コイベタの模様は変わる?購入前に知っておきたい選び方と注意点
錦鯉のような赤・黒・白の模様に惹かれて、コイベタを迎えようか考えている方も多いと思います。
一方で、買ったときの模様が変わってしまったらどうしよう、と心配になる方もいるでしょう。
コイベタと腫瘍を結びつけた話をネットで見かけて、迎えるのをためらっている方もいるかもしれません。
先に結論をお伝えすると、コイベタはマーブルと呼ばれる模様の中で錦鯉に似た配色の個体の呼び名で、成魚になってからも模様が変わる個体が多いことが、水作株式会社の公式サイトの連載コラム(寄稿者の観察記録)に記録されています。
いつ・どちらに変わるかは読めず、仕組みも研究で未解明なので変わる前提で選び、腫瘍はベタ全般で報告があるもののコイベタに多いというデータは見つからないため、体表のこぶや盛り上がりは自己判断せず相談することをおすすめします。
この記事では、模様の変化はメーカー公式サイトのコラムの記録を、腫瘍は獣医学の論文を出典にして、分かっていることと分かっていないことを分けてお伝えします。
この記事で理解できることは、次の4つです。
- コイベタという呼び名の位置づけ
- 模様の変化について記録と研究で分かっていること
- 腫瘍について論文で分かっていること
- コイベタならではの選び方と迎えた後の見方
コイベタとは|マーブルの中で錦鯉に似た配色の個体の呼び名
コイベタは、白っぽい地に赤や黒の模様が入り、錦鯉を思わせる配色のベタに付けられた呼び名です。
ただ、どんな位置づけの魚なのかは、資料によって説明のしかたが少しずつ違います。
2022年に科学誌 Science Advances に載ったベタの遺伝の研究では、コイは、ある配色に付いた流通名、つまりお店や市場で使われる呼び名の一つとして扱われています。
水作株式会社の公式サイトにある山崎浩二コラムでは、マーブルと呼ばれる魚の中から、錦鯉を思わせる個体に付いた呼び名として紹介されています。
一方、スペクトラム ブランズ ジャパン(旧テトラ ジャパン)の品種紹介には、次の一文があります:「鯉ベタはプラガットの中でも錦鯉とよく似た色合いの品種。」
ここでいうプラガットはプラカット、つまりヒレが短いタイプのことで、原文の表記のまま引いています。
ヒレの型はプラカットが中心ですが、水作のコラムではハーフムーンやクラウンテールのコイベタも紹介されています。
この記事では、コイベタを『マーブルと呼ばれる模様の中で、錦鯉に似た配色の個体の呼び名』として話を進めます。
研究ではコイもマーブルも同じモザイク状の配色|同じ模様は2匹といない
先ほどの2022年の論文(Science Advances)は、『コイ・キャンディ・ギャラクシー・レモン・マーブルは、同じモザイク状の配色の流通名』だと位置づけています。
モザイク状の配色とは、つまり複数の色がまだらに入り組んだ配色のことです。
別の2022年の研究でも、マーブルは単色や2色とは別の多色、つまり1匹に何色もの色が入る品種として扱われています。
コイベタの成り立ちは、水作のコラム第27回「コイベタ・ハーフムーン」(本文に2015年2月現在とある回)に書かれています。
始まりについては、こうあります:「初期のコイベタ(Koi-Color Short Tail Betta)は色彩的にマーブルと呼ばれる魚の中で錦鯉の色彩を彷彿させる個体に付けられていた。」
当時の様子も、次のように書かれています:「この時点では、コイベタは系統的にはまだ固定されておらず、マーブルを繁殖させている中からたまたま現れるぐらいの存在であったようだ。」
その後、コイベタは『白地に赤や黒の模様が入る色彩として系統化され』、まとまった数が市場に出るようになったと同じ回は続けています。
ただし同じ回には、こうも書かれています:「元のマーブル系等の血筋から同じ色模様の個体は2匹といない。」
つまり、配色の系統はできても、1匹ずつの模様はそれぞれ違うということです。
さらに、同じ1匹の中でも左右で模様が違うことがあります。
第49回「コイベタ・クラウンテール」では、同じ個体の反対側の写真に、こう添えられています:「コイベタは左右で体色が異なる個体がほとんどである。」
2025年の第105回「ニュー・キャンディ」でも、コイベタやキャンディは『体の左右でも色や模様が違う』と書かれています。
片側だけで模様を判断しないことは、あとで紹介する購入前チェックでも大切なポイントになります。
コイベタの模様は変わる?|成魚になってからも変わる個体が多い
