ミジンコが増えない…を卒業!培養が安定する4つの条件と立て直しの手順
メダカや熱帯魚の稚魚に生き餌をあげたくてミジンコを買ってきたのに、一週間もしないうちに容器の中がスカスカになってしまった。あるいは最初の数日は順調だったのに、ある朝いきなり全滅していた。そんな経験、ありませんか。
ミジンコの増やし方を調べていくと、生クロレラ、青水、PSB、鶏糞、ドライイースト、ペットボトル、エアレーション、水温、耐久卵…と、情報がバラバラに出てきますよね。どれも間違ってはいないのですが、初めて培養する人にとっては「結局、何から手をつければいいの?」という状態になりがちです。その戸惑いは、とても自然なことだと思います。
ただ、いろいろな培養のやり方を整理していくと、うまくいくかどうかは突き詰めると「種・容器・餌・水温」の4つに集約されていきます。増えないときも、突然消えたときも、原因のほとんどはこの4つのどれかが崩れているだけ。逆に言えば、この4つさえ押さえておけば、高価な機材がなくてもミジンコは勝手に増えてくれる生き物なんです。
この記事では、ミジンコの種類の見分け方から種ミジンコの入手、容器と培養水の準備、餌の選び分け、そして「なぜか増えない」「突然いなくなった」ときの原因の切り分けまで、順番に整理していきます。読み終わるころには、あなたの手元の容器でいま何が起きているのか、自分で判断できるようになるはずですよ。
- 餌として使えるミジンコと使えない種類の見分け方
- 種ミジンコの入手方法と、休眠卵から立ち上げる手順
- 容器・水・水温・餌の具体的な決め方と目安
- 増えない・全滅したときに疑う原因と立て直しの順番
ミジンコの増やし方を始める前に整えたい基本条件

ミジンコの培養は、始めてしまえば毎日の手間はほとんどかかりません。餌をほんの少し落として、あとは眺めているだけ。それでも失敗する人が多いのは、増やし始める前の「準備」の段階でつまずいているからなんですよね。
特に多いのが、そもそも増えにくい種類のミジンコを一生懸命育てようとしていたケースと、容器や水の条件がミジンコの生態に合っていないケースです。ミジンコはメスだけで子どもを産み続ける単為生殖という増え方をするので、条件さえ合えば放っておいても数が増えていきます。裏を返すと、条件が合っていないと、どれだけ丁寧に世話をしても増えてくれません。
ここではまず、増やす前に決めておきたい4つの土台――どの種類を増やすのか、種はどこから手に入れるのか、どんな容器で何リットルの水を使うのか、そして水温と光をどう管理するのか――を順番に固めていきます。ここを丁寧にやっておくと、あとの管理が驚くほど楽になりますよ。
増やせるミジンコと増やせない種類の見分け方

結論から言うと、餌用として狙って増やすならタマミジンコかオオミジンコの二択です。逆に、ケンミジンコとカイミジンコは餌としても培養対象としても向きません。ここを最初に押さえておかないと、「毎日眺めているのに一向に増えない」という遠回りをしてしまいます。
タマミジンコは体長がおよそ0.8〜1.4mm程度(オスはやや小さめ)と小さく、殻がやわらかいのが特徴です。メダカの稚魚のような小さな口でも食べやすく、消化もしやすいと言われています。培養も比較的簡単なので、初めての一種としてはいちばん扱いやすいかなと思います。
オオミジンコは名前のとおり大きく、成体はおよそ2〜6mmになります。タマミジンコより一匹あたりのボリュームがあるので、ある程度育った成魚や熱帯魚向き。ただし大きいぶん、生まれたばかりの稚魚の口には入りません。どの魚に与えるかで、増やすべき種類は変わります。
ケンミジンコ・カイミジンコが餌に向かない理由
ケンミジンコは、水面近くをスーッと滑るように素早く動くのが特徴。動きが速すぎてメダカが追いつけず、食べ残されることが多いとされています。そもそも分類上はカイアシ類というグループで、いわゆるミジンコの仲間とは別の生き物です。
カイミジンコは、二枚貝のような硬い殻をまとっていて、底面をチョコチョコと歩くように動きます。色は黒っぽく見えることが多いですね。この硬い殻が問題で、小さな魚が食べると消化不良を起こす可能性が指摘されています。培養容器に勝手に湧いてくることもあるので、「気づいたら中身が入れ替わっていた」というのはよくある話です。
