水槽の硬度が足りないときは?GHとKHを見分けて少しずつ上げるコツ
水質検査で硬度の数字がほとんど出なかったり、エビの元気がなかったりして、水槽の硬度を上げる方法を探している方も多いかなと思います。総硬度を上げるにはどうすればいいのか、サンゴ砂やカキ殻を入れればいいのか、GHを上げる添加剤とKHを上げる調整剤は何が違うのか。調べるほど情報が混ざって、手が止まってしまいますよね。
先に結論を言うと、硬度を上げる前にまず決めたいのは“上げたいのはGH(総硬度)なのか、KH(炭酸塩硬度)なのか”です。この2つは似た名前ですが、上がる素材も、pHへの効き方も違います。GHだけを上げたいのにサンゴ砂を入れるとpHまで上がりやすく、重曹(炭酸水素ナトリウム)を使うKH用の調整剤を入れてもGHの数字は増えない、ということが起こります。
この記事では、硬度が低すぎるときに起きること、GHとKHの違い、メーカー資料の目安と単位の換算、硬度の測定のしかた、水道水の硬さを確認したうえで、水換えや足し水、GHを上げる添加剤、サンゴ砂・カキ殻、エビやシュリンプの水槽での上げ方まで、順番に整理していきます。添加剤の量は自分の水量で計算できるように式も載せたので、数字を見ながら少しずつ進めてみてください。
- 硬度が低すぎるときに魚やエビに起きること
- 総硬度GHと炭酸塩硬度KHの違いと単位の換算
- GHとKHのどちらを上げるかで選ぶ方法の早見表
- 添加剤とサンゴ砂の量の目安と計算のしかた
水槽の硬度を上げる前に押さえたいGHとKHの基本
この章では、硬度を上げる作業に入る前に知っておきたい土台をまとめます。硬度が低すぎると何が困るのか、GHとKHはそれぞれ何を表していて、上げ方がどう違うのか。そして、メーカーが示している目安の数字と、°dH・mg/L・meq/Lといった単位の読み替え方、試薬での測り方、水道水の硬さの調べ方と、水槽の硬度が下がっていく原因までを順に見ていきます。ここを押さえておくと、次の章で紹介する方法のうち、どれが自分の水槽に合うのかがすっと選べるようになりますよ。とくに単位は製品ごとに°dHやmeq/Lとばらばらなので、読み替えの表も用意しました。
硬度が低すぎると魚やエビに起きること
硬度が低すぎる水で困るのは、大きく分けて2つです。1つは、魚やエビの体の中と外の水のミネラルの差が大きくなり、体の調整に負担がかかること。もう1つは、KHが少ないとpHが急に下がりやすくなることです。
1つ目について、アメリカの水質調整剤メーカーのSeachem(シーケム)は、RO水(逆浸透膜で不純物を取り除いた水)に使うミネラル剤の説明で、ミネラルがまったく無い状態は、ミネラルを含む環境に適応した種に浸透圧のストレスを与える、と書いています。さらに、強い浸透圧ストレスは浸透圧ショックを起こし、急な死につながるとも説明しています。魚は体の塩分と水分の釣り合いを保ちながら生きているので、まわりの水の成分が極端だったり急に変わったりすると、その調整が追いつかなくなる、というわけですね。
同じ説明では、もともとミネラルの多い場所にすむ魚ほど、ミネラルの少ない水槽で飼われたときの影響が大きいとも書かれています。つまり、硬度が低いこと自体がすべての魚に悪いのではなく、硬めの水に適応した魚を軟らかすぎる水で飼うと負担になりやすい、と整理できます。
2つ目のpHの話は、KHが関わります。Tetra(テトラ)社の水質検査セットの説明書では、KHが3°dHより少ない水では、pHがとても速く下がる(酸性に傾く)ことがあると書かれています。pHの急な変化は魚にも水草にも微生物にも負担になるので、KHが低すぎる状態は“今は大丈夫でも崩れやすい水”と考えておくと安心です。
エビについては、ドイツのDennerle(デナーレ)社が、軟水を好むエビ向けのミネラル塩の説明書で、この製品に含まれるミネラルや微量元素が成長や健康、繁殖の成功を支えると案内しています。あくまで製品の特長としての説明ですが、エビの飼育でミネラルが意識されている例と言えますね。