結論から言うと、コイベタの模様は、成魚になってからも変わる個体が多いと記録されています。
ただ、その根拠がどんな資料なのかを、先にお伝えしておきます。
コイベタの模様の変化を直接書いた一次情報、つまり元になる記録として今回見つかったのは、水作株式会社の公式サイト内の連載コラム(山崎浩二コラム)だけでした。
これは寄稿者が自分で撮影し、飼育して見比べた観察記録で、何割の個体が・いつ変わるのかを調べた研究ではありません。
また、スペクトラム ブランズ ジャパンの品種紹介は、コイベタの模様の変化には触れていませんでした。
そこでこの記事では、コラムの記録を『変わる個体が多い』『時期は読めない』『方向も読めない』の3点セットで読んでいきます。
どれか1つだけを取り出すと、実際より楽観的にも悲観的にも受け取れてしまうからです。
多色系は成魚になっても大きく変わる|メーカー公式サイトの観察記録

中心になる記録は、第50回「ベタの体色変化」です。
筆者はタイで撮影したプラカットを日本に持ち帰り、2017年12月10日頃に約15匹を撮影し、約2か月飼って2018年2月10日頃に撮り直しています。
そのうち変化の大きかった6匹が、比較写真とともに掲載されています。
この回ではまず、変わらない個体もいることに触れています:「確かに成魚になって、色彩が落ち着いてそのまま変化しない個体もいる。」
続く一文はこうです:「特に単色の個体はその傾向が強い。」
そのうえで、筆者の見立ては次のとおりです:「ほとんどのベタは大なり小なり、成魚になってからも色彩は変化するのである。」
多色系、つまり1匹の体に何色もの色が入るタイプについては、さらに踏み込んで書かれています:「特にマーブル系やファンシーと呼ばれる多色系の個体では、成魚になってからも劇的な変化をする個体も多い。」
一方で、変化に気づきにくいことにも触れています:「だが、通常飼育していると、その変化は緩やかで、体色が変化した事に気が付かないものである。」
コイベタそのものについての記述も、ほかの回に出てきます。
第54回「コイベタ・フルムーン」の写真の説明には、こうあります:「コイベタの多くは成長に連れて、色彩は大なり小なり変化するので、良い方向に変化する事を期待したい。」
第58回「コイベタ・ジャパンフラッグ」では、見事に紅白が染め分かれた個体について、こう記されています:「しかし、この色彩も成長につれ変化してしまった。」
2025年の第105回には、この回で取り上げたキャンディについて次の一文があります:「この魚も他のプラカット同様に成長段階において色彩は変化する。」
この回では、帰国から52日後に同じ個体を撮り直し、若く薄かった体色と各ヒレの色が濃くなった様子を紹介しています。
比較写真はコラムに載っているので、変化の大きさはリンク先で見比べてみてください(出典:水作株式会社 山崎浩二コラム 第50回「ベタの体色変化」(メーカー公式サイト))。
水作のコラムに記録された色の変化を、回ごとに表にまとめます。
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| 回と題 | 対象 | 記録のしかた | 記録された変化 |
|---|---|---|---|
| 第50回「ベタの体色変化」 | タイで撮影したプラカット約15匹 | 2017年12月10日頃に撮影し、約2か月飼って2018年2月10日頃に撮り直し、変化の大きかった6匹を掲載 | 掲載6匹の内訳は、良い方向1・悪い方向3・劇的だが判断しかねる1・まだら模様が濃い赤に変わった1(当方の集計) |
| 第54回「コイベタ・フルムーン」 | コイベタ・フルムーン | 写真の説明文での筆者の見立て | 特定の柄では成長につれ体側の黒い色素が抜ける傾向があり、良し悪しは運 |
| 第58回「コイベタ・ジャパンフラッグ」 | 紅白に染め分かれた個体 | 写真の説明文 | 見事な紅白の色彩も、成長につれ変化した |
| 第105回「ニュー・キャンディ」(2025年) | キャンディのプラカット | タイで撮影した個体を、帰国52日後に撮り直し | 若く薄かった体色と各ヒレの色が濃くなった |
| 第39回「ベールテールのコイベタ」 | コイベタ・ベールテール | 写真の説明文での筆者の勧め | 完全な成魚より若い魚のほうが、成長につれての変化も楽しめると勧めている |
いずれも寄稿者の観察記録で、変化の頻度や割合を調べたものではない点に注意してください。
いつ・どちらに変わるかは読めない|良くなる個体も悪くなる個体もある