見分け方はシンプルで、動き方と色を見るのがいちばん早いです。ぴょこぴょこと上下に跳ねるように泳いでいればタマミジンコやオオミジンコ、滑るように直進していればケンミジンコ、底を這っていて黒っぽければカイミジンコ、という具合。ルーペがあると判別しやすいですよ。
増えるスピードを決める繁殖サイクル
タマミジンコやオオミジンコは、条件が良ければおよそ2日おきに出産し、1回に5〜20個ほどの卵を抱えると説明されています。生まれてくるのはメスで、その子もまた数日で産み始める。だからミジンコの増え方は足し算ではなく掛け算になり、立ち上がりの数日は静かでも、ある時点から急に濃くなるんですよね。
この掛け算で増える性質は、そのまま失敗の構造にもつながっています。増え始めたのを見て餌を増やすと、増殖と餌の過剰が同時にやってきて、酸素の消費が一気に跳ね上がる。順調に見えた翌日に崩れるのは、たいていこのパターンです。増えてきたら餌を足すのではなく、容器を分ける。この判断の切り替えが、安定培養のいちばんの分かれ目かなと思います。
種ミジンコの入手方法と休眠卵からの立ち上げ
増やす種類が決まったら、次は「元になるミジンコ」を手に入れます。方法は大きく3つ、生体を通販や専門店で買う・休眠卵(耐久卵)を買う・野外で採取するのいずれかです。安定して立ち上げたいなら、生体か休眠卵の購入が確実かなと思います。
生体を買う場合は、袋の中で酸欠になりやすいので、届いたらできるだけ早く容器に移すのが基本です。そのまま入れると水質の差でダメージを受けることがあるため、袋ごと容器に浮かべて水温を合わせ、少しずつ培養水を足していく方法がよく使われています。この水合わせを省くと、届いた翌日に激減してしまうことがあるんですよね。
具体的な手順としては、袋を開けずに培養容器へ20〜30分ほど浮かべて水温を近づけ、そのあと袋の水の1〜2割ずつを、10分おきに数回に分けて培養水と入れ替えていくやり方が一般的です。最後にネットで受けてミジンコだけを移せば、輸送袋の汚れた水を持ち込まずに済みます。急ぐと落ちる、と覚えておくといいですよ。
休眠卵は乾燥した状態で届くので、生体より輸送に強く、保存もききます。孵化させるときは、10L程度の容器にカルキを抜いた水を入れ、卵が舞い上がらない程度のごく弱い通気をしながら、水温15〜25℃前後に保つのが一般的な手順です。20℃前後なら4日ほどで孵り始め、6日ほどでおおむね出そろうとされています。ここはあくまで目安なので、思ったより遅くても数日は様子を見てあげてください。
すぐに孵化させない休眠卵は、水を張った容器に入れて冷蔵庫の5℃以下で保管すれば数年もつとされています。ただし冷凍は卵そのものを傷めてしまうため避けてください。乾燥に強いからといって、どんな保存方法でも平気というわけではないんですね。予備の休眠卵をひとつ確保しておくと、培養が全滅しても種を買い直さずに再開できるので、保険としてはかなり優秀だと思います。
ミジンコは環境が良いときはメスだけで増える単為生殖を行い、水温の低下や日照時間の短縮、餌不足、過密といった環境の悪化が起きるとオスを産み、受精卵である耐久卵(休眠卵)をつくると説明されています。この卵は乾燥にも強く、田んぼの水が抜ける季節を越えて翌シーズンにつながる仕組みです(出典:東京薬科大学「ミジンコの生殖(単為生殖と有性生殖)」)。つまり、容器の中で急にオスが増えたら、環境が悪くなっているサインとして読み取れるということですね。
野外採取は0円で始められる魅力がありますが、目的外のケンミジンコやカイミジンコ、さらにはヤゴやプラナリアのような捕食者が一緒に入り込むリスクがあります。まずは購入した種で培養の感覚をつかんでから、採取に挑戦する順番をおすすめしたいです。採取する場合も、私有地や管理された水域には無断で立ち入らないよう気をつけてくださいね。
種を切らさないための保険として、休眠卵をひとつ持っておくと安心かなと思います。生体より輸送に強くて保存もきくので、培養が崩れてしまったときの再スタート用に置いておけますよ。価格や在庫は変わるので、購入前に各ショップでご確認ください。
培養に適した容器の選び方と水量の目安