ここで大事なのは、“低いから足す”の前に、飼っている生き物がどのくらいの硬さを好むのかを確かめることです。軟水を好む魚や水草もいるので、むやみに上げればいいわけではありません。次の項目からは、そのための物差しになるGHとKHの違いを見ていきます。
総硬度GHと炭酸塩硬度KHは上げ方が違う

硬度の話でいちばん混乱しやすいのが、GHとKHの違いです。結論から言うと、GHは“カルシウムやマグネシウムの量”、KHは“pHを支える炭酸水素イオンの量”で、上がる素材が違います。
テトラの説明書では、GH(総硬度)はカルシウムやマグネシウムなどのイオンの濃度で決まり、多ければ硬水、少なければ軟水になると書かれています。一方のKH(炭酸塩硬度)は、水に溶けている炭酸水素イオン(重炭酸イオン)の濃度で決まり、pHの急な低下を防ぐ緩衝の役目をする、と説明されています。どちらも「硬度」と呼ばれていますが、見ているものが違うんですね。
この違いは、硬度を上げる素材の選び方にそのまま出てきます。たとえば、次のような関係があります。
- カルシウム・マグネシウムの硫酸塩などを使うGH用の添加剤は、GHを上げる(KHを上げないと明記しているのはデナーレのBee Salt GH+)
- 炭酸水素塩を使うKH用の調整剤は、KHとpHを上げる(GHへの効き方は説明に記載なし)
- サンゴ砂のような炭酸カルシウムの素材は、販売元のAquarium Co-Opの説明では、KHを大きく上げ、硬度も少し加える
実際、シーケムのGH用の添加剤Equilibrium(イクイリブリアム)は、カリウム・カルシウム・マグネシウムの硫酸塩などからできていて、ミネラル分(GH)を上げる製品と説明されています。同社は同じページで、ナトリウムはGHの数字に入る成分ではない、とも書いています。デナーレのエビ用ミネラル塩Bee Salt GH+も、総硬度を上げて炭酸塩硬度は上げない、と製品の特長に書かれています。
反対に、シーケムのKH用のAlkaline Buffer(アルカリンバッファー)は、pHとアルカリ度(KH)を上げる緩衝剤で、pH7.2〜8.5の間で緩衝すると説明されています。テトラのpH/KH Plusも、緩衝の役目をする炭酸水素イオンの濃度を上げる製品として説明書に載っています。
GHを上げたいのか、KHを上げたいのかで、使う素材がまったく変わります。GHは“ミネラルの量”、KHは“pHのクッションの量”と覚えておくと、製品の説明を読むときに迷いにくくなりますよ。
ここを押さえないまま“硬度を上げたいからサンゴ砂”と決めてしまうと、KHとpHのほうが大きく動いて、狙いと違う数字が変わる、といったずれが起きやすくなります。まずは2つの数字を別々に測り、どちらが足りないのかを確かめるのが近道です。
KH(炭酸塩硬度)の目安を生き物のタイプ別に知りたいときや、試薬での測り方を確かめたいときは、炭酸塩硬度の目安と測り方の解説も参考にしてみてください。
メーカー資料で比べる硬度の目安と単位
次に、どのくらいの数字を目指せばいいのかを見ていきます。結論としては、メーカーごとに幅の取り方が違うので、1社の数字だけで決めず、水槽のタイプと飼っている生き物に合わせて読むのがおすすめです。
テトラ、ドイツのJBL、シーケム、デナーレの4社が公開している数字を横に並べてみました。どれも一般的な目安です。
| 水槽・生き物のタイプ | GH(総硬度)の目安 | KH(炭酸塩硬度)の目安 | 出典 |
|---|---|---|---|
| 淡水の水槽と池(全般) | 6〜16°dH | 3〜10°dH | テトラ 水質検査セットの説明書 |
| 淡水のコミュニティ水槽 | 8〜25°dGH | 5〜16°dKH | JBL 水質分析表(V05) |
| 水草レイアウト(アクアスケープ) | 6〜15°dGH | 4〜10°dKH | JBL 水質分析表(V05) |
| 水草水槽(一般的な目安) | 3〜6dH(1〜2meq/L) | 3〜6dKH(1〜2meq/L) | シーケム Equilibriumの説明 |
