ミジンコの餌は結局どれがいい?迷ったときの選び方と量の決め方
ミジンコを増やそうと調べ始めると、まず引っかかるのが餌の話ですよね。生クロレラ、青水、クロレラ粉末、PSB、ドライイースト、鶏糞。名前だけでも6つ7つ出てきて、しかもどれも「これがいちばん増える」と書いてある。結局どれを買えばいいのか分からなくなる気持ち、よく分かります。
先に結論をお伝えすると、どれを使ってもミジンコは増えます。増えるかどうかで悩む必要はほとんどありません。分かれ目になるのは効果ではなく、あなたが培養する場所と、続けられるかどうかのほう。においが強い餌は屋内では使えませんし、要冷蔵で1か月しかもたない餌は買い置きができません。つまり餌選びは、栄養価の比較ではなく生活との相性で決めるのが正解かなと思います。
この記事では、ミジンコが実際に何を食べているのかという仕組みから、餌ごとの特徴と1回あたりの具体的な分量、水の濁り方で量を決める方法、そして餌を入れすぎて失敗したときの立て直しまでを順に整理します。読み終わるころには、あなたの環境で使うべき餌が1つに絞れているはずですよ。
なお、この記事はミジンコに与える餌のほうの話です。増えたミジンコを魚に与える側の話を探している方は、ベタへのミジンコの与え方を整理した記事やメダカ稚魚の餌の選び方の記事のほうが近いと思います。
- ミジンコが実際に食べているものと、餌選びの本当の基準
- 餌ごとの特徴・におい・1回あたりの具体的な分量
- 水の濁り方から与える量を決める方法
- 入れすぎで失敗したときの見分け方と立て直しの手順
ミジンコの餌に使えるものと選び方の基準
餌の比較記事を読んでいると、どうしても「どれがいちばん増えるか」に目が向きますよね。でも実際に培養してみると、増える・増えないを決めているのは餌の種類そのものより、量の加減と続けられるかどうかだと分かってきます。
というのも、ミジンコは特定の餌でないと食べられない偏食家ではないからです。水に漂っている細かい粒子なら、藻類でも微生物でも幅広く濾し取って食べられます。だから餌の選択肢が多く、しかもどれもそれなりに機能する。裏を返せば、「これでないと増えない」という餌は存在しないということでもあります。
この章では、まずミジンコの食べ方の仕組みを押さえたうえで、選び方の基準を1つに決めます。そのあと、生クロレラ・グリーンウォーター・クロレラ粉末・PSB・ドライイーストと鶏糞の順に、特徴と1回あたりの分量を具体的に見ていきましょう。あなたの環境が屋内か屋外かで、読むべき節が変わってきますよ。
ミジンコは何を食べて増えているのか

ミジンコは濾過食者(ろかしょくしゃ)と呼ばれる食べ方をします。脚を細かく動かして水流を作り、水の中に漂っている微細な粒子を漉し取って口へ運ぶ。つまり水に浮いている状態でなければ食べられないという制約があります。
これが餌選びのいちばん重要な前提です。底に沈んで積もってしまった餌は、ミジンコの口には入らず、ただ分解されて水を汚すだけ。人工飼料を魚に与える感覚とはまったく違うんですよね。だから「沈まない・散らばる・水に混ざる」ものが餌として機能します。
では具体的に何を食べているのか。大きく分けると次の3つです。
- 植物プランクトン(微細藻類)…クロレラなどの藻類。水を緑色にするあれです
- 細菌類…有機物を分解して増えるバクテリア。PSBもここに入ります
- 有機物の細かい粒子…枯れた植物や排泄物が分解されて細かくなったもの
ドライイーストや鶏糞が餌になるのは、それ自体を食べているというより、水に入れると微生物が湧き、その微生物が餌になるという間接的な仕組みだからです。だから効き始めるまでに時間差があります。
食べられる粒と、食べられない粒
濾し取れる粒子には大きさの範囲があります。細かすぎると網目を素通りしてしまい、大きすぎると口に入りません。だから同じ有機物でも、ミジンコにとって餌になるかどうかは「どれくらいの細かさで水に散っているか」で決まります。
具体的に言うと、魚用の人工飼料の粒はそのままでは大きすぎて食べられません。すりつぶして粉にし、水に溶いて初めて餌になります。逆に、水に溶けて完全に透明になってしまう成分は、粒として存在しないので濾し取れません。餌として機能するのは、水に散ってうっすら濁る状態のものだと覚えておくと選びやすいですよ。
