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ウィローモスの種類一覧|ウィーピング・フレイム・クリスマスモスの違いと選び方

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流木に付いた緑のモスを背景に、ウィローモスの種類と見分け方・用途別の選び方と書かれた表紙のスライド

ウィローモスの種類はいくつある?名前の混乱と見分け方・用途別の選び方

THE AQUA LAB 所長(イラスト)

こんにちは。THE AQUA LAB、運営者の所長です。

ウィローモスを買おうとしてショップや通販を見ると、南米ウィローモス、ウィーピングモス、フレイムモス、クリスマスモス、ジャワモスと、似た名前がずらっと並んでいて迷いますよね。

ウィローモスの種類はいくつあるのか、南米ウィローモスとの違いは何か、ジャワモスとは同じものなのか。このあたりは、実は名前そのものが混乱しているので、商品名だけを見比べても答えが出にくいテーマなんです。先に答えを言うと、ウィローモスの仲間は決まった数で数えられるものではなく、同じ名前で別のコケが売られていることがある、というのが実態です。

この記事では、日本の研究者が水槽のコケを調べた論文と、水草の生産会社が公開している植物データを手がかりに、流通名と学名・和名の対応を一つの表にまとめました。そのうえで、見分け方のポイント、活着させる場所や光の強さに合わせた選び方、稚魚やエビの隠れ家に向く種類、購入時に確かめたいことまで順番に整理していきます。

“名前が多すぎて、結局どれを選べばいいの?”という方でも、読み終えるころには自分の水槽に合うモスの候補が絞れるはずですよ。

  • ウィローモスという名前が1種類を指さない理由
  • 主なモスの流通名・学名・和名の対応と性質の違い
  • 置き場所や光の条件から種類を選ぶ目安
  • 購入時に種類を確かめるためのチェックポイント
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ウィローモスの種類と名前の混乱を整理する

最初に結論を言うと、ウィローモスの種類を考えるときは、商品名ではなく学名を軸にするのがいちばん確実です。日本の観賞魚店で「ウィローモス」と呼ばれてきたコケは、英語圏でwillow mossと呼ばれるコケとは別の種類であることが多い(必ずしも同じコケを指していない)と、1982年の論文ですでに指摘されています。さらに、クリスマスモスのように名前は似ていても属(生物の分類で種のひとつ上のまとまり)から違うものも並んで売られていて、南米ウィローモスのように学名を確かめられない流通名もあります。この章では、まず名前の混乱がどこから来ているのかを押さえ、次に主なモスの学名と和名、生産会社のデータを1枚の表に並べます。そのあとで、定番のウィローモスとジャワモスの関係、南米ウィローモスとクリスマスモス、ウィーピングモスとミニ台湾モス、フレイムモスとスパイキーモスの順に、それぞれの特徴を見ていきます。

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ウィローモスという名前は1種類を指さない

ウィローモスという名前は、特定の1種類を指す正式な名前ではありません。流通の場で使われてきた呼び名で、指しているコケが場面によって変わります。

このことを最初に整理したのが、蘚苔類(せんたいるい=コケの仲間)の研究者である高木典雄・渡辺良象・岩月善之助の3氏による1982年の報告です(出典:高木典雄ほか「淡水魚水槽中の観賞用水生蘚苔類」日本蘚苔類学会会報 3巻5号(J-STAGE))。

この報告は、熱帯魚の愛好家や業者の間で呼ばれている蘚苔類の名前や、解説書に書かれている名前に混乱があるとして、東京・名古屋・京都の熱帯魚店で実際に使われているコケを調べたものです。

報告の結論のひとつが、日本で「ウィローモス」と誤って呼ばれることが多いのは、タキシフィラム・バルビエリ(Taxiphyllum barbieri)というコケだという点でした。報告ではこのコケに「ミズキャラハゴケ」という和名を新しく付けています。

一方で、当時の一般的な解説書では、クロカワゴケ(Fontinalis antipyretica)に対してwillow mossという英名が使われていたとも書かれています。つまり、本に書かれたwillow mossと、お店で売られているウィローモスが、別のコケを指していることが多かったわけです。

さらに報告は、業者が自分の店のものを指して言うウィローモスは、必ずしもクロカワゴケではなく、ミズキャラハゴケだったりヤナギゴケだったりして、かなり混乱しているとも述べています。