| 軟水を好むエビ(クリスタルレッドなど) | 5.5〜6.5°dH | 記載なし(この製品はKHを上げない) | デナーレ Bee Salt GH+の説明書 |
| 屋外の池 | 8〜30°dGH | 5〜20°dKH | JBL 水質分析表(V05) |
表を見ると、同じ「淡水の水槽」でも、テトラは6〜16°dH、JBLのコミュニティ水槽は8〜25°dGHと、上の幅がかなり違います。一方で、水草水槽になるとJBLは6〜15°dGH、シーケムは3〜6dHと低めの側に寄り、軟水を好むエビ向けのデナーレは5.5〜6.5°dHと狭い範囲を示しています。水槽のタイプによって目安の中心が違う、ということが分かりますね。
°dH・mg/L・meq/Lの読み替え
もう一つややこしいのが単位です。アクアリウム用品は“°dH(ドイツ硬度)”が多く、水道局や研究はmg/L(炭酸カルシウム換算)、シーケムはmeq/L(ミリ当量毎リットル)を使います。ドイツ硬度の1°dHは水1Lに酸化カルシウム10mg分の硬さとして決められた単位で、炭酸カルシウムに直すと分子量の比から約17.85mg/Lになります。
meq/Lについては、シーケムが自社の説明で“1meq/L=2.8dGH”“2meq/Lは5.6dKH”と書いています。ただし、同じシーケムでもEquilibriumのページでは「1meq/L(3dH)」と丸めた数字で書かれていて、製品によって表記が少し違います。計算に使うときは、どちらの数字で書かれているかを確かめておくと安心です。
| ドイツ硬度(°dH) | 炭酸カルシウム換算(mg/L・目安) | meq/L(目安・1meq/L=2.8°dHで計算) |
|---|---|---|
| 1 | 約17.85 | 約0.36 |
| 3 | 約54 | 約1.1 |
| 6 | 約107 | 約2.1 |
| 10 | 約179 | 約3.6 |
| 16 | 約286 | 約5.7 |
計算は“°dH×17.85”でmg/L、“mg/L÷17.85”で°dHです。この換算を覚えておくと、水道局の資料に書かれたmg/Lの数字を、手元の試薬の°dHと並べて比べられるようになります。
硬度の測り方と試薬の読み方のコツ
硬度を上げるかどうかは、測ってから決めるのが基本です。結論としては、GHとKHを別々に測れる滴下式の試薬を使い、水槽の水と水換えに使う水の両方を測るのがおすすめです。
テトラのGH・KH試薬の説明書では、測り方は次のように案内されています。
- 測りたい水で試験管をすすぐ
- 試験管の5mLの線まで水を入れる
- 試薬のびんを逆さにして、1滴ずつ加える
- 1滴ごとに軽く振り、水の色が変わるまでの滴数を数える
- GHは赤から緑、KHは青から黄色に変わったところで止める
色が変わるまでの滴数が、そのまま硬度の数字になります。たとえば3滴で変われば3°dHです。最初の1滴で色が変わったときは、0〜1°dHの間と読みます。さらに、水を10mLにして測ると精度が上がり、その場合は1滴が½°dHになる(6滴で3°dH)とも書かれています。軟水の水槽で“1滴で変わってしまって差が分からない”というときは、10mLで測ると細かく読めますよ。
試験紙はGH・KH・pHなどを一度に見られて手軽ですが、色の読み取りに幅が出やすいので、上げる量を決めるときは滴下式で確かめるほうが安心です。測る道具の選び方は、水質検査キットで何を測るかと選び方の目安でも整理しています。
測るときのコツは、3つの水を比べることです。
- 水槽の水(今の状態)
- 水換えに使う水(水道水やRO水)
- 買ってきた生体が入っていた販売店の水(分かれば)
水槽の水だけが低く、水道水が十分に硬いなら、水換えで戻せる可能性があります。水道水も低いなら、水換えだけでは上がらないので、添加剤や素材を考える段階です。販売店の水の数字が分かれば、目指す数字の参考にもなりますね。デナーレの説明書のように、硬度と電気伝導度(µS/cm)の両方で目安を示す製品もあるので、伝導度計を持っている方はそちらで確かめる方法もあります。