容器選びで大事なのは、深さより水面の広さと水量です。目安としては10L以上入る、浅くて口の広い容器が扱いやすいとされています。プラ舟、NVボックス、トロ舟、大きめのバケツあたりが定番ですね。
なぜ「浅くて広い」が良いのかというと、ミジンコは水中の酸素に頼って生きているからです。水面が広いほど空気と触れる面積が増えて酸素が溶け込みやすくなり、逆に深くて細長い容器は、底のほうが酸欠になりやすい。水深が高すぎることが全滅の一因として挙げられるのは、この構造が理由です。
水量も同じ話で、水が多いほど水温や水質の変化がゆるやかになります。2Lのペットボトルでも培養は可能ですが、少量の水は餌のやりすぎ・水温の急変・酸欠のどれもが一気に効いてしまうので、初めての一本としては10L前後を確保できると安心かなと思います。省スペースで小さく始めたい場合は、その分こまめに様子を見る、という交換条件だと考えてください。
| 容器 | 水量の目安 | 向いている使い方 | 気をつけたい点 |
|---|---|---|---|
| プラ舟・トロ舟 | 40〜80L | 屋外でまとめて増やす主力 | 置き場所と重量。移動できない前提で設置する |
| NVボックス・衣装ケース | 10〜25L | 屋外・ベランダの標準サイズ | 直射日光で水温が上がりすぎることがある |
| バケツ・食品保存容器 | 5〜10L | 屋内の予備・保険用 | 水面が狭いので過密になりやすい |
| 2Lペットボトル | 1.5〜2L | 種の保管・少量キープ | 水温と水質が振れやすく、増える上限も低い |
もうひとつ、容器は2つ以上に分けておくのが実質的な保険になります。ミジンコは調子を崩すときは一気に崩れるので、1つの容器に全部を入れておくと、失敗したときにゼロからやり直しになってしまうんですよね。同じ条件で2つ、できれば置き場所を変えて2つ用意しておくと、片方が落ちてももう片方から立て直せます。
ふたと置き場所の決め方
屋外に置くなら、ふたは完全に閉めないのが基本です。密閉すると酸素が入らなくなりますし、夏場は容器の中が蒸し風呂のようになってしまいます。雨の吹き込みや落ち葉の混入を防ぐのが目的なら、板を半分だけ渡す、目の細かいネットをかける、といった半開きの状態がちょうどいいかなと思います。蚊の産卵を避けたい場合もネットが有効ですね。
置き場所は、水の重さを先に計算しておいてください。水は1Lでおよそ1kgなので、40L入るプラ舟なら容器と合わせて40kgを超えます。ベランダや棚の上に置く場合、水を張ったあとに動かすのはまず無理だと考えて、最初の設置場所を決めるのが安全です。
容器は「浅くて広い」が最優先です。40リットルのトロ舟なら水面を広く取れて水温も振れにくいので、屋外でまとめて増やす主力として使いやすいですよ。置き場所と重さだけは、水を張る前に確認しておいてくださいね。
置き場所が限られていて大きな容器を出せない、という事情もあるでしょう。その場合は2リットルのペットボトルでも成立しますので、条件と管理のコツはペットボトルでミジンコを増やす手順をまとめた記事をご覧ください。
培養水の準備とカルキ抜きの注意点

培養水は、カルキ(塩素)を抜いた水を使うのが大前提です。水道水の塩素はミジンコのような小さな甲殻類にとって強く作用するので、そのまま注ぐと立ち上げの初日で数を落としてしまうことがあります。
抜き方は、バケツに汲んで1日以上屋外に置く汲み置きが最もシンプル。日光が当たる場所ならより早く抜けます。急ぐときは市販のカルキ抜き剤(中和剤)を使う方法もありますが、製品によって成分や規定量が違うので、必ずパッケージの表示に従ってください。魚用として売られているものの中には粘膜保護成分などが加えられたタイプもあり、ミジンコの培養で使う想定になっていない場合もあります。用途が明記されていない添加剤は、いきなり本命の容器に入れないほうが安全です。
もし手元にグリーンウォーター(青水)があるなら、それを培養水として使うのが手軽で理にかなっています。青水は植物プランクトンが増えて緑色になった水で、ミジンコはこれを濾し取って食べるからです。つまり水と餌を同時に用意できることになります。作り方の基本を押さえておきたい方は、グリーンウォーターの作り方とメダカを元気に育てるコツを整理した記事もあわせて読んでみてください。