この性質は、餌の効き方の違いにもつながります。生クロレラや青水は最初から粒(藻類の細胞)が水に散っているので、入れた瞬間から食べられます。一方でドライイーストや鶏糞は、まず微生物が増えるのを待つ必要があるため、効き始めるまでに数日かかる。即効性がほしいなら藻類系、放っておいて長く効かせたいなら微生物系という違いになります。
藻類の中身は培養条件で変わる
ちなみに藻類が作り出す成分の内訳は、種類と育った環境しだいで変わることが知られています。クロレラなら、硫黄や窒素が足りない状況に置かれるとでんぷんや脂質をため込む方向に傾く、といった具合です(出典:科学技術振興機構「JSTnews 2020年4月号」)。同じクロレラでも製品によって濃度や成分に差が出るのは、こうした背景があるからだと考えられます。
だからこそ、他の人が使っている分量をそのまま真似すると入れすぎになりやすい。製品ごとの表示を確認したうえで、少なめから始めるのが安全です。
なお、この記事は餌に絞った話です。容器や水温を含めた培養そのものの手順についてはミジンコの増やし方をまとめた記事のほうで扱っています。
餌選びは栄養価より置き場所で決まる

ここが本記事のいちばん言いたいところです。餌を比べるときの軸は、増えやすさではなく培養する場所が屋内か屋外かに置いてください。理由はシンプルで、効果の高い餌ほどにおいが強い傾向があるからです。
においの強さは、一般に鶏糞 > PSB > ドライイースト > 生クロレラ > クロレラ粉末の順とされています。屋外なら上位のものも選べますが、室内やベランダの窓際に置くなら、においの弱い側から選ばないと生活のほうが先に限界を迎えます。実際、培養をやめてしまう理由として「増えなかったから」より「においに耐えられなかったから」のほうが多いんじゃないかなと思うくらいです。
| 餌 | におい | 向いている場所 | 手間 | 保存 |
|---|---|---|---|---|
| 生クロレラ(原液) | 弱い | 屋内・屋外 | 薄めて入れるだけ | 要冷蔵・約1か月 |
| グリーンウォーター(青水) | ほぼ無い | 屋外中心 | 自作。日光が要る | 作り続けるので不要 |
| クロレラ粉末 | 弱い | 屋内 | 溶かしてから入れる | 常温・長期 |
| PSB(光合成細菌) | 強い | 屋外 | そのまま入れるだけ | 常温 |
| ドライイースト | やや強い | 屋外 | 溶かす。量の管理が難しい | 常温・長期 |
| 発酵鶏糞 | 非常に強い | 屋外専用 | 入れて微生物を待つ | 常温・長期 |
もうひとつ、意外と効いてくるのが保存のしやすさです。生クロレラは高性能ですが要冷蔵で保存期間も限られるので、使い切れる量を買い続ける必要があります。逆に粉末やドライイーストは常温で長期保存でき、思い出したときに再開できる。継続しやすさは、そのまま培養の成功率になります。
屋内で小さく回すなら、2リットルのペットボトルという選択肢もあります。容器が小さいほど餌の量はシビアになりますので、ペットボトルでの管理のコツをまとめた記事もあわせてどうぞ。
生クロレラの特徴と1回あたりの分量
屋内でも屋外でも使えて、初めての1本としていちばん扱いやすいのが生クロレラの原液です。生きた藻類を濃縮したもので、水に入れると緑色に広がります。
最大の利点は、食べ残しても水が急激に傷みにくいこと。生きている藻類なので、食べられなければそのまま漂っているだけで、腐って水を汚す速度が遅いんですね。量の加減を覚えるまでの安全マージンが広い、という言い方もできます。
分量の目安は、原液を1,000〜2,000倍に薄めるくらい。水1リットルに対して0.5〜1ml(=1cc前後)というのがよく紹介されている使い方です。10リットルの容器なら5〜10mlですね。入れた直後に薄く緑がかり、半日から1日で薄くなるくらいが適量とされています。
ただし、製品ごとに濃縮率がまったく違います。同じ「生クロレラ」という名前でも数倍の差があることがあるので、他所の分量をそのまま持ち込むのは危険です。正確な使用量は購入した製品の公式サイトや表示をご確認ください。
少量をどう計るか
