金魚のオスとメスの見分け方|追星と繁殖行動で判別する
水槽の金魚を眺めていて、「この子はオスかな、それともメスかな」と気になったことはありませんか。
繁殖をさせてみたい人はもちろん、名前を付けたい人や、同じ水槽の仲間どうしの相性が気になる人にとっても、性別はけっこう大事な情報ですよね。
ところが、いざ調べてみると「胸びれの形で分かる」「お尻を見れば分かる」「体の大きさで分かる」と、いろいろな説が出てきて迷ってしまうかもしれません。
さらに春先になると、エラぶたに白い点が出たり、1匹が別の1匹をしつこく追いかけ回したりして、「病気なのでは」「いじめでは」と心配になる場面も増えます。
その不安は、とても自然なものです。
この記事では、観賞魚メーカーの説明や金魚の繁殖行動を調べた研究報告をもとに、オスとメスを見分ける手がかりを「追星」「体型とお尻」「追いかける行動」の3つに整理しました。
どの手がかりがどこまで当てになるのか、病気やいじめとどう区別するのかまで、順番に見ていきましょう。
- 金魚のオスとメスを見分けられる時期と年齢の目安
- 追星の出る場所と白点病との見分け方
- 体型やお尻の形で見分けるときの限界と品種による差
- 追いかける行動が繁殖なのかいじめなのかの判断基準
金魚のオスとメスの見分け方は組み合わせで決める
最初に結論からお伝えすると、金魚のオスとメスは1つの特徴だけで決めつけず、追星・体型・行動の3つを組み合わせて判断するのが、もっとも確かめやすい方法です。
そして、いちばん見分けやすいのは春の繁殖シーズンです。
なぜ組み合わせが大事なのかというと、それぞれの手がかりに弱点があるからです。
追星はとても分かりやすい目印ですが、ふつうは繁殖期のオスにだけ出るものです。
体型やお腹のふくらみは一年中見られる一方で、品種や個体の太り具合で印象が大きく変わります。
追いかける行動も、繁殖とは関係のない理由で起こる場合があるのです。
つまり、どれか1つだけで判断すると「外れ」を引く可能性が残るので、複数の手がかりが同じ答えを指したときに「オスらしい」「メスらしい」と考えるのが安全、というわけですね。
もう1つ押さえておきたいのが、年齢の問題です。
テトラ(スペクトラム ブランズ ジャパン)は、金魚はふ化してから2〜3年くらいかけて繁殖が可能な成魚に育ち、それまではプロでも外見から雌雄を見分けるのが難しいと説明しています(出典:スペクトラム ブランズ ジャパン「金魚の繁殖のヒント5選」)。
お祭りの金魚すくいで迎えたばかりの小さな金魚や、ショップで買ったばかりの若い金魚の性別がよく分からないのは、あなたの観察力が足りないからではありません。
まだ体がオスとメスの特徴を出す段階に達していない、というだけのことが多いのです。
ここで、この記事で扱う3つの手がかりを表にまとめておきます。
確かさの欄は、調べた資料での扱われ方をもとにした、あくまで一般的な目安として見てください。
→ 横にスクロールできます
| 手がかり | オスの特徴 | メスの特徴 | 見やすい時期 | 確かさの目安 |
|---|---|---|---|---|
| 追星(おいぼし) | エラぶたや胸びれの前のふちに白い小さな突起が出る | 出ない | 春の繁殖期 | 高い(ただし出ている時期に限る) |
| 体型・お腹 | すらりとして見えることが多い | 尾びれが短めでお腹がふっくらし、全体に丸い | 繁殖期に差が大きくなる | 中くらい(品種・太り具合で変わる) |
| お尻のまわりの形 | 目立った出っぱりがない | 繁殖可能になると卵を出す管が出てくる | 繁殖期 | 低め(慣れた人でも難しいとされる) |
| 追いかける行動 | メスを追いかける側になる | 追いかけられ、逃げる側になる | 繁殖期の早朝 | 中くらい(餌や体型差でも起こる) |
| 肌の手ざわり感 | ザラザラした感じ | ぬめりがあって柔らかい感じ | 繁殖期 | 参考程度(触って確かめるのは避ける) |