なお、既存の水槽から抜いた飼育水を流用するのは、ひとつ注意点があります。魚を飼っている水には、ヒドラやプラナリア、ケンミジンコといったミジンコにとって好ましくない生き物が混ざっていることがあるからです。使うなら、目の細かいネットで一度こしてから使う、あるいはグリーンウォーターだけを上澄みからそっと取る、といった一手間をかけると安心ですね。
水位にも少し触れておくと、立ち上げのときは容器いっぱいまで張らず、8分目くらいで止めておくと扱いやすいです。あとから青水や餌を足す余地が残りますし、雨が入っても溢れにくい。屋外なら、大雨のあとに水位が上がって表層のミジンコが流れ出てしまう、という地味な事故も防げます。
水温と光と置き場所が増え方を左右する
ミジンコの増え方を最も強く左右するのが水温です。単為生殖でよく増える水温帯はおおむね20〜28℃とされ、26℃前後で繁殖と成長がいちばん活発になるという説明が多く見られます。20℃を下回ると増殖のスピードは目に見えて落ちますし、逆に30℃を超える高水温が続くのも負担になります。
ここで大事なのは、絶対値よりも「急変させないこと」のほうです。朝は15℃で昼に32℃まで上がるようなベランダの浅い容器は、たとえ平均が適温でもミジンコにとっては過酷。夏場は直射日光を半分だけ遮る、すだれや板で日陰を作る、といった工夫で水温の振れ幅を抑えると安定しやすくなります。
冬は水温が下がって増殖がほぼ止まります。屋外の容器は種を残す「越冬モード」と割り切り、餌を絞って静かに保つ運用に切り替えるのが現実的です。冬もコンスタントに供給したい場合は、屋内に移してヒーターやパネルヒーターで20℃台前半を保つ方法が使われますが、加温すると餌の消費も水の傷みも早くなるので、こまめな確認とセットで考えてください。
冬をどう越すかで運用が変わる
屋外で越冬させる場合は、水を減らさずできるだけ深さを確保しておくのがポイントです。水量が多いほど水温の下がり方はゆるやかになりますし、全面が凍ってしまうリスクも下がります。餌は水温が下がるにつれて消費されなくなるので、量も回数も絞っていきます。冬の間に増えなくても、そこは想定どおり。春に水温が戻ったときに再び動き出せるだけの数が残っていれば成功です。
屋内で加温して通年の供給を狙う場合は、水温が上がるぶん代謝も水の傷みも早くなります。餌の減りが速くなり、水面の油膜も出やすくなるので、屋外と同じ感覚で放置するとかえって崩しやすい。加温するなら、様子を見る頻度も一緒に上げる、とセットで考えてください。
光についても触れておきます。ミジンコ自身は光を必要としませんが、餌になる植物プランクトンは光合成で増えるので、間接的に光は重要です。屋外なら自然光で十分。屋内なら、窓際の明るい場所に置くか、水槽用のライトを1日8〜10時間ほど当てる運用がよく使われます。ただし直射日光を長時間当てると水温が上がりすぎるので、明るいけれど熱がこもらない場所、という選び方がちょうどいいかなと思います。
ミジンコが増えない原因と増やし方を安定させるコツ
準備が整って種を入れたあとは、いよいよ「維持」の段階に入ります。ここから先でつまずく人の悩みは、だいたい2種類に分かれます。ひとつは「入れたはいいけど、いつまで経っても増えない」。もうひとつは「順調に増えていたのに、ある日いきなり全滅した」です。
この2つ、原因はまったく別物のように見えて、実は共通しています。どちらも餌・酸素・水質のバランスが崩れているという一点に行き着くんですよね。増えないのは餌が足りないか水温が低いか。全滅するのは餌が多すぎて水が傷んだか、増えすぎて酸欠になったか。つまり、崩れた方向が逆なだけなんです。
だからこそ、原因を当てずっぽうで探すより、決まった順番で切り分けたほうが早く立て直せます。ここからは、餌の選び分けと量の決め方、エアレーションの是非、全滅したときに疑う原因の順番、そして増えたミジンコの回収と与え方までを順に見ていきましょう。トラブルが起きてからでも間に合う内容なので、いま調子が悪い人はここから読んでも大丈夫ですよ。
餌の種類は屋内と屋外で選び分ける