「水1リットルに1ml」と言われても、1mlを目分量で入れるのは案外難しいです。おすすめは、スポイトやシリンジ(注射器型の計量器)を1本用意しておくこと。目盛りが付いていれば、毎回同じ量を再現できます。前回と同じ量を入れたつもりで倍量だった、という事故が防げます。
もうひとつのやり方は、あらかじめ薄めておく方法です。ペットボトルの水500mlに原液を数ml溶かして「希釈ボトル」を作っておけば、あとはキャップ1杯を放り込むだけ。濃いものを直接扱わないので、入れすぎの失敗がぐっと減ります。ただし薄めた液は日持ちしないので、数日で使い切れる量だけ作ってくださいね。
使うときの注意点
使用前によく振って、濃度を均一にしてから計ってください。沈殿したまま上澄みだけを使うと薄すぎ、底のほうを使うと濃すぎ、ということが起きます。
また、要冷蔵で開封後の使用期限はおおむね1か月ほどとされています。買い置きができない消耗品なので、少量ずつ買うか、届いたら小分けにして使うほうが無駄が出ません。使い切れずに古くなったものをまとめて投入すると、かえって水を汚す原因になるので気をつけてくださいね。
原液タイプなら、薄めて入れるだけで使えます。食べ残しても水が急に傷みにくいので、量の加減を覚えるまでの1本目として扱いやすいですよ。要冷蔵で保存期間も限られるので、使い切れる量から試してみてください。
グリーンウォーターを餌として使う方法
お金をかけずに続けたいなら、グリーンウォーター(青水)がいちばん現実的です。植物プランクトンが増えて緑色になった水のことで、ミジンコにとってはこれ自体が餌そのもの。水と餌を同時に用意できるのが最大の強みですね。
作り方は、汲み置きした水を日当たりのいい屋外に置き、種になる青水か少量の生クロレラを入れて数日待つだけ。屋外のメダカ容器から少しもらってくるのがいちばん早いです。詳しい手順はグリーンウォーターの作り方をまとめた記事にありますので、そちらもどうぞ。
使い方は、培養容器の水を少し捨てて、その分だけ青水を足すという入れ替え方式。濃さの目安は向こう側が透けて見えるくらいの薄い緑です。濃すぎる青水を一気に入れると、夜間に藻類が酸素を消費して酸欠を招くことがあるので、薄めを何度かに分けるほうが安全ですよ。
種になる青水をどう手に入れるか
ゼロから青水を作るより、すでにできているものを少し分けてもらうほうが圧倒的に早いです。屋外でメダカを飼っている容器の水、睡蓮鉢の水、あるいは市販の生クロレラをほんの少し入れて日光に当てる、といった方法があります。種が入っていれば、あとは日光と栄養があれば勝手に増えていきます。
維持のコツは、常に2つの容器で回すこと。片方を使ったら、もう片方が濃くなるのを待つ。1つだけで運用すると、使った分だけ薄くなって回復が追いつかなくなります。青水は「作る」というより「育てて分ける」感覚のほうが近いですね。
栄養が切れると色が抜けて透明に戻ってしまうので、メダカを一緒に入れておくか、少量の液肥やPSBを足して維持する方法もあります。ただし培養容器に流用する前提なら、余計なものを足しすぎないほうが安全かなと思います。
弱点は2つあります。ひとつは濃度が安定しないこと。日照と気温で藻類の量が変わるので、同じ量を足しても効き方が違います。もうひとつは冬に作れないこと。日射が弱まると青水そのものが維持できなくなるので、冬は別の餌に切り替える前提で考えておいてください。
逆に濃くなりすぎて困ったときは、グリーンウォーターを透明に戻す手順の記事が役に立つと思います。
クロレラ粉末の使いどころと溶かし方
室内培養で、なおかつ買い置きしておきたいならクロレラ粉末が便利です。乾燥した粉なので常温で長く保存でき、においもほとんどありません。生クロレラの「冷蔵が要る・1か月で使い切る」という制約を外したい人に向いています。
使うときのコツは、粉のまま容器に振り入れないこと。粉は水面に浮いたまま固まってしまい、そのまま沈んで底で腐ることがあります。必ず別の器で少量の水に溶かし、しっかり混ぜて液状にしてから容器へ入れてください。ペットボトルに水と粉を入れて振る、というやり方が手軽です。
分量は製品によって差が大きいので、まずは表示の最少量から。目安としては、溶かした液を入れた直後にうっすら緑に濁り、1〜2日で透明に戻るくらいを狙います。翌日も濁ったままなら明らかに多すぎです。
