アオミドロをオキシドールで枯らす前に。水槽で何mg/Lになるかと生き物への影響
水槽やメダカの容器に緑の糸がもじゃもじゃと広がって、取っても取っても戻ってくる。そんなとき、アオミドロにオキシドールが効くらしいという話を見かけて、薬箱の茶色い瓶に手が伸びかけた方も多いかなと思います。
先に結論をお伝えすると、水槽の水そのものにオキシドールを入れてアオミドロを除去する方法は、おすすめしにくいです。オキシドールは傷の消毒用の医薬品で、水槽で使う量は添付文書に書かれておらず、当サイトで確認した範囲では観賞魚用品のメーカーの資料にも示されていません。しかも研究では、オキシドールの成分である過酸化水素は、藍藻より、調べられた緑藻や珪藻に効きにくいという結果が出ています(アオミドロそのものを調べた研究は、今回の調べでは見つかりませんでした)。
この記事では、オキシドールの成分と濃度、アオミドロという藻の性質、そして水槽に1mLを入れたら何mg/Lになるのかを計算で示し、公的機関がまとめた生き物への毒性の値と並べてみます。メダカやエビへの影響、ろ過バクテリアへの影響、毎日添加や入れすぎの心配、黒髭苔や藍藻との違い、そして手で取る方法や観賞魚用の除去剤といった代わりの選択肢まで、順番に見ていきましょう。
- オキシドールの成分と、アオミドロに効きにくい理由
- オキシドールの量を水槽の濃度に換算する方法
- メダカ・エビ・ろ過バクテリアへの影響を見る手がかり
- オキシドールに頼らないアオミドロの取り方と再発防止
アオミドロにオキシドールは効く?成分と研究で確認
まずは、アオミドロにオキシドールが本当に効くのかを、薬の成分と研究の結果から確かめていきます。結論から言うと、オキシドールの中身は過酸化水素という酸化力のある成分で、藻を弱らせる力そのものはあります。ただ、研究で特に効きやすいとされているのは藍藻(シアノバクテリア)のほうで、調べられた緑藻や珪藻は比べると影響を受けにくいという結果です。アオミドロそのものに効く濃度を示した資料は、今回の調べでは見つかりませんでした。さらに、水槽で使う量の目安は、オキシドールの添付文書に書かれておらず、当サイトで確認した範囲では観賞魚用品のメーカーの資料にも示されていません。この章では、オキシドールがどんな薬か、アオミドロがどんな藻か、そして水槽に入れたときの濃度がどのくらいになるかを、計算で具体的に確かめていきます。数字で並べてみると、藍藻に効かせた濃度の時点で、ほかの生き物の試験の値とかなり近いことが見えてきますよ。
オキシドールの正体は過酸化水素3%前後の消毒薬
オキシドールは、過酸化水素を主な成分とする消毒薬です。ドラッグストアで買える健栄製薬のオキシドールの場合、医薬品医療機器総合機構(PMDA)が公開している情報では、成分は過酸化水素(2.5〜3.5w/v%)とされています。添加物としてフェナセチン、リン酸も記載されていて、これらが水槽の生き物に与える影響を示した資料は、今回の調べでは見つかりませんでした。
w/v%というのは、液100mLの中に何gの成分が溶けているかを表す単位です。つまり、オキシドール100mLの中に過酸化水素が2.5〜3.5g入っているということ。1mLに直すと25〜35mgになります。この数字は、あとで水槽の濃度を計算するときに使うので、覚えておいてくださいね。
効能・効果は「きずの消毒・洗浄」と書かれていて、用法は「そのままの液又は2〜3倍に水でうすめた液を脱脂綿,ガーゼ等に浸して患部を洗ってください。」となっています。用法関連注意には「外用にのみ使用してください。」ともあります。つまり、人の傷を洗うための薬として作られていて、水槽の藻を枯らす使い方は、もともとの用途に入っていません。
薬局で安く手に入り、分解すると水と酸素になるというイメージから、水槽にも使えそうに感じるのは自然なことかなと思います。ただ、用途の外で使う以上、量や効き方の保証は誰もしてくれない、という前提で考える必要があります。
扱うときの注意も、添付文書の保管の欄に書かれています。「直射日光の当たらない冷所(30℃以下)に密栓して保管してください。」「他の容器に入れ替えないでください。」に加えて、「保存中に瓶内の圧力が高くなっていることがありますので,瓶口を顔にむけぬようにして,キャップをあけてください。」という注意もあります。目に入らないようにする注意も書かれているので、扱うときは注意書きに沿って、人の安全にも気を配りましょう。
