黒メダカは本当に絶滅危惧種?飼っていいメダカと野生のメダカを守るために知っておきたいこと
黒メダカが絶滅危惧種だと聞いて、お店で売っている黒メダカを飼っても大丈夫なのか、少し不安になった方も多いのではないでしょうか。子どものころ田んぼや小川で見かけた、あの地味な色のメダカが絶滅しそうだと言われても、ピンとこないですよね。
結論からお伝えすると、絶滅危惧種として国のレッドリストに載っているのは、川や田んぼで暮らす野生の黒メダカ、つまりキタノメダカとミナミメダカの2種です。ホームセンターやペットショップで買った黒メダカを家で飼うこと自体を禁じる国の法律はありません。ただし、飼っているメダカを川に放すと、野生の黒メダカが地域ごとに受け継いできた特徴を失わせるおそれがあると指摘されていて、飼い方しだいで野生のメダカに負担をかける側に回ってしまうこともあるんです。
この記事では、黒メダカと絶滅危惧種の関係、環境省レッドリストでの評価、キタノメダカとミナミメダカの違い、都道府県ごとに違う評価や条例、減ってしまった原因、そして飼う人が守りたい放流しないルールまでを、公的な資料をもとに整理しました。野生の黒メダカを採ってよいのか、飼えなくなったらどうするのか、といった迷いやすい場面の判断もまとめています。
- 絶滅危惧種とされる黒メダカの範囲と2種の違い
- 環境省と都道府県で異なる評価と条例の規制
- 野生の黒メダカが減った原因と放流の影響
- お店の黒メダカを飼うときに守りたいルール
| 項目 | キタノメダカ | ミナミメダカ |
|---|---|---|
| 学名 | Oryzias sakaizumii | Oryzias latipes |
| 大きさの目安 | 体長3cm程度(京都府レッドデータブック2015)/全長4cm程度(兵庫県の評価資料) | |
| 自然分布の目安 | 青森県から京都府丹後半島東部までの日本海側(京都府レッドデータブック2015) | 青森県東部から紀伊半島にかけての太平洋側、中国・四国、九州、沖縄本島(京都府レッドデータブック2015)/日本海側は京都府以西、太平洋側は岩手県以西の本州、四国、九州、南西諸島(兵庫県の評価資料) |
| 見た目の傾向 | 体側の黒い色素が強く、背びれの切れ込みが浅い | 体側の黒い色素が薄く、背びれの切れ込みが深い |
| 環境省レッドリスト | 絶滅危惧II類(VU) | 絶滅危惧II類(VU) |
黒メダカが絶滅危惧種とされる理由と今の評価
まずは、黒メダカのどこまでが絶滅危惧種なのか、国や都道府県がどう評価しているのか、そしてなぜ数が減ったのかを順番に見ていきます。ここをおさえておくと、あとで出てくる飼い方のルールがなぜ大事なのかが、すっと理解できるはずです。
この章で使う資料は、環境省のレッドリストと報道発表、放流防止のリーフレット、福島県・京都府・兵庫県・沖縄県が公表しているレッドリストや条例の資料、そしてカダヤシについては鹿児島県、メダカの暮らしについては京都市の資料です。同じメダカでも、国全体で見た評価と、地域ごとの評価や規制は別のものとして出てきます。どれか1つの資料だけで判断せず、国の評価、住んでいる地域の評価、法律や条例の規制、という3つを分けて見ていくのが、読み違えを防ぐポイントです。
絶滅危惧種なのは野生の黒メダカ
絶滅危惧種として評価されているのは、日本の川や水路、田んぼで代々暮らしてきた野生のメダカです。環境省のレッドリストに載っている名前はキタノメダカとミナミメダカで、黒メダカやクロメダカという名前の種が載っているわけではありません。黒メダカは、野生のメダカに近い黒っぽい体色のメダカを指して使われる呼び方と考えておくと分かりやすいです。
ただ、レッドリストが評価しているのは見た目の色ではなく、それぞれの地域で長い年月をかけて受け継がれてきた野生の集団です。環境省のリーフレットも、見た目はほぼ同じでも地域ごとに遺伝的な構成が違うと説明しています。どの川の、どの水系の血を引くメダカなのかが分からない個体は、同じ黒い色をしていても、保全の対象として扱われる野生の集団とは分けて考えるのが安全かなと思います。