英国王立園芸協会(RHS)の植物データでも、Fontinalis antipyreticaの別名としてwillow mossが挙げられています。英語の資料でwillow mossと出てきたら、日本の水槽でおなじみのウィローモスとは別のコケの話かもしれない、という前提で読むと混乱しにくいですよ。

ここで大事なのは、ウィローモスという名前が“間違っている”と責めることではありません。名前と中身が一対一で対応していないので、商品名だけで性質や育て方を決めつけない、という姿勢がいちばん役に立つということです。

なお、この報告は40年以上前のもので、現在の国内流通でどの種類がどれくらいの割合で売られているかまでは分かりません。今のお店の状況は、次の項から紹介する生産会社のデータや、販売ページの学名表示とあわせて判断するのが安全かなと思います。

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学名と和名で見る主な種類の対応表

ウィローモス、クリスマスモス、ウィーピングモス、ミニ台湾モス、フレイムモス、スパイキーモスの学名と成長速度・高さ・光・CO2の目安を並べた表のスライド
主なモスの学名と成長の目安

ここからは、よく見かけるモスを流通名・学名・和名で並べ、水草の生産会社が公開しているデータとあわせて1枚の表にまとめます。

データの出どころは、デンマークの水草生産会社トロピカ(Tropica)の植物ページです(出典:Tropica Aquarium Plants「Taxiphyllum barbieri ‘Bogor Moss’」ほか各種の植物ページ)。トロピカの表では、高さは水槽に入れて2か月後の平均の高さ(cm)、光の量は平均的な水草の必要量を1Lあたり0.5Wとする基準、CO2は中程度の必要量を6〜14mg/Lとする基準で書かれています。

和名は、1982年の報告で使われている名前です(フクロハイゴケが報告に出てくる文脈は、次の項で紹介します)。報告で種名として対応づけられていない種類は「—」にしています。

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よく見る流通名 学名(トロピカの表記) 1982年の報告の和名 トロピカの成長速度 2か月後の高さの目安 光の量 CO2
ウィローモス(ジャワモス) Taxiphyllum barbieri ‘Bogor Moss’ ミズキャラハゴケ 中くらい 3〜10cm以上 少なめ 少なめ
クリスマスモス Vesicularia montagnei ‘Christmas Moss’ —(報告にはV. montagnei=タマキゴケが店のジャワモスの同定候補として出るが、“検討を要する”と留保) 中くらい 3〜5cm以上 中くらい 少なめ
ウィーピングモス Vesicularia ferriei ‘Weeping Moss’ フクロハイゴケ 中くらい 3〜5cm以上 中くらい 少なめ
ミニ台湾モス Taxiphyllum alternans ‘Taiwan Moss’ — 中くらい 3〜10cm以上 少なめ 少なめ
フレイムモス Taxiphyllum sp. ‘Flame Moss’ — 遅い 3〜10cm以上 少なめ 少なめ
スパイキーモス Taxiphyllum sp. ‘Spiky Moss’ — 中くらい 3〜10cm以上 少なめ 少なめ
(英語圏のwillow moss) Fontinalis antipyretica クロカワゴケ トロピカの表には無し。RHSは冷たくきれいな水でよく育つとしている

表の値は、どれも生産会社が自社の栽培株について示した目安です。水温や水質、光の当て方で育ち方は変わるので、あくまで一般的な目安として見てくださいね。

この表を作ってみて分かったのは、同じ会社の資料の中でも、説明文と表の数値が食い違っている種類があることです。たとえばクリスマスモスは、説明文では高さ1〜3cmとされている一方、表では3〜5cm以上になっています。フレイムモスは説明文が5〜15cm、表が3〜10cm以上。スパイキーモスは説明文が2〜10cm、表が3〜10cm以上でした。

ウィーピングモスも、植物ページの説明文では成長が早いとされる一方、同じ会社が2020年に公開した解説記事では成長が遅い種類と書かれています。

高さの数字は測り方(説明文は株の立ち上がり、表は2か月後の平均)が違う可能性があり、どちらかが間違いとは言い切れません。ただ、数字を1つだけ拾って“このモスは何cmになる”と覚えるのは危ない、ということはこの比較からはっきり言えます。