では、どの個体がいつ、どんなふうに変わるのかは分かるのでしょうか。
第50回の筆者は、モデルにする魚を集めた段階について、こう書いています:「実際はどの個体が体色変化するのかは全く予想が付かない。」
変化の向きについても、両方があると書かれています:「体色変化も、良い方向に変化する個体もあれば、悪い方向に変化する個体もある。」
そして、続く一文はこうです:「こればかりは、なかなか予測困難である。」
第54回でも、体側の黒い色素が抜ける傾向のある柄について、次のように書かれています:「それが良い方向に転ぶか、悪い方向に転ぶかは運でしかないだろう。」
つまり、コイベタの模様は買ったときより良くなることもあれば、魅力だった部分が消えてしまうこともあり、それを事前に見分ける方法は示されていません。
ここで気をつけたいのが、変化を知らずに迎えた場合の受け止め方です。
第50回には、売る側と買う側の行き違いを心配する一文もあります:「何も知らないで、美しい体色が悪い方向にでも転んだら、騙されて販売されたと誤解するお客さんもいるかもしれない。」
後悔につながりやすいのは、模様が変わること自体よりも、変わらないと思い込んで迎えることなのかもしれません。
一方で、筆者は変化を前向きにとらえる見方も書いています。
「ある意味、体色が変化する方が楽しみが二倍になるので、得した気分を味わえるかもしれない、と自分は思うのだが、いかがであろうか?」という問いかけで、この回は締めくくられています。
ただしこれは筆者個人の意見で、変化を楽しめるかどうかは人によって違います。
模様がどう変わっても、その変化も含めて見守れる人には向いている魚だと言えます。
反対に、買ったときの模様がずっと続くことを期待しているなら、期待と違う結果になって後悔することもありえます。
なお、スペクトラム ブランズ ジャパンの飼育解説には、ベタは『年を取ると色も徐々にあせていく』とも書かれています。
迎える前に、模様が変わってもこの子を飼い続けたいか、一度自分に聞いてみてください。
模様が変わる仕組みはどこまで分かっている?|研究でも未解明
模様が変わる仕組みが分かれば、変わりやすい個体を見分けられるのでは、と考える方もいるでしょう。
ところが、その仕組みは研究でもまだよく分かっていません。
2022年に Science Advances に載ったベタの遺伝の研究は、『モザイク状の配色は錦鯉やメダカでも見られるが、その仕組みは調べられていなかった』と書いています。
この論文は、それまで調べられていなかった仕組みに、ベタの遺伝子を比べることで迫ろうとした研究です。
ただし、あとで見るように、分かったのは関わっていそうな場所の候補までです。
仕組みが分かっていない以上、あるコイベタがいつ・どう変わるかを言い当てる方法も、今のところありません。
前の章で見た、いつ・どちらに変わるかは読めないという記録は、研究の現状とも食い違っていないことになります。
2022年の研究では、1つではなく複数の遺伝子領域が関わる可能性
この研究では、ゲノム関連解析という方法が使われています。
ゲノム関連解析とは、つまりたくさんの個体の遺伝情報を比べて、ある見た目の個体に共通して見られる場所を探す方法です。
研究チームは、単色のベタ209匹と、モザイク状の配色のベタ55匹を比べました。
その結果、8本の染色体の9か所が、モザイク状の配色に関わっている可能性が示されました。
論文はこれを、1つの遺伝子ではなく、複数の領域が関わる可能性を示すものとしています。
最も強い2つの信号が出たのは11番染色体の隣り合う領域で、そこには色素に関わる遺伝子(slc39a7 など)が含まれていました。
ただし、これは原因の候補を挙げた段階で、その遺伝子が原因だと確かめられたわけではありません。
また、この比較は単色の個体とモザイク状の配色の個体の違いを見たもので、1匹の模様が変わっていく過程を追ったものではありません。
別の2022年の研究(Comparative Biochemistry and Physiology Part D)では、単色・2色・多色(マーブル)のベタで、色素に関わる遺伝子の働きを比べています。
1つの原因で言い切る説明は確かめられていない|止める方法も時期のデータもない

インターネット上では、コイベタの模様が変わる理由を、1つの原因で言い切る説明を見かけることがあります。
しかし研究では、仕組みはまだ未解明で、複数の領域が関わる可能性が示された段階です。
1つの原因で言い切る説明は、研究では確かめられていません。