京都府レッドデータブック2015でも、遺伝的なかく乱を防ぐために、ヒメダカのような改良品種(飼育品種)の個体と野生の個体の区別を明確にすることが必要だと書かれています。つまり、絶滅危惧種かどうかは、黒いか白いか、安いか高いかでは決まらないということですね。
ちなみに、オレンジ色のヒメダカや、ラメが入るような改良メダカも、もとをたどればメダカの仲間から作られたものです。ヒメダカがなぜ安く手に入るのかはヒメダカの値段の相場と安い理由でくわしく整理しています。改良メダカや流通している黒メダカは、絶滅危惧種そのものというより、野生のメダカとは別に扱うべき飼育用の魚だと考えるのが分かりやすいかなと思います。
ここで大事なのは、飼っている黒メダカに罪悪感を持つ必要はないということです。気をつけたいのは、飼育用のメダカと野生のメダカが混ざってしまうこと。この点は後半の放流の章でくわしく説明しますね。
キタノメダカとミナミメダカの2種に分かれる
日本の野生のメダカは、いまはキタノメダカとミナミメダカの2種に分けられています。環境省が2025年2月に発行した放流防止のリーフレットでも、メダカは日本に2種(キタノメダカ・ミナミメダカ)が生息していると説明されています。
名前のとおり、キタノメダカはおもに日本海側、ミナミメダカはおもに太平洋側から九州・沖縄にかけて分布します。京都府レッドデータブック2015では、キタノメダカの自然分布を青森県から京都府丹後半島東部までの日本海側としています。ミナミメダカについては、京都府の資料が青森県東部から紀伊半島にかけての太平洋側、中国・四国地方、九州地方、沖縄本島とし、兵庫県の資料は日本海側では京都府以西、太平洋側では岩手県以西の本州、四国、九州、南西諸島としていて、資料によって書き方に幅があります。
見た目の違いとしては、京都府の資料に、キタノメダカは体側部の黒色素が強く背びれの切れ込みが浅いこと、ミナミメダカは体側部の黒色素が薄く背びれの切れ込みが深いことが挙げられています。ただし、どれも比べて分かる程度の違いなので、水路で泳いでいる1匹を見た目だけで見分けるのは難しい場合があります。
さらにややこしいのが、両方の分布が接する地域です。兵庫県の評価資料によると、兵庫県や京都府の但馬・丹後地方には、両種の雑種に起源を持つハイブリッド集団が分布しています。兵庫県の円山川流域の集団はキタノメダカのミトコンドリアDNAを、岸田川の集団はミナミメダカのミトコンドリアDNAを持っていると書かれています。
そして2種の中にも、地域ごとに遺伝的に異なる集団があります。環境省のリーフレットは、それぞれの種の中に複数の遺伝的に異なる地域個体群が存在し、見た目はほぼ同じでも遺伝的な構成や微妙な形の差、温度への強さの違いなどが確認されていると説明しています。兵庫県の資料でも、ミナミメダカは遺伝学的に9つの型に区分され、県内にはそのうち2型が分布するとされています。
黒メダカという1つの呼び名の中に、実は2つの種と、たくさんの地域ごとの集団が含まれている、というイメージを持っておくと、このあとの話がつながりやすいですよ。
野生のメダカから漆黒の改良品種まで、黒メダカと呼ばれる種類ごとの特徴と見分け方は、黒メダカの種類を比較表で整理した解説で紹介しています。
環境省レッドリストでは絶滅危惧II類
環境省のレッドリストでは、キタノメダカとミナミメダカはどちらも絶滅危惧II類(VU)です。環境省のカテゴリーの定義では、絶滅危惧II類は「絶滅の危険が増大している種」とされ、大部分の個体群で個体数が大幅に減少している、大部分の生息地で生息条件が明らかに悪化しつつある、といった状態が判断の目安に挙げられています。絶滅危惧IA類やIB類ほど差し迫った段階ではないものの、身近な魚が全国的に減っていると評価されている、ということですね。
評価の流れを、環境省の報道発表で確かめると次のようになります。
| 時期 | 出来事 | メダカの扱い |
|---|---|---|