表を見ると分かるとおり、ほとんどの手がかりが「繁殖期」に集中しています。
裏を返せば、繁殖期から外れた時期に性別がはっきりしないのは自然なことで、焦らず春を待つほうが近道と考えられます。
なお、肌の手ざわりについては、月刊アクアライフ編集部のアクアライフブログの連載「金魚Q&A」で、金魚の研究も行う理科教諭の川澄太一さんが、春に卵を産むメスはぬめぬめして柔らかい感じ、オスはザラザラしていると紹介しています。
ただ、そのころのオスにはすでに追星が出ているので、そちらでも見分けられると川澄さん自身が書いています。
金魚の体を覆うぬめりは、皮膚を守る大切なバリアです。
性別を知りたいからといって何度も手で触るのは、体を傷つけるもとになるので、目で見て分かる手がかりから順に確かめていきましょう。
追星で金魚のオスを見分けるポイント
金魚のオスとメスを見分ける手がかりのなかで、もっとも分かりやすいのが「追星(おいぼし)」です。
追星とは、繁殖期のオスの体に出てくる白い小さな突起のことで、メスには出ないとされています。
ここでは、追星が出る場所と時期、そして見た目のよく似た白点病との違いを順に見ていきます。
追星は、出ている時期にきちんと確認できれば、オスかどうかを判断するうえでもっとも頼りになる手がかりです。
その一方で、見えないからといってメスと決めつけられない点や、病気の白い点と取り違えやすい点には注意が必要になります。
追星が出る場所と時期

追星は、繁殖期のオスのエラぶたと胸びれに出る白いつぶつぶです。
東京大学(当時)の小林牧人さんは、金魚の産卵期のオスには追星と呼ばれる白い小さな突起が鰓ぶたと胸ビレにできると説明しています(出典:小林牧人「キンギョの性行動とホルモン」化学と生物 Vol.33 No.1(1995))。
この追星は「二次性徴」の1つです。
二次性徴とは、つまり体が大人になるにつれて現れる、オスとメスで違う体の特徴のことですね。
同じ報告では、追星を発達させているのが「11-ケトテストステロン」という金魚の雄性ホルモンであることも示されています。
つまり追星は、オスの体の中で繁殖の準備が進んでいるサインそのものと言えるでしょう。
テトラも、オスが繁殖可能な状態になると、エラや胸びれのような固いところに「追い星」という白い点が出てくると説明しています。
場所をもう少し具体的に見ていきましょう。
先ほど紹介した川澄さんは、エラぶたや胸びれのふちに白い点々が出てくるとオスで、この点々がない個体はメスだと説明しています。
体のやわらかい部分ではなく、エラぶたや胸びれのふちといった「固いところ」に出るのが、追星の大きな特徴です。
では、いつごろ出るのでしょうか。
川澄さんは、追星は春や初夏に出るので、その時期に見分けるのがよいとしています。
テトラによると、金魚は年2回、春(4〜6月上旬ころ)と秋(9月下旬〜10月上旬ころ)の早朝に産卵し、産卵に適した水温は18〜25℃です。
水温が上がって繁殖の準備が進むと追星がはっきりし、繁殖期が終わると目立たなくなる、という流れで考えておくと分かりやすいと思います。
室内の水槽だと、季節がずれることもあります。
川澄さんは、室内飼育では水温が高めになるせいか、1月ごろに繁殖行動をすることがあると紹介しています。
ヒーターで水温を保っている水槽では、カレンダーよりも水温と金魚の様子を見て判断したほうがよさそうです。
ここで気をつけたいのが、「追星が見えない=メス」とは限らないという点です。
まだ成熟していない若いオスや、繁殖期以外の季節のオスには、追星がはっきり出ないことがあります。
また、追星はとても小さいので、水槽の照明の当たり方や体色によっては見落としやすいのです。
白っぽい体色の金魚や、更紗(赤と白のまだら)の白い部分にある胸びれだと、白い点が背景にまぎれてしまうことも考えられます。