ミジンコの餌は複数の選択肢がありますが、選ぶ基準はシンプルで、培養場所が屋内か屋外かです。理由は栄養価ではなく「におい」。効果が高いとされる餌ほど発酵臭が強い傾向があるので、室内で使うと生活のほうが先に耐えられなくなります。
においの強さは、一般に鶏糞>ドライイースト>生クロレラ>ホウレンソウパウダーの順とされています。つまり屋外なら鶏糞やPSBのような強い選択肢も取れますが、室内培養なら生クロレラや青水を軸にするのが現実的、ということですね。
| 餌 | におい | 向いている場所 | 特徴と注意点 |
|---|---|---|---|
| 生クロレラ | 弱い | 屋内・屋外どちらも | 生きた藻類を濃縮したもの。食べ残しが腐りにくく水質を悪化させにくいが、要冷蔵で保存期間は1か月ほどが目安 |
| グリーンウォーター(青水) | ほぼ無い | 屋外中心 | 水と餌を兼ねられて0円。ただし濃度が安定せず、薄くなると餌切れになる |
| クロレラパウダー | 弱い | 屋内向き | 常温保存ができて扱いやすい。溶かしすぎると濁りが取れなくなる |
| PSB(光合成細菌) | 強い | 屋外向き | アミノ酸やビタミンを含み直接の餌にもなるとされる。においが強く室内はきつい |
| ドライイースト | やや強い | 屋外向き | 安価。ただし入れすぎると一気に水が腐るので分量の管理が難しい |
| 発酵鶏糞 | 非常に強い | 屋外専用 | 微生物を湧かせて間接的な餌にする方式。安価だが室内では使えない |
初めての一本なら、私は生クロレラから入るのが失敗しにくいと考えています。生きた藻類なので食べ残しても水が急激に傷みにくく、量の加減を覚えるまでの「安全マージン」が広いからです。希釈の目安としては、原液を1,000〜2,000倍程度――水1Lに対しておよそ0.5〜1mlというのが、よく紹介されている使い方ですね。
ただし製品ごとに濃度も推奨量も違うので、正確な使用量は必ず購入した製品の公式サイトや表示をご確認ください。同じ生クロレラという名前でも濃縮率が数倍違うことがあり、よそで見た分量をそのまま持ち込むと入れすぎになります。
もうひとつ、生クロレラで気をつけたいのが保存です。生きた藻類なので冷蔵が前提で、使用期限はおおむね1か月ほどとされています。つまり買い置きができない消耗品ということですね。少量ずつ買う、あるいは届いたら小分けにして使う運用のほうが無駄が出にくいです。使い切れずに古くなったものをまとめて投入すると、かえって水を汚す原因になるので気をつけてください。
まず1本だけ選ぶなら、においが弱くて食べ残しても水が傷みにくい生クロレラが扱いやすいかなと思います。冷蔵が前提で保存できる期間も限られるので、使い切れる量から試してみてください。
餌の種類ごとの分量や与え方まではここでは書ききれません。生クロレラや青水、PSBを1つずつ比べたい方はミジンコの餌を5種類まとめた記事のほうが詳しいです。
餌の量と与える間隔の決め方
餌の量で迷ったときの基準は、数字ではなく水の見え方で決めるのがいちばん実用的です。具体的には「入れた直後にうっすら濁り、1〜2日で透明に戻る」くらいがちょうどいい量。翌日も濁ったままなら明らかに多すぎ、数時間で澄み切ってしまうなら足りていません。
ミジンコは水中の粒子を濾し取って食べる濾過食者なので、餌は「水に漂っている状態」で初めて食べられます。だから底に沈んで積もった餌は、ミジンコの口には入らず、ただ腐って水を汚すだけ。ここが人工餌の感覚と大きく違うところですね。
頻度は、環境にもよりますが2〜3日に1回程度から始めて、濁りの引き方を見ながら調整するのが無難です。少量をこまめに、が原則。1回でたっぷり入れるより、薄めを何度かに分けたほうが水質の振れ幅が小さくなります。
量を見誤りやすい2つの場面
ひとつは立ち上げの直後です。まだミジンコの数が少ないのに、容器の大きさに合わせて餌を入れてしまうケース。食べ手が少なければ餌はそのまま余るので、最初の1週間はいつもの半分から始めるくらいでちょうどいいです。
もうひとつは収穫した直後。ごっそりすくったあとは食べ手が減っているので、いつもと同じ量を入れるとたいてい余ります。取った日は餌を控えめにする、とルールを決めておくと崩しにくいですよ。