| 1999年2月 | 環境庁(当時)が汽水・淡水魚類のレッドリストを見直し | メダカが絶滅のおそれのある種として掲載。普通にいると思われていた種でも絶滅のおそれがあると明らかになった、と説明 |
| 2007年8月 | 環境省がレッドリストを見直し | 分類の見直しで北日本集団と南日本集団に分け、それぞれ絶滅危惧II類(ランクはそれまでと同じ) |
| 2017〜2018年の名称整理 | 和名・学名の一覧を公表 | キタノメダカ(Oryzias sakaizumii)、ミナミメダカ(Oryzias latipes)とも絶滅危惧II類 |
| 2020年3月 | 環境省レッドリスト2020を公表 | 汽水・淡水魚類はレッドリスト2020で評価した種がなかった |
| 2025年3月・2026年3月 | 第5次レッドリストを分類群ごとに公表開始 | 公表済みは植物・菌類と鳥類・爬虫類・両生類のみ。淡水魚類は作業中で、レッドリスト2020の評価が最新 |
ここで1つ知っておきたいのが、レッドリストそのものは法律ではないという点です。1999年の環境庁の発表でも、レッドリストは生物学的な観点から絶滅の危険度を評価したもので、規制などの法律上の効果を持つものではない、と説明されています。レッドリストに載っているからといって、それだけで飼うことや持つことが禁止されるわけではないんですね。
一方で、環境省は、レッドリスト掲載種の中で特に保護の優先度が高い種を、種の保存法にもとづく国内希少野生動植物種に指定し、捕獲や譲渡しを規制しています。環境省が公開している国内希少野生動植物種の一覧(令和7年2月更新・魚類は12種)には、キタノメダカもミナミメダカも入っていません。
なお、環境省のレッドリストのページでは、淡水魚類を含む残りの分類群はレッドリスト2020の評価が最新とされていて、第5次レッドリストで評価が変わる可能性はあります。最新のランクは環境省のレッドリストのページで確かめてください(出典:環境省 自然環境局「レッドリスト」)。
都道府県ごとに違う評価と条例の規制

国のランクとは別に、都道府県もそれぞれ独自のレッドリストを作っています。同じキタノメダカやミナミメダカでも、地域の生息状況によって評価が国より厳しくなったり、ゆるやかになったりします。ここでは公表資料で確認できた5つの例を並べてみました。
| 評価する機関 | キタノメダカ | ミナミメダカ | 読み取れること |
|---|---|---|---|
| 環境省(レッドリスト2020時点) | 絶滅危惧II類(VU) | 絶滅危惧II類(VU) | 全国で見た評価。法律上の規制は持たない |
| 福島県(ふくしまレッドリスト2024年版・2022年版から変更なし) | 絶滅危惧IB類 | 絶滅危惧IB類 | 国の評価より1段階上のランク |
| 京都府(レッドデータブック2015) | 絶滅危惧種(府のカテゴリー) | 絶滅危惧種(府のカテゴリー) | 両種がそろって生息する全国でも珍しい地域 |
| 兵庫県(兵庫県版レッドリスト2017) | Bランク(ハイブリッド集団) | 要注目 | 同じ県でも種や集団で評価が分かれる |
| 沖縄県(希少野生動植物保護条例) | — | 指定希少野生動植物種(大東諸島以外の地域に生息するもの) | 条例で生きた個体の捕獲などが原則禁止 |
表を見ると、国の評価は全国共通でも、身近な地域ではもっと深刻に見られていることがある、と分かります。福島県では2種とも国より上の絶滅危惧IB類。京都府は、キタノメダカとミナミメダカの両方が生息している全国でも珍しい地域で、京都府レッドデータブック2015の府のカテゴリーでは両種とも絶滅危惧種です。京都市の調査の手引きでも、京都府改訂版レッドリスト2023で絶滅危惧種に掲載されていると紹介されています。
反対に、兵庫県版レッドリスト2017ではミナミメダカが要注目にとどまっています。県内の分布は広いものの生息環境は悪化していると考えられ、川から水路、田んぼ、ため池へと続く水辺のつながりの指標になる種として注目している、という理由です。ランクが低めだから安心、という意味ではないんですね。