同じように、模様の変化を止めたり、安定させたりする方法を示した一次情報も見つかりませんでした。
水質や水温の管理、ストレスを減らすこと、色揚げ用の餌などで柄を保てる、という根拠は確認できていません。
変化の頻度や時期を調べたデータも、見つかりませんでした。
第50回は約15匹を約2か月飼った1回の記録で、第105回は帰国から52日後に撮り直した記録です。
どちらも記録をとった条件であって、何か月で模様が変わるかの根拠にはなりません。
どの段階で変化が落ち着くのか、何歳になれば止まるのかを数字で示した資料もありませんでした。
だからこそ、選ぶ側にできるのは、模様が変わる前提で迎えることです。
具体的な選び方は、腫瘍の話を見たあとで、購入前チェックの章でお伝えします。
コイベタは腫瘍になりやすい?|論文で分かっていること
先に答えをお伝えすると、ベタ全般では色素細胞の腫瘍の報告があり、品種改良による遺伝的な要因が疑われていますが、コイベタだから多いことを示すデータは見つかりませんでした。
色素細胞とは、つまり体の色をつくる細胞のことです。
2025年に Journal of Fish Diseases に載った症例報告は、『遺伝的素因が、ペットのベタで色素胞腫などが増えていることへの大きな懸念になっている』と書いています。
症例報告とは、つまり1匹の病気の経過を詳しくまとめた論文のことです。
遺伝的素因とは生まれつきその病気になりやすい性質のことで、色素胞腫とは色素細胞から生じる腫瘍のことです。
一方で、コイ柄のベタに腫瘍が多いかどうかを調べたデータは、今回の調査では見つかりませんでした。
ただし、腫瘍そのものを軽く考えてよいわけではありません。
これから紹介するとおり、報告されている例の多くは周りの組織に食い込む重いもので、治療も難しいとされています。
ベタで報告されている色素細胞の腫瘍|見た目と経過
ベタで報告されている色素胞腫には、虹色素胞腫、つまり光を反射する細胞から生じるものも含まれます。
2025年に Veterinary Pathology に載った71例の症例集、つまり多くの例をまとめた報告は、腫瘍の見た目を『ヒレ・胴から尾・頭に、白・灰・黒のもろい塊や板状の盛り上がり』として記録しています。
先ほどの2025年の症例報告は、過去の報告例を『すべて成魚のオスで8か月〜2歳』とまとめています。
同じまとめでは、腫瘍は『多くは体の後ろ半分に出て、白〜灰色に黒・黄・赤の斑点が混じる盛り上がった不規則な塊』として現れていました。
この論文で報告された1匹は、ブルーの10か月のオスです。
飼い主によると、購入して1〜2か月後に尾に近い脇腹の鱗が盛り上がるところから始まり、小さな白いこぶになって反対側にも広がったそうです。
経過も、軽いものではありません。
71例の症例集では、71例中45例(63%)が悪性で、周りの筋肉に食い込むか、ほかの臓器へ転移していました。
悪性とは、つまり周りの組織に入り込んだり、ほかの場所へ広がったりする性質をもつことです。
2024年に Journal of Comparative Pathology に載った、目の中から生じた例の報告も、ベタで報告された例の多くに浸潤、つまり腫瘍が周りの組織に食い込むように広がる状態が見られたとまとめています。
報告例の生存期間は29日〜10か月だったと、2025年の症例報告はまとめています。
2019年の症例報告(Veterinary Record Case Reports)でも、ブルーのオスの塊が5か月かけて大きくなり、その後死亡しているのが見つかりました。
治療には外科的な切除や冷凍療法、つまり患部を凍らせる方法がありますが、どちらもベタの体が小さいため難しいとされています。
ここで紹介した数字は、獣医の病理検査に持ち込まれた例を集めたものです。
飼われているベタ全体のうち、どれくらいの割合で腫瘍が起きるか(発生率)を示す数字ではありません。
数字だけを見て怖がりすぎず、それでも起きたときには重い病気になりうる、という両面で受け止めてください。
コイベタだから多いというデータはない|71例で多かったのは別の色

では、コイ柄のベタに腫瘍が多いという報告はあるのでしょうか。
今回調べたなかで最も大きな症例集は、先ほどの71例の報告です。
この報告は同じ養殖場のベタ71例をまとめたもので、多かったのはロイヤルブルーとファンシーカッパーの配色、そして若いオスでした(出典:Diniz ほか 2025(Vet Pathol)71例の虹色素胞腫の症例集(PubMed))。