GHを滴下式で測る試薬には、たとえば次のような製品があります。KHも測るなら、滴下式のKH用の試薬もあわせて用意しておくと、2つの数字を別々に確かめられます。価格や在庫は購入前に各ショップで確認してくださいね。
水道水の硬さと水槽の硬度が下がる原因
硬度を上げる方法を選ぶ前に、水換えに使う水道水の硬さを知っておくと、打ち手がはっきりします。結論から言うと、日本の水道水は平均すると軟水で、地域によって硬さが違います。
東京大学などの研究グループは、2017年から2020年にかけて全国47都道府県665地点の水道水を採水し、硬度を測った結果を発表しています。単純に平均した日本の水道水の硬度は48.9mg/Lで、WHO(世界保健機関)の分類では軟水にあたり、関東地方で高く、北海道・東北地方で低い傾向があったそうです(出典:東京大学 教養学部「あなたの水道水、『硬さ』調べました」)。同じ資料では、WHOの分類として60mg/L以下を軟水、60〜120mg/Lを中硬水、120〜180mg/Lを硬水、180mg/L以上を超硬水としています。
この48.9mg/Lを°dHに直すと、48.9÷17.85で約2.7°dHです。テトラが淡水の水槽と池の目安として示す6〜16°dHと比べると、下側の6°dHより軟らかい数字ですね。もちろん平均値なので、住んでいる地域によって数字は変わりますし、水草水槽や軟水を好む魚なら低めのほうが合うこともあります。ただ、水道水で水換えをしていても硬度が目安に届かない、という状態は、日本では珍しくないと考えておくとよさそうです。
資料ではほかに、原水から浄水、水道水へと届くまでに硬度が20%ほど増減する可能性がある一方、日々の硬度は大きく変わらず安定していた、とも書かれています。日々の変動は小さいとされているので、まず一度自宅の水道水を測り、ときどき測り直すくらいで十分かなと思います。
水槽の硬度が下がっていく主な原因
水道水はそれなりに硬いのに水槽の硬度が下がっていく場合は、一般に次のような原因が言われています。
- RO水・純水・雨水など、ミネラルの少ない水を水換えや足し水に使っている
- 水換えの間隔が長く、ろ過の過程で出る酸でKHが使われていく
- 水草やエビなどの生き物が使う分だけ、ミネラルが少しずつ減っていく
- 水質を弱酸性に傾けるタイプのソイルを使っている(働きは製品の説明書で確認)
シーケムは、RO水や脱イオン水のようにミネラルを取り除いた水には、ミネラルを補う必要があると説明しています。RO水を使っている水槽で硬度が下がっていくのは、ある意味で当然の流れなんですね。原因に見当がつけば、対処もしぼりやすくなります。
水槽の硬度を上げる方法と量の決め方
ここからは、実際に水槽の硬度を上げる方法を見ていきます。最初に“GHとKHのどちらを上げたいか”で方法を選ぶ早見表を示し、そのあとで水換えと足し水、GHを上げる添加剤、サンゴ砂・カキ殻、エビやシュリンプ水槽での上げ方を順に紹介します。どの方法にも共通するのは、目標の数字を決めてから少しずつ近づけ、上げたあとも数日はGH・KH・pHを測って確かめることです。添加剤は自分の水量で量を計算できるように式と計算例を入れ、メーカーの表記の違いで計算結果がどれだけ変わるかも並べました。手元の試薬の数字を当てはめながら読み進めてみてください。
上げたいのはGHかKHかで選ぶ早見表

結論から言うと、GHだけが低いならGH用の添加剤、KHだけが低いならKH用の調整剤、両方とも低いなら水換えの水を見直すか、目的に合わせて組み合わせるのが基本です。メーカーの資料をもとに、方法ごとの効き方を表にまとめました。
| 方法 | GH | KH | pH | 向いている場面 | 根拠 |
|---|---|---|---|---|---|
| 硬度の高い水道水で水換え | 水道水の値に近づく | 水道水の方向に動く(計算どおりではない) | 水道水の方向に動く(計算どおりではない) | 水道水が水槽より硬いとき | 水の混合の計算(下の項目) |
| GH用の添加剤(Equilibrium など) | 上がる | KHは別の製品で保つよう案内 | 説明に記載なし | 水草水槽でGHだけ足りない | シーケム Equilibriumの説明 |
