メダカのPSBとは?効果・使い方と必要かどうかの判断
メダカの卵がかえって針子が泳ぎはじめると、光合成細菌(PSB)を入れたほうがいいのか気になってくる方も多いのではないでしょうか。
針子とは、つまりふ化したばかりで、まだ体がとても小さいメダカの赤ちゃんのことです。
光合成細菌の製品はいくつかのメーカーから出ていて、効果の説明も量の書き方も製品ごとに違うので、迷ってしまうのは自然なことです。
そこで、先に結論からお伝えします。
光合成細菌(PSB)は光合成をする細菌をまとめた呼び名で、市販品は水質調整剤として売られています。
メダカで効果を測った研究は見当たらないため、量は製品の表示どおりにして、餌や水換えの代わりにはしないのが安全な使い方です。
また、メダカの飼育に必須のものではなく、針子がうまく育たないときに試せる選択肢の一つと考えてください。
この記事では、光合成細菌そのものの正体、製品ごとの表示と量、塩浴や薬浴との関係、入れすぎの注意、そして必要かどうかの判断にしぼって解説します。
この記事で理解できることは、次の4つです。
- 光合成細菌(PSB)の正体と、市販品ごとの表示の違い
- メーカーの表示と研究からわかる効果の範囲
- 量と頻度、塩浴・薬浴など使う前に確かめること
- 餌や水換えの代わりにしない理由と、必要かどうかの判断のしかた
メダカのPSB(光合成細菌)とは?市販品の中身と呼び名
光合成細菌(PSB)は、ひとつの菌の名前ではなく、光を使って生きる性質をもった細菌のグループをまとめた呼び名です。
観賞魚の用品では、この細菌の製品が「PSB」という名前で呼ばれることがよくあります。
ただし「PSB」はサンミューズの登録商標だと、同社の公式ページに書かれています。
そのためこの記事では、細菌のことを光合成細菌(PSB)と書き、製品の名前として出すときはメーカー名と組にしてお伝えします。
光合成細菌を扱う会社の方が書いた学会誌の解説によると、光合成細菌は観賞魚やニシキゴイの飼育、クルマエビの養殖などで利用されています。
メダカ用として売られている製品は、薬ではなく、水質調整剤という分類に入っています。
水質調整剤とは、つまり水の状態を整える目的で飼育水に加える用品のことです。
この章では、まず光合成細菌が学術的にどんな細菌なのかを確かめ、次に市販品の表示が製品ごとにどう違うのかを表で比べます。
酸素を出さない光合成をする細菌

日本農芸化学会の会誌に載った書評では、光合成細菌を「酸素を出さない光合成」を行うバクテリアだと説明しています。
光合成と聞くと、水草のように光を浴びて酸素を出すしくみを思い浮かべるかもしれません。
ところが光合成細菌の光合成は、酸素を発生させずに、二酸化炭素や有機物を取り込んで自分の体の材料にするタイプだと、生物工学会誌の解説は説明しています。
同じ書評は、植物と同じように酸素を出す光合成をするシアノバクテリア(ラン藻)は、光合成細菌に含まれないとも書いています。
つまり光合成細菌(PSB)は、光を使って生きる細菌ではあっても、水の中に酸素を足してくれる存在ではありません。
この点は、後で説明する入れすぎと酸欠の話につながるので、覚えておいてください。
生物工学会誌の解説によると、光合成細菌のうち紅色非硫黄細菌と呼ばれる仲間は、暗い場所なら酸素のある環境でも増えることができ、光合成のときにも厳密に酸素のない条件を必要としません。
海外の総説では、この紅色非硫黄細菌はグラム陰性の細菌だと説明されています。
グラム陰性とは、つまり細菌を染め分ける検査で分けたときのグループの一つで、細菌を分類するときに使われる言い方です。
大きさについては、研究で分離された株が長さ1〜2µmほどの短い棒状と報告されていて、サンミューズも1〜2µm程のとても小さいバクテリアだと説明しています。