著者は、この偏りから遺伝的な要因がある可能性を示しています。
なお、色ごとの匹数は抄録には書かれておらず、論文の全文は今回取得できなかったため確認できていません。
コイ柄のベタの腫瘍を報告していたのは、別の論文の1例だけでした。
2022年に Aquaculture, Fish and Fisheries に載った症例報告で、8か月のオスのジャイアント・コイ・ドラゴンスケール・プラカットが、目の異常と尾の塊で受診した例です。
症状はその後も進み、受診から10週後に安楽死となっています。
この論文の著者は、『愛好家の掲示板で、特定の見た目と目の病気・腫瘍が結びつけられている』と書いたうえで、『この色の型では遺伝的な原因の可能性がある』と述べています。
ただしこれは、1例の観察と、逸話を含む文献の見直しから述べられた可能性で、コイ柄の個体を数えて比べた統計ではありません。
著者は繁殖について、『寿命や生活の質を下げる特徴から離れるように選ぶべき』とも提言しています。
こうした報告を合わせると、コイベタだから腫瘍になりやすい、とは言えないのが現状です。
一方で、腫瘍はベタ全般で起きうるので、どの模様の個体でも体表を見る習慣は大切です。
ここまでの論文を、表にまとめます。
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| 論文(年・誌) | 対象(数・配色) | 分かったこと | この記事での読み方 |
|---|---|---|---|
| Diniz ほか 2025(Veterinary Pathology) | 71例・同じ養殖場のベタ | ロイヤルブルーとファンシーカッパーの配色、若いオスに多い/45例(63%)が悪性 | 養殖場由来の例の集まりで、発生率ではない |
| McLaughlin ほか 2022(Aquaculture, Fish and Fisheries) | 1例・コイ ドラゴンスケール プラカット | 目の異常と尾の塊で受診し、10週後に安楽死 | 1例なので、コイで多いとは言えない |
| Yu ほか 2025(Journal of Fish Diseases) | 1例・ブルー | 購入後1〜2か月で発症/過去の報告例は8か月〜2歳のオス | 購入時に見ても避けられるとは限らない |
| Crevoiserat ほか 2024(Journal of Comparative Pathology) | 1例・配色は記載なし | 目の中から生じた例/報告例の多くで浸潤 | 体表だけでなく目の中に出た例もある |
| Orós ほか 2022(Diseases of Aquatic Organisms) | こぶのあるベタ・配色は記載なし | タイの養殖ベタで見られる、皮膚にこぶができる症状に似た虹色素胞腫を報告 | こぶの原因は、感染と感染以外の両方がありうる |
表のとおり、コイ柄の報告は1例にとどまり、コイ柄で多いかどうかを調べたデータは見つかっていません。
後悔しないための購入前チェック|模様と体表を分けて見る
ここからは、コイベタを迎える前に何を見ればよいかを、一緒に整理していきましょう。
ヒレやエラなど、どのベタにも共通する健康チェックはここでは繰り返さず、コイベタならではの点に絞ります。
考え方は、①模様は変わる前提で見る、②体表の盛り上がりやこぶ、目の異常を見る、の2段です。
模様は、ここまで見てきたとおり、いつ・どちらに変わるかが読めません。
そのため、今の模様だけで決めずに、左右両側の見え方や店の説明もあわせて判断材料にします。
体表については、前の章の論文をもとに、見送る目安と、迎えた後に見つけたときの動き方を整理します。
なお、ここで挙げる点を確かめても、模様の変化や腫瘍を避けられるとは限りません。
あくまで、迎えてから慌てないための準備として役立ててください。
模様は変わる前提で選ぶ|左右両側を見て、店に変化の説明を聞く

まず、模様は片側だけで決めないようにしましょう。
最初の章で紹介したとおり、第49回には、コイベタは左右で体色が違う個体がほとんどだと書かれ、同じ個体の反対側の写真も並べて紹介されています。
お店では、魚が向きを変えるのを待って、両側を見比べてみてください。
通販で選ぶ場合は、左右両側の写真が載っているかを確かめるのがひとつの目安です。
死着保証や発送方法も含めて、通販で失敗しないための保証や購入条件の見方をあわせて確認しておきましょう。
次に、模様の変化について店に聞いてみることです。
