ウィローモスはそのまま沈めても大丈夫?浮く・散る・茶色くなる前に知りたい置き方
ウィローモスを買ってきたけれど、流木に糸で巻くのは面倒だし、うまくできる自信もない。そのまま水槽に沈めるだけでいいのかな、と迷っていませんか。その気持ち、よくわかります。
結論から言うと、ウィローモスは丈夫なコケなので、そのまま沈めただけですぐに枯れてしまうとは考えにくいです。ただ、バラのまま入れると浮く、水槽中に散る、フィルターに吸い込まれる、底で茶色くなるといった困りごとが起きやすいのも事実です。ウィローモスが浮く理由や、沈める方法、置くだけで済ませたいときの考え方を知っておくと、失敗はぐっと減らせます。
この記事では、ウィローモスがどうやって石や流木にくっつくのかという仕組みから、ウィローモスが活着しないときに見直したい留め方や置き場所、糸で巻かない置き方として石に挟む方法や重りを使う方法、底に置く使い方、ウィローモスの絨毯の作り方までを順番に整理しました。メダカの産卵用やエビの隠れ家として束のまま使う場合の注意点も、あわせてまとめています。
水草メーカーの公開情報や、蘚苔類(せんたいるい=コケの仲間)の論文、海外の水草データベースの記述をもとにしているので、あなたの水槽に合う置き方を選ぶ材料にしてくださいね。
- ウィローモスをそのまま沈めると何が起きるか
- 浮く・散る・茶色くなる原因と、その防ぎ方
- 石に挟む・重しを乗せる・底に敷くなど糸を使わない留め方
- メダカやエビの水槽で束のまま使うときのコツ
ウィローモスをそのまま沈めるとどうなるか
まずは「そのまま沈めたら、ウィローモスの身に何が起きるのか」を整理していきます。育つかどうかと、その場にとどまるかどうかは、実は別の話なんです。仕組みがわかると、どこに気をつければいいのかが自然と見えてきますよ。
この章では、最初にウィローモスが石や流木にくっつく仕組みを確かめます。そのうえで、そのまま沈めたときに起きやすい4つの困りごと、つまり水面に浮く、水槽中に散る、底で茶色くなる、フィルターに吸い込まれる、を順番に見ていきます。最後に、そのまま使ってもかまわない場面と、留めたほうがよい場面を、手間ととどまりやすさの2つの軸で表にして比べます。今の水槽でどれに当てはまりそうか、思い浮かべながら読んでみてください。
そのまま沈めても育つ理由は仮根にある

ウィローモスは、そのまま沈めても育つ力を持っています。理由は、ウィローモスがもともと「ほかの物の表面にくっついて暮らす」タイプのコケだからです。
ドイツの水草データベース「Flowgrow」では、熱帯魚水槽でウィローモスとして広く出回っているタキシフィラム・バルビエリ(Taxiphyllum barbieri)の暮らし方を、石や流木の上で育つ「着生(ちゃくせい)」のタイプとしています。着生とは、土に根を張るのではなく、岩や木の表面に張り付いて生きる暮らし方のこと。だから、底砂に植え込む必要はありません。
張り付くための道具が、仮根(かこん)です。つまり、茎の裏側に出る小さな茶色い毛の束のこと。根のように見えますが、Flowgrowはこれを体をくっつけるための器官として説明していて、仮根によってあらゆる表面にすばやくしっかりくっつき、プラスチックや、藻類(茶ゴケなど)が付いたガラス面にさえ付くと書いています。
デンマークの水草メーカーTropicaも、このコケ(同社の商品名は「Bogor Moss」)について、水質や光への要求が少ない丈夫な植物で、どんな表面にも進んで育つとしています。光の要求度とCO2の要求度は、どちらも同社の区分で「低い」です(出典:Tropica Aquarium Plants「Taxiphyllum barbieri ‘Bogor Moss’」)。
今回確かめた資料では、まだ何にも付いていない状態のモスについて直接書かれた記述は見つかりませんでした。ただ、こうした丈夫な性質から考えると、そのまま沈めただけで、ウィローモスがすぐに弱ってしまうとは考えにくいと言えます。なお、Flowgrowは「いったん慣れれば」幅広い条件で育つ、という書き方をしています。入れた直後は、しばらく様子を見てあげてくださいね。