| エビ用のミネラル塩(Bee Salt GH+) | 上がる | 上げない | 約6.0〜6.5(元の水と底床しだい) | 軟水を好むエビ・RO水を使う水槽 | デナーレ 説明書 |
| RO水用のミネラル剤(Replenish) | 上がる | 説明に記載なし | 説明に記載なし | 水草を植えていない魚の水槽 | シーケム Replenishの説明 |
| KH用の調整剤(Alkaline Buffer・pH/KH Plus など) | 説明に記載なし(重曹系のナトリウムはGHに数えない) | 上がる | 上がる | KHが低くpHが下がりやすい(弱酸性を好む生き物・水草には不向き) | シーケム・テトラの説明 |
| サンゴ砂(カキ殻は本文の注意を参照) | 硬度を少し加える | 大きく上がる | 上がる | 高めのpHが合う魚・エビ・貝 | Aquarium Co-Opの商品説明 |
表の読み方のポイントは、“GHだけ上げたい”ときに炭酸カルシウム系の素材を選ぶと、pHとKHのほうが大きく動いてしまう、という点です。水草水槽や軟水寄りの水を好む魚の水槽で、GHだけを少し足したいなら、KHを上げないと明記された添加剤(Bee Salt GH+など)のほうが狙いに合います。
逆に、KHが低くてpHが下がりやすいのが悩みなら、テトラの説明のとおりpHの緩衝の役目をするのはKHなので、GHだけを上げても緩衝の力は増えません。KH用の調整剤か、炭酸カルシウム系の素材を検討する段階です。KHがなぜ下がったのか見当がつかないときは、前の章の“水槽の硬度が下がっていく主な原因”も見直してみてください。
家庭にある重曹(炭酸水素ナトリウム)で硬度を上げる話を見かけることがありますが、炭酸水素イオンはKHに、ナトリウムはGHに数えられない成分です。GHを上げたい目的には合いません。使う場合も、用量の案内があるアクアリウム用の製品のほうが量を決めやすく安心です。
水換えと足し水で硬度を少しずつ戻す
いちばん穏やかな方法は、水換えです。結論として、水道水が水槽の水より硬いなら、水換えを続けるだけで硬度はじわじわ水道水の値に近づきます。ただし、水換えだけなら水道水の硬さが上限です(蒸発した分の足し水は別=下の項目)。
水換え後の硬度は、“今の硬度×残す水の割合+新しい水の硬度×入れ替える割合”で見積もれます。たとえば、水槽のGHが2°dH、水道水のGHが5°dHで、毎週3分の1を水換えした場合の目安は次のとおりです(途中で生き物や水草がミネラルを使う分は入れていない、単純な計算です)。
| 水換えの回数 | 水道水のGHが5°dHのとき | 水道水のGHが3°dHのとき |
|---|---|---|
| 水換え前 | 2.0°dH | 2.0°dH |
| 1回目 | 約3.0°dH | 約2.3°dH |
| 2回目 | 約3.7°dH | 約2.6°dH |
| 3回目 | 約4.1°dH | 約2.7°dH |
| 4回目 | 約4.4°dH | 約2.8°dH |
計算してみると、水道水が5°dHなら3〜4回で4°dH台まで戻りますが、水道水が3°dHでは何回換えても3°dHの手前で頭打ちになります。水換えで届くのは水道水の硬さまで、というのが数字で見るとよく分かりますね。目標が水道水より高いなら、ほかの方法を組み合わせる必要があります。
この方法のよいところは、一度に大きく動かないことです。テトラの説明書も、pHの急激な変化を避けるよう案内しています。硬度も同じで、ゆっくり近づくぶん生き物の負担になりにくいと考えられます。
足し水は“水だけが減る”ことに注意
蒸発で減った分を足す「足し水」は、水換えとは少し性質が違います。蒸発で出ていくのは水だけで、ミネラルは水槽に残ります。そのため、水道水で足し水を続けると、水槽の硬度は少しずつ上がる方向に動きます。
シーケムはEquilibriumについて、蒸発分の補充には使わないよう案内しています。RO水で足し水をしている場合は、足し水の分には添加剤を入れず、水換えの新しい水に入れるようにすると、硬度が上がりすぎるのを防げますよ。
GHを上げる添加剤の使い方と量の計算

水道水が軟らかい、またはRO水を使っていてGHを目標まで上げたいときは、GH用の添加剤が候補になります。結論として、添加剤は水槽に直接入れるより、水換えの新しい水に溶かして使うのが基本で、量は今のGHと目標のGHの差から計算します。
シーケムのEquilibriumの説明では、使い方が次のように案内されています(出典:Seachem「Equilibrium」製品ページ)。
- GHを1meq/L(3dH)上げるには、水80Lあたり16g(大さじ1)を加える
- 水槽の立ち上げ時や水換えのときに、新しい水に加える
- よく溶かすため、約1Lの水に混ぜてから入れる(溶かした液は白く濁り、水槽に入れると薄く濁るが、15〜30分ほどで消える)
- この量はRO水・脱イオン水が前提で、ほかの水ではまずGHを測り、必要な分を加える
- 水草の好みはさまざまだが、目安は約1〜2meq/L(3〜6dH)
自分の水量で量を出す計算例
量の式は、16g×(新しい水の量÷80L)×(上げたいGHの幅÷3dH)です。水換えで20Lの新しい水を作る場合で計算してみます。
| 新しい水 | 目標 | 上げる幅 | 3dH=1meq/Lで計算 | 2.8dH=1meq/Lで計算 |
|---|---|---|---|---|
| RO水20L(GH0) | GH6dH | 6dH | 8.0g | 約8.6g |
| 水道水20L(GH2dH) | GH6dH | 4dH | 約5.3g | 約5.7g |
Equilibriumのページは「1meq/L(3dH)」と書いていますが、シーケムのほかの製品ページでは1meq/Lを2.8dGHとしています。どちらで計算するかで、20Lの水換えでも0.5g前後の差が出るんですね。差はわずかですが、硬度は上げすぎを戻すほうが手間なので、少なめの量から入れて、溶かしたあとに測って足すくらいの進め方が安心です。
製品ごとの特徴と注意点
Equilibriumはナトリウムや塩化物を含まず、カリウム・カルシウム・マグネシウムの塩でできていて、リン酸も含まないと説明されています。水草水槽向けに作られた製品ですね。
同じシーケムのReplenish(リプレニッシュ)は、5mLで40LのGHを1meq/L(2.8dGH)上げると案内されている液体のミネラル剤です。ただし、ナトリウムと塩化物を含むため、水草を植えていない魚の水槽での使用をすすめ、水草水槽ではEquilibriumをすすめる、とメーカー自身が書いています。水草の有無で選び分ける必要があるわけです。
どの製品も、用量は製品ごとに違います。ここで紹介した数字はそれぞれの製品の説明にもとづく一般的な目安なので、使う製品の説明書の量を必ず確認してください。正確な情報は公式サイトをご確認ください。
シーケムの製品のほかにも、エビや水草の水槽向けにGHを上げるミネラル剤は国内の通販で見つかります。たとえば次の製品は、商品名に「GH調整ミネラル剤」「総硬度上昇」とあるものです。KHやpHへの効き方、用量は製品ごとに違うので、説明書で確かめてから少量ずつ使ってください。価格や在庫は購入前に各ショップで確認してください。
サンゴ砂・カキ殻を使うときの注意点

サンゴ砂やカキ殻は、入れておくだけで硬度を上げられる手軽な素材です。結論としては、販売元の説明ではKHとpHをはっきり上げ、硬度も少し加える素材なので、高めのpHが合う生き物の水槽に向いていて、軟水を好む魚や水草の水槽には向きません。
アメリカのAquarium Co-Op(アクアリウム・コープ)は、自社で扱う砕いたサンゴ砂の説明で、次のように書いています。
- pHを上げ、KHを上げてpHを緩衝し、水に硬度を少し加える
- 時間をかけて溶け続け、pHが低いほど速く溶け、pHが上がると溶ける速さがゆるやかになる
- 同社では、砂利に混ぜる場合に水10ガロン(約38L)あたり1ポンド(約450g)を使っている
