られます。ただ、追星や求愛行動、卵を付けて泳ぐ姿は産卵の時期の手がかりです。日本大百科全書では産卵は水温18℃以上で行われるとされているので、水温が低い冬はヒレの形を中心に見てください。
網ですくってじっくり見てもよいですか?
網の上では体が曲がり、ヒレもたたまれるので、かえって形が分かりにくくなります。小さな透明の容器に水ごと移して、横から見る方が確かめやすいです。観察が終わったら、水温の差が出ないうちに元の容器へ戻してあげてください。
まとめ|ヒメダカのオスメスの見分け方は背びれと尻びれから
ヒメダカのオスメスの見分け方は、普通のメダカと同じです。まず横から背びれを見て、切れ込みがあればオス、なければメス。次に尻びれを見て、大きくやや長方形に近ければオス、小さく後ろの端が丸ければメス。この2つが同じ答えを指していれば、判断はほぼ固まります。
迷うときは、お腹まわりの泌尿生殖口、繁殖期の追星や求愛行動、卵を付けて泳ぐ姿を重ねて確かめましょう。体の色の濃さでは、普通のヒメダカのオスメスは決められません。色で性別が分かるのは、白メダカとの交配やHd-rR系統など、特定の組み合わせや系統の場合です。
稚魚のうちはまだ見分けられず、成熟までの期間は資料によって孵化後1.5〜5か月と幅があります。2か月を過ぎた頃から少しずつ観察を始め、迷う個体は時間をおいて見直すのがおすすめです。見分けたオスとメスは、繁殖させたいならペアに、増やしたくないなら分けて飼い、川や池には決して放さないでくださいね。


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