観察するときは、横からだけでなく斜め前から胸びれのふちを見るようにすると、ふちに並ぶつぶつぶが見つけやすくなりますよ。
追星がはっきり確認できたら、その金魚はオスと考えてほぼ間違いありません。
一方で、見えなかったときは「メスかもしれないし、まだ出ていないオスかもしれない」と保留にして、次の手がかりで確かめるのが安全です。
追星を探すときは、水槽の正面からではなく、少し斜め前から胸びれのふちを見てください。網ですくってバケツに移すより、水槽のまま静かに観察するほうが金魚の負担も少なく、ふちに並ぶ白い点も意外と見つけやすいですよ。
追星と白点病の違い

追星を見つけて、まず心配になるのが「これ、白点病じゃないの?」という点だと思います。
白点病は、つまり小さな寄生虫が体に取り付いて白い点が出る病気で、放っておくと広がりやすい病気です。
白い点が出るという見た目は似ていますが、出る場所と広がり方に違いが出やすいのです。
テトラは、白点病の場合は体全体やヒレにも発生するのに対し、追い星は固い部分にしか現れないと説明しています。
エラぶたと胸びれのふちだけにつぶつぶが並んでいるなら追星の可能性が高く、胴体や尾びれ、背びれにまで点が散らばっているなら白点病を疑う、という見分け方になります。
ただし、白点病もヒレから出始めることがあります。
メスと思われる個体や繁殖期から外れた時期に点が出たとき、また数が日ごとに増えるときは、場所に関係なく先に白点病を疑ってください。
見分けるときに確かめたいポイントを、表にまとめておきますね。
→ 横にスクロールできます
| 確かめる点 | 追星の場合 | 白点病を疑う場合 |
|---|---|---|
| 白い点の場所 | エラぶたと胸びれの前のふちなど、固い部分に限られる | 胴体・尾びれ・背びれなど体全体に散らばる |
| 点の並び方 | 胸びれのふちに沿って並ぶように出る | 並びに規則性がなく、ばらばらに付く |
| 数の変化 | 数日で急に全身へ広がることはない | 日ごとに数が増え、ほかの金魚にもうつることがある |
| 金魚の様子 | 食欲があり、泳ぎ方もふだんどおり | 体をこすりつける、ヒレをたたむ、元気がないなどが重なりやすい |
| 出る個体 | オスだけ | オス・メスに関係なく出る |
| 出る季節 | 春の繁殖期が中心 | 繁殖期に関係なく、季節を問わず出ることがある |
表の中でとくに頼りになるのは、「場所」と「広がり方」の2つです。
追星はオスの体の決まった場所にだけ出るものなので、数日たっても胸びれとエラぶたのまわりにとどまっています。
反対に、昨日より白い点が増えている、ほかの金魚にも点が出てきた、という場合は病気の可能性を考えたほうがいいでしょう。
どちらか判断がつかないときは、1日1回、同じ時間帯に胸びれと体全体を見比べて、点の数と場所をメモしておくと変化に気づきやすくなります。
白点病の見分け方と治療の手順は、金魚の白点病の見分け方と治療の手順でくわしく整理しています。
出目金のように胸びれの追星が目立ちやすい品種については、出目金の追星と白点病の違いも参考になるはずです。
白い点が体全体に広がっている、体をこすりつけている、食欲が落ちているといった様子があるときは、追星と決めつけずに病気を疑ってください。
判断に迷うときは、早めに購入した販売店や、魚を診られる動物病院へ相談するのが安心です。
体型とお尻の形で金魚のメスを見分ける
追星がオスの目印なら、メスの目印になるのが体型とお尻のまわりの形です。
ただし、こちらは追星ほどはっきりした違いではなく、品種や太り具合で印象が変わりやすいという弱点があります。
どこを見ればよいのか、そしてどこまで当てにしてよいのかを順に整理していきましょう。
結論としては、お腹のふくらみは「メスらしさ」を示す材料として役立ちますが、お尻の形や品種による差まで含めると、体型だけで性別を決めるのはおすすめできません。