ただし、大事なのはここからです。Tropicaは同じ説明の中で、飾りの石や流木にしっかり付くまでは、釣り糸や木綿糸で留めておくようにとも書いています。
ここからは私の整理ですが、メーカーがわざわざ留めるようにと書いている以上、仮根が付くまでの間は、ウィローモスは自分の力だけではその場にとどまりにくいと考えられます。そのまま沈めたときの困りごとは、ほとんどがこの「付くまでの間」に起きます。
付くまでに何日かかるかは、メーカーの説明でも日数ではなく「付くまで」と書かれているだけで、決まった数字はありません。水温や光、モスの状態によって変わるものと考えて、日数で区切らず、モスが動かなくなったかどうかを目で見て判断するのがおすすめです。
ちなみに「ウィローモス」という名前は少しややこしいです。1982年に日本蘚苔類学会の会報に載った論文(高木典雄ほか「淡水魚水槽中の観賞用水生蘚苔類」)では、日本でしばしば誤ってウィローモスと呼ばれているのはタキシフィラム・バルビエリというコケで、多くの水槽で旺盛に育っていると書かれています。英語圏でwillow mossと呼ばれるのは、フォンティナリス・アンティピレティカ(Fontinalis antipyretica)という冷たい水を好む別のコケです。この記事は、熱帯魚水槽でよく使われるタキシフィラム・バルビエリを中心に書いています。
バラのまま入れると浮く・散るのはなぜか
ウィローモスをそのまま沈めたのに、翌朝には水面にぷかぷか浮いていた。水槽のあちこちに細かい切れ端が散らばっていた。これは、とてもよくある悩みです。
理由は大きく2つあります。
理由1:枝のすき間に空気の泡を抱えている
ウィローモスは、細い枝が何重にも重なった茂みのような姿をしています。買ってきたばかりのカップや袋から出したモスは、このすき間に小さな空気の泡を抱えていることがあります。そのまま水に入れると、泡が浮き袋のような役目をして、モスごと浮き上がってしまうんです。
また、光がよく当たる場所では、光合成でできた酸素の細かい泡が葉の表面に付き、それが集まってモスを持ち上げることもあります。照明を点けている間だけ浮きやすい、というときはこのパターンかもしれません。
理由2:とどまるための支えがない
前の見出しで見たとおり、仮根が付くまでのウィローモスには、その場にとどまる手段がありません。水の流れで少しずつ転がる。魚がつついて、ちぎれる。エビが枝をつかんで、引っぱる。こうした小さな力が毎日かかると、モスはだんだんほどけて、水槽の中に散っていきます。
散ったこと自体は、すぐに大問題になるわけではありません。ただ、Flowgrowは、このコケはどんなに小さな切れ端からでも新しい芽が出るとし、そのせいでときに厄介者になることもある、と書いています。つまり、散った切れ端がガラス面の隅、ヒーターの裏、底砂のすき間などで勝手に育ちはじめ、気づくと思わぬ場所がモスだらけ、ということが起こりえます。
浮かせない・散らせないための下準備
浮くのを防ぐいちばん簡単な方法は、入れる前に泡を抜いておくことです。カルキを抜いた水を張ったボウルやバケツの中で、モスを軽くもみ洗いするように動かすと、すき間の空気が出ていきます。そのあと、水の中で手を離して、モスが沈んでいくことを確かめてから水槽に入れましょう。
散るのを防ぐには、次の章で紹介する「石に挟む」「重しを乗せる」「底に薄く敷いて押さえる」といった方法で、仮根が付くまでの間だけ動かないようにしておくのが近道です。糸で巻かなくても、留めておく工夫はいくつもありますよ。
底に沈めたままのモスが茶色くなる原因

そのまま沈めたウィローモスが、しばらくすると茶色っぽくなってきた。これも、底に置きっぱなしにしたときに起きやすい変化です。原因は1つとは限りませんが、底に置いたときに関わりやすい代表例として、光・汚れ・水温の3つを見ていきます。このほか、モスの表面を藻類が覆ってしまう、水草に合わない薬を使った、養分が足りない、といったことが重なっている場合もあります。
光が届きにくい