いちばん注意したいのが沖縄県です。沖縄県希少野生動植物保護条例では、ミナミメダカ(大東諸島以外の地域に生息するもの)が指定希少野生動植物種に入っています。県の案内によると、指定種の生きている個体は捕獲、採取、殺傷または損傷してはいけず、学術研究などで捕獲するには事前に知事の許可が必要です。違反して捕獲された個体の譲渡しや譲受けもできず、違反には罰則があります。なお、種が指定された時点ですでに飼育していた個体は規制の対象外とされています。
ここで紹介したのは公表資料で確認できた一部の地域だけです。お住まいの地域のメダカの扱いは、都道府県のレッドリストや条例の公式ページで確かめるのが確実です。正確な情報は公式サイトをご確認ください。
黒メダカが減った原因は田んぼと水路の変化

野生の黒メダカが減った原因として、今回確かめた資料で共通して挙げられているのが、すみかである田んぼと水路の変化です。メダカは春先に用水路から田んぼへ移って産卵し、秋ごろに用水路へ戻って冬を越す、という暮らし方をしていて、京都市の手引きでは「水田の魚」とも呼ばれると紹介されています。
兵庫県の評価資料は、圃場整備(田んぼの区画や水路を整える工事)にともなう用水と排水の分離や、乾田化によって、メダカが産卵のために田んぼやため池へさかのぼる道がふさがれたこと、つまり川から横に広がる水辺のつながりが崩れたことが減少の主な原因と考えられる、としています。用水路と排水路が分けられ、田んぼが水を抜いて乾かす形に変わると、お米を作るうえでは便利でも、メダカにとっては川と田んぼを行き来しにくくなってしまうわけです。
ほかにも、複数の要因が重なっています。資料ごとに挙げられている要因を整理すると、次のとおりです。
- すみかの変化:田んぼや小川の形が生き物のすめない形に変えられた、河川改修などの開発(京都府)
- 水の汚れ:農薬などによる水質汚染の影響が懸念される(京都府)
- 外来魚による捕食:オオクチバスやブルーギルによる食害(京都府)、オオクチバス等の外来種による捕食(兵庫県)
- 競合する外来種:同じ生態的地位を占めるカダヤシの移入(京都府)
- 人による放流:産地不明のメダカや市販のメダカの放流による遺伝的なかく乱のおそれ(兵庫県・京都府)
このうちカダヤシは、メダカによく似た北米原産の魚で、外来生物法の特定外来生物に指定されています。鹿児島県の資料によると、生きたまま運ぶことや飼うことは外来生物法で禁止されていて、奄美大島ではミナミメダカの個体群を駆逐した例があるとされています。見分けるポイントは、カダヤシの尾びれが丸く、しりびれが短いのに対し、メダカは尾びれの後ろがまっすぐで角ばっていて、しりびれが体に沿って長いこと。水路でメダカらしき魚を見つけても、カダヤシだった場合は持ち帰ること自体が法律違反になりうるので、むやみに捕まえないのが安全です。
そして見落とされがちなのが、最後の放流の問題です。数が減る原因とは少し性質が違い、飼っている人が良かれと思ってメダカを川に放すと、その地域の野生の黒メダカが持つ遺伝的な特徴を失わせるおそれがある、と懸念されているんです。ここから先の後半では、飼う側ができることを具体的に見ていきます。
絶滅危惧種の黒メダカを飼うときに守ること
ここからは、黒メダカを飼う人や、これから飼おうとしている人向けの内容です。お店のメダカを飼ってよいのか、野生のメダカを採ってよいのか、放流がなぜだめなのか、逃がさないための工夫、飼えなくなったときの行き先まで、判断の順番に沿って整理しました。
前半で見たとおり、人が飼っていたメダカの放流は、野生の黒メダカの地域ごとの特徴を失わせるおそれがあると懸念されています。裏を返すと、飼う人が気をつけるだけで防げるリスクがある、ということです。ここで紹介する内容の多くは、環境省と日本観賞魚振興事業協同組合がまとめた、水生生物を飼う人向けのリーフレットやチェックリストにもとづいています。難しい道具や知識が必要なものはほとんどないので、できるところから取り入れてみてください。
お店の黒メダカは国の法律で禁止されていない