追星が見当たらない個体を見るときの、補助の手がかりとして使うのがよいでしょう。
お腹のふくらみと体の丸さ
メスを見分ける手がかりとしてまず挙げられるのが、お腹のふくらみと体全体の丸さです。
テトラは、メスはオスと比べると尾びれが短めでお腹がふっくらとしているので、全体的に丸い体形をしていて、追い星は出現しないと説明しています。
あわせて、メスはフンが太めなことが多いとも書かれていて、これも観察のときの小さなヒントになりそうです。
なぜメスのお腹がふくらむのかというと、体の中で卵が育っていくからです。
小林さんの報告によると、金魚のメスは冬から春にかけて水温が上がるにつれて卵に栄養がたまっていき、準備の整った卵が春の産卵期に排卵されます。
排卵とは、つまり育った卵が卵巣から離れて、産み出せる状態になることですね。
同じ報告では、夏の高い水温で卵に栄養をためるはたらきが止まり、翌年の産卵期までは卵巣が縮んだ状態に保たれるとも書かれています。
このことから、お腹のふくらみの差が大きくなるのは春先で、産卵期を過ぎるとオスとメスの体型の差は目立ちにくくなると考えられます。
見るときのコツは、真横からだけでなく真上からも見ることです。
真上から見たとき、胸びれのうしろから腹びれのあたりにかけて左右にふくらんでいる個体は、卵を持ったメスの可能性があります。
同じ品種、同じくらいの大きさの金魚を何匹か並べて見比べると、違いがぐっと分かりやすくなるはずです。
ここで注意したいのが、お腹のふくらみは「卵」以外の理由でも起こるという点です。
餌をたくさん食べた直後や、フンがたまっているとき、あるいは病気でお腹に水がたまっているときにも、お腹はふくらんで見えます。
とくに、ウロコが逆立って松ぼっくりのように見える、元気や食欲がないといった様子が重なるときは、メスだから太っているのではなく体調の異変を疑ったほうがいいでしょう。
ウロコが逆立つ症状が気になる場合は、金魚の病気一覧と症状別の見分け方で緊急度を確かめてみてください。
また、オスでも栄養状態がよく太っている個体は、丸い体形に見えることがあります。
体型はあくまで「メスらしさ」を示す1つの材料として受け止め、追星が出ていないかどうかと組み合わせて判断するのがおすすめです。
お尻の形は補助の手がかり
お尻のまわりの形でオスとメスを見分ける方法もよく紹介されていますが、これは初心者にはかなり難しい方法です。
結論から言うと、お尻の形は「ほかの手がかりで迷ったときの補助」として使うくらいがちょうどいいと思います。
テトラは、メスが繁殖可能になったときは、お尻の近くに交尾・排卵するための卵管が出てくると説明しています。
卵管とは、つまり卵を体の外へ出すための通り道のことで、繁殖期のメスではお尻のあたりが少し盛り上がって見えることがあります。
一方、川澄さんは、肛門あたりの形の違いで見分ける方法もあるものの、これは難しく、自分でも時々間違えると書いています。
金魚の研究を続けている人でも間違えることがある方法だと考えると、慣れないうちにお尻の形だけで性別を決めてしまうのは避けたほうがよさそうです。
お尻の形が見分けにくい理由は、いくつか考えられます。
1つめは、場所がとても小さく、泳いでいる金魚を下からじっくり見るのが難しいことです。
2つめは、繁殖期以外は形の違いが目立たなくなることです。
3つめは、フンがついていたり、体の向きで影ができたりして、見え方が簡単に変わってしまうことですね。
どうしても見てみたいときは、透明なプラケースなどに水槽の水ごと短時間だけ移し、横や下から静かに観察する方法があります。
ただ、移すたびに金魚はストレスを受けますし、網ですくうときにヒレやウロコを傷めることもあります。
何度もすくって確かめるよりは、春を待って追星を確認するほうが、金魚にとってもあなたにとっても負担の少ない方法と言えるでしょう。
丸もの品種は見分けにくい