第50回の筆者は、こう書いています:「信用の置けるベタ専門店では、こうしたベタの色彩変化も販売の際に説明してくれるだろう。」
その個体がこれまでにどう変わってきたか、似た柄の魚がどう変わることが多いかなど、店が把握していることを尋ねてみましょう。
質問のしかたや店の見分け方は、ベタ専門店の選び方と、健康な個体を選ぶための質問リストを参考にしてください。
また、札に書かれた呼び名よりも、目の前の個体を見ることも大切です。
第49回には、コイベタのクラウンテールとして手に入れた魚について、こうあります:「コイベタと呼ぶには相応しくないようなマーブル系の魚も混ざっていた。」
同じ『コイ』の札が付いていても、模様は1匹ずつさまざまだということです。
第27回の写真の説明にも、次の一文があります:「もちろん体やヒレの色彩は個体毎に異なり2匹と同じ個体はいない。」
コイベタを選ぶ前に確かめたい3つのこと
1. 左右両側の模様を見たか(通販なら両側の写真があるか)
2. 模様の変化について、店に説明を聞いたか
3. 模様が変わっても、飼い続けたいと思えるか
鱗の盛り上がり・こぶ・目の濁りは見送る|迎えた後に見つけたら
ヒレ・体・エラと口という基本の3点について、スペクトラム ブランズ ジャパンの飼育解説は、こうまとめています:「ベタを購入する際はこの3点に注意して生体を選びましょう。」
体の項目では、次のように勧めています:「白い斑点やうろこの剥がれがないか確認しましょう。」
項目ごとの詳しい見方は、購入時にヒレ・呼吸・泳ぎで弱った個体を見抜くためのチェックリストで確認してください。
コイベタを選ぶときにこれに足したいのが、体表の盛り上がり・こぶ・塊と、目の濁りや異常です。
前の章で見たとおり、ベタの色素細胞の腫瘍は、鱗の盛り上がりや白〜灰色のこぶ、塊として報告されています。
コイ柄の1例でも、目の異常が受診のきっかけの一つでした。
ただしこれは1例なので、コイ柄に目の病気が多いと言えるわけではありません。
こうした様子が見られる個体は、迎えるのを見送るのがよいでしょう。
もっとも、購入時によく見ても、腫瘍を避けられるとは限りません。
腫瘍の章で紹介したブルーのオスの例では、購入して1〜2か月後に、鱗の盛り上がりから始まっています。
過去の報告例も、8か月〜2歳の成魚のオスでした。
ジェックスの商品ストーリーには、『ベタの寿命は約2年半で、お店に並ぶのは生後半年くらいの個体』と書かれています。
つまり、店頭に並ぶころの年齢より後になってから現れた報告があるということです。
迎えた後に体にこぶを見つけても、すぐに腫瘍だと決めつけないでください。
こぶは細菌の感染でも起き、見た目だけでは腫瘍と区別できないからです。
2025年の症例報告でも、受診時の候補として抗酸菌の感染・腫瘍・水カビなどが挙げられ、細胞の検査と病理検査で診断が確定しています。
抗酸菌とは、つまり魚の感染症の原因として知られる細菌のなかまです。
この例では腫瘍の組織から抗酸菌の一種も分離されていて、腫瘍との関係は分からないと著者は書いています。
2018年の研究(Microbial Pathogenesis)は、タイ中部の養殖ベタに多かったこぶの症状を皮膚結節症候群と仮に名付け、複数の細菌の感染が関わっている可能性を示しました。
皮膚結節症候群とは、つまり皮膚にこぶができる症状のまとまりに付けられた仮の名前で、本当の原因はまだ分かっていないとされています。
一方、2022年の Diseases of Aquatic Organisms の論文は、この症候群に似たこぶを虹色素胞腫と診断し、原因には感染と感染以外の両方がありうるとしています。
研究用のベタの飼育をまとめた論文(Comparative Medicine、2022年)も、『抗酸菌症のサインは特徴がなく、他の病気と見分けにくい』としています。
体表の変化に気づいたら、ヒレや体表、行動から病気の初期症状を見分けるポイントも確かめたうえで、購入店や魚を診られる動物病院など、実物を見られる専門家に相談してください。
自己判断で腫瘍と決めて治療を始めず、まずは相談することをおすすめします。
こぶや鱗の盛り上がりは腫瘍とは限らず、細菌の感染でも起き、見た目では区別できません。
また、購入時にチェックしても、腫瘍を避けられるとは限りません。
こぶや盛り上がりを見つけたら、見つけた日・場所・大きさをメモして写真も撮っておくと、相談するときに様子を伝えやすくなります。
コイベタでよくある質問(FAQ)
マーブルとコイの違いは?