学名の後ろに付いている ‘Bogor Moss’ や ‘Flame Moss’ のような引用符つきの名前は、生産会社などが付けている呼び名です。フレイムモスやスパイキーモスのように学名が“Taxiphyllum sp.(種名が未確定)”となっている種類は、まだ正式な種名が決まっていないことを示しています。

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定番のウィローモスとジャワモスの関係

1982年の報告では、日本で「ウィローモス」と呼ばれることが多かったのはタキシフィラム・バルビエリ(ミズキャラハゴケ)でした。そして、生産会社トロピカの資料では、このタキシフィラム・バルビエリがジャワモス(Java moss)の名前で並んでいます。

トロピカの検索結果では、Taxiphyllum barbieri ‘Bogor Moss’ の欄に「Commonly named Java moss」(一般にジャワモスと呼ばれる)と書かれています。1982年の報告で日本のウィローモスとされたコケと、トロピカがジャワモスと呼ぶコケが、学名の上では同じものを指している、というわけですね。

1982年の報告によると、このコケはもともと1909年に安南(今のベトナム)で採集された標本をもとに、1911年に新種として記載されたものです。熱帯アジアのどこかの地方から熱帯魚と一緒に日本へ渡ってきたと考えられていて、執筆者の一人の記録では、都内の熱帯魚店では昭和30年代にはウキゴケ(リシア)が多く、40年代に入ってからこのコケが売られるようになったそうです。そのころからwillow mossの名前が付けられていた、とも書かれています。

報告では、水槽の中で育った株は基準になった標本よりもよく伸び、10cm以上、時には30cm近くになることもあると記録されています。生きているときの色は鮮やかな緑で美しい、とも書かれています。

トロピカの説明では、このモスは東南アジア産の丈夫な種類で、水質や光への要求が少なく、厚さ3〜10cmほどになり、どんな表面にもよく育つとされています。石や流木の飾り付け、水槽内の機材を隠す用途に向いていて、デコレーションに着くまでは釣り糸か木綿糸で固定し、茂りすぎたらハサミで切ればよい、という案内です。

ただ、ここでひとつ注意があります。1982年の報告は、当時の解説書に「ジャワモス」として載っていたヴェシキュラリア・デュビアナ(Vesicularia dubyana)について、ジャワ産の標本と比べると形の特徴が明らかに違い、解説書のV. dubyanaは実はミズキャラハゴケか別の種類を指しているのではないか、と推測しています。

また、京都の水草専門店で「ジャワモス」と呼ばれていた種類は、形から見てフクロハイゴケ(Vesicularia ferriei)によく似ていた、とも書かれています。報告は続けて、ジャワ産が確実ならタマキゴケ(V. montagnei)に当てるべきかとも思えるが、なお検討を要する、と留保しています。ジャワモスという名前も、ウィローモスと同じく中身が一定しない呼び名だったということですね。

まとめると、「ウィローモス」と「ジャワモス」は、資料の上では同じタキシフィラム・バルビエリを指して使われることがある一方、本や店によっては別のコケを指している場合もある、と理解しておくのが安全だと思います。今の国内流通でどちらがどれくらいかを示す資料は見つかっていないので、最後は商品ごとの学名表示で確かめてください。

なお、ウィローモスを沈めるだけで育てられるかどうか、浮いてしまうときの置き方は、ウィローモスをそのまま沈めてよいかと、浮く原因・巻かずに留める置き方で詳しくまとめています。

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南米ウィローモスとクリスマスモスの関係

定番のウィローモスはミズキャラハゴケとされ、南米ウィローモスは学名を示す一次資料が見つかっていないことを左右に並べたスライド
定番のウィローモスと南米ウィローモスの関係

南米ウィローモスは、名前に「ウィローモス」と付いていますが、定番のウィローモス(タキシフィラム・バルビエリ)とは別のモスとして売られている流通名です。そして、この南米ウィローモスがどの学名に当たるのかを示した一次資料は、今回の調べでは見つかりませんでした。

ここは正直にお伝えしておきたいところです。南米ウィローモスという名前は国内の販売ページでよく見かけますが、生産会社の植物データや学術的な資料で、この流通名と学名を結びつけた記述は確認できていません。