1µmは1mmの1000分の1なので、ひとつひとつを目で見ることはできない大きさです。
市販品は「水質調整剤」で、製品ごとに表示が違う
ジェックス(GEX)の「メダカ元気 育てるPSBウォーター 1L」は、公式サイトで「水質調整剤 > バクテリア関連」という分類に入っています。
サンミューズは、自社の「PSB®」を「水質コンディショナー」として紹介しています。
どちらも水の状態を整える用品という位置づけで、病気を治す薬として売られているものではありません。
一方で、効能の書き方は製品によってかなり違います。
たとえばサンミューズの「PSB®」の公式ページは、体色の色揚げや水草の生長促進にも効果があるとうたっていますが、その根拠となるデータは載っていません。
学会誌の解説でも、「商品がうたう効能や成分などはまちまちである」と指摘されています。
この解説の筆者は光合成細菌を扱う会社の社長で、業界の内側からも、効能を客観的に評価する基準が求められていると書いています。
そこでこの記事では、効き目ではなく、使う前に確かめられる表示を製品ごとに並べました。
表示の違いを比べるための表で、おすすめの順位ではありません。
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| 製品(メーカー) | 分類 | 量の表示 | カルキ抜きの要否 | 開封後の目安 | 出典 |
|---|---|---|---|---|---|
| メダカ元気 育てるPSBウォーター 1L(ジェックス) | 水質調整剤 > バクテリア関連 | カルキを抜いた水や飼育水1Lにつき5mL(水質浄化が目的なら2〜3日に1回、ゾウリムシ等の栄養補給・針子の餓死予防なら1日1回) | カルキ抜きをした水に使用するよう指示あり | 開封後は約半年を目安に、なるべく早めに使い切る | ジェックス公式の製品ページとQ&A |
| PSB®(サンミューズ) | 水質コンディショナー | 量の数字は公式ページに記載なし(水換え時に適量、または1日1回エサと一緒に投入) | 公式ページに記載なし | 公式ページに記載なし | サンミューズ公式の製品ページ |
| 濃縮PSB®(サンミューズ) | 水質コンディショナー | 公式ページに記載なし(ボトルタイプに計量カップ付き) | 水道水のカルキを中和するとうたう | 公式ページに記載なし | サンミューズ公式の製品ページ |
表のとおり、カルキ抜きについては、ジェックスがカルキ抜きをした水に使うよう指示しているのに対し、サンミューズの「濃縮PSB®」はカルキの中和をうたっていて、向きが正反対です。
カルキ抜きとは、つまり水道水に入っている消毒用の塩素を取り除くことです。
同じ光合成細菌の製品でも書かれている内容がそろっていないので、手元の製品の表示で確かめることが出発点になります。
なお、販売店で光合成細菌の製品として並ぶ商品でも、日本動物薬品の「たね水」のように、公式ページでは「水質浄化菌」と説明していて、光合成細菌とは書かれていないものがあります。
PSBの効果|メーカーの表示と研究でわかっていること
最初にお伝えしておきたいのは、メダカで光合成細菌(PSB)の効果を測った研究は、論文のデータベースで調べた範囲では見当たらなかったということです。
そのためこの章では、メーカーが製品に書いている表示と、メダカ以外の魚や微生物で行われた研究を、分けて紹介します。
メーカーの表示は製品をつくる会社自身の説明で、根拠となるデータが公式ページに示されていないものも少なくありません。
研究のほうは、ヒブナ(フナの仲間)の稚魚、ソウギョという魚の養殖水、海の繊毛虫などが対象で、メダカの容器とは条件が大きく違います。
繊毛虫とは、つまりゾウリムシのように細かい毛を動かして泳ぐ微生物の仲間です。