2022年の研究では、コイもマーブルも、同じモザイク状の配色に付いた流通名として扱われています。
そのなかで、錦鯉に似た配色の個体がコイと呼ばれてきた、というのが水作のコラムの説明です。
同じ連載には、コイベタとして手に入れた魚にマーブル系に近いものが混ざっていたという記録もあり、両者の境目ははっきりしていません。
模様の変化は止められますか?
模様の変化を止めたり、安定させたりする方法を示した一次情報は、今回の調査では見つかりませんでした。
水質や餌で模様を保てるという根拠も確認できていないため、変わる前提で迎えることをおすすめします。
何か月くらいで模様が変わりますか?
模様が変わる時期を調べたデータは、見つかりませんでした。
水作のコラムの第50回は約2か月飼って撮り直した記録、第105回は52日後に撮り直した記録ですが、どちらも記録をとった条件です。
また第50回は、ふだん飼っていると変化は緩やかで気づきにくい、とも書いています。
届いたばかりで色が薄いのは弱っているから?
輸送のあとに色が戻るまでの日数を調べた、2025年の研究(Animals)があります。
単色の赤・短いヒレ・生後3.5か月のオスを2日間陸送した実験で、色などが輸送しなかった群と並んだのは8日後でした。
ただしこれは単色の赤のベタでの結果で、コイ柄の模様に同じ日数を当てはめることはできません。
届いた直後の色だけで判断せず、到着後の水合わせと隔離の手順に沿って落ち着かせてから様子を見てください。
体にこぶができたら治りますか?
こぶができる原因には腫瘍のほかに細菌の感染などもあるため、まず何が起きているのかを確かめることが先になります。
腫瘍だった場合は、ベタの体が小さいため手術などの治療が難しいと論文に書かれていて、回復を約束できる方法は示されていません。
自己判断で治療を始めず、購入店や魚を診られる動物病院など、実物を見られる専門家に相談してください。
まとめ|コイベタは模様が変わる前提で選び、体表の異常は自己判断しない
最後に、この記事の要点をまとめます。
- コイベタは、マーブルと呼ばれる模様の中で錦鯉に似た配色の個体の呼び名で、同じ模様の個体は2匹といない
- 成魚になってからも模様が変わる個体が多いが、いつ・どちらに変わるかは読めない
- 模様が変わる仕組みは研究でも未解明で、止める方法や時期のデータも見つかっていない
- ベタ全般で色素細胞の腫瘍の報告はあるが、コイベタだから多いというデータは見つからない
- こぶや鱗の盛り上がりは腫瘍とは限らず、見た目では区別できない
模様の変化の根拠はメーカー公式サイトのコラムに載った寄稿者の観察記録で、腫瘍の根拠は獣医学の論文です。
どちらも、あなたのコイベタがこの先どうなるかを言い当てるものではありません。
だからこそ、模様が変わっても飼い続けたいかを考えたうえで、左右両側を見て、店に変化の説明を聞いてから迎えてください。
迎えた後に体表の異常に気づいたときは自己判断せず、購入店や魚を診られる動物病院など、実物を見られる専門家に相談しましょう。
迎えるかどうかの判断も、体調の見きわめも、最後は飼い主であるあなたに委ねられています。
変化も含めてその子の個性として見守れるなら、コイベタとの暮らしを楽しめる場面も増えていくと思います。


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