ペットショップやホームセンター、通販で買った黒メダカを家で飼うことは、国の法律では禁止されていません。先ほどのとおり、レッドリストは法律上の規制を持たない評価で、キタノメダカとミナミメダカは種の保存法の国内希少野生動植物種(令和7年2月更新の一覧)に入っていません。カダヤシのような外来生物法の特定外来生物でもありません。ただし沖縄県のように、条例で野生の個体の捕獲などを規制している地域はあるので、住んでいる地域の条例は別に確かめてください。
そのうえで、飼う前に知っておきたい点が3つあります。
1つ目は、お店の黒メダカの産地です。どこの川の集団に由来するのかが分からない場合は、見た目が野生型に近くても、野生の地域個体群とは分けて扱うのが安全です。京都府レッドデータブック2015は改良品種と野生の個体の区別を明確にすることを求めていて、産地の分からない黒メダカも同じように野生の集団と混ぜない考え方で扱うのがよいかなと思います。
2つ目は、飼うと決めたら最後まで面倒を見るつもりで迎えることです。環境省と日本観賞魚振興事業協同組合のチェックリストでは、原則として個体が寿命をまっとうするまで飼育すること、繁殖させる場合は自分で管理できる数の限界に気をつけてみだりに増やさないこと、が挙げられています。メダカは条件がそろうとどんどん卵を産むので、増えすぎてから困るケースがよくあります。
3つ目は、買うお店の選び方です。販売の場面にも保全の考え方があり、同じチェックリストには、扱う魚が絶滅危惧種(環境省レッドリスト掲載種)の場合、野外で採集した個体をできるだけ避け、養殖個体の利用を進めるといった項目もあります。買う側としても、野外で採ってきたことをうたう個体より、産地や由来をきちんと説明してくれるお店を選ぶと安心ですね。
飼育する場所をどこにするかで、逃がさない工夫も変わってきます。室内と屋外のどちらで飼うか迷っている場合はメダカの室内飼育と屋外飼育の選び方も参考にしてみてください。
野生の黒メダカを採ってよいかの判断
田んぼや小川で黒メダカを見つけて、持ち帰って飼ってみたくなることもあるかもしれません。ここは、場所と目的によって答えが変わるところです。迷ったときは、次の順番で確かめるのがおすすめです。
| 確かめること | 当てはまる場合 | 考え方 |
|---|---|---|
| 条例で捕獲が禁止されている地域か | 沖縄県(大東諸島以外)のミナミメダカ | 捕獲しない。学術研究などは事前の許可が必要 |
| 保護区や私有地、立ち入りが制限された場所か | 田んぼ、ため池、管理された水路など | 持ち主や管理者の許可がなければ採らない |
| そもそもメダカか | 尾びれが丸い、しりびれが短い魚 | カダヤシの可能性。生きたまま運ぶことは外来生物法で禁止 |
| 上のどれにも当てはまらない | 規制のない身近な水辺 | 法律で禁止されていなくても、数の少ない集団から採るのは控え、観察にとどめるのが無難 |
京都府のレッドデータブックの子ども向けページでも、田んぼや川でメダカを見つけても採ったりしないで大切に見守りましょう、と呼びかけています。規制がない場所でも、野生のメダカは地域ごとにわずかな数で踏みとどまっていることがあるので、写真に撮って観察するくらいにとどめておくのがいいかなと思います。
どうしても野生のメダカを飼ってみたい場合は、採った場所をきちんと記録し、その個体や子孫を別の水域に絶対に持ち出さないことが前提になります。ほかの飼育メダカと一緒の容器で飼うと、どれが野生由来か分からなくなるので、混ぜないことも大切です。
また、自治体や地域の団体が、メダカの生息調査や保全活動をしていることもあります。京都市は、メダカがどこにいるかの情報を集めて水辺の現状を正確に把握するために、市内に生息するミナミメダカの発見報告を市民から受け付けています。見つけたメダカを採るのではなく、記録して知らせる、という関わり方もあるんですね。最終的な判断に迷うときは、地域の自治体の環境部署や専門家にご相談ください。
川や池に放流してはいけない理由