水槽の底は、水面に近い場所より光が弱くなりがちです。背の高い水草や流木の陰になれば、なおさらですね。Flowgrowによると、このコケは光が強いと詰まった茂みになって勢いよく育つ一方、光が弱いと色が暗くなり、ひょろひょろと間延びした姿になるとされています。
Tropicaの区分では光の要求度は「低い」ので、暗いから即だめ、というわけではありません。ただ、底の隅の、ほとんど光が当たらない場所に置き続けると、色つやが落ちやすいと考えておくとよいでしょう。
茂みの中に汚れがたまる
底には、食べ残しやフン、枯れた葉のかけらが沈んできます。細かい枝の重なったウィローモスは、こうした汚れを網のように受け止めてしまいます。茂みの中に汚れがたまって水が通いにくくなると、内側から傷んで茶色くなることがあります。
特に、モスを厚く盛った状態で底に置くと、外側だけが光と水に触れ、内側はほとんど動かない水の中に閉じ込められがちです。そのまま沈めるときほど、薄く広げて置くことを意識してみてください。
水温が高すぎる
Flowgrowは、タキシフィラム・バルビエリが30℃まで耐えるとしつつ、24℃前後の涼しめの水のほうが成長が速く、健康的な姿になると書いています。同じデータベースの数値の欄では、耐えられる水温が12〜34℃、育てやすい水温が20〜30℃となっていて、上限が文章の欄(30℃)と数値の欄(34℃)でずれています。家庭の水槽では、低いほうの30℃を上限の目安として読んでおくのが安全です。あくまで一般的な目安ですが、真夏に水温が高い状態が長く続くと、調子を崩すきっかけになりえます。
また、英国王立園芸協会(RHS)は、フォンティナリス・アンティピレティカについて、澄んだきれいな冷たい水でよく育つとしています。もしあなたのモスがこちらの種類なら、熱帯魚水槽の水温そのものが負担になっている可能性もあります。
茶色くなった部分は、元に戻ることを期待して残しておくより、ハサミで切り取ってしまうほうが、まわりの元気な部分を守れます。全体の調子が上がらないときは、水草全般の傷み方と立て直し方をまとめた水槽の水草が枯れるときの再生の手順と予防法も参考になると思います。
そのまま沈めたときに起きやすいことを、原因と対処の組み合わせで表にまとめておきます。
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| 起きやすいこと | 考えられる原因 | 対処の例 |
|---|---|---|
| 水面に浮く | 枝のすき間の空気の泡・光合成でできた酸素の泡 | 入れる前に水の中でもみ洗いして泡を抜く・沈むのを確かめてから入れる |
| 水槽中に散る | 仮根が付く前で、とどまる支えがない | 石に挟む・重しを乗せる・底に敷いて押さえる |
| フィルターに吸い込まれる | ちぎれた切れ端が水流に乗る | 吸い込み口から離して置く・吸い込み口のまわりを数日見る |
| 色が暗く間延びする | 底や物陰で光が弱い | 光の届く場所へ移す・上を覆う物を減らす |
| 内側から茶色くなる | 厚く盛って汚れがたまる・水が通わない | 薄く広げる・茶色い部分を切り取る |
| 全体の調子が落ちる | 水温が高い状態が続く・冷たい水を好む種類の可能性 | 夏の水温を見直す・購入時の学名を確かめる |
表の対処は、あくまで一般的な目安です。水槽の大きさや生体の数によって合う方法は変わるので、様子を見ながら少しずつ試してくださいね。
切れ端がフィルターに吸い込まれる問題
そのまま沈めたウィローモスで、意外と見落としがちなのがフィルターとの相性です。ちぎれて漂った切れ端は、水の流れに乗って吸い込み口へ向かいます。
吸い込み口に切れ端がたまると、水の通りが悪くなり、ろ過の力が落ちる原因になります。外部フィルターや上部フィルターの中に入りこめば、ろ材のすき間に絡まって、掃除のときに取り除く手間も増えますね。また、先ほど触れたとおり小さな切れ端からでも芽が出るコケなので、光の当たる吸い込み口のスポンジなどに引っかかった切れ端は、そこで育ちはじめることも考えられます。
吸い込み口から離して置く