ミジンコ培養で最も多い失敗が餌の入れすぎです。餌が余る→水中の有機物が増える→微生物が酸素を消費する→酸欠でミジンコが落ちる、という順番で崩れていきます。「増えないから餌を足す」は、状況を悪化させる典型的な流れなので気をつけてください。増えないときはまず水温と酸素を疑い、餌を足すのは最後にしましょう。なお生き物が相手である以上、環境差・個体差があり、同じ手順でも結果は変わります。判断に迷うときは無理をせず、専門店や経験者に相談してくださいね。
もうひとつ、餌を入れる前にミジンコの色を見る癖をつけると判断が早くなります。健康なタマミジンコは薄い茶色〜半透明ですが、酸欠状態になると体内のヘモグロビン濃度が上がって赤みを帯びると説明されています。赤い個体が目立ってきたら、餌ではなく酸素の問題。餌を足す手を止めて、次の項目に進んでください。
エアレーションの必要性と水流の強さ
結論としては、エアレーションは必須ではないが、密度が上がってきたらあったほうが安定するというのが実情かなと思います。10L以上の浅く広い容器で数が控えめなうちは、水面からの自然な酸素供給だけで足りることが多いです。
問題になるのは、増えて過密になってきたとき。ミジンコが増えるほど酸素の消費量も増え、さらに餌の食べ残しを分解する微生物も酸素を使うので、水面からの供給が追いつかなくなります。この段階で酸欠が起きて一気に落ちる、というのが「順調だったのに突然全滅」の典型パターンです。
ただしエアレーションは、入れれば入れるほど良いというものではありません。ミジンコは水流に非常に弱く、流れが強いと体力を削られて落ちてしまいます。目安として、水流が毎秒3cmを超えると死滅につながるという指摘もあるほどです。実際の運用では、エアストーンを容器の隅に置き、エアコックで絞って、数秒に一度ポコリと泡が上がる程度まで弱めるのが定番。水面が波立つような強さは明らかに出しすぎです。
もうひとつ、細かい泡は避けたほうが無難とされています。microbubbleのような細かい泡はミジンコの体や殻の隙間に入り込み、浮いたまま沈めなくなることがあるためです。エアストーンを使わずにチューブの先だけで大きな泡をゆっくり出す方法を取る人もいますね。水流と酸素のバランスの考え方は、水槽でも共通するところがあるので、エアレーションのやり過ぎがなぜ逆効果になるのかを解説した記事も参考になるはずです。
突然全滅したときに疑う4つの原因

朝起きたら容器が透明になっていた。この状況で真っ先にやるべきことは、原因を推測して対策を打つことではなく、まだ生き残りがいないかを確認することです。底や壁面に数匹でも残っていれば、そこから立て直せます。スポイトで数匹すくって、新しい容器の新しい水に移してあげてください。
そのうえで原因を切り分けます。順番は、可能性の高いものから見ていくのが効率的です。
①酸欠(最も多い)
直前まで数が多かった、水が濁っていた、赤い個体が見えていた、水深が深い容器だった。このどれかに当てはまるなら酸欠の可能性が高いです。増えすぎたこと自体が引き金になるので、「順調すぎるくらい増えていた」ことは安心材料になりません。対策は、密度が上がってきた時点で半分を別容器に分ける、弱いエアレーションを足す、の2つです。
②餌の入れすぎによる水質悪化
数日前に多めに餌を入れた、水面に油膜が張っていた、底に餌が積もっていた。この場合は、有機物の分解で酸素が奪われ、同時に水質も悪化しています。対策は餌の量を減らすこと、そして水を全部替えるのではなく一部だけ入れ替えることです。
③容器のぬめり(バイオフィルム)
意外に見落とされがちですが、容器の内壁につくぬるぬるした膜がミジンコにからみつき、脱皮を妨げることがあると指摘されています。ミジンコは脱皮を繰り返して成長するので、これが起きると成長も繁殖も止まってしまいます。1〜2週間に一度、スポンジで軽く壁を拭う習慣をつけると防ぎやすいです。
④水温の急変・混入した捕食者
前日に極端な暑さや冷え込みがあったなら水温、屋外で採取水を使っているならヤゴ・プラナリア・ヒドラといった捕食者の混入も疑ってみてください。特にヤゴは一晩で数を減らすことがあります。