飼っているメダカを川や池に放すことは、たとえ在来種のメダカであってもやめましょう。これは環境省が明確に呼びかけているポイントです。
環境省のリーフレットでは、本来その地域にいないはずの特徴を持つメダカが各地で見つかっていて、飼われていた別の地域の個体が放流されたためと考えられると説明しています。別の地域の集団が放流されて遺伝子が混ざり合うと、各地域の固有性が失われ、結果として種としての多様性が失われることにつながる、という流れです。
日本の在来種のメダカであっても、放流すると各地域の個体群の固有性が失われる可能性があります。もとは日本の魚だから大丈夫、少しだけなら問題ない、と考えて川や池に放すことは、野生の黒メダカを守ることにはなりません。
放流のリスクは遺伝子の問題だけではありません。環境省のリーフレットは、野外への放流で起こりうる悪影響として、在来の生き物が捕食されること、競合すること、交雑すること、細菌や寄生虫などの病原体が持ち込まれるおそれがあることを挙げています。家の水槽で元気に見えるメダカでも、外の環境に病気を持ち込む可能性はゼロではないんです。
善意からの行動でも、どこの集団か分からないメダカを放せば、野生のメダカにとってはかえって負担になりかねません。兵庫県の評価資料にも、飼育していた産地不明のメダカを放流することは厳に慎みたい、と書かれています。
放流してはいけない理由をまとめると、地域ごとに受け継がれてきた野生の黒メダカの特徴を薄めてしまうおそれがあるから、ということになります。環境省のリーフレットも、みだりに野外へ放つ行為は、その地域の生きものや生態系に取り返しのつかない悪影響を及ぼす可能性があると呼びかけています(出典:環境省・日本観賞魚振興事業協同組合「水生生物を野外に放流しないで!」)。
大雨や水換えで逃がさない飼い方

放流するつもりがなくても、うっかり逃がしてしまうことがあります。環境省のリーフレットとチェックリストでは、うっかりの逸出(飼育場所から外へ出てしまうこと)が起きやすい場面と、その対策がまとめられています。
水換えと掃除のとき
水換えのときに稚魚が水と一緒に流れ出たり、水槽を洗うときに付いている卵が流れ出たりする可能性があります。対策は、捨てる水を網に通してから流すこと。下水管へ排水できる場合は、川に直接つながっている雨水管よりも、汚水管へ流すのを優先するよう呼びかけられています。メダカの卵は水草や容器の壁にくっついていて気づきにくいので、洗った水をそのまま庭の側溝に流すのは避けたいところです。
大雨や台風のとき
庭やベランダに置いた容器は、大雨や台風の日に水があふれ出たり、ひっくり返ったりする可能性があります。悪天候が予想されるときは、容器にふたをする、軒先に移動するといった事前の対策がすすめられています。チェックリストでも、屋外で飼う場合は大雨で増水したときに個体が水と一緒にあふれ出ないよう対策を講じること、が挙げられています。
ビオトープや池で飼うとき
屋外で半野外の環境を作って飼う場合は、飼育水と野外の水域がつながらない構造にすることがチェックリストに挙げられています。庭の池から雨水があふれて側溝へ流れ込む、田んぼの水路とつながっている、といった作りは避けるようにしましょう。メダカだけでなく、一緒に入れているエビや貝、水草が外に出ないように気をつけることも書かれています。
どの対策も、特別な道具がなくても始められるものばかりです。水換え用の網を1つ決めて使う、屋外の容器には目の細かいネットやふたを用意しておく、という2つだけでも、うっかり逃がしてしまう危険は減らせますよ。
水換えで捨てる水を濾すときは、目の細かいカップ型のネットがあると、稚魚や卵を流してしまう心配が減らせます。価格や在庫は購入前に各ショップで確認してください。
屋外の鉢には、上からかぶせる保護ネットを用意しておくと、ふた代わりとして使えます。鉢の口の大きさに合うサイズかどうかを確かめてから選んでください。
飼えなくなったときの引き取り先
引っ越しや家族の事情で、どうしても飼い続けられなくなることもあります。そんなときに大切なのは、川や池に放す以外の行き先を探すことです。