いちばんの対策は、吸い込み口の近くにモスを置かないことです。とくに入れてから仮根が付くまでの間は、吸い込み口から離れた場所を選びましょう。強い流れが当たる場所も、モスがほどけやすくなるので避けたいところです。
流れが強すぎてレイアウトそのものが落ち着かない場合は、フィルターの出水の向きや強さを見直すのも一つの方法です。具体的なやり方は、外部フィルターの水流を弱める方法をまとめた記事で詳しく紹介しています。
入れた直後の数日は吸い込み口を見る
そのまま沈めた直後の数日は、毎日一度、吸い込み口のまわりを見る習慣をつけると安心です。切れ端が付いていたら、ピンセットや小さな網で取り除いておきます。水面に浮いた切れ端も、見つけたらすくっておきましょう。
スポンジ部分にモスが付いた場合
Flowgrowは、ハンブルグマットフィルター(水槽の壁一面にスポンジを立てる方式のろ過)も、このコケの土台としてとても向いていて、しばらくするとスポンジがモスにすっかり覆われる、と紹介しています。つまり、スポンジの表面にモスが付くこと自体は、使い方しだいで飾りにもなるということ。
ただ、スポンジフィルターやストレーナー(吸い込み口のカバー)のスポンジにモスが育つと、水の通り道をふさぐことも考えられます。モスが付いたら、水の流れが弱くなっていないかを時々確かめ、必要なら表面を刈り込んでおくと安心ですよ。
そのまま使ってよい場面と避けたい場面
ここまで困りごとを中心に見てきましたが、ウィローモスをそのまま沈める使い方が向いている場面も、ちゃんとあります。どんな水槽で、何のために使うのかで、答えが変わるんです。
そのまま使ってよい場面
ひとつは、メダカやエビ、稚魚の水槽で、隠れ家や産卵の場所として使う場合です。1982年の論文は、熱帯魚の水槽でコケの仲間が飾りとしてだけでなく、卵を産み付ける場所としても使われていると書いています。Tropicaも、繁殖用の水槽ではこのコケが稚魚の格好の隠れ家になるとしています。この使い方なら、形が多少くずれても困りませんし、むしろ束のまま動かせるほうが、卵を回収するときに便利です。
もうひとつは、仮置きです。流木や石を用意するまでの間、とりあえず水槽に入れておきたい。そんなときは、光の当たる場所にそのまま沈めておけば、モスを乾かさずに済みます。
避けたい場面
反対に、レイアウトを作り込みたい水槽では、そのまま沈めるだけの置き方はあまり向きません。散ったモスが思わぬ場所で育ち、狙った形を保ちにくいからです。
また、フィルターの流れが強い水槽や、底砂をホースでこまめに掃除する水槽も要注意です。流れで転がる、掃除のホースに吸われるなど、置いた場所にとどまりにくくなります。
置き方ごとの向き不向きを、表で比べてみましょう。
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| 置き方 | 手間 | とどまりやすさ | 向いている場面 | 気をつけたいこと |
|---|---|---|---|---|
| そのまま浮かべる・沈める | ほぼなし | 低い | メダカの産卵・エビの隠れ家・仮置き | 散る・吸い込まれる・底で汚れがたまる |
| 石や流木のすき間に挟む | 少ない | 中くらい | 石組みや流木のある水槽 | 挟む力が弱いと抜けやすい |
| 小石の重しを乗せる | 少ない | 中くらい | 底に敷きたいとき | 重しの下は光が届かない |
| ネット2枚に挟む | 中くらい | 高い | 底一面に絨毯を作りたいとき | ネットが隠れるまで時間がかかる |
| 糸で巻く・接着する | 多い | 高い | 流木や石に形よく付けたいとき | 巻くのに慣れが要る |
| 活着済みの流木・石を置く | ほぼなし | 高い | 手早くレイアウトを整えたいとき | 自分で付けるより費用がかかる |
表のとおり、手間ととどまりやすさは、だいたい裏表の関係です。目的に合わせて選べば、「糸で巻かないと失敗する」というわけではありませんよ。
迷ったときの目安は、「形を作りたいなら留める」「隠れ家や産卵に使うならそのままでもよい」です。どちらの場合も、入れる前に泡を抜くこと、吸い込み口から離すこと、厚く盛らないことの3つを押さえておくと、そのまま沈めたときの失敗はかなり減らせます。