保存するときは、湿気を避けてしっかり密閉してください。粉が湿気を吸うと固まって計りにくくなりますし、風味ならぬ品質も落ちます。小さめの密閉容器に移し、乾燥剤を入れておくと扱いやすいです。開封後に長く置いたものは、少量で試してから本番の容器に使うと安心ですね。
溶かすときにダマができる場合は、いきなり大量の水に入れず、まず少量の水で練ってペースト状にしてから残りの水を足すとうまくいきます。ダマのまま入れると、それが沈んで底で腐る原因になります。
注意点として、粉末は溶かしすぎると濁りが取れにくくなります。生クロレラと違って生きた藻類ではないので、食べられなかった分はそのまま有機物として水に残るんですね。安全マージンは生クロレラより狭いと考えて、少なめから始めてください。
常温で置いておける粉末タイプは、生クロレラを切らしたときの予備としても心強いです。少量ずつ溶かして使う前提なら、小さめの容量から始めると無駄が出にくいと思いますよ。
PSBやドライイーストが屋外向きな理由
ここからは、においの強い側の餌です。屋外に置ける環境がある人だけの選択肢だと考えてください。
PSB(光合成細菌)
PSBは、光合成をする細菌を培養した液体です。ミジンコにとっては細菌そのものが餌になり、そのまま入れるだけで使えます。手間がかからないのは大きな利点ですね。
ただし、生クロレラと比べると増殖のスピードは緩やかとされています。PSBと水道水だけでも培養は成立するものの、爆発的に増やしたいなら藻類系のほうが向いている、という位置づけです。そして何より、においが強い。マンションの室内で使うと、家族から苦情が出る可能性が高いと思ってください。
使い方はシンプルで、規定量をそのまま容器へ注ぐだけ。分量は製品ごとに差が大きいので、必ず表示に従ってください。10リットルの容器に対して数mlから十数ml、といった単位で書かれていることが多いです。入れた直後に赤みがかった色が広がりますが、しばらくすると薄くなります。
PSBのもうひとつの使い道として、青水やクロレラと併用して水質の安定を狙うやり方もあります。ただし前述のとおり、同じ日に2種類を重ねると適量が分からなくなるので、日をずらして使うほうが管理しやすいですよ。
ドライイーストと発酵鶏糞
ドライイーストは、パン作りに使うあの粉です。水に溶かすと微生物が湧き、それがミジンコの餌になります。安価で手に入りやすいのが魅力。分量の目安は水10リットルに対して0.5g程度、あるいは1リットルあたり米粒半分ほどと紹介されることが多いです。
ただし、これは量の管理がいちばん難しい餌でもあります。分解の過程でアンモニアが出るため、入れすぎると水質が一気に悪化して全滅につながります。油膜が張ったり、においが出てきたら量が多すぎるサイン。すぐに水を替えてください。
入れ方のコツは、粉のまま振り入れずに少量の水で溶いてから加えること。粉のままだと水面に浮いて固まり、そのまま沈んで局所的に腐ります。溶かして全体に散らせば、微生物も均一に湧いてくれます。
発酵鶏糞は、水に入れて1〜2週間ほど置くと微生物が繁殖し、それが餌になるという仕組みです。安価で長く効きますが、においは今回紹介する中で最も強い。屋外専用と割り切ってください。園芸用として売られているものを使う場合、成分や製造方法は製品ごとに違うので、正確な情報は公式サイトをご確認ください。
屋外に置ける環境があるなら、そのまま注ぐだけで使えるPSBは手間がかかりません。ただしにおいはかなり強いので、室内で培養する予定の方は前の節のクロレラ系のほうが無難かなと思います。
ミジンコの餌の与え方と失敗したときの立て直し
餌が決まったら、次は与え方です。ここでつまずく人の悩みは、ほぼ2種類しかありません。「入れているのに増えない」と「順調だったのに全滅した」。
そして面白いことに、この2つはほとんど同じ原因から来ています。餌が多すぎるか、少なすぎるか。増えないのは餌が足りていないか水温が低いから、全滅は餌が余って水が傷んだから。つまり餌の量さえ合っていれば、どちらの悩みも起きにくいということです。
ではその「合っている量」をどう知るのか。答えはグラム数ではなく、水の見え方です。ここからは、濁り方から量を決める方法、頻度と立ち上げ期の注意、入れすぎたときに起こること、そして餌を切らさないための備え方までを順に見ていきましょう。