一方、名前の似ているクリスマスモスについては、トロピカがはっきりした説明を出しています。トロピカの植物ページでは、クリスマスモスの学名はVesicularia montagnei ‘Christmas Moss’ で、ブラジル原産、表の原産地は南アメリカとされています。

名前の由来は、横に出る枝の付き方がモミの木の枝のように見えることで、この枝ぶりが普通のヴェシキュラリア・デュビアナとの見分けどころだと説明されています。南米産とされるモスと、南米の名が付いたウィローモス。名前のうえでは結びつけたくなりますが、両者を同じものとする資料は確認できていません。

ただし、トロピカ自身の資料でも、植物ページではVesicularia montagnei、2020年のウィーピングモスの解説記事ではVesicularia dubyana ‘Christmas’ と、クリスマスモスの学名が一致していません。学名のレベルでも揺れがある以上、“南米ウィローモス=クリスマスモス”と言い切るのは避けたほうがよさそうです。

育て方の面では、トロピカはクリスマスモスについて、普通のジャワモスより要求が多く、成長もゆっくりだと説明しています。流木や石にはよく着くものの、水中に広がっていくと形が崩れるので、きれいに保つには刈り込みが必要だという案内です。表では光の量が“中くらい”で、定番のウィローモスの“少なめ”より一段上になっています。

南米ウィローモスを買うときは、販売ページに学名が書かれているかを見て、Vesicularia属なのか、Taxiphyllum属なのかを控えておくのがおすすめです。学名の表示が無い場合は、定番のウィローモスより少し光を当てる前提で、刈り込みで形を整えるつもりで迎えると失敗しにくいかなと思います。

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ウィーピングモスとミニ台湾モスの特徴

流木から垂れ下がるウィーピングモスと、枝分かれした流木や石に付くミニ台湾モスの特徴を並べたスライド
流木から垂らす見せ方に向く種類

ウィーピングモスは、新しい芽が下向きに垂れ下がるように伸びるのが最大の特徴のモスです。学名はVesicularia ferriei ‘Weeping Moss’ で、1982年の報告の和名ではフクロハイゴケに当たります。

トロピカが2020年に公開した解説記事によると、ウィーピングモスはアジア産で、もともと中国から輸入されたという報告があり、日本の南部にも分布しているそうです。野生では湿った岩や川岸、小さな流れの近くの湿った土の上で育ち、水中で育つ姿がしだれ柳の枝と葉のように見えることから、この名前が付いたと説明されています。

同じ記事では、枝ぶりはクリスマスモスに似ていて葉の広がりも比較的広いものの、新しい芽がはっきり下向きに垂れる点で見分けられるとされています。暗めの水槽では垂れずに横向きに広がり、まとまりの弱い育ち方になるとも書かれています。

垂れる形をきれいに出すには、中程度から強めの光に、十分なCO2と水の循環を組み合わせるのがよいとされています。ただし、これらは必ずしも欠かせない条件ではなく、もっと控えめな環境でも健康には育つ、という書き方です。

注意したいのは、記事がウィーピングモスを成長の遅い種類として扱い、立ち上げたばかりの水槽ではコケ(藻類)が付きやすいので、ある程度落ち着いた水槽に入れたほうがよいとしている点です。活着させるときは、下の層が光や水の流れ不足で枯れないよう、最初は薄く広げて付けることもすすめられています。固定には釣り糸やひも、シアノアクリレート系の瞬間接着剤が使えるとされています。

ミニ台湾モスは、トロピカがTaxiphyllum alternans ‘Taiwan Moss’ として扱っているモスです。説明では、横向きに広がって垂れ下がる育ち方をする、ウィーピングモスを小さくしたようなモスで、枝分かれした流木や垂直の石に付けると最もよく見え、モスの壁や水槽内の機材隠しにも役立つとされています。

要求はかなり少なく育てやすい一方、十分な光と少しのCO2を足すと成長と枝分かれが促される、とも書かれています。また、このモスの正体はまだ確定しておらず、今後の研究でイソプテリギウム(Isopterygium)の仲間に入れられる可能性がある、とトロピカ自身が説明しているのも興味深いところです。

どちらも“流木から垂らす”見せ方に向くモスですが、光をしっかり当てられる水槽ならウィーピングモス、控えめな光で手軽に垂れる雰囲気を出したいならミニ台湾モス、という分け方がひとつの目安になります。