ウィローモスをそのまま沈めて留める置き方
ここからは、糸で巻かずに、なるべくそのままの形でウィローモスを沈めて留める方法を紹介します。入れる前の下準備から、挟む・重しを乗せる・底に敷く・束で使う・活着済みを置く、までを順番に見ていきましょう。どれも特別な道具はほとんど要りません。
考え方の軸はひとつだけです。それは、仮根が付くまでの間だけ、モスが動かないようにしておくこと。付いてしまえば、あとはモス自身がその場にとどまってくれます。だから、糸で巻くかどうかは手段のひとつにすぎず、石のすき間や小石の重し、ネットでも同じ役目を果たせるんです。水槽の目的がレイアウトなのか、メダカやエビの暮らしやすさなのかを思い浮かべながら、合いそうな方法を選んでみてくださいね。
入れる前に洗う・農薬と貝を確かめる

どの置き方を選ぶにしても、水槽に入れる前のひと手間で、あとのトラブルがぐっと減ります。確かめたいのは、汚れ・農薬・貝の3つです。
まず販売表示を見る
水草の中には、育てる過程で使われた農薬が残っているものがあると一般によく言われ、エビの水槽では特に気をつけたい点です(今回この記事で確かめたメーカーの資料には、農薬についての記述はありませんでした)。購入時の商品ページや袋に「無農薬」などの表示があるかを確かめておきましょう。農薬が抜けるまでの考え方は、水草の農薬が抜ける期間とエビに安全な水槽づくりで詳しくまとめています。
なお、水草メーカーの中には、カップに密閉した状態で組織培養(つまり、清潔な容器の中で植物の小さな組織から育てる方法)した商品を扱っているところもあります。Tropicaの商品ページにも、このコケを閉じたカップの中で組織培養した水草だと説明している商品があります(英語の原文は Aquarium plant from tissue culture in closed cup)。どんな育て方の商品なのかは、商品の説明で確かめられます。表示の内容や扱いは商品ごとに違うので、正確な情報は公式サイトをご確認ください。
貝や汚れを取り除く
ポットや束で売られているモスには、小さな貝やその卵、枯れた葉、ゴミが付いてくることがあります。カルキを抜いた水を張ったボウルの中で、モスを少しずつほぐしながら目で確かめ、見つけたものはピンセットで取り除きましょう。白っぽいゼリーのような粒は、貝の卵のことがあります。
茶色い部分を切り、泡を抜く
すでに茶色くなっている部分は、入れる前にハサミで切り落としておきます。長く伸びた枝も、少し切りそろえておくと、あとで形を整えやすくなります。最後に、水の中でもみ洗いして枝のすき間の泡を抜き、手を離して沈むことを確かめれば下準備は完了です。
洗うときは水道水を直接かけ流すより、カルキを抜いた水をためたボウルの中で振り洗いするのがおすすめです。水が濁らなくなるまで2〜3回、水を替えながら洗うと、細かいゴミも落としやすいですよ。
モスそのものをこれから買う場合は、無農薬の表示や、カップ入りかポット入りかといった売られ方を見比べて選ぶと安心です。価格や在庫は変わりやすいので、購入前に各ショップで確認してください。手元にすでにモスがあるなら、今回の下準備をすれば十分使えます。
石に挟む・重しを乗せるだけで留める

糸で巻くのが面倒なら、仮根が付くまでの間だけ「動かないようにしておく」と考えるのがコツです。Tropicaが書いているとおり、留めておくのは付くまでの間だけでいいので、方法は糸に限りません。
石や流木のすき間に挟む
いちばん手軽なのは、石と石のすき間や、流木の割れ目、枝の付け根などに、モスを軽く押し込む方法です。少量ずつ薄く取り分け、すき間の奥へ指やピンセットで差し込みます。表面にふわっと乗せるだけだと抜けやすいので、モスの一部がすき間にしっかり入るようにするのがポイント。
仮根は、ざらざらした表面のほうが引っかかりやすいと考えられます。つるつるした石より、表面に凹凸のある石や流木のすき間を選ぶとよいでしょう。新しく流木を用意する場合は、アク抜きの手順を流木の選び方とアク抜きのガイドで確かめておいてくださいね。