与える量は水の濁り方で決める

いちばん実用的な基準はこれです。「入れた直後にうっすら濁り、1〜2日で透明に戻る」。この状態を保てる量が、あなたの容器にとっての適量になります。
なぜグラム数で決めないかというと、適量は容器の水量、ミジンコの数、水温、日照のすべてで変わるからです。同じ10リットルの容器でも、ミジンコが100匹のときと1万匹のときでは必要量がまるで違う。数字を固定すると、必ずどちらかでズレます。
判定の仕方は簡単です。餌を入れた翌日、容器を横から覗いてみてください。
- 透明に戻っている…適量、または少し足りない。同じ量を続けてよい
- 数時間で澄み切った…足りていない。次から1.5倍くらいに増やす
- 翌日も濁ったまま…明らかに多すぎ。次回を半分にするか1回飛ばす
- 白く濁っている…緑ではなく白の濁りは危険信号。次項を参照
濁りを正しく見るには容器の色も関係する
黒い容器は水の色が読みにくいので、判定するときは白い容器やコップに少しすくって、明るいところで横から見てください。上から覗くと水深のぶん色が濃く見えるので、実際より濁っていると誤判定しがちです。横から、同じ位置で、同じ時間帯に見る。この3つを揃えるだけで判断の精度が上がります。
また、屋外の容器は日光で藻類が増えるため、餌を入れていなくても緑がかることがあります。この場合の緑は餌が余っているサインではないので、餌の量を減らす必要はありません。屋外では「餌を入れた直後と翌日の差」で見るほうが確実です。
緑の濁りと白い濁りは、意味がまったく違います。緑は餌が残っている状態ですが、白は細菌が急増している状態で、酸欠につながりやすい。同じ「濁っている」でも、対処の緊急度が変わってきます。
与える頻度と立ち上げ期の注意点
頻度は、環境にもよりますが2〜3日に1回程度から始めるのが無難です。毎日与えるやり方もありますが、その場合は1回の量をぐっと減らします。少量をこまめに、が原則ですね。
いちばん量を見誤りやすいのが立ち上げの直後です。種ミジンコを入れたばかりのときは個体数が少ないので、容器の大きさに合わせて餌を入れると確実に余ります。最初の1週間は、目安量の半分くらいから始めるとちょうどいいと思いますよ。
逆に、増えてきたら量も増やす必要があります。ミジンコは条件が良ければ数日おきに出産を繰り返すので、増え方は足し算ではなく掛け算。ある時点から餌の消費が急に速くなります。「昨日まで適量だったのに今日は数時間で澄んだ」というのは、それだけ数が増えたということです。
立ち上げから軌道に乗るまでの1週間
おおまかな流れを示しておきます。1〜2日目は、種を入れて水になじませる期間。餌は目安量の半分以下、あるいは入れずに様子を見ても構いません。3〜4日目あたりから少しずつ数が増え始めるので、ここで通常の半分程度を与えます。
5〜7日目になると、餌の減りが目に見えて速くなってきます。ここが量を通常に戻すタイミング。10日前後で「かなり増えた」と感じられるようになる、というのがよく紹介されている経過です。ただし水温が低い時期はこれよりずっと遅くなるので、日数だけで判断せず、餌の減り方を基準にしてくださいね。
この期間にいちばんやってはいけないのが、変化が見えないからと餌を増やすことです。立ち上げ期は個体数が少ないぶん餌が余りやすく、そこで足すと一気に水が傷みます。「3日経っても増えない」は正常の範囲だと思って待つのが正解かなと思います。
ただし、増えてきたときに真っ先にやるべきは餌を足すことではありません。密度が上がると酸素の消費も増えるので、まず半分を別の容器に分けるほうが安全です。餌だけを増やすと、増殖と有機物の分解が同時に進んで酸欠を招きやすくなります。容器を2つ持っておくと、片方が崩れたときの保険にもなりますよ。
餌を入れすぎたときに起こること

培養の失敗でいちばん多いのが、この入れすぎです。しかも厄介なことに、「増えないから餌を足す」という判断が事態を悪化させるという構造になっています。
起きることを順番に並べると、こうなります。
- 食べ切れなかった餌が水中と底に残る
- それを分解する細菌が急増し、水が白く濁る
- 細菌の呼吸で水中の酸素が消費される