中心になる研究は、1969年に日本水産学会誌に載った小林達治ほかの論文です(出典:日本水産学会誌(1969)「光合成細菌による汚水浄化作用と餌料としての利用」)。
わかりやすい数字も出てきますが、メダカにそのまま当てはめられるものではない点に注意しながら読んでください。
どこまでがメーカーの主張で、どこからが研究の結果なのかを分けて読むと、期待しすぎずに光合成細菌とつき合えます。
水質:有害な物質を分解するはたらき
ジェックスは育てるPSBウォーターについて、光合成細菌が有害な物質を分解し、メダカに適した水質環境を整えると説明しています。
同じ製品のQ&Aでは、「水質浄化の視点では【サイクル】に近いろ過効果がある」とも書かれています。
サイクルは同じジェックスのバクテリア剤で、Q&Aでは硝化という水をきれいにするしくみと一緒に説明されている製品です。
硝化とは、つまり魚のフンや食べ残しから出る有害なアンモニアを、バクテリアが段階的に別の物質へ変えていくはたらきのことです。
サンミューズも「PSB®」を、「生物的ろ過において重要な働きをする生きたバクテリア」と紹介しています。
生物的ろ過とは、つまり目に見えない水の汚れを、バクテリアのはたらきで分解することです。
ただし、これらはいずれもメーカーの説明で、数字の裏付けは公式ページに示されていません。
メダカの容器で、光合成細菌を入れる前と後の水質を測った一次情報も、今回は見つかりませんでした。
研究に目を向けると、ソウギョの養殖水に光合成細菌の一種を加えた区で、アンモニア態窒素や亜硝酸態窒素などの量が、比べるための区(対照)より有意に低かったという報告があります。
有意に低いとは、つまり偶然の差とは考えにくい、はっきりした違いが出たということです。
ただしこの報告は要旨しか確認できておらず、水槽の条件や加えた量が要旨に書かれていないため、家庭のメダカの容器と比べることはできません。
1969年の論文では、落葉などの有機物が分解されていく途中で光合成細菌が急速に増え、浄化に役立っていることが明らかになったと報告されています。
こうした研究から、光合成細菌に水をきれいにする方向のはたらきがあると考えられていることはわかります。
一方で、メダカの容器にどれだけ入れると、水が何日でどう変わるのかを示した数字は見当たりません。
水質の面では、ろ過や水換えを助ける補助と考えておくのが、今わかっていることに合った受け止め方です。
稚魚:PSBを食べる微生物が増え、針子の餌が増える
ジェックスは育てるPSBウォーターについて、「光合成細菌をエサにして育つバクテリアやプランクトンを増やす効果があります」と書いています。
そのうえで、「稚魚の餌になるプランクトンが豊富な環境を作ることができます」と説明しています。
プランクトンとは、つまり水の中をただよって暮らす小さな生き物のことで、針子の餌になるゾウリムシのような微生物もその仲間です。
同じ製品ページには、10日間で1Lあたり約40万匹のプランクトンが増えるという数字もあります。
どのような条件で数えた数字なのかは製品ページからは読み取れないので、メーカーの表示として受け止めてください。
ここで大事なのは、ジェックスの説明が、光合成細菌がプランクトンを増やし、そのプランクトンを稚魚が食べるという順番になっていることです。
針子が光合成細菌そのものを主に食べて育つ、とは書かれていません。
翠水の商品ページも、光合成細菌そのものが餌として食べられているという考えは、ベテランの飼育者が唱える「説」として紹介するにとどめています。
サンミューズの「メダカの育て方」のページでも、光合成細菌はゾウリムシやミジンコなどのプランクトンのよい餌になると説明されています。
研究では、海にすむ繊毛虫に光合成細菌の一種を餌として与えたところ、72時間後に1mLあたり2,081個体まで増えたという報告があります。