詳しい成分や注意事項は、製品ごとの添付文書で確かめられます(出典:医薬品医療機器総合機構 一般用医薬品 オキシドール(健栄製薬))。製品によって濃度の書き方が違うこともあるので、正確な情報は公式サイトをご確認ください。
アオミドロは藍藻と別の仲間で効き方も違う
オキシドールが効くかどうかは、相手の藻の種類で変わります。ここが、ネットの体験談が人によってバラバラになる大きな理由かもしれません。
アオミドロは、学名をスピロギラ(Spirogyra)という緑藻の仲間です。神戸大学の博士論文の要旨では、アオミドロ類はホシミドロ藻綱・ホシミドロ科に分類され、おもに淡水域に広く生育し、世界で約570種、日本では84種が知られていたと紹介されています。アオミドロ類の細胞の中には、らせんを描くリボン状の葉緑体があり、円筒形の細胞が連なった糸状の姿をしています。水槽で見る、ぬるっとした緑の糸のかたまりは、この細胞の列が絡み合ったものなんですね。
一方、水槽でよく比べられる藍藻は、シアノバクテリアという細菌の仲間で、アオミドロとは体のつくりがまったく違います。この違いが、過酸化水素への強さの違いにつながっています。
2007年に学術誌Photosyntheticaに載った研究では、藍藻5種、緑藻3種、珪藻1種に過酸化水素を加え、光合成がどれだけ弱まるかを比べました。結果は、藍藻5種のほうが、緑藻3種と珪藻1種より強く光合成が妨げられたというものです。この研究で使われた緑藻はアオミドロではありません。神戸大学の論文の要旨によると、アオミドロ類は陸上植物を含むストレプト植物に属する藻類とされていて、この緑藻3種と同じ性質とは言い切れません。藍藻とそれ以外の藻で効き方が違う、という手がかりの一つ、という程度に見てください。
もう一つ、2012年に水質の学術誌(Water Res.)に載った湖での研究もあります。藍藻が大発生した湖全体に、過酸化水素を2mg/Lの濃度で加えたところ、藍藻と、藍藻が作る毒素(ミクロシスチン)は数日で99%減りました。その一方で、緑藻を含むほかの植物プランクトン、動物プランクトン、湖の大型の動物(macrofauna)は、大きな影響を受けなかったと報告されています。
この研究の緑藻は水中に浮かぶプランクトンで、アオミドロのような糸状の藻ではありません。それでも、藍藻だけを狙えるくらいの低い濃度では、湖の緑藻はあまり弱らなかった、という結果は見逃せないところです。黒髭苔や藍藻にオキシドールが効いたという話をそのままアオミドロに当てはめると、期待どおりにならない可能性がある、ということですね。
なお、緑の糸状のコケがアオミドロかどうかの見分け方は、後半で紹介するアオミドロ除去剤の記事でも触れています。相手が藍藻なのか、アオミドロなのか、ほかの糸状のコケなのかで対策が変わるので、まずは見分けからが近道です。
水槽で使う量は添付文書に書かれていない

水槽 オキシドール 添加量、と検索して出てくる数字は、個人の経験にもとづくものが多いようです。オキシドールの添付文書には、水槽で使う量はもちろん、薄めて生き物の水に入れる使い方そのものが書かれていません。
添付文書の用法は、原液か2〜3倍に薄めた液を、脱脂綿やガーゼで傷に当てて洗うというものでした。水槽の水を何十リットルも薄める液として使う場面は、まったく想定されていないわけです。
観賞魚用品のメーカー側はどうでしょうか。当サイトのアオミドロ除去剤の記事の調査でも、オキシドールをコケ対策に使う方法は、アクアリウムのメーカーの資料には示されていませんでした。つまり、オキシドールを水槽に入れるときの量は、確認できた範囲では、薬を作っている側も水槽用品を作っている側も示していない状態です。
では、公的な基準はあるのでしょうか。環境省が2016年にまとめた過酸化水素のリスク評価の資料には、「国内外において水生生物保全に係る基準値等は設定されていない。」と書かれています。川や湖の生き物を守るための基準値すら、国内外で決まっていないということです。
よく見かける“10Lに1mLまで”“60cm水槽に数mL”といった目安は、こうした公的な裏づけのない、経験上の数字だと考えておくのが安全かなと思います。量の数字が独り歩きしやすい話題なので、次の見出しで、その数字が実際に何mg/Lになるのかを計算してみましょう。
オキシドール1mLが水槽で何mg/Lになるか

ここからが、この記事でいちばんお伝えしたい部分です。オキシドールを水槽に入れたとき、水の中の過酸化水素がどのくらいの濃度になