グッピーが横になって泳ぐのはなぜ?転覆病の原因と対処手順
水槽をのぞいたら、グッピーが横になって泳いでいたり、頭を上にして直立したまま動かなかったりして、どきっとしたのではないでしょうか。
「転覆病かもしれない」「ほかの魚にもうつるのでは」と不安になるのは、それだけ毎日よく見ている証拠です。
先に結論をお伝えすると、泳ぎ方だけで病名を決めるのは難しいと私は考えます。
大切なのは、水質・浮力・消化の状態・けがを順番に確かめ、必要なら隔離して、悪化するときは専門家へ相談することでしょう。
この記事では、獣医向けのマニュアルや観賞魚メーカーの説明をもとに、変な泳ぎ方の見方と考えられる原因を整理しました。
原因の見当がつけば、次に何をすればよいかも落ち着いて選べるはずです。
この記事で理解できること
- グッピーが横になる・斜めや縦に泳ぐときに考えられること
- 泳ぎ方別に最初に確かめるポイント
- 転覆病と呼ばれる状態の主な原因の系統
- 1匹だけか水槽全体かで変わる確かめる順番
グッピーが横になって泳ぐのはなぜ?
グッピーが横になって泳ぐのは、姿勢や浮き沈みをうまく保てなくなっているサインの一つです。
その背景には、水の汚れ、水温の変化、消化の不調、病気、けがなど、いくつもの可能性が考えられます。
テトラ(スペクトラム ブランズ ジャパン)は、泳ぎ方がおかしいといった症状が見られるなら、もしかしたら病気にかかっているのかもしれないと説明しています。
同じテトラの説明では、水質の状態が悪すぎたり、ストレスなどで弱っていたりすると病気にかかることがある、とされています。
まずは「転覆病」という言葉が何を指しているのかを整理しておきましょう。
転覆病は浮き袋の不調を指す呼び名

「転覆病」は、1つの病原体の名前ではありません。
浮き袋の働きがおかしくなり、姿勢や浮き沈みを保てなくなった状態をまとめて指す呼び名として、広く使われている言葉だと私は整理しています。
浮き袋とは、魚のお腹の中にある袋状の器官で、漢字では鰾(うきぶくろ)とも書きます。
つまり、魚が水の中で沈みも浮きもせずにとどまっていられるのは、この器官が浮力を調整しているからです。
獣医向けのMSD獣医マニュアルは、硬骨魚の浮き袋は前腸から生じる器官で、体の浮力を調整すると説明しています。(出典:MSD獣医マニュアル(Merck Veterinary Manual)「Management of Aquarium Fish」)
同じマニュアルでは、浮き袋と消化管がつながっている魚と、つながっていない魚がいることにも触れています。
あわせて、コイの仲間の浮き袋は2つの部屋からなる、とも書かれています。
金魚などコイの仲間は、浮き袋と消化管がつながる型として知られる魚です。
そのため、金魚の転覆病について語られることのある「空気を飲み込んで浮いてしまう」といった説明を、そのままグッピーに当てはめるのは避けたいところ。
金魚の場合の原因の切り分けは、金魚の転覆病の原因と3つの切り分け方でまとめていますので、違いを知りたい方は参考にしてください。
コイの浮き袋の病気を調べた論文では、浮き袋の不調とそれに伴う浮力の問題は観賞魚、とくに金魚で見られるとしています。
同じ論文は原因として、水質の悪化・感染・栄養の不良・腫瘍・けが・遺伝の要因が挙げられてきたと紹介しています。
つまり、転覆病と呼ばれる状態は、原因が1つに決まるものではないということです。
この論文では典型的なサインとして、お腹の膨らみ、泳ぎの異常、浮力の釣り合いを失って底に沈むか水面に浮くことが挙げられています。
転覆には、上に浮いてしまう向きと、底から上がれない向きの2つがあると覚えておくと、観察するときに役立つでしょう。
姿勢は崩れていないのに底でじっとしているだけなら、元気のないグッピーを水温と水質から確かめる手順を参考にしてください。
泳ぎ方で見るグッピーの異変のサイン
グッピーの変な泳ぎ方には、横倒し、斜め、縦、上下、くるくる回るなど、いくつかの型があります。
型ごとに「まず疑うこと」の目安はありますが、どれも1つの原因に結びつくわけではありません。
ここでは、泳ぎ方別に最初に確かめたいことを表にまとめました。
横倒し・縦・くるくるの見分け方
表を見る前に、3つのことを先に確かめておくと、原因の見当がつけやすくなります。
1つ目は、変な泳ぎ方をしているのが1匹だけか、複数匹か。
2つ目は、その様子がいつから続いているか。
3つ目は、食後だけ傾くのか、一日中そうなのか、です。
MSD獣医マニュアルも、魚の診察で特に聞く点として、何匹が影響を受けているか、1種か複数種か、どれくらい続いているかを挙げ、飼育環境の詳しい説明も求めています。
複数匹に同じ様子が出ていれば水そのものを、1匹だけならその個体の体調を先に疑う、というように見る順番が変わってくるわけです。
食後だけの傾きかどうかは、消化の不調を考える手がかりになるでしょう。
そのうえで、下の表で泳ぎ方ごとの見どころを確かめてください。
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| 泳ぎ方 | よく見られる様子 | まず疑うこと | 最初に確かめること |
|---|---|---|---|
| 横になる・横倒しで底に沈む | 底でじっとして起き上がれない | 浮き袋や体の不調・水質のどれもありうる | 水温と水質、1匹だけか複数匹か(悪化するなら早めに相談) |
| 水面に浮いてお腹が上を向く | 水面近くで浮いたまま沈めない | 浮き袋や体の不調・水質のどれもありうる | 食後だけか、いつから続いているか |
| 斜めに泳ぐ | 頭かお尻が下がったまま泳ぐ | 浮き袋や体の不調・水質のどれもありうる | 食後だけか、お腹の張り |
| 頭を上にして縦に泳ぐ(直立) | 水面近くで立ったように止まる | 浮き袋や体の不調・水質のどれもありうる | アンモニア・亜硝酸、水温 |
| 頭を下にして縦に泳ぐ | 逆立ちのような姿勢で止まる | 浮き袋や体の不調・水質のどれもありうる | お腹の膨らみ、いつから続いているか |
| 上下に激しく泳ぐ | 水面と底を何度も行き来する | 水質の悪化(GEXはメダカでアンモニア・亜硝酸中毒の可能性を挙げる) | アンモニア・亜硝酸の試薬、餌の量と匹数 |
| くるくる回る | その場で回転する | 神経の不調も考えられる(Merckは回転を神経の病気を示す行動の例に挙げる)。オスがメスの周りを回るなら繁殖行動の場合も(GEXのメダカの例) | 1匹だけか、オスとメスの動きか |
| ヒレを閉じてフラフラ泳ぐ | ヒレをたたんでフラフラ泳ぐ | 細菌感染症(テトラが挙げる症状) | 最近ちがう品種を入れたか、ほかの個体の様子 |
| 体をこすりつける | 底や石に体をすりつける | 体表の病気(GEXはグッピーの白点病で体をこすりつけてかゆそうにすると説明) | 体表の白い点、ヒレの傷み |
この表は、当サイトが一次情報をもとに整理したもので、個体差や環境差があります。
泳ぎ方だけで病名は決められないので、あくまで「最初にどこを見るか」の目安として使ってください。
ちなみにGEXは、稚魚がかかるハリ病について、尾ビレを畳み、頭を振って泳ぐと説明しています。
このように、泳ぎ方の乱れは浮き袋以外の病気でも見られることがあります。
白点病や尾ぐされ病など、ほかの病気の症状と照らし合わせたい場合は、グッピーの病気の種類と症状の一覧もあわせて確かめてみてください。
グッピーの転覆病に考えられる原因

グッピーの転覆病に考えられる原因は、水・餌・体の3つの方向から見ていくと整理しやすくなります。
コイを調べた論文でも原因は1つに絞られていないため、可能性を1つずつ確かめて消していく考え方が役に立つでしょう。
ここでは、水質と水温、食べすぎと消化、感染症・けが・体型や老化の3つに分けて見ていきます。
水質の悪化と急な水温の変化
複数のグッピーが同時に変な泳ぎ方を始めたなら、まず水を疑うのが近道だと私は考えます。
1匹ずつの体調の違いより、全員が同じ水の中にいることのほうが、共通点として大きいからです。
MSD獣医マニュアルは「新しい水槽の症候群」として、水槽を立ち上げてからたいてい6週以内に起こり、魚が急に元気をなくして餌を食べなくなり、死んでしまうことも多い状態を説明しています。
その多くでは、アンモニアや亜硝酸、またはその両方が、毒性を示すほど高くなっているとされています。
アンモニア・亜硝酸とは、つまりフンや残り餌などから生じる、魚にとって有害な物質のことです。
同じマニュアルは、熱帯魚の水槽で生物ろ過が整うまでに最大8週かかることがあるとしています。
ろ過バクテリアは、こうした有害な物質を分解してくれる微生物のことで、立ち上げたばかりの水槽ではまだその働きが十分ではありません。
キョーリンは、「透明な水」=「キレイな水」ではないと説明しています。
フンや尿、残り餌から透明で毒性の強い物質が発生し、少しずつ「危険な水」に変わっていく、というのがその理由です。
見た目が澄んでいても安心はできない、ということですね。
水温も見落とせないポイントです。
GEXは、グッピーが最も活発に活動する水温を23〜26℃とし、一日の水温変化が大きいとストレスになると説明しています。
同じ説明では、低温では白点病が、高温ではエロモナス症状などが出やすくなるとされています。
季節の変わり目など水温に変化が出る時期は注意深く観察しましょう、というのもGEXの呼びかけです。
さらにGEXは、グッピーは大きな尾ビレが特徴のため素早く泳ぐのがあまり得意ではなく、水流が強くなりすぎるとストレスを受けたり尾ビレを傷つけたりして、病気の原因にもなると説明しています。
強い水流にあおられて、泳ぎが乱れて見えているだけという場合もあるかもしれません。
フィルターの吐き出し口の向きや強さの見直し方は、グッピー水槽の水流を弱める方法で詳しく紹介しています。
食べすぎと消化の不調
食後だけ体が傾く、お腹が張っているといった様子があれば、消化の不調を疑う手がかりになると私は考えます。
キョーリンは、グッピーへの餌の与え方を1日1・2回、数分で食べきる量としています。
同社は、フレークから顆粒に変えるときは、与えすぎによる残り餌で水が汚れ、体調を崩すことが多いので注意するよう呼びかけています。
餌の形が変わると、いつもの感覚で与えても量が多くなりやすい、と受け取っておくとよいでしょう。
テトラも旧ページで、水替えを長期間しなかったり、餌をあげすぎたりすることは病気にかかる原因になると説明しています。
食べすぎは、食べ残しとして水を汚すという面でも、前の見出しで触れた水質の悪化とつながっているわけです。
一方で、正直にお伝えしておきたいこともあります。
金魚の丸い品種について語られることの多い「食べすぎによる転覆」ほど、グッピーでの情報は多くありません。
グッピーの消化と転覆を直接結びつけた一次情報は、今回の調査では見つかりませんでした。
そのため「食後だけ傾く」は消化を疑うきっかけにはなっても、それだけで原因を決めることはできない、というのが私の考えです。
お腹の膨らみにも注意が必要になります。
コイを調べた論文では、浮き袋の不調の典型的なサインの一つにお腹の膨らみが挙げられていますが、グッピーのお腹が膨らむ理由はほかにもあります。
たとえばメスなら妊娠でお腹が大きくなりますし、腹水病と呼ばれる病気でも膨らみが見られます。
お腹が膨らんで傾いているときは、オスかメスか、膨らみがいつから大きくなってきたかを先にメモしておくと、見分けるときの手がかりになります。
見分け方はグッピーの腹水病と妊娠の見分け方で詳しく解説していますので、膨らみ方だけで判断せず、泳ぎ方や食いつきとあわせて見ていきましょう。
感染症・けが・体型や老化
水も餌も思い当たらないのに1匹だけ様子がおかしい場合は、その個体の体そのものに原因があるのかもしれません。
テトラは、ヒレを閉じてフラフラと泳いでいる症状を、細菌感染症として紹介しています。
同社は、細菌感染症の治療法はまだ見つかっておらず、発症すると弱って死んでしまうので、治療よりも予防対策が重要だと説明しています。
テトラの旧ページでは、一つの水槽に異なる品種を入れたときに発症することが多く、保菌魚(キャリア)と免疫力のない魚が一緒の水槽になることで発症すると考えられている、としています。
保菌魚とは、つまり菌を持っていても症状が出ていない魚のことです。
コイを調べた論文では、調べた9匹のうち3匹が抗菌薬による治療で完全に回復し、残る6匹は状態が悪化して安楽死になったと報告されています。
コイの例ではありますが、獣医の検査と治療で回復した例があることは知っておいてよいでしょう。
けがについては、強い水流で尾ビレを傷つけることがあるという、先ほどのGEXの説明が手がかりになります。
グッピーでも、体型や遺伝が関わる可能性は考えておきたいところです。
GEXは、同じ水槽内で世代が進むと、近親交配による奇形や病弱個体が発生しやすくなると説明しています。
コイを調べた論文でも、遺伝の要因や品種改良、ストレス、腫瘍が、浮き袋の変形などの原因とされています(コイの仲間についての話です)。
日本動物薬品は金魚の転覆病について、背骨の中を通る、体の釣り合いを感じる神経の不調が原因と考えられ、丸い体型の金魚によく見られ、ほかの魚にはうつらないと説明しています。
これは金魚についての説明なので、グッピーで同じことが言えるとは限りませんが、神経の不調という見方があることは参考になります。
また、年をとったグッピーは泳ぐ力が弱り、姿勢を保ちにくくなっているように見えることもあるかもしれません。
老化のサインや寿命の目安は、グッピーの寿命と老化のサインを参考にしてください。
ここまでの原因を、系統ごとに表で比べてみます。
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| 原因の系統 | よく一緒に出るサイン | 最初の対処 | 専門家に相談したい目安 |
|---|---|---|---|
| 水質の悪化 | 複数匹が同時に変な泳ぎ方をする・餌に集まらない | アンモニア・亜硝酸を測り、少しずつ水換えをして餌を減らす | 水換えをしても数日たって変わらない・弱る個体が増える |
| 水温の急変 | 季節の変わり目やヒーターの不調のあとに出る | 水温計で確かめ、ゆっくり適温へ戻す | 水温を整えても回復しない・体表に白い点などが出る |
| 食べすぎ・消化の不調 | 食後だけ傾く・お腹が張る | 給餌量を見直し、残り餌を取り除く | お腹の膨らみが続く・ほかの異常も出てくる |
| 感染症 | ヒレを閉じてフラフラ泳ぐ・新しい魚を入れたあとに出る | 隔離して、ほかの個体の様子も見る | 弱ってきた・食べなくなった・出血や体表の異常がある・複数匹に広がる |
| けが・強い水流 | ヒレの傷・水流にあおられる | 水流を弱め、傷の様子を見守る | 傷が広がる・出血がある |
| 体型・遺伝・老化 | 1匹だけ長く続く・体型に偏りがある | 水流を弱めるなど、泳ぐ負担を減らす | 急に悪化する・餌を食べられなくなる |
この表は当サイトの整理による目安で、実際には複数の原因が重なっていることもあります。
「1匹だけか全体か」で見る順番が変わります。
複数匹が同時におかしいときは、水質と水温を最初に確かめましょう。
1匹だけのときは、食後の傾き・お腹の膨らみ・ヒレや体表の傷みなど、その個体の体を先に見ていきます。
グッピーが転覆したときの対処手順

ここからは、グッピーが横になって泳ぐ、斜めに泳ぐといった変な泳ぎ方を見つけたときに、何から手をつければよいかを順番に整理します。
転覆病の原因は1つではないため、いきなり薬を入れるより、まず水と環境を確かめるほうが遠回りに見えて近道になる、と私は考えます。
手順は「水温と水質の確認」「隔離とエサの調整」「塩浴・薬浴の検討と専門家への相談」「再発を防ぐ毎日の管理」の4段階です。
目の前で魚が苦しそうにしていると焦るのは当然のこと。
それでも一つずつ確かめていけば、今できることは少しずつ見えてくるはずです。
まず水温と水質を確かめる
最初に手に取りたいのは水温計です。
GEXは、グッピーが最も活発に活動する水温を23〜26℃とし、一日の水温変化が大きいとストレスになると説明しています。
今の水温がこの範囲に入っているかに加えて、前日や朝晩との差が大きくなっていないかも見ておきましょう。
GEXは、季節の変わり目など水温に変化が出る時期は注意深く観察するよう呼びかけてもいます。
数値はあくまで出典による一般的な目安で、水槽の置き場所や部屋の温度によって動き方は変わります。
次に、アンモニアと亜硝酸を試薬で測ります。
つまり、エサの残りやフンから生まれる、魚にとって毒になる物質がどれくらいあるかを数字で確かめる作業です。
Merckは、新しい水槽の症候群(立ち上げから間もない水槽で魚が急に弱る状態)について、総アンモニア態窒素や亜硝酸、またはその両方が毒性を示すほど高くなっていることが多いと説明しています。
GEXもメダカの泳ぎ方の説明の中で、上下に激しく泳ぐ場合のアンモニア・亜硝酸中毒について、亜硝酸試薬で確認できるとしています。
メダカについての説明ですが、同じ考え方でグッピーの水も確かめられるでしょう。
キョーリンが「『透明な水』=『キレイな水』 ではありません」と書いているように、見た目が澄んでいても安心はできません。
測った数値に異常があれば、水換えとエサを減らすことから始めます。
Merckは新しい水槽の症候群の対処として、給餌を減らすこと、水換え、生物ろ過が十分かの確認を挙げています。
ろ過バクテリア、つまり毒になる物質を分解してくれる微生物が十分に育っているかを見直す、という意味です。
キョーリンは、水替えに使う水を「カルキを抜いた水道水(水温を合わせたもの)」としています。
塩素を抜くだけでなく、水槽の水と温度をそろえてから入れるのがポイントになります。
一方で、慌てて一度に大量の水を換えると、それ自体が魚の負担になるかもしれません。
Merckは古い水槽の症候群として、水換えが少なく間隔が長い水槽ではpHが急に下がると魚が死ぬことがあるとし、pHショックやアンモニア中毒を避けるために毎日少しずつ水を換えることを挙げています。
GEXもメダカについて、水換えなどで急にpHが変わるとショック状態になり、回復の見込みはかなり低いと説明しています。
長く水換えをしていなかった水槽ほど、一度に換える量を控えめにして日を分けるほうが、安全側の選び方と言えるでしょう。
水換えの量や頻度、具体的な進め方は、グッピーの水換えの頻度と手順をまとめた記事で詳しく解説しています。
亜硝酸やpHなどを家庭でまとめて確かめたいときは、テトラの「テスト 6in1 試験紙」のように、1枚で複数の項目を見られる試験紙があります。アンモニアは測れないなど測れる項目は製品ごとに違うので、内容と使い方は購入前に各ショップや製品の説明で確かめてくださいね。
隔離して餌を控えて様子を見る
水温と水質に大きな問題がないのに、転覆した1匹だけが調子を崩しているなら、隔離を考えるタイミングです。
隔離とは、つまり具合の悪い魚を別の容器に移し、ほかの魚に追われたりつつかれたりせず落ち着いて過ごせるようにすることです。
Merckは、新しく迎える魚の検疫用として、安価な10ガロン(換算でおよそ38L)の水槽にスポンジフィルター・小型のエアポンプ・ヒーターをそろえた家庭向けの水槽を紹介していて、この組み合わせは具合の悪い魚の隔離にも応用できると私は考えます。
大がかりな設備は要りませんが、ろ過と空気とヒーターの3つはそろえておきたいところ。
隔離容器の水は元の水槽から移し、ヒーターで元の水槽と同じ水温にそろえてください。
水位は浅め、水流は弱めにしておくのが私のおすすめです。
浮き袋の調子が悪く思うように浮き上がれない個体にとっては、水面までの距離が短いほうが体の負担を減らせる、と考えるからです。
反対に、水面に浮いてしまう個体の場合も、強い水流にあおられないようにしておくと落ち着きやすいでしょう。
エサについては、キョーリンの次の説明が参考になります。
「エサに集まってこないときは、水が悪いサイン。すぐに2/3程度の水を交換し、2日間エサを与えず様子を見てください。」
これはエサに集まってこないときの説明で、転覆病の治療法として書かれたものではありません。
2/3という水の量も同じ場面の説明なので、転覆した魚の水換えは、Merckが勧める「毎日少しずつ」を優先したほうが安全だと私は考えます。
日数についても、転覆した魚にそのまま当てはめるのではなく、「エサを止めるなら期間を区切って様子を見る」という考え方の参考にとどめましょう。
食後だけ傾く、お腹が張って見える、というときは、少しの間エサを控えて消化を待つのがよいと私は考えます。
ただし、稚魚や痩せている個体は体力の余裕が少ないため、エサ止めを長く続けないほうがよいと私は考えます。
再開するときはごく少量から始め、数分で食べきれているか、フンが出ているかを見ながら少しずつ量を戻していくのが無難です。
グッピーがどれくらいエサを食べずにいられるのか、1日の回数の目安も含めて知りたい方は、グッピーの餌の回数と絶食できる日数の解説を参考にしてください。
回復を急ぐあまり、次の3つは避けましょう。
1つ目は、エサ止めを何日も続けること。体力が落ちて、かえって回復しにくくなるかもしれません。
2つ目は、急に水温を上げること。一日の水温変化が大きいとストレスになる、とGEXも説明しています。
3つ目は、自己判断で薬を重ねて使うこと。薬は製品の表示どおりに使い、併用できるかは発売元に確かめてください。
隔離用の容器に水流の弱いろ過を用意したいなら、エアーポンプにつないで使うテトラの「ブリラントフィルター」のようなスポンジフィルターも選択肢の一つです。エアーポンプは別に必要なので、容器の大きさに合うかとあわせて、購入前に各ショップで確かめてください。
塩浴・薬浴と専門家への相談

隔離と水の見直しをしても様子が変わらないとき、選択肢に入ってくるのが塩浴と薬浴です。
塩浴とは、つまり飼育水に少量の食塩を溶かし、その中で魚を過ごさせる方法のこと。
ここで知っておきたいのは、塩の濃度と想定している場面が出典ごとに違うという点です。
GEXは、グッピーに「元気がないな」と感じたら0.5%(1リットルにつき5g)の食塩を入れてみるよう勧め、適量を守れば食塩はグッピーに害はなく、治癒力を高めてくれると説明しています。
テトラ(スペクトラム ブランズ ジャパン)は旧ページで、買ってしばらくは水10リットルに塩30グラムほど(換算すると約0.3%)を溶かしておくと、病気を予防する効果があると紹介しています。
日本動物薬品は金魚の転覆病について、完全な治療方法はないとしたうえで、水温をゆっくりと25℃前後まで上げると転覆して間もない魚に限っては治ることが知られており、このとき食塩を0.3%程度添加すると効果的だと説明しています。(出典:日本動物薬品「観賞魚の診療所 魚病図鑑 転覆病」)
このように、濃度は0.5%と0.3%前後の2通りに分かれ、想定している場面も「元気がないとき」「購入直後の予防」「金魚の転覆病」とそれぞれ異なります。
どれか1つが正解と決められるものではないため、どの出典のどんな場面の説明なのかを意識して読むことが大切でしょう。
なお、前の章で触れたとおり、グッピーの適温は金魚の説明とは別に示されています。
金魚の説明にある「25℃前後まで上げる」をそのままグッピーに当てはめるのではなく、今の水温から急に変えないことを優先したい、と私は考えます。
薬浴とは、つまり魚の病気用の薬を溶かした水で魚を過ごさせる方法です。
使う前に、製品の表示で対象魚・用量・日数・ほかの薬や塩との併用について確かめてください。
塩と薬を一緒に使ってよいかは薬ごとに違うため、表示を読んでもわからなければ発売元に問い合わせるのが確実な方法です。
家庭での対処には限りがあります。
数日たっても様子が変わらない、悪化している、複数匹に広がっている、出血や体表の異常が見られる、といった場合は、観賞魚に詳しい動物病院や購入店へ相談しましょう。
Merckは、ペットの魚の医療の選択肢の一つとして、浮力の問題に対する浮き袋の手術を挙げています。
前の章で紹介したコイの論文でも、治療で回復した例がある一方、回復しなかった例もあり、回復が約束されるわけではありません。
それでも、専門家に診てもらうことでできることがある、と知っておくだけで、迷ったときの選択肢は広がるはずです。
転覆を繰り返さない毎日の管理
グッピーが元気を取り戻したら、次は同じ状態を繰り返さないための毎日の管理に目を向けましょう。
GEXは「グッピーはきれいな水で飼っている限りほとんど病気になりません」と説明しており、予防の土台はやはり水です。
まずはエサの量から。
キョーリンは、与え方を1日1・2回、数分で食べきる量としています。
あわせて、フレークから顆粒に変えるときは、与えすぎによる残餌で水が汚れ、体調を崩すことが多いので注意するよう呼びかけています。
エサの種類を変えた直後は、いつもより食べ残しが出ていないかを気にかけてみてください。
次に水換えです。
テトラは旧ページで、水替えを長期間しなかったり、餌のあげすぎなどは病気にかかる原因になると説明しています。
キョーリンも、こまめに水替えをするよう勧めています。
水温については、GEXが、最低温度を一定に保つようなヒーターの使用は病気の発生を防ぐ意味でかなりの効果があるとしています。
1日の中での水温の上がり下がりを小さくしておくことも、ストレスを減らす手立てになるでしょう。
水流にも気を配りたいところです。
GEXは、グッピーは大きな尾ビレが特徴のため素早く泳ぐのがあまり得意ではなく、水流が強くなりすぎるとストレスを受けたり尾ビレを傷つけたりと病気の原因にもなる、と説明しています。
新しい魚を迎えるときの手順も、再発や持ち込みを防ぐうえで欠かせません。
Merckは、隔離は最低30日としています。
テトラは、購入後に水槽へ入れる前の塩浴や薬浴などのトリートメントで、病気や寄生虫の持ち込みを防ぐこともできると紹介しています。
GEXも、新しくグッピーを追加するときは水槽に入れる前に薬浴を、水草は消毒をするよう呼びかけています。
ただし、Merckは検査で原因を確かめないままの予防目的の投薬を強く勧めないとしているので、薬を使うときは製品の表示どおりにし、迷ったら購入店や発売元に確かめてください。
繁殖を続けている水槽では、血の濃さにも目を向けておきましょう。
GEXは、同一水槽内で世代が進むと近親交配による奇形や病弱個体が発生しやすくなるとし、繁殖を続ける場合は定期的に外部から新しいグッピーを入れるよう勧めています。
毎日の観察は、エサの時間にまとめて行うと続けやすくなります。
キョーリンも、毎日の給餌観察が長生きさせるコツだとしています。
毎日見ておきたい3つのポイント
泳ぎ方:横になる、斜めに泳ぐ、ヒレを閉じてフラフラするなど、いつもと違う動きがないか。
食いつき:エサに集まってくるか、数分で食べきれているか。
フン:きちんと出ているか、食べ残しが底にたまっていないか。
グッピーの転覆病に関するよくある質問(FAQ)
転覆病はほかのグッピーにうつりますか?