- 底床として使う場合は、水道水のpHの低さによって1〜2年ごとの入れ替えが要ることがある
- フィルターに入れると溶けるのが速く、少ない量で済むが、入れ替えは1〜3か月ごとが目安
- 粉が出ることがあるので、網に入れて流水でよくすすいでから使う
“pHが低いほど速く溶ける”という性質は、ちょうどよい自動調整のように見えますが、裏を返すと、どれだけ上がるかを事前に読みにくいということでもあります。入れたあとは、KHとpHをこまめに測って、上がりすぎていないかを確かめてください。なお、この説明は砕いたサンゴ砂についてのもので、カキ殻は対象に入っていません。カキ殻も炭酸カルシウムが主な成分の素材なのでKHとpHを上げる方向に働くと考えられますが、量や溶ける速さ、入れ替えの目安はサンゴ砂の数字をそのまま当てはめず、測りながら加減してください。
フィルターに入れて使うなら、粒の大きいサンゴ砂のほうがネットに入れやすく扱いやすいかなと思います。たとえば次のような製品があります。入れる量は少なめから始め、KHとpHを測りながら加減してください。価格や在庫は購入前に各ショップで確認してください。
注意したいのは、底床に貝殻が混ざっている場合です。大磯砂などには貝殻が混ざっていることがあり、水質を硬度の高いアルカリ性に傾けることがある、と当サイトの底砂の記事でも紹介しています。底砂の性質と生体の相性は、グッピーの底砂選びと大磯砂・ソイルの違いも参考になります。
また、サンゴ砂やカキ殻でpHが上がりすぎたときは、素材を減らすか取り出すのが先です。pHが上がる仕組みと下げ方は、水槽のpHが上がる原因と下げる方法で詳しく紹介しています。素材は量を少なめから始め、網に入れてフィルターに置くなど、あとで取り出しやすい置き方にしておくと調整しやすいですよ。
エビやシュリンプ水槽で硬度を上げるコツ
エビの水槽は、硬度の話がいちばん多く出てくる場面かもしれません。結論として、軟水を好むエビは“GHは上げるがKHは上げない”ミネラル塩でRO水を整える方法が、メーカーの案内に沿ったやり方です。
デナーレのエビ用ミネラル塩Bee Salt GH+の説明書では、次のように案内されています。
- クリスタルレッドやバンブルビーなど、軟水を好むエビに合う水をつくる
- pHは約6.0〜6.5の弱酸性になる(元の水と底床しだい)
- 総硬度を上げ、炭酸塩硬度は上げない
- 推奨する水の値は総硬度5.5〜6.5°dH、または電気伝導度250〜290µS/cm
- 付属の3mLの計量スプーン1杯(約2.25g)で15L、2mL(約1.5g)で10L、1mL(約0.75g)で5Lが目安
- 別の容器で水に混ぜて溶かしてから使う
たとえば水換え用に20LのRO水を作るなら、20÷15×3mLで約4mL(約3g)が計算上の目安です。KHを上げないので、同社のShrimp Soil(エビ用のソイル)を長く使えるとも書かれています。ソイルの働きを生かしたままGHだけを足す、という考え方の製品ですね。
エビの水槽で気をつけたいのは、量そのものより「変化の速さ」です。水換えの新しい水は、今の水槽の数字から離れすぎない範囲で作り、何回かに分けて目標に近づけると、急な変化を避けやすくなります。同じ説明書には、目に強い刺激を起こすこと、目に入ったときは数分間ていねいに水で洗い、刺激が続くときは医師の診察を受けること、子どもの手の届かないところに置くこと、湿気を吸うので使ったらすぐにふたを閉めること、中身や容器は有害廃棄物の回収先に出すことも書かれています。粉を扱う作業なので、取り扱いの注意もあわせて確認しておきましょう。
デナーレがこの製品の対象として挙げているのは、クリスタルレッドなど軟水を好むエビです。それ以外のエビでは、目標の数字が変わることがあります。種類ごとの細かい適正値は、品種や販売店でのキープ環境によっても違うので、迎えるときに販売店の水の数字を聞いておき、そこに近づけるのが安全です。最終的な判断は専門家にご相談ください。
水槽の硬度を上げることについてよくある質問
硬度を上げると、pHも一緒に上がりますか?