小石の重しを乗せる
底に置きたいときは、平たい小石をモスの上にいくつか乗せて押さえる方法があります。仮根が付くまでの間、動かないようにしておくための工夫です。
参考までに、池で使う種類については、別のやり方も紹介されています。RHSは、フォンティナリス・アンティピレティカについて、おもりの付いた束を買ってレンガや石に結び付けると、岩の表面に付く、と紹介しています(出典:Royal Horticultural Society「Fontinalis antipyretica」)。こちらは乗せるのではなく結び付ける方法ですが、付くまでは動かない状態を作るという考え方は同じですね。
重しを使うときに気をつけたいのは、重しの下には光が届かないことです。モス全体を大きな石で覆ってしまうと、下の部分が傷みやすくなります。重しは小さめにして、モスの端や中ほどを数か所押さえる程度にとどめましょう。
ネット2枚で挟む
もう少ししっかり留めたいなら、水槽用のステンレスやプラスチックのネットを2枚用意し、その間にモスを薄く挟む方法もあります。ネットの目からモスが伸びてきて、やがてネットが見えなくなっていきます。ネットごと動かせるので、掃除のときに取り出しやすいのも利点ですね。
留めたあとの見回り
糸を使わない分、最初の数日は外れていないかを見回りましょう。ずれていたら挟み直す、重しを置き直す、それだけで大丈夫です。モスがその場から動かなくなってきたら、仮根が付きはじめたサインと考えられます。
なかなか活着しないときは、次の3つを見直してみてください。ひとつ目は留め方で、魚やエビに毎日動かされていると、仮根が付く前に離れてしまいます。ふたつ目は置き場所で、光がほとんど当たらない物陰では、モス自体の調子が上がりにくくなります。三つ目は流れで、強い水流が当たる場所ではモスがあおられ続け、表面に押し付けられた状態を保てません。どれも「付くまで動かない状態」を作れているかどうか、という点に行き着きます。
挟むためのネットは、ステンレス製で錆びにくいものや、モス用として売られているものがあります。選ぶときは、水槽に入るサイズかどうかと、素材の表示を確かめてみてください。価格や在庫は購入前に各ショップで確認してくださいね。家にある鉢底ネットを使う方法もありますが、水槽に入れて問題ない素材かどうかは、製品の表示で確かめてからにしましょう。
底に薄く広げてモス絨毯にする
そのまま沈める置き方をいちばん生かせるのが、底に広げて「モスの絨毯」にする使い方かもしれません。Flowgrowは、このコケで水槽の前のほうの底に美しいモスの絨毯を作ることもでき、それは光が弱い条件でも可能だ、と書いています。
絨毯の作り方
手順はシンプルです。下準備を済ませたモスを、指でほぐしながら底砂の上に薄く広げます。厚さは、底砂がうっすら透けて見えるくらいが目安。広げ終わったら、小石や細い流木で数か所を押さえるか、前の見出しのネットで挟んで沈めます。
ここで厚く盛りたくなる気持ち、わかります。でも、厚く盛ると内側に光と水が届かず、底のモスから茶色くなりがちです。最初は薄く広げて、育つのを待つほうが、結果的にきれいな絨毯になりやすいですよ。
育ったら刈り込む
Tropicaの商品データでは、このコケの高さ(水槽に入れて2か月後の平均)は3〜10cm以上とされています。絨毯にした場合も、放っておけばどんどん厚みが増していきます。伸びてきたらハサミで表面を刈り込み、厚くなりすぎないように保ちましょう。Flowgrowも、このコケはハサミで形を整えても嫌がらず、伸びすぎもハサミで抑えられる、としています。
刈り込みで出た切れ端は、そのまま水槽に残すとあちこちで育ちはじめます。網やスポイトでこまめに回収しておきましょう。
回収した切れ端の捨て方