原因によって答えが変わります。
日本動物薬品は金魚の転覆病について、神経の不調が原因と考えられ、他の魚に伝染することはないと説明しています。
ただし、これは金魚についての説明で、グッピーの泳ぎの異変がすべて同じ原因とは限りません。
テトラは、ヒレを閉じてフラフラ泳ぐ細菌感染症を挙げ、治療法はまだ見つかっておらず予防対策が重要だとしています(転覆についての説明ではありません)。
原因がはっきりしないうちは、隔離しておくほうが安心でしょう。
横になって動かないけれど生きています。もう助かりませんか?
泳ぎ方だけで、助かるかどうかを決めることはできません。
まずは水温と水質を確かめ、ほかの魚に追われないよう隔離して、静かな環境を整えてあげてください。
日本動物薬品は金魚の転覆病について、水温をゆっくり25℃前後まで上げると転覆して間もない魚に限っては治ることが知られていると説明していますが、これは金魚についての説明で、グッピーに当てはまるとは限りません。
状態が重い、悪化している、と感じたら、早めに観賞魚に詳しい動物病院や購入店へ相談しましょう。
何日くらい餌を止めればいいですか?
転覆病に限った日数の目安は、今回確かめた資料には見当たりませんでした。
キョーリンは、エサに集まってこないときは2/3程度の水を交換し、2日間エサを与えず様子を見るよう説明していますが、これはエサに集まらない場面についての説明です。
稚魚や痩せた個体はエサ止めを長くせず、再開するときは少量から始めてください。
塩浴は何%でやればいいですか?
出典によって0.5%と0.3%前後の説明があり、想定している場面も違うので、1つに決められるものではありません。
GEXはグッピーの元気がないときに0.5%(1リットルにつき5g)、テトラは購入直後の予防に水10リットルに塩30グラムほど(約0.3%)、日本動物薬品は金魚の転覆病に0.3%程度を挙げています。
それぞれ想定している場面が異なるので、どの説明を参考にするのかを確かめてから判断してください。
生まれつき縦に泳ぐ稚魚がいます。病気ですか?
泳ぎ方だけでは、病気か体のつくりによるものかを見分けられません。
GEXは、同一水槽内で世代が進むと近親交配による奇形や病弱個体が発生しやすくなると説明しています。
ただ、縦に泳ぐ原因そのものについては、今回確かめたGEXの資料には説明がありませんでした。
まずは水質を確かめ、気になる様子が続くときは購入店などに相談してみてください。
まとめ|グッピーの転覆病は原因を切り分けて対処
グッピーが横になって泳ぐ、縦に泳ぐ、くるくる回るといった変な泳ぎ方は、見ているほうも不安になるものです。
けれども、泳ぎ方だけで病名を決めず、水質・浮力・消化の状態・けがを順に確かめていけば、打てる手は見えてきます。
最後に、この記事の要点を振り返っておきましょう。
- 転覆病は1つの病原体の名前ではなく、原因は水質・感染・栄養・けが・遺伝などさまざま
- 最初に水温計と試薬で水温・アンモニア・亜硝酸を確かめ、異常があれば水換えとエサの調整から始める
- 水換えは水温を合わせたカルキ抜きの水で行い、一度に大量に換えて水質を急変させない
- 1匹だけ調子が悪いときは隔離し、エサ止めは長引かせず少量から再開する
- 塩の濃度は出典と場面によって0.5%と0.3%前後に分かれるので1つに決めず、薬は製品の表示を確かめて使う
- 数日たっても変わらない・悪化する・複数匹に広がる・体表に異常があるときは専門家へ相談する
毎日のエサの時間に泳ぎ方・食いつき・フンを見ておくことが、異変に早く気づくための確かな手がかりになるでしょう。
なお、この記事で紹介した数値や対処はあくまで出典による一般的な目安で、個体差や水槽の環境によって合う方法は変わります。
正確な情報は製品の表示や発売元の説明でご確認ください。
最終判断は、観賞魚に詳しい動物病院や購入店へご相談のうえ、ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。





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