ウィーピングモスを通販で探すときは、商品名だけでなく学名(Vesicularia ferriei)の表示があるかと、カップ入りの組織培養か、流木などに付いた状態かを確かめてから選んでください。価格や在庫、届く量の表示はショップごとに違うので、購入前に各ショップで確認してくださいね。

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フレイムモスとスパイキーモスの特徴

フレイムモスとスパイキーモスは、どちらもトロピカがTaxiphyllum sp.(種名が未確定のタキシフィラム属)として扱っているモスで、向いている見せ方がはっきり違うのが面白いところです。フレイムモスは上へ立ち上がる姿、スパイキーモスは枝を張る姿を見せるのに向いています。

フレイムモスの名前は、その育ち方から来ています。トロピカの説明では、詰まって縦に伸び、やわらかく波打つ芽が、濃い緑のたき火のように見えるとされています。説明文の高さは5〜15cmです。

この形のおかげで、フレイムモスは水平な面に向いていて、横にはゆっくりとしか広がらないとされています。小さな石に付けたり、流木に小さな束で付けたりすると美しく見える、という案内です。表の成長速度は“遅い”で、今回の表の中では唯一の遅い評価になっています。

スパイキーモスは、トロピカの説明ではクリスマスモスの“兄貴分”(big brother)と表現されていて、クリスマスモスより大きく、濃い緑の枝分かれした芽をたくさん出すモスです。説明文の高さは2〜10cmで、アジア産とされています。

スパイキーモスは垂直な面で最もよく映え、枝分かれした芽が見えるように付けるのがよいとされています。底床に小さな房を少しずつ間をあけて植えれば、じゅうたんのように見せることもできるそうです。成長が早く、とても弱い光でもよく育つ、とも書かれていて、光の弱い水槽で使いやすい種類だと言えます。ただし、同じページの表では成長速度が“中くらい”になっていて、説明文の“成長が早い”とはそろっていません。

まとめると、石の上で炎のような立ち上がりを見せたいならフレイムモス、壁面や流木の側面で枝ぶりを見せたい、しかも光が控えめならスパイキーモス、という選び方になります。同じタキシフィラム属でも、ここまで見せ方が違うんですね。

フレイムモスを通販で探すときは、トロピカの組織培養カップのように生産者と呼び名(’Flame Moss’)が分かる商品を選ぶと、ここで紹介した性質を当てはめやすくなります。価格や在庫は変わりやすいので、購入前に各ショップで確認してください。

ウィローモスの種類ごとの選び方と育て方

ここからは、前の章で整理したウィローモスの種類を、実際にどう選ぶかの話です。結論から言うと、モス選びは“どこに付けて、どう見せたいか”と“自分の水槽の光とCO2がどれくらいか”の2つで、候補がほぼ決まります。迷ったら、光やCO2への要求が少なく、どんな表面にも育つ定番のウィローモス(タキシフィラム・バルビエリ)から始めるのが無難です。この章では、置き場所と見せ方から種類を選ぶ判断の目安を表にし、光とCO2の条件で選ぶときの注意、稚魚やエビの隠れ家として使うときの考え方、購入時に種類を確かめるポイントを順に見ていきます。最後に、本文で扱いきれなかった疑問をよくある質問としてまとめました。主な根拠は、前の章の対応表と同じ資料(1982年の報告とトロピカの植物データ)です。

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置き場所と見せ方で選ぶ判断の目安

やりたいことごとに候補になるモスの種類と、トロピカの説明文に書かれている向きを並べた表のスライド
置き場所と見せ方で選ぶ判断の目安

モスの種類を選ぶときは、まず“水平な面に付けるのか、垂直な面に付けるのか、流木から垂らしたいのか”を決めると、候補が一気に絞れます。トロピカの説明文には、種類ごとに向いている付け場所がかなりはっきり書かれているからです。

下の表は、トロピカの説明文に書かれている付け場所と見せ方を、目的ごとに並べ直したものです。どの種類を勧めるかは、表の“資料に書かれている向き”の列をもとに整理しています(表の並べ方は記事としての整理で、生産会社の公式な分類ではありません)。

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やりたいこと 候補になる種類 資料に書かれている向き 気をつけたいこと
石や流木を手軽に緑で覆いたい ウィローモス(タキシフィラム・バルビエリ) どんな表面にもよく育つ。石や流木の飾り付け、機材隠しに向く 茂りすぎたらハサミで刈る
流木から枝を垂らしたい(光をしっかり当てられる) ウィーピングモス 流木や根に付けるのが最適。垂れる形が奥行きを出す 光が弱いと横に広がり、垂れにくい。立ち上げ直後はコケが付きやすい
流木から垂らしたい(光は控えめ) ミニ台湾モス 枝分かれした流木や垂直の石で映える。モスの壁にも 光とCO2を足すと枝分かれが増える
石の上で縦に立ち上げたい フレイムモス 水平な面に向く。横にはゆっくりしか広がらない 成長が遅い評価。広い面を早く覆う用途には不向き
壁面や流木の側面で枝ぶりを見せたい スパイキーモス 垂直な面で最もよく映える。とても弱い光でもよく育つ 大きめの株になる
モミの枝のような三角の枝ぶりを楽しみたい クリスマスモス 流木や石によく着く 普通のジャワモスより要求が多く成長も遅い。形を保つには刈り込みが必要

表で候補を1〜2種類に絞ったら、次の項の光とCO2の条件に自分の水槽が合うかを確かめる、という順番で考えると迷いにくいですよ。

ちなみに、モスを付ける流木そのものの選び方やアク抜きについては、流木を安く買える場所と選び方・アク抜きの手順で詳しく解説しています。

なお、モスは何種類も混ぜて付けることもできますが、成長の速さが違うと、早い種類が遅い種類を覆ってしまいがちです。たとえばフレイムモスはトロピカの表で唯一“遅い”評価なので、成長が中くらいのモスと同じ流木に密着させると、フレイムモスの立ち上がりが埋もれてしまうことがあります。混ぜるときは、種類ごとに付ける石や流木を分けておくと管理しやすいかなと思います。

◆所長のワンポイントアドバイス

見せ方で迷ったら、水槽を正面から見たときに“モスのどの面が見えるか”を想像してみてください。上から光を受ける水平な面は立ち上がるモス、横から見える側面は枝を張るモス、という分け方をすると、レイアウト全体のバランスが取りやすくなりますよ。

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光とCO2の条件で選ぶときの注意

光とCO2の面では、定番のウィローモス、ミニ台湾モス、フレイムモス、スパイキーモスの4種類が、トロピカの表でどちらも“少なめ”の評価です。クリスマスモスとウィーピングモスは、CO2は少なめでも光が“中くらい”とされているので、光の弱い水槽では一段難しくなります。

トロピカの表の光の量は、平均的な水草の必要量を1Lあたり0.5Wとする基準で書かれています。ただ、このW数は照明の種類によって明るさの感じ方が大きく変わるので、数字をそのまま自分のLED照明に当てはめるのは難しいところです。あくまで“この種類はほかの水草と比べて光を多めに欲しがるか、少なめで済むか”という相対的な目安として読むのがよいと思います。

CO2についても、トロピカは中程度の必要量を6〜14mg/L、高い必要量をおよそ15〜25mg/Lとしていて、今回の6種類はどれも“少なめ”の評価です。CO2の要求が低い種類なので、添加しない水槽でも育つ場合が多い、という目安になります。

とはいえ、ウィーピングモスの解説記事が書いているように、光とCO2、水の循環がそろうと、垂れる形やまとまりのよい育ち方がきれいに出やすくなります。ミニ台湾モスも、十分な光と少しのCO2で成長と枝分かれが促されるとされています。“育つかどうか”と“きれいな形で育つかどうか”は別、と考えておくと期待とのずれが小さくなりますよ。

照明選びに不安がある方は、水草ライトの選び方と代用LEDで失敗しやすい条件もあわせて読んでみてください。

もうひとつ見落としやすいのが水温です。英語圏でwillow mossと呼ばれるクロカワゴケ(Fontinalis antipyretica)について、RHSの植物データは、澄んだきれいな冷たい水でよく育ち、比較的ゆっくり育つ多年生のコケだとしています。もし手元のモスがこの種類だった場合、熱帯魚水槽の水温が負担になることも考えられます。

流通名だけでは種類を確定できないため、“光は少なめでよい”“CO2の添加なしで育つ”という性質も、学名が分かっている株にだけ当てはめるのが安全です。学名が分からないモスを暗い水槽に入れて調子を崩したときは、光や水温の条件が合っていない可能性も疑ってみてください。正確な情報は、販売店や生産会社の公式サイトをご確認ください。

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稚魚やエビの隠れ家に向く種類

稚魚やエビの隠れ家として使うなら、まずは定番のウィローモス(タキシフィラム・バルビエリ)が第一候補になります。トロピカは、このモスについて、繁殖用の水槽では稚魚のすばらしい隠れ家になると説明しています。

1982年の報告でも、熱帯魚業者が水生のコケを使う目的は、観賞用よりも稚魚の隠れ場所や卵の産み付け用が中心だと書かれています。少なくとも当時の業者にとって、モスは見た目より実用のための水草だったわけですね。

隠れ家として使うときのポイントは、細かい枝が密に絡み合う状態を作ることです。ウィローモスは、トロピカの説明では厚さ3〜10cmほどになり、どんな表面にも育つとされているので、流木や石に付けておけば、稚魚が逃げ込める茂みを作りやすい種類と言えます。

一方、ウィーピングモスのように光とCO2をそろえたほうが形がきれいに出る種類や、フレイムモスのように成長が遅い種類は、隠れ家を早く作りたい用途には少し向きにくいかもしれません。

エビとの組み合わせについては、トロピカのウィーピングモスの解説記事が、コケを食べるエビを十分な数入れておくと、モスの表面に付くぬめり(バイオフィルム)やコケの増加を抑えやすいので理想的だ、と書いています。成長が遅くコケが付きやすいとされるウィーピングモスでは、エビと一緒に育てるのは理にかなった組み合わせと言えそうです。

グッピーの稚魚の隠れ家として水草をどう組み合わせるかは、グッピー水槽に向く水草と、稚魚の隠れ家になる種類・入れる量で詳しく紹介しています。ヒレの長い魚と一緒に入れる場合は、ベタ水槽でヒレを傷つけにくい水草の選び方と配置も参考になると思います。

なお、モスの中に稚魚が入り込むと、水換えやトリミングのときに一緒に吸い出したり切ってしまったりしがちです。作業の前には、モスの茂みを軽く揺らして、中に隠れている稚魚やエビがいないかを確かめるクセをつけておくと安心ですよ。

定番のウィローモスを通販で探すときは、学名(Taxiphyllum barbieri)の表示と、無農薬かどうか、流木や石に活着済みかばら売りかを見比べて選ぶと失敗が少なくなります。価格や在庫、量の表示はショップごとに違うので、購入前に各ショップで確認してくださいね。

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購入時に種類を確かめるポイント

モスを買うときにいちばん大事なのは、販売ページやラベルに学名が書かれているかどうかを確かめることです。ここまで見てきたように、流通名だけでは中身が決まらないので、学名が分かるかどうかで、その後の育て方の当てやすさが大きく変わります。

購入前に見ておきたいポイントを、チェックリストにまとめておきます。

  • 販売ページやラベルに学名(Taxiphyllum barbieri、Vesicularia ferriei など)が書かれているか
  • 学名が「sp.」になっている場合は、生産会社が付けた呼び名(’Flame Moss’ など)も一緒に控えたか
  • 無農薬かどうか、エビと一緒に入れても問題ない状態かの表示があるか
  • カップ入り(組織培養)か、流木や石に付いた状態か、ばら売りかを確認したか

トロピカは、フレイムモスやウィーピングモスなど複数のモスを、密閉カップに入った組織培養(無菌の容器の中で増やした株)としても出しています。ウィーピングモスの解説記事の手順では、ふたを外してカップから出し、水を張ったボウルの中で培地のジェルを洗い流してから、好きな数に分けて薄く流木や石に付ける、という流れです。

エビを飼っている水槽にモスを入れる場合は、農薬の有無も気になるところですよね。水草の農薬が抜けるまでの期間の考え方は、水草の農薬が抜ける期間とエビに安全な入れ方にまとめています。