そして立て直しの実務として覚えておきたいのが、水は一度に全部替えないということ。1〜2週間ごとに一部だけ入れ替えると全滅しにくいとされており、複数の容器を持っている場合も、全部を同じ日に同じ操作で触らないほうがリスクが分散します。片方を触って様子を見て、問題なければもう片方、という順番ですね。
立て直しの手順(うまくいかないときはこの順で)
- 生き残りを探してすくい、新しい水の別容器へ避難させる
- 水温が20〜28℃の範囲に収まっているかを測る(体感で判断しない)
- 水の濁り・油膜・底の堆積を見て、餌が余っていないか確認する
- 密度が高いなら半分を分ける、または弱いエアレーションを足す
- 容器の内壁のぬめりを拭い、水を一部だけ入れ替える
- 餌を足すのは最後。しかも普段の半分の量から再開する
増えたミジンコの回収とメダカへの与え方
無事に増えてきたら、いよいよ収穫です。回収は、目の細かいネットで容器の中をゆっくりすくうだけ。100円ショップの茶こしや、アクアリウム用の稚魚ネットがよく使われます。勢いよく振り回すとミジンコが傷むので、水の中をそっと通す感覚で動かすのがコツですね。
取ったミジンコは、そのまま魚の容器に落として大丈夫です。培養水ごと大量に入れると水質が変わってしまうので、ネットの上で軽く水を切ってから移すか、少量の新しい水ですすいでから与えると安心です。
与える量と頻度ですが、ミジンコは主食ではなく補助と考えるのが扱いやすいと思います。よく紹介されるのは、メインは人工飼料にして、ミジンコは週に2〜3回のごほうび的な位置づけにするという使い分け。生き餌ばかりだと栄養が偏ることがありますし、何より培養が一時的に落ち込んだときに餌が途切れてしまいます。稚魚に与える場合は、体長1cm前後になってからが安心という説明も見かけますね。ただしこれは成体のミジンコを想定した目安で、実際に見るべきは魚の口の大きさとミジンコの大きさの関係です。生まれたばかりの針子でも、タマミジンコの生まれたての個体なら食べられることがあります。
入れる量は、数分〜十数分で食べ切れる程度に留めるのが基本です。食べ残したミジンコは魚の容器の中で増えたり死んだりして水を汚す原因になります。特にメダカの稚魚容器では、残ったミジンコが稚魚と餌を取り合うこともあるので、少なめから試してみてください。
魚種別の使い分けをもう少し詳しく知りたい方は、人工餌・生餌・青水を時期別に使い分ける考え方をまとめた記事や、稚魚向けの選択肢を整理したメダカ稚魚の餌の選び方と与え方の記事もあわせてどうぞ。ベタに与える場合は形状ごとの向き不向きがあるので、ベタへのミジンコの与え方を整理した記事が参考になります。
増えすぎたときは減らすのではなく分ける
容器の中が濃くなりすぎたとき、余分を捨てて数を減らすより、半分を新しい容器へ移してしまうほうが得です。捨てたぶんはそれで終わりですが、分けたぶんは翌週にはまた増えてくれます。しかも容器が2つになるので、片方が崩れたときの保険にもなる。手間はほとんど変わらないのに、得られるものがまるで違うんですよね。
すぐに使い切れないミジンコを、水ごと少量取って冷蔵庫で数日ストックする方法もありますが、冷やしすぎると弱ります。基本は必要な分だけそのつど取ること。培養容器そのものを生きた保管庫として使うのが、いちばん傷まない保存方法かなと思います。
ちなみに、ミジンコが水質や環境の変化に敏感であることは、公的な試験の世界でも前提とされています。環境省は化学物質の生態影響を調べる試験で、水系の一次消費者としてオオミジンコ(Daphnia magna)を用い、48時間の急性遊泳阻害試験と21日間の繁殖試験を実施していると説明しています(出典:環境省「化学物質の生態影響試験について」)。水質の変化がそのまま繁殖に表れる生き物だからこそ試験に使われる、というわけですね。培養容器の調子が水質の鏡になる理由も、ここにあります。
回収は目の細かいネットがあると一気に楽になります。ミジンコ用として作られているものなら網目から抜けにくいので、茶こしで代用していて取りこぼしが気になってきたら検討してみてもいいかもしれません。
ミジンコの増やし方についてよくある質問
種ミジンコを入れてから、どれくらいで増え始めますか?