トリミングで出た切れ端や、増えすぎて取り除いたモスを、川や池、側溝に流すのはやめましょう。1982年の論文では、日本でウィローモスと呼ばれているコケはベトナムで最初に記載された種類で、東南アジアから持ち込まれたと考えられています。環境省は外来種被害予防三原則として「入れない」「捨てない」「拡げない」を示し、飼育・栽培している外来種を適切に管理して捨てない(逃がさない・放さない・逸出させないことを含む)よう呼びかけています。取り除いたモスは水気を切り、お住まいの自治体のごみの出し方に従って処分してください。
底の掃除とのつき合い方
絨毯にした部分は、底砂を掃除するホースで吸い込まないように注意が必要です。絨毯の上にたまった汚れは、ホースの口をモスに近づけすぎず、水を少し揺らして浮かせてから吸うと、モスを傷めにくくなります。あわせて、絨毯の上に食べ残しがたまらないよう、エサの量も見直しておくと管理が楽になりますね。
メダカやエビの水槽で束のまま使う

メダカやエビの水槽では、ウィローモスを束のまま沈める使い方が、いちばん気楽で役に立つかもしれません。先ほど見たとおり、コケの仲間は卵を産み付ける場所として使われてきましたし、稚魚の隠れ家にもなります。
メダカの産卵場所として
メダカは、水草などに卵を付けて産みます。ウィローモスの束を入れておくと、細かい枝の間が卵を付ける場所になり、束ごと別の容器へ移せば卵の回収も手軽です。水草と市販の産卵床のどちらが合うかは、卵の回収のしやすさや手間で変わってきます。比べ方はメダカの産卵は水草と産卵床のどっちがよいかを比べた記事にまとめています。
エビの隠れ家とエサ場として
Flowgrowは、コケの仲間が水槽で人気になったのは淡水のエビが広まったことも大きく、モスの広い表面には微生物や細かい有機物がたくさん付くため、エビにとっては安全な隠れ家であると同時に、エサの豊富な場所にもなる、と説明しています。ミナミヌマエビなどを他の魚と一緒に飼うなら、隠れ家としての役割は特に大きいですね。混泳させるときの注意点は、メダカとミナミヌマエビの混泳で気をつけたい食害と隠れ家の話も参考にしてください。
浮かべるか、沈めるか
束で使う場合、浮かべても沈めてもかまいません。浮かべると光がよく当たり、水面近くで卵を産む魚にも使いやすくなります。沈めたいときは、下準備で泡を抜き、小石を1つ乗せる程度で十分です。
束で使うときの注意
束のまま長く入れておくと、内側に汚れがたまり、茶色くなりやすくなります。ときどき取り出して、カルキを抜いた水の中で軽く振り洗いし、茶色い部分を切り取っておきましょう。束を小さめに分けて複数入れておくと、ひとつずつ手入れしやすくなります。
屋外の容器で使う場合は、夏と冬の水温に注意が必要です。Flowgrowの数値の欄では、タキシフィラム・バルビエリの耐えられる水温は12〜34℃とされている一方、屋外や池での栽培に向くかどうかの欄は「不明」です。文章の欄では30℃まで耐えるとしているので、真夏の屋外では低いほうの30℃を目安に考えておくと安全です。RHSは、フォンティナリス・アンティピレティカの耐寒性を、ヨーロッパのもっとも厳しい寒さ(−20℃未満)でも耐える最上位の区分(H7)としていますが、夏の暑さへの強さには触れていません。どちらの種類かで屋外での強さは変わると考えられるので、購入時に学名を控えておくと判断の助けになりますよ。
活着済みの流木・石を置くだけにする
「とにかく手間をかけずに、すぐにきれいに見せたい」なら、最初からモスが流木や石に付いている「活着済み」の商品を置くのが、手間が少なく失敗も起きにくい方法です。
活着済みのよいところ
活着済みの商品は、仮根がすでに流木や石に付いているので、置いたその日から形がくずれにくいのが強みです。浮く・散る・吸い込まれるといった、そのまま沈めたときの困りごとの多くを、最初から避けられます。レイアウトの位置を決めたら、底砂に少し埋めるように置けば安定しやすくなります。
選ぶときに確かめたいこと
選ぶときは、モスの色を見ましょう。緑が鮮やかで、茶色い部分が少ないものが状態のよい目安です。また、モスの量だけでなく、土台の流木や石の大きさが水槽に合っているかも大事ですね。
流木の土台は、乾いた状態だと水に浮くことがあります。活着済みの商品は水中で育てられていることが多いものの、届いた状態によっては浮くこともあるので、浮くようなら小石で押さえるか、底砂に少し埋めて落ち着かせましょう。