そして、どの種類を選んだ場合でも気をつけたいのが、増えすぎたモスや刈り込んだ切れ端の扱いです。環境省は、悪影響を及ぼすおそれのある外来種について「入れない」「捨てない(逃がさない、放さない)」「拡げない(増やさない)」の三原則を守ることが大切だと呼びかけています。

ウィーピングモスのように日本の南部にも分布しているとされる種類であっても、輸入された株を自然の川や池に持ち出してよいことにはなりません。トリミングで出た切れ端は、ほかの水槽で育てるか、乾かしてから家庭ごみとして処分するなど、野外に出さない形で扱うのが安全です。処分の方法でお住まいの地域の決まりに迷うときは、自治体の案内を確認してくださいね。

購入後に“思っていた育ち方と違う”と感じたときは、学名と生産会社の説明を見直すのがいちばんの近道です。それでも判断がつかない場合は、購入したショップに相談するのがおすすめです。最終的な判断は、販売店などの専門家にご相談ください。

◆所長のワンポイントアドバイス

学名が書かれていない商品を買ったときは、購入日・店名・商品名をメモしておくと、あとで育ち方を振り返るときの手がかりになります。同じ「ウィローモス」でも買った店によって中身が違うことがある、という前提で記録を残しておくと安心です。

ウィローモスの種類についてよくある質問

水の外(水上)でも育つ種類はありますか?

1982年の報告には、京都の水草専門店でミズキャラハゴケ(定番のウィローモス)が水中から水槽の縁へはい上がり、半分陸・半分水のような状態で育っていた例が書かれています。また、トロピカはウィーピングモスについて、野生では湿った岩や川岸で育つと説明しています。ただし、どれも湿った環境での話なので、乾いた場所で育つという意味ではありません。

ウィローモスは魚に食べられてしまいますか?

報告には、ウィローモスそのものが食べられたという記述はありません。1982年の報告では、熱帯魚はほかの水草は食べてもコケの仲間は食べないという説がある一方、イチョウウキゴケが金魚やコイに食べられた観察例もあると紹介されています。執筆者の一人が36種の熱帯魚を飼った中では、そうした様子は見られなかったそうです。報告自身が、餌の量にも関わるので簡単には結論を出せないとしているので、魚の種類や餌の与え方によって変わると考えておくのがよいと思います。

英語の資料のwillow mossの育て方を参考にしてもいいですか?

英語の資料でwillow mossとあるときは、クロカワゴケ(Fontinalis antipyretica)を指していることがあります。RHSはこの種類について、澄んだきれいな冷たい水でよく育ち、深さ10〜90cmでよく育つとしていて、熱帯魚水槽のウィローモスとは条件が違う可能性があります。参考にする前に、その資料がどの学名の話をしているかを確かめてください。

モスを付けるときは糸と接着剤のどちらがいいですか?

トロピカは、ウィローモス(タキシフィラム・バルビエリ)については釣り糸か木綿糸で固定する方法を、ウィーピングモスについては釣り糸やひも、シアノアクリレート系の瞬間接着剤で付ける方法を紹介しています。また、ウィーピングモスの解説記事では、最初は薄く広げて付けると、下の層が光や水の流れ不足で枯れにくいとされています。

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ウィローモスの種類選びのまとめ

ウィローモスの種類について、最後にポイントを振り返っておきます。

1982年の報告では、日本で「ウィローモス」と呼ばれることが多かったのはタキシフィラム・バルビエリ(和名ミズキャラハゴケ)で、生産会社の資料ではこのコケがジャワモスの名前で並んでいます。一方、英語圏のwillow mossはクロカワゴケという別のコケを指すことがあり、名前だけでは中身が決まりません。

  • 種類を考えるときは商品名より学名を軸にする
  • 水平な石にはフレイムモス、垂直な面にはスパイキーモス、流木から垂らすならウィーピングモスかミニ台湾モス
  • 迷ったら光とCO2の要求が少ない定番のウィローモスから始める
  • 南米ウィローモスは学名を示す一次資料が見当たらないため、購入時の学名表示を確認する

生産会社のデータでも、説明文と表の数値が食い違うことがあるので、数字は目安として受け止め、自分の水槽での育ち方を見ながら調整していくのがいちばん確実です。今回の対応表と判断の目安が、あなたの水槽に合うモス選びの手がかりになればうれしいです。

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