金魚は品種によって体の形が大きく違うので、体型による見分けやすさも品種で変わります。
とくに、琉金やらんちゅう、ピンポンパールのような「丸もの」と呼ばれる体の丸い品種は、もともとオスもメスもお腹が丸いので、体型だけで見分けるのはかなり難しくなります。
反対に、和金やコメット、朱文金のようなフナに近い細長い体型の品種では、卵を持ったメスのお腹のふくらみが比較的目立ちやすいと考えられます。
品種ごとの見分けやすさを、手がかり別に表にしておきます。
この表は、各品種の体の形をもとにした一般的な目安で、個体差があることを前提に見てください。
→ 横にスクロールできます
| 体型のタイプ | 主な品種の例 | 体型での見分け | 追星の見つけやすさ | 見分けのコツ |
|---|---|---|---|---|
| フナ型(細長い体) | 和金・コメット・朱文金 | 比較的しやすい | 胸びれが見やすく探しやすい | 同じ大きさの個体を並べて、お腹の幅を真上から比べる |
| 琉金型(体高のある丸い体) | 琉金・オランダ獅子頭・東錦 | 難しい | 胸びれのふちを斜め前から見れば探せる | 体型より追星と追尾の行動を重視する |
| らんちゅう型(背びれのない丸い体) | らんちゅう・江戸錦 | 難しい | 上から見ると胸びれが見えにくいので横からも確認 | 追星と追尾の行動を中心に判断する |
| パール型(ウロコが盛り上がる球形) | ピンポンパール | とても難しい | 体が小さく点も小さいので見落としやすい | 体型ではほぼ判断せず、繁殖期の行動を見る |
| 出目型(目が飛び出す) | 出目金・蝶尾 | やや難しい | 胸びれの追星が比較的目立ちやすい | 追星を中心に、体型は補助として見る |
丸もの品種を飼っている場合は、体型をほとんど当てにせず、追星と追いかける行動の2つで判断すると考えておくと迷いにくいと思います。
また、品種が違う金魚どうしを比べても、体型の差がオスとメスの差なのか品種の差なのか区別がつきません。
体型で見比べるときは、できるだけ同じ品種、同じくらいの年齢と大きさの個体どうしで比べるのが基本です。
品種ごとの体の特徴や飼いやすさは、初心者に飼いやすい丈夫な金魚の種類でも紹介しています。
金魚の追いかける行動で判別する
春になると、1匹の金魚が別の1匹をしつこく追いかける様子が見られることがあります。
これは多くの場合、オスがメスを追う繁殖のための行動で、オスとメスを見分ける有力な手がかりになります。
ただし、追いかける理由は繁殖だけではないので、見分け方と、放っておいてはいけないケースを整理しておきましょう。
繁殖期の追尾は追う側がオスで、追われる側がメスという関係は、研究報告でもはっきり書かれていて、季節と追星の有無がそろえば頼れる材料になります。
反対に、季節外れの追いかけや、傷が残るほどの追い回しは、繁殖とは別の問題として扱う必要があるのです。
追尾は繁殖期の正常な行動
繁殖期に1匹がもう1匹を追いかけ回すのは、「追尾(ついび)」と呼ばれる金魚の正常な繁殖行動です。
追いかける側がオス、追いかけられる側がメスなので、追星とあわせて観察すれば性別を判断する手がかりになります。
小林さんの報告によると、金魚の性行動はメスの放卵、オスの追尾、放精からなり、排卵の過程に入ったメスをオスがさかんに追いかける追尾から始まります。
この追尾はメスが排卵する前から見られ、早い場合は排卵の数時間前から始まるとされています。
その間、メスはただ逃げるばかりで、特別な行動はしないそうです。
メスが排卵したあとはオスの追尾がいっそう激しくなり、泳ぐ速さも増して、産卵が始まります。
産卵のときには、メスが上、オスが下になって寄り添いながら水面へ上がり、メスが卵を出し、オスが精子をかけます。
報告では、この「メスが上、オスが下」という配置は決して変わらないと書かれています。