環境省のリーフレットでは、どうしても最期まで飼えないときは引き取ってくれる人を探すよう呼びかけています。まずは家族や友人に相談し、それが難しければ、家族の友人や友人の家族にも声をかけてみる。ペットの引き取りをしているお店もあり、日本観賞魚振興事業協同組合では引き取り相談ができる事業者を紹介しています。
引き取り先を探すときは、次のような順番で当たると話が進みやすいです。
- 家族や友人、職場や学校など身近な人に声をかける
- 買ったお店や、近所のアクアリウムショップに引き取りの相談ができるか聞く
- 日本観賞魚振興事業協同組合が紹介している引き取り相談の窓口を確かめる
- 譲る相手にも、川や池に放さないことを伝えておく
最後の項目は意外と見落としがちです。せっかく譲っても、譲った先で放流されてしまっては意味がないので、ひと言添えておくと安心ですね。具体的な手放し方や引き取り先の探し方はメダカを放流せずに手放す方法と引き取り先の探し方でくわしく紹介しています。
そして、飼えなくなる事態を防ぐいちばんの方法は、増やしすぎないことです。卵を見つけたらすべて育てるのではなく、自分で世話できる数を決めておくと、あとで困ることが少なくなります。
黒メダカと絶滅危惧種についてよくある質問
黒メダカを売ったり人に譲ったりするのは違法ですか?
キタノメダカとミナミメダカは、国の種の保存法の国内希少野生動植物種には指定されていないため、国の法律で一律に譲渡しが禁止されているわけではありません。ただし沖縄県のように条例で指定している地域では、条例に違反して捕獲された個体の譲渡しや譲受けはできません。地域の条例は公式サイトで確かめてください。
黒メダカとヒメダカを同じ容器で飼っても大丈夫ですか?
家の容器の中で飼う分には、一緒に飼うことを禁じる決まりは特にありません。ただ、交配して生まれた子は野生の黒メダカとはさらに別の由来になるので、外の水辺に出さないことがいっそう大切になります。野外で採った個体を飼っている場合は、由来が分からなくならないよう分けて飼うのがおすすめです。
メダカの数が増えれば絶滅危惧種から外れるのですか?
レッドリストが評価しているのは、自然の中で暮らす野生の集団です。家庭や販売のために育てられたメダカがいくら増えても、野生の集団が回復したことにはなりません。
黒メダカが絶滅危惧種である意味を知って楽しもう
最後に、この記事のポイントをまとめておきます。
- 絶滅危惧種として評価されているのは、野生のキタノメダカとミナミメダカの2種
- 環境省レッドリストでは2種とも絶滅危惧II類で、淡水魚類はレッドリスト2020の評価が最新
- 都道府県では評価が国と違うことがあり、沖縄県(大東諸島以外)ではミナミメダカの捕獲が条例で原則禁止
- 減った主な原因は田んぼと水路の変化で、外来種の影響も重なり、放流には遺伝的なかく乱のおそれがある
- お店の黒メダカは飼ってよいが、在来種でも放流はしない・うっかり逃がさない
黒メダカが絶滅危惧種だと聞くと、飼うこと自体がいけないことのように感じるかもしれません。でも、野生の黒メダカを守るうえで飼う人にできる大事なことは、飼うのをやめることよりも、飼っているメダカを外に出さないことです。
家の容器で黒メダカを大切に育てて、寿命まで見届ける。水換えの水は網に通し、大雨の前にはふたをする。飼えなくなったら放さずに引き取り先を探す。この当たり前の積み重ねが、田んぼや小川で暮らす野生のメダカを守ることにつながります。
なお、この記事で紹介した評価や条例の内容は、執筆時点で公表されている資料をもとにした一般的な目安です。レッドリストや条例は見直されることがあるので、正確な情報は公式サイトをご確認ください。地域の保全活動や採集の可否など、最終的な判断は専門家にご相談ください。
黒メダカの素朴な美しさを楽しみながら、その背景にある野生のメダカのことも、ときどき思い出してもらえたらうれしいです。


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