ただしこれは要旨で確認した内容で、対象は海の繊毛虫であり、メダカの針子に与えるゾウリムシとは別の生き物です。
1969年の論文では、ヒブナのふ化直後の仔魚を、池で1カ月育てる実験が行われました。
仔魚とは、つまりふ化して間もない魚の赤ちゃんのことで、メダカでいえば針子と同じような時期にあたります。
この実験では、光合成細菌で処理した鶏糞の液を稚魚期の餌として加えると、生き残る割合(生残率)を高める効果があったと報告されています。
ただし、光合成細菌だけを入れた実験ではなく、光合成細菌で処理した鶏糞の液を、面積5m²、水深0.3mの池に入れたものです。
比べる区には、乾燥させた鶏糞だけを入れた区や、汚水の処理に使う微生物のかたまり(活性汚泥)だけを入れた区があり、池に何も加えない区はありませんでした。
ですから、この結果をもって、メダカの針子で同じことが起きるとは言えません。
サンミューズの「メダカの育て方」のページには、メダカ店の方が光合成細菌を生まれたての稚魚の餌として使い、稚魚の生存率や成長スピードが上がったと話す談話も載っています。
ただし、その談話には数字も、使わなかった場合との比べ方も示されていません。
光合成細菌(PSB)は、針子に直接食べさせる主食ではなく、針子の餌になる微生物を育てる土台づくりの補助と考えると、ほかの餌との役割分担がわかりやすくなります。
メダカへのPSBの使い方
光合成細菌(PSB)の使い方でいちばん大切なのは、量と頻度を、手元にある製品の表示どおりにすることです。
光合成細菌の製品は、メーカーによって濃さも使い方の書き方も違い、サンミューズには従来品の3倍に濃縮したとうたう製品もあります。
そのため、ある製品の量をほかの製品にそのまま当てはめることはできません。
ここでは、公式ページに量と頻度がはっきり書かれている例として、ジェックスの育てるPSBウォーターを取り上げます(出典:GEX「メダカ元気 育てるPSBウォーター 1L」)。
この製品のQ&Aには、目的ごとの頻度や、魚病薬・塩浴との関係までまとめられていて、光合成細菌の使い方を考えるうえでよい手本になります。
一方、サンミューズの「PSB®」は、公式ページに量の数字が書かれていないため、メーカーの案内を確かめる必要があります。
あわせて、塩浴や薬浴の最中には使わないことも押さえておきましょう。
量と頻度は製品の表示どおり、塩浴・薬浴の最中は使わない

ジェックスの育てるPSBウォーターは、カルキを抜いた水や飼育水1Lにつき5mLを入れ、軽くかき混ぜて使うと書かれています。
キャップ1杯が約5mLなので、1Lにつきキャップ1杯が1回分の目安です。
頻度は目的によって分かれていて、水質浄化が目的の場合は「2~3日に1回、規定量を添加してください」とされています。
一方、「ゾウリムシ等の栄養補給、針子の餓死予防に使用する場合」は、「1日1回、規定量を添加してください」と書かれています。
規定量とは、つまり製品が決めている1回分の量のことで、この製品なら1Lにつき5mLです。
たとえば水が10L入った容器なら、この製品の規定量は計算上50mLで、キャップ約10杯分になります。
これはあくまでジェックスの育てるPSBウォーターの場合の計算で、ほかの製品に当てはめることはできません。
水量がわからないまま目分量で注ぐと、多すぎたり少なすぎたりしやすいので、容器の水量を一度量っておくと安心です。
次に確かめたいのが、カルキ抜きの要否です。
ジェックスは育てるPSBウォーターについて、カルキ抜きをした水に使うよう、はっきり指示しています。
反対にサンミューズの「濃縮PSB®」は、「水道水のカルキを安全に中和」とうたっています。
同じ光合成細菌の製品でも指示が逆なので、カルキ抜きを省けるかどうかは、製品名を確かめたうえで、その製品の表示だけで判断してください。