つまり、水面近くで2匹が寄り添って上がっていく場面を見られたら、上にいるのがメス、下にいるのがオスと考えることができるわけです。
産卵は数時間にわたって数十回くり返されるので、一度見逃しても、しばらく観察していれば同じ動きを何度も確認できるはずです。
見られる時間帯にも特徴があります。
小林さんは、排卵は夜中に起こり、せまいガラス水槽では排卵後すぐに産卵が始まる一方、屋外の広い飼育槽では明け方ごろまで遅れることが多いと書いています。
テトラも、金魚は早朝に産卵すると説明しているので、性別を確かめたいなら、繁殖期の朝に水槽をのぞいてみるのがおすすめです。
また、水槽にオスが複数いると、1匹のメスを複数のオスが競うように追いかけるとも報告されています。
「2匹が1匹を追いかけている」場面なら、追われている1匹がメスで、追いかけている2匹がオスと考えると分かりやすいですね。
川澄さんも、激しく休まずに追いかけているなら、だいたい繁殖行動だろうとしています。
そのうえで、春以外の季節に追いかけているときは、追いかけている金魚に追星があるかを見てみるよう勧めています。
追星が出ていて追いかけているなら、それは繁殖行動と考えてよさそうです。
追尾に気づいたら、産卵床として水草や人工の産卵藻を入れておくと、卵が付く場所を用意できます。
水草をすぐ用意できないときは、繰り返し使える人工の産卵藻が手軽です。卵を親から離して別の容器へ移すときも、産卵藻ごと移せるので扱いやすいですよ。
産卵床を入れたあとは、親が卵を食べてしまう前に、卵をどこへ移すかも決めておきたいところです。
繁殖まで挑戦したい場合の準備や、卵を移すタイミングについては、金魚の繁殖方法と産卵の時期・卵の移し方にまとめています。
休まず追い回すときは隔離を

追尾は自然な行動ですが、「自然だから放っておいてよい」とは限らない点に注意が必要です。
メスが逃げ場をなくして疲れ切っている、体に傷ができている、といった様子があるなら、一時的に分けることを考えましょう。
川澄さんは、子どものころに学校で飼っていた和金で、追い回された1匹が翌日に死んでしまった経験を紹介し、水槽の角に体をぶつけたことが原因ではないかと振り返っています。
そして、それ以来、メスが追いかけられ続けて疲れていたり、もう卵を産まないのにまだ追いかけられていたりするときは、メスだけ、または追いかけているオスだけを別の水槽に隔離しているそうです。
さらに、追いかける理由は繁殖以外にもあります。
川澄さんによると、和金のようなフナ体型の金魚が、お腹を空かせて琉金のような丸い金魚の尾びれを食べようと追いかけることがあるそうです。
また、餌をあげてしばらくすると、性別に関係なく相手のお尻のあたりをつつきながら追いかけることもあると紹介されています。
つまり「追いかけている=オス」「追いかけられている=メス」と決めつけられるのは、繁殖期で、追う側に追星が出ているときに限られるということですね。
繁殖による追尾と、それ以外の追いかけを見分けるポイントを表にしました。
→ 横にスクロールできます
| 見るポイント | 繁殖の追尾と考えやすい | 繁殖以外を疑う |
|---|---|---|
| 季節 | 春(室内では冬の終わりから始まることも) | 季節に関係なく一年中続く |
| 追う側の体 | エラぶたや胸びれに追星が出ている | 追星が見当たらない |
| 時間帯 | 早朝に激しくなる | 餌のあとなど、時間帯に関係なく起こる |
| 追われる側 | お腹がふっくらした個体が追われる | 泳ぎの遅い個体やヒレの長い個体がねらわれる |
| 体の傷 | 目立った傷はないことが多い | 尾びれがかじられて欠ける、ウロコがはがれる |
| 終わり方 | 産卵が終わるとおさまっていく | 何日たってもおさまらない |
表の右側に当てはまる項目が多いときは、繁殖ではなく、体型の違いや餌の不足が原因の追いかけを疑ってみてください。