種類によって付き方が違う
モスと呼ばれる水草には、いくつか種類があります。たとえばクリスマスモスについて、Tropicaは「ordinary Java moss」(一般的なジャワモス)より育てる条件が厳しく、成長もゆっくりだとしています。ただし、根や石にはよく付くとも書いています。種類が違えば、付くまでの時間も伸び方も変わる、と考えておくとよいでしょう。
活着させて楽しむ水草は、モスのほかにもあります。同じように流木や石に付けて育てる陰性水草(つまり、強い光がなくても育つ水草)が気になったら、アヌビアスナナとミクロソリウムを比べた記事もあわせてどうぞ。
活着済みの流木をひとつ置き、そこから刈り込んだ切れ端を、すき間に挟む方法で少しずつ広げていくのもおすすめです。最初の形が決まっていると、レイアウトの軸がぶれにくくなりますよ。
活着済みの商品は、自分で付けるより費用はかかりますが、時間と手間を買うと考えれば選ぶ価値はあります。反対に、時間をかけて自分で育てる過程を楽しみたいなら、ここまで紹介した挟む・重し・ネットの方法で十分です。価格や在庫、土台の大きさは購入前に各ショップで確認してください。
ウィローモスをそのまま沈めることについてよくある質問
糸で巻いた場合、糸はいつ外せばいいですか?
Tropicaは、石や流木にしっかり付くまで釣り糸や木綿糸で留めておく、としていて、日数は示していません。モスを軽く引いても動かなくなったら、付いたと考えてよいでしょう。ナイロンの釣り糸は水の中に残り続けるので、目立つ場合はモスが付いたあとにハサミで切って外す方法があります。
ウィローモスは水の外でも育ちますか?
Flowgrowは、タキシフィラム・バルビエリが水の外(水上)でも育つかどうかの欄を「はい」としています。ただし、乾いてしまうと傷むので、水の外で育てるなら湿り気を保つ必要があります。水槽で使う場合は、水位が下がってモスが水面から出たままにならないよう注意してください。
CO2や肥料を入れないと育ちませんか?
Tropicaの区分では、このコケのCO2の要求度は「低い」です。Flowgrowも、肥料やCO2の添加は成長を助けるものの、必ずしも必要ではないとしています。そのうえで、色の濃い健康的なモスにしたいなら、少なくとも鉄分の肥料は検討する価値がある、と書いています。
そのまま沈めたモスが元気かどうかは、どこで見分けますか?
枝の先に明るい緑色の新しい芽が伸びていれば、育っているサインと考えられます。反対に、全体の色が暗くなって間延びしている場合は光不足、内側から茶色くなっている場合は汚れや水の通りの悪さを疑ってみてください。迷ったときは、購入したショップに水槽の様子を伝えて相談するのも一つの方法です。
ウィローモスをそのまま沈めるときのまとめ
最後に、ウィローモスをそのまま沈めるときに押さえておきたいことを振り返ります。
- ウィローモスは仮根で物にくっつく着生の丈夫なコケで、そのまま沈めただけですぐに弱るとは考えにくい
- 困りごとの多くは「仮根が付くまでの間」に起きる。浮く・散る・吸い込まれる・底で茶色くなる、の4つに注意
- 入れる前に洗って泡を抜き、農薬や貝を確かめる。吸い込み口から離し、厚く盛らずに薄く広げる
- 糸で巻かなくても、石に挟む・小石の重しを乗せる・ネットで挟む・底に敷いて押さえるといった方法で留められる
- メダカの産卵やエビの隠れ家なら束のままでもよく、手早く形を作りたいなら活着済みの流木や石を置くと安定しやすい
ウィローモスは、水質や光への要求が少なく、とても付き合いやすい水草です。そのまま沈めるのか、留めるのか。目的に合わせて選べば、どちらも立派な使い方ですよ。
なお、この記事で紹介した水温や高さの数値は、あくまで一般的な目安です。モスの種類や水槽の環境で結果は変わるので、販売元の説明もあわせて確かめてください。生体の調子が気になるときなど、最終的な判断は専門家にご相談ください。


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