塩浴や薬浴との関係も大切です。
塩浴とは、つまり塩を溶かした水に魚を入れて様子を見る方法です。
薬浴とは、つまり魚の病気の薬を溶かした水に魚を入れる方法です。
ジェックスはQ&Aで、魚病薬との併用や塩浴時の使用について、光合成細菌に影響を与える可能性があるため「推奨いたしません」と答えています。
同じジェックスの生きたプランクトンフードでも、使用中に塩浴や薬浴を行うとプランクトンが死滅するとして、注意がうながされています。
ですから、塩浴や薬浴をしている容器には、光合成細菌を入れないようにしましょう。
光合成細菌の製品は水質調整剤として売られていて、病気の治療に使うものではない点も覚えておいてください。
メダカの様子がおかしいときに、サインが出る場所から病気の候補を絞る方法と、製品表示の効能効果を確かめて魚病薬を選ぶ順番は、別の記事で整理しています。
使う前に表示で確かめる3つのこと
1つ目は、1回に入れる量と、目的ごとの頻度です。
2つ目は、カルキ抜きをした水に使う必要があるかどうかです。
3つ目は、塩浴・薬浴や魚病薬との併用についての注意です。
3つとも製品ごとに書き方が違うので、手元の製品の表示とメーカーの案内で確かめてから使いましょう。
この記事で量と頻度の例に取り上げたのは、ジェックスのメダカ元気 育てるPSBウォーターです。
使うときは、カルキを抜いた水に1Lあたり5mLという表示どおりの量を守り、塩浴や薬浴をしている容器には入れないようにしてください。
PSBを餌や水換えの代わりにしない理由
光合成細菌(PSB)には、針子の餌になる微生物を増やしたり、水質を整えたりする方向のはたらきが期待されています。
ただし、それだけでメダカの飼育が成り立つわけではありません。
ジェックスは生まれたての稚魚には生きたプランクトンフードとの併用をすすめていて、光合成細菌だけで育てる使い方は書いていません。
サンミューズの「PSB®」も、水換えのときに入れるか、1日1回エサと一緒に入れる使い方になっていて、水換えや餌やりを続けることが前提です。
研究機関がまとめたメダカの稚魚の飼育手順にも、光合成細菌は出てきません。
一方で、サンミューズは別の製品で、水換えや掃除の回数が少なくてすむとうたっていて、メーカーによって書き方に幅があるのも事実です。
この章では、餌、水換え、入れすぎの3つの面から、光合成細菌を代わりにしないほうがよい理由を順に整理します。
稚魚の餌はパウダーフードが基本、PSBは上乗せ
ジェックスは育てるPSBウォーターのQ&Aで、「生まれたての稚魚には、このPSBウォーターと生きたプランクトンフードとの併用がおすすめです」と書いています。
そして、その生きたプランクトンフードの表示にも「本製品は補助飼料です」とあり、針子・稚魚向けのパウダーフードなどと併用するよう案内されています。
補助飼料とは、つまり主食ではなく、ふだんの餌に上乗せして使う餌のことです。
ジェックスの飼育情報でも、ふ化した稚魚にはパウダー状にしたエサを与える手順が基本で、ゾウリムシなどの微生物やグリーンウォーターもすすめられています。
そのページの手順にも、光合成細菌は出てきません。
研究機関の手順を見ても、NBRPメダカの稚魚飼育方法では「餌は稚魚用の粉餌+ゾウリムシを与える」とされています。
九州大学の研究室の手順でも、ふ化後しばらくは粉餌を与えるやり方が紹介されていて、どちらにも光合成細菌は出てきません。
粉餌とは、つまり稚魚が食べられるように細かくした人工の餌のことで、パウダーフードとほぼ同じ意味です。
光合成細菌だけで針子が育つと書いた一次情報は、今回は見つかりませんでした。
効果の章で紹介したメダカ店の談話のように、光合成細菌を稚魚の餌として扱う説明もありますが、光合成細菌だけで育てたとは書かれていません。