フナ体型と丸もの品種を同じ水槽で飼っている場合、川澄さんは同居を避けるか、どうしても同居させたいときは餌を多めに与えるよう勧めています。
ただし、餌を増やすと水が汚れやすくなるので、水換えやろ過とのバランスも見直す必要がありますね。
水槽がせまくて逃げ場がない状態も、追いかけによる事故を起こしやすくします。
匹数に対して水槽が小さすぎないかは、金魚の水槽サイズと何匹飼えるかの早見表で確かめてみてください。
隔離するときは、元の水槽の水を使って水温と水質をそろえた別の容器に移すと、金魚の負担を減らせます。
隔離先にもエアレーションを入れ、数日ごとに様子を見ながら、追いかけがおさまったころに元の水槽へ戻すかどうかを判断しましょう。
見分けた後の金魚の飼い方と注意点
オスとメスの見当がついたら、次に考えたいのが「これからどう飼うか」です。
繁殖に挑戦するのか、それとも今の数のまま静かに飼い続けたいのかによって、水槽の分け方や準備が変わってきます。
結論から言うと、繁殖させないならオスとメスを分けて飼い、繁殖させたいなら追星の出たオスとお腹のふくらんだメスがそろう春に合わせて準備を整えるのが基本です。
どちらを選ぶ場合でも、増えた金魚を最後まで飼えるかどうかを先に考えておくことが、金魚にとっても飼い主にとっても大切になります。
ここでは、分けて飼う方法と、よくある質問への答えをまとめました。
繁殖させないなら分けて飼う
繁殖させるつもりがないなら、繁殖期だけでもオスとメスを分けて飼うのが分かりやすい方法です。
オスとメスが同じ水槽にいれば、春になると追尾が始まり、気づかないうちに水草やガラス面に卵が産みつけられることがあります。
見つけた卵のうち、白く濁ってカビやすい卵の見分け方と取り除き方は、有精卵と無精卵を見分けてカビを防ぐ方法で紹介しています。
テトラの説明では、金魚は自分が産んだ卵やふ化した稚魚を食べてしまうので、親と同じ水槽では食べられてしまいます。
それでも一部が育つと、想像以上に数が増えてしまうかもしれません。
増えた金魚を最後まで飼える水槽の広さや手間があるかを、前もって考えておくことが大切です。
そして、増えすぎたからといって、川や池に放すのはやめてください。
もともとその場所にいなかった生き物を放すと、自然の生き物に影響を与えるおそれがあります。
分けて飼うときは、別の水槽を用意する方法と、ひとつの水槽を仕切り板で区切る方法があります。
仕切り板は手軽ですが、水槽のスペースが半分になるので、そのぶん過密になりやすい点に気をつけてください。
仕切り板を使うなら、水槽のサイズに合ったものを選び、すき間から金魚が行き来できないかを入れたあとに確かめておくと安心です。水が通る穴あきタイプなら、ろ過の水流も左右に行き渡ります。
反対に、繁殖に挑戦したい場合は、追星が出たオスとお腹のふくらんだメスがそろった春が始めどきです。
テトラは、オスは繁殖が可能な状態になると追い星が出て、メスは繁殖可能になるとお尻の近くに卵管が出てくると説明しています。
追星の出たオスと、お腹がふくらんで卵管の見えるメスがそろったら、繁殖を考えてよい時期と言えるでしょう。
産卵床の入れ方や卵を移す容器、稚魚の育て方まで、事前に流れをつかんでおくと慌てずにすみますよ。
最後に、見分けた結果を記録しておくのもおすすめです。
「何年の春に追星を確認」「お腹のふくらみが目立った」といったメモを残しておけば、翌年以降の判断がぐっと楽になります。
健康な個体を選びたい場合は、金魚販売店の選び方と健康な個体の見分け方も読んでみてください。
金魚のオスとメスは、春の繁殖期に「追星」「お腹のふくらみ」「追いかける行動」の3つを組み合わせて見ると、見分けやすくなります。
見分けたあとは、繁殖させるかどうかを決めて、分けて飼うか産卵の準備をするかを選びましょう。
金魚のオスメスの見分け方に関するよくある質問(FAQ)
金魚の性別は何歳くらいから分かる?