上げ方によります。KH用の調整剤やサンゴ砂は、KHと一緒にpHも上げます。一方、KHを上げないデナーレのBee Salt GH+は、説明書でpHは約6.0〜6.5の弱酸性になると案内されています(元の水と底床しだい)。GH用の製品でもpHの書き方は製品ごとに違うので、pHを動かしたくない場合は説明書のpHの記載を確かめてから選んでください。
一度にどこまで上げてもいいですか?
この記事で確かめた各社の説明には、1日に上げてよい幅の上限は見当たりませんでした。書かれているのは、この量でどれだけ上がるかという用量です。たとえばシーケムのAlkaline Bufferは、80Lあたり6gで約1meq/L(2.8dKH)上がり、目標のpHに届くまで毎日加える使い方と案内されていますが、これは用量の例で、毎日その幅で上げてよいという意味ではありません。テトラはpHの急激な変化を避けるよう案内しているので、少なめから入れて、測りながら近づけるのが基本です。
硬度を上げたあとは、どのくらいの頻度で測ればいいですか?
テトラの説明書は、水質を週に1回測ること、水槽の立ち上げ直後や新しい魚を入れたときなどは毎日測ることをすすめています。硬度を上げた直後も同じように考え、数日は毎日GH・KH・pHを測り、数字が落ち着いたら週1回に戻すと、上がりすぎや下がり始めに早く気づけます。
水槽の硬度を上げる手順のまとめ
最後に、水槽の硬度を上げるときの流れをまとめておきます。
- まずGHとKHを別々に測り、水換えに使う水の硬さも確かめる
- 目標の数字は、テトラ・JBLなどの目安と、飼っている生き物に合わせて決める
- 水道水が水槽より硬ければ、水換えで水道水の値まで少しずつ戻せる
- GHだけ足りないなら、GH用の添加剤を新しい水に入れる(KHを上げたくないなら、そう明記された製品を選ぶ)
- KHとpHを上げたいなら、KH用の調整剤かサンゴ砂などの炭酸カルシウム系の素材を少なめから使う
- どの方法も、上げたあと数日はGH・KH・pHを測って確かめる
GHとKHを1つの「硬度」として扱うと、素材選びがずれやすくなります。上げたい数字がどちらなのかが決まれば、素材選びも量の計算もぐっと分かりやすくなりますよ。逆に、硬度を下げたい場面が出てきたら、水槽の硬度を下げるゼオライトの使い方も参考にしてみてください。
記事で紹介した数字は、各メーカーや研究機関の資料にもとづく一般的な目安です。製品の用量や表記は変わることがあるので、正確な情報は公式サイトや説明書をご確認ください。生体の体調に関わる判断に迷ったときは、最終的な判断は専門家や販売店にご相談ください。数字と相談しながら、あなたの水槽に合った硬さを少しずつ見つけていきましょう。


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