ですから、針子の餌はパウダーフードなどを基本にして、光合成細菌はその上乗せと考えるのが、メーカーの説明とも研究機関の手順とも合う使い方です。
餌の与え方や容器の選び方を含めた針子の育て方の全体は、メダカ針子の育て方|全滅を防ぐ餌・水換え・容器の基本で詳しく解説しています。
PSBを入れても水換え・ゴミ取りは省かない
水の管理についても、光合成細菌を入れたから手間をなくせる、とは考えないほうが安全です。
ジェックスはQ&Aで、硝化によって最終的に「硝酸」まで分解された物質は、定期的な水換えで水槽の外に出され、きれいな水が保たれると説明しています。
光合成細菌については、ジェックス自身がサイクルに近いろ過効果があると書いているので、同じように、分解されたものは水換えで外に出すという考え方が当てはまると当ラボでは考えています。
硝化のしくみは、硝化と脱窒をわかりやすく解説!水換え激減、理想の水質を作る方法でくわしく説明しています。
一方でサンミューズは、「PSB® Plus」について、生物ろ過作用を促進するので「水換えや掃除の回数も少なくてすみます」とうたっています。
これはメーカーの主張で、何日に1回まで減らせるのかという数字は示されていません。
また、回数が少なくてすむとは書いていても、水換えがいらなくなるとまでは書いていません。
メダカの容器では、水換えのほかに、食べ残しやゴミを取り除くことも、水を汚さないための大切な手入れです。
九州大学の研究室の手順でも「残餌は毎食後に掃除します」とされていて、餌をあげたら残りを片づけることが前提になっています。
針子の時期の水換えについては、情報源によって考え方が分かれています。
花小屋の店主が監修したジェックスの記事は、稚魚でも水換えをするようすすめています。
一方、研究機関の手順は、稚魚の時期には水を換えず、汚さないように管理して、減った分の水を補うやり方です。
このように減った分だけ水を補うことを足し水と呼び、つまり水を入れ替えずに、掃除などで減った分を足す方法です。
どちらのやり方をとるにしても、光合成細菌を入れたから水換えやゴミ取り、足し水を省いてよい、とはされていません。
光合成細菌は、こうした水を汚さない手入れの代わりにはならないと考えておきましょう。
容器の水量や匹数から水換えの頻度を決める方法は、メダカの水換え頻度は何日おき?水量と匹数から決める目安と正しい手順で解説しています。
入れすぎない、PSBは酸素を出さない

光合成細菌の量については、一次情報どうしで書き方が食い違っています。
翠水は、ミジンコの培養に使う量を尋ねる質問への答えの中で、「入れすぎて生物が死ぬことはまずありません」と書いています。
同じ答えの中で翠水は、光合成細菌がほかの生物に毒性を示さないことも説明しています。
一方、1969年の論文の池の実験では、光合成細菌で処理した鶏糞の液をいちばん多く入れた区で、ヒブナの仔魚が5000尾のうち10尾しか残りませんでした。
この区は、1日15Lを24日間、合わせて360Lの処理液を入れた区です。
同じ区は、測定した日の溶存酸素が、すべての区の中でいちばん低くなっていました。
溶存酸素とは、つまり水に溶けている酸素の量のことです。
著者は「360lという高濃度にまで添加すると障害が出るようである」と書いています。
そして原因の一つとして「あるいは酸素不足による窒息死とも考えられる」と推測していて、通気をしていなかったことにも触れています。
ただし、これは有機物の多い鶏糞の処理液を屋外の池に大量に入れた実験で、市販品を表示どおりの量で使う場合と比べられる条件ではありません。
それでも、翠水のいう毒性の話とは別に、入れすぎれば酸素不足につながる心配があることは、この記録から読み取れます。
ですから量は増やすほどよいと考えず、製品の表示どおりにするのが安全です。
もう一つ覚えておきたいのは、はじめに説明したとおり、光合成細菌は酸素を出さない光合成をする細菌だということです。