- ミジンコが酸欠になり、体が赤みを帯びてくる
- 分解の過程でアンモニアが蓄積し、数を減らしていく
白い濁りが出たときに見るもの
白濁りが出たら、あわせて確認したいのが3つあります。ひとつは水面の油膜。うっすらとした膜が張っていれば有機物が過剰です。ふたつめはにおい。ツンとしたにおいや生臭さが出ていれば分解が進んでいます。みっつめはミジンコの色で、健康なタマミジンコは薄い茶色から半透明ですが、酸欠になると体内のヘモグロビン濃度が上がって赤みを帯びると説明されています。
この3つのうち2つ以上が当てはまるなら、様子見ではなく手を打つ段階です。逆にどれも当てはまらず、ただ薄く白いだけなら、餌を止めて1〜2日待てば戻ることもあります。白濁り=即リセットではありません。
ポイントは、ミジンコを直接殺しているのは餌ではなく、酸素不足とアンモニアだということ。だから対処も「餌を減らす」だけでは足りません。すでに溶け込んでしまった分を抜く必要があります。
入れすぎに気づいたときの立て直し手順
- まず生き残りを探し、数匹でもいればスポイトで新しい水の別容器へ避難させる
- 餌を止める。数日与えなくてもミジンコは持ちこたえます
- 水を3分の1ほど、汲み置きした水と入れ替える(全部替えない)
- 容器の内壁のぬめりを軽く拭う
- ごく弱いエアレーションを足して酸素を補う(水面が波立たない強さ)
- 数日様子を見て、透明に戻ってから普段の半分の量で再開する
水を一度に全部替えるのは避けてください。水質が急に変わること自体がミジンコの負担になりますし、種になる個体まで一緒に捨ててしまうことがあります。複数の容器に分けて培養している場合も、同じ日に全部を触らないのが鉄則です。片方を処置して様子を見て、問題なければもう片方。生き物が相手なので環境差・個体差があり、同じ手順でも結果は変わります。判断に迷うときは無理をせず、専門店や経験者に相談してくださいね。
餌を切らさないための保存と併用
意外と見落とされがちなのが、餌が切れて培養が止まるというパターンです。とくに生クロレラは要冷蔵で保存期間が限られるため、注文を忘れているうちに使い切ってしまうことがあります。
おすすめは、においの弱い餌を2種類持っておくこと。たとえばメインを生クロレラにして、常温保存できるクロレラ粉末を予備に置いておく。あるいは屋外なら青水をメインにして、日照が足りない時期の保険に粉末を用意しておく、という組み合わせですね。
併用そのものは問題ありません。今日は青水、明日は粉末、という与え方でもミジンコは食べます。ただし同じ日に2種類を重ねて入れるのは避けてください。それぞれの適量が分からなくなり、結果として入れすぎになりやすいからです。切り替えるなら1種類ずつ、量を見ながら移行しましょう。
もうひとつの保険が、休眠卵(耐久卵)を1つ確保しておくことです。乾燥した状態で長く保存でき、培養が全滅しても種を買い直さずに再開できます。餌のストックと種のストック、この2つがあると培養はかなり途切れにくくなりますよ。
餌を切り替えるときの手順
青水から粉末へ、生クロレラからPSBへというように餌を変えるときは、いきなり全部を入れ替えないほうが安全です。ミジンコ自体は餌を選びませんが、餌が変わると水の性質も変わるので、急な切り替えは水質の変動として効いてきます。
やり方としては、まず新しい餌を通常の半分だけ与える日を数回はさみ、その間は元の餌を止める。数日かけて新しい餌の適量を見つけてから、通常量へ移行する。この段取りなら、濁り方の変化を見ながら量を調整できます。切り替えの初日に「いつもと同じ量」を入れないこと、これだけ守れば大きな失敗にはなりにくいですよ。
コストで見るとどうなるか
ざっくりした感覚として、初期費用がいちばん安いのは自作できる青水、次いでドライイーストや鶏糞、そして生クロレラやPSBという順になります。ただし青水は日照という見えないコストがかかりますし、安い餌ほど量の管理が難しくて失敗しやすい。
失敗して種から買い直すことを考えると、扱いやすさに払うお金は結果的に安上がりになることが多いかなと思います。価格や在庫は変動するので、購入前に各ショップで確認してくださいね。
ミジンコの餌についてよくある質問
米のとぎ汁をミジンコの餌にしてもいいですか?