テトラは、金魚はふ化してから2〜3年くらいかけて繁殖が可能な成魚に育ち、それまではプロでも外見から雌雄を見分けるのが難しいと説明しています。
ふ化から2〜3年たった金魚の、春の繁殖期がもっとも見分けやすいタイミングと考えておくとよいでしょう。
追星が出ていない金魚はメスと考えていい?
繁殖期にはっきり確認しても追星が見当たらない成魚なら、メスの可能性が高いと考えられます。
ただし、若いオスや繁殖期以外のオスは追星が目立たないことがあるので、秋や冬に見えないだけでメスと決めつけるのは避けましょう。
金魚の性別が途中で変わることはある?
小林さんの報告では、金魚はふつう一生のうちで性転換をしない魚とされています。
一方で、川澄さんは養殖業者からオスがメスに変わったという話を聞いたことがあると紹介しています。
ふつうは変わらないと考えてよいものの、「前の年にオスだと思った個体が翌年は違って見えた」ときは、そもそも見分けが外れていた可能性も含めて、もう一度春に確かめてみてください。
冬に金魚が追いかけ合っているのは繁殖行動?
川澄さんによると、室内で飼っていると水温が高めになるせいか、1月ごろに繁殖行動をすることがあるそうです。
追いかけている金魚のエラぶたや胸びれに追星が出ていれば繁殖行動と考えられますが、追星がなければ餌の不足や体型の違いによる追いかけも疑ってください。
メスが追い回されて弱っているときはどうする?
メスが疲れている、体に傷がある、産卵が終わっているのに追いかけが続くといったときは、メスか追いかけているオスのどちらかを別の容器に移して休ませましょう。
隔離先は元の水槽の水を使って水温をそろえ、傷や体調の変化が続くようなら販売店などに相談してください。
まとめ|金魚のオスとメスの見分け方は春が勝負
金魚のオスとメスは、1つの特徴だけで決めつけず、春の繁殖期にいくつかの手がかりを組み合わせて見分けるのが基本です。
テトラの説明では、ふ化から2〜3年たつまでは外見での見分けが難しいとされているので、若い金魚の性別が分からなくても焦る必要はありません。
最後に、この記事のポイントを振り返っておきましょう。
- 見分けやすいのは、ふ化から2〜3年(目安)たった金魚の春の繁殖期
- エラぶたや胸びれのふちに追星が出ていればオスと考えてよい
- 追星は固い部分にしか出ず、体全体に白い点が広がるなら白点病を疑う
- メスは尾びれが短めでお腹がふっくらした丸い体形になりやすいが、丸もの品種では見分けにくい
- お尻の形は難しいので補助の手がかりにとどめる
- 繁殖期の追尾は追う側がオス、追われる側がメスで、産卵時はメスが上・オスが下になる
- 休まず追い回されて弱るときや、繁殖以外の追いかけが続くときは隔離を考える
性別が分かると、繁殖に挑戦するか、分けて静かに飼うかといった、これからの飼い方の方針も立てやすくなります。
病気かどうか迷う症状があるときや、体調に不安があるときは、早めに販売店や魚を診られる動物病院へ相談してください。
この記事で紹介した見分け方は一般的な目安なので、正確な情報はメーカーの公式サイトなどもあわせて確認しながら、あなたの金魚をじっくり観察してみてくださいね。





COMMENTS
この記事へのご質問・コメント