水温が20〜25℃前後に保たれていれば、3日目あたりから少しずつ数が増え始め、10日前後でまとまった量になるという流れがよく紹介されています。ただしこれはあくまで目安で、水温が低い時期や種の数が少ない立ち上げでは、もっと時間がかかることもあります。1週間ほど変化がなくても、水が澄んでいて生体が元気に泳いでいるなら、餌を足すより先に水温を測って様子を見てあげてください。環境差・個体差があるため、同じ手順でも結果は変わります。
ミジンコの培養容器に、底砂や土を入れたほうがいいですか?
必須ではありません。底砂や土を入れない「ベアタンク」のほうが、餌の残りや汚れが見えやすく、掃除も回収もしやすいのでおすすめです。田んぼの土を入れる方法を紹介しているケースもありますが、微生物が湧く一方で、目的外の生き物や耐久卵が一緒に入ってくる可能性もあります。まずは何も敷かない状態で管理の感覚をつかんで、慣れてから試すのが安全かなと思います。
培養している容器にメダカを一緒に入れてもいいですか?
増やす目的なら、混ぜないほうがいいです。メダカはミジンコを見つけ次第食べてしまうので、増える速度より食べられる速度のほうが速くなり、培養が成立しなくなります。培養容器と飼育容器は必ず分けて、必要な分だけネットで移すのが基本の運用です。逆に、屋外の飼育容器の中で自然にミジンコが湧くのは水が健全な証拠なので、そちらはそのままで問題ありません。
気づいたらケンミジンコやカイミジンコが混ざっていました。どうすればいいですか?
少数なら、そのまま様子を見て構いません。ただし数が増えて主役が入れ替わってきたら、餌を取り合って目的の種が減っていくので、リセットを検討したほうが早いです。手順としては、まだ残っているタマミジンコやオオミジンコをスポイトで数匹すくい、新しい容器の新しい水に移して再スタートします。このとき培養水はできるだけ持ち込まないのがコツ。混入経路は採取水や飼育水の流用が多いので、次からはこした水を使うと再発を防ぎやすいです。
ミジンコの増やし方のポイントまとめ
ここまで見てきたとおり、ミジンコの増やし方は特別な技術がいるものではありません。餌用に向くタマミジンコかオオミジンコを選び、浅くて広い10L以上の容器に、カルキを抜いた水を張る。水温を20〜28℃に保ち、においで選んだ餌を「うっすら濁る」程度だけ入れる。やることはこれだけです。
そして増えないとき・落ちたときは、餌を足す前に水温と酸素を確認する。この順番さえ守れば、たいていの不調は立て直せます。増えすぎも失敗の入り口なので、密度が上がってきたら半分を別容器に分ける。容器を2つ以上に分けておくことが、いちばん確実な保険になります。
生き物が相手である以上、同じ手順でも環境差・個体差によって結果は変わります。うまくいかない日があっても、それはあなたの手際のせいだけではありません。1つの容器がだめでも、もう1つから立て直せる体制を作っておく。それが、ミジンコの増やし方でいちばん効く考え方かなと思います。
なお、生クロレラやカルキ抜き剤などの使用量・保存方法は製品ごとに異なります。正確な情報は公式サイトをご確認ください。また、生体の状態に不安があるときや原因が判断できないときは、最終的な判断は専門家や購入した専門店にご相談くださいね。あなたの水槽で、ミジンコがちゃんと湧いてくれますように。