光合成細菌を入れても水の中の酸素が増えるわけではないので、酸欠の対策にはなりません。
酸欠とは、つまり水の中の酸素が足りなくなり、魚が苦しくなる状態のことです。
酸欠が心配なときは、光合成細菌に頼らず、別の方法で対策を考える必要があります。
光合成細菌(PSB)を使うときに避けたいこと
表示の量より多く入れたり、水量を確かめずに目分量で注いだりすること。
塩浴や薬浴をしている容器、魚病薬を使っている容器に入れること。
カルキ抜きが必要な製品を、カルキを抜いていない水に使うこと。
光合成細菌を入れたからといって、基本の餌や水換え、ゴミ取りをやめること。
酸欠の対策として光合成細菌に頼ること。
メダカにPSBは必要か?判断のしかた
結論から言うと、光合成細菌(PSB)はメダカの飼育に必須のものではありません。
研究機関の稚魚の飼育手順も、ジェックスの稚魚の育て方のページも、光合成細菌を使わない形で組まれています。
ただし、光合成細菌はいらないとはっきり書いた一次情報もないので、使わなくても育てられる手順がある、という事実として受け止めてください。
そのうえで光合成細菌は、針子がなかなか育たないときに、基本の餌や水の管理を見直したうえで試してみる選択肢の一つ、というのが当ラボの考えです。
試すかどうかを決めるときは、効き目の宣伝文句ではなく、量やカルキ抜きの要否、開封後の目安といった表示を比べるのがおすすめです。
この章では、光合成細菌を使うとよい場面と、なくても育てられる根拠を整理し、最後によくある質問に答えます。
使うとよい場面と、なくても育てられる根拠

まず、なくても育てられる根拠から見ていきます。
前の章で見たとおり、NBRPメダカと九州大学の研究室の手順は、どちらも粉餌が中心で、光合成細菌を使っていません。
ジェックスの稚魚の育て方のページも同じで、パウダー状のエサを中心にした手順になっています。
さらにそのページでは、ゾウリムシについてさえ「人工フードでも十分ですので、難しいなと感じたらやめておきましょう」と書かれています。
次に、光合成細菌を使うとよい場面です。
ジェックスがQ&Aで挙げている使い方は、水質浄化が目的の場合と、ゾウリムシ等の栄養補給や針子の餓死予防に使う場合の2つです。
餓死とは、つまり食べられる餌が足りずに、弱って死んでしまうことです。
この目的に沿って考えると、たとえば次のような場面では、試してみる選択肢になります。
1つは、パウダーフードを与えていても、針子がなかなか大きくならないと感じるときです。
もう1つは、針子の容器で、餌になるゾウリムシなどの微生物を増やしたいときです。
ただ、針子が育たない原因は餌の量だけとは限らないので、光合成細菌を入れる前に、餌の与え方や水の汚れも見直してください。
反対に、今の育て方で針子が順調に育っているなら、無理に足す必要はありません。
使う製品を選ぶときは、この記事の表のように、量、カルキ抜きの要否、開封後の目安が公式にはっきり書かれているかを比べてみてください。
量の数字が書かれている製品なら、容器の水量から1回分を計算でき、入れすぎを防ぎやすくなります。
量の数字が書かれていない製品を使う場合は、メーカーに問い合わせるなどして、量を確かめてから使うと安心です。
光合成細菌(PSB)を試す前に確かめること
パウダーフードなどの基本の餌を、針子が食べられる形で与えていること。
食べ残しやゴミを取り除き、水を汚さない手入れを続けていること。
塩浴や薬浴をしている容器ではないこと。
容器の水量を把握していて、表示の量から1回分を計算できること。
使う製品の量、カルキ抜きの要否、開封後の目安を表示で確かめたこと。
メダカのPSBに関するよくある質問(FAQ)
光合成細菌(PSB)は、生まれたばかりの針子が直接食べますか?