使っている方はいます。とぎ汁に含まれる有機物で微生物が湧き、それが餌になるという仕組みで、ドライイーストや鶏糞と考え方は同じです。ただし濃度がまったく安定せず、入れすぎると水がすぐ腐ります。においも出やすいので、屋外で少量ずつ試す前提で考えてください。安定して増やしたいなら、量を計れる餌のほうが確実だと思います。
餌を与えなかったらミジンコはどれくらい持ちますか?
環境によりますが、水に有機物が残っていれば数日は持ちこたえることが多いです。とくに屋外の容器では、自然に発生する藻類や微生物をある程度食べられるので、旅行などで数日空けても全滅することは少ないと思います。むしろ「留守中に腐らないよう多めに入れておく」ほうが危険です。出かける前は、いつもより少なめにするくらいでちょうどいいですよ。
メダカ用の人工餌をミジンコに与えることはできますか?
粒のままでは沈んでしまい、ミジンコの口には入りません。どうしても使うなら、指ですりつぶして粉状にし、水に溶いてから入れる必要があります。ただし人工飼料は水に溶けると急速に分解が進み、水質を悪化させやすいです。緊急のつなぎとしてごく少量なら使えますが、常用する餌としては向いていないと考えたほうがいいと思います。
餌を入れても水が緑にならないのはなぜですか?
ミジンコが順調に食べている証拠なので、多くの場合は問題ありません。入れた直後だけ緑になり、すぐ透明に戻るのは、それだけ個体数が多いということです。ただし、数時間で澄み切ってしまうなら量が足りていない可能性があります。次回から少し増やして、翌日まで薄く色が残るくらいに調整してみてください。なお、そもそも緑にならない餌(PSBやドライイースト)を使っている場合は、緑かどうかで判断できません。
ミジンコの餌選びのまとめ
最後に要点をまとめます。ミジンコは水中に漂う細かい粒子を濾し取って食べる生き物なので、餌は沈まずに水へ混ざるものであれば幅広く使えます。だから「これでないと増えない」という餌はありません。
選ぶ基準は栄養価ではなく、屋内か屋外か。においの弱い順に、クロレラ粉末・生クロレラ・青水が屋内向き、ドライイースト・PSB・鶏糞が屋外向きです。初めての1本なら、食べ残しても水が傷みにくい生クロレラがいちばん失敗しにくいかなと思います。
量は数字ではなく水の見え方で決めてください。入れた直後にうっすら濁り、1〜2日で透明に戻るのが適量。翌日も濁っていれば多すぎ、数時間で澄めば足りていません。そして増えてきたときは餌を足すより、まず容器を分けるほうが安全です。
製品ごとに濃度も推奨量も違うので、正確な使用量は公式サイトや表示をご確認ください。生き物が相手なので環境差・個体差があり、同じ手順でも結果は変わります。判断に迷うときの最終的な判断は、専門家や購入した専門店にご相談くださいね。あなたの容器で、ミジンコが気持ちよく増えてくれますように。