針子が光合成細菌そのものを食べているかどうかは、はっきりしていません。
ジェックスは、光合成細菌がプランクトンを増やし、そのプランクトンが稚魚の餌になるという順番で説明しています。
翠水も、光合成細菌そのものが餌として食べられているという考えを「説」として紹介するにとどめています。
研究では海の繊毛虫が光合成細菌を餌にして増えた報告がありますが、メダカの針子で確かめたものではありません。
針子の餌はパウダーフードなどを基本にして、光合成細菌は上乗せと考えてください。
光合成細菌(PSB)の色が薄いと、効き目も弱いのですか?
色の濃さだけで効き目を判断することはできません。
ジェックスは育てるPSBウォーターについて、「製品の色と菌量には関連性がないことが判明しております」と説明しています。
翠水のコラムでも、「効果と色との因果関係はありません」と書かれています。
ただし翠水は商品ページで、色の濃さで菌の数をある程度判断できるとも書いていて、同じメーカーの中でも説明が一定していません。
色が濃いか薄いかで量を増やしたり減らしたりせず、表示どおりの量で使うのが無難です。
開封した光合成細菌(PSB)の製品は、いつまで使えますか?
ジェックスは、育てるPSBウォーターを含む同社のバクテリア剤について、「開封後は約半年を目安に」なるべく早めに使い切るよう案内しています。
あわせて、ボトルをよく振ってから使うようにとも書かれています。
サンミューズの「PSB®」と「濃縮PSB®」は、確かめた公式ページには開封後の目安が書かれていませんでした。
ほかの製品を使うときは、ボトルの表示やメーカーの案内で確かめてください。
光合成細菌(PSB)は屋外の容器でも使えますか?
屋外で使ってよいかどうかについて、確かめたメーカーの公式ページには、はっきりした指示は見つかりませんでした。
ジェックスの育てるPSBウォーターは、使用環境を「淡水」とだけ書いていて、屋内か屋外かは分けていません。
容器を日なたに置けば効きやすくなる、といった指示も、ジェックスの飼育容器での使い方には書かれていません。
屋外でも、容器の水量に合わせて表示どおりの量を守ることと、塩浴や薬浴の最中に使わないことは同じです。
まとめ|PSBは水質と稚魚の補助、表示どおりの量で餌や水換えの代わりにしない
光合成細菌(PSB)は、メーカーの説明では、水質を整えることと、針子の餌になる微生物を増やすことの補助として位置づけられています。
ただし、メダカで効果を測った研究は見当たらず、根拠になっているのはメーカーの表示と、メダカ以外の魚や微生物の研究です。
量の考え方も一次情報どうしで食い違っているので、この記事では製品の表示どおりの量を守る立場をとりました。
また、研究機関やメーカーの稚魚の手順を見ると、稚魚の餌も水の手入れも、光合成細菌がなくても成り立つ形で示されています。
そのため光合成細菌は、基本の餌と水の管理の上に重ねる補助として使い、代わりにはしないのが無理のない付き合い方です。
最後に、この記事の要点を振り返ります。
- 光合成細菌(PSB)は酸素を出さない光合成をする細菌の総称で、市販品は水質調整剤として売られている
- メダカで効果を測った研究は見当たらず、効果はメーカーの表示とメダカ以外の研究を分けて読む
- ジェックスの説明では、光合成細菌がプランクトンを増やし、そのプランクトンが稚魚の餌になる
- 量と頻度は製品の表示どおりにし、カルキ抜きの要否も製品ごとに確かめる
- 塩浴や薬浴の最中には使わない
- 稚魚の餌はパウダーフードなどが基本で、光合成細菌は上乗せにとどめる
- 光合成細菌を入れても、水換え・ゴミ取り・足し水は省かない
- 入れすぎは避け、酸欠の対策としては頼らない
- 必須ではなく、針子がうまく育たないときに試せる選択肢の一つ
使うときは、量と使い方を手元の製品の表示どおりにし、塩浴や薬浴の最中には使わないようにしてください。
表示に書かれていないことはメーカーの案内で確かめ、メダカの様子を見ながら、ご自身の判断で無理のない範囲で取り入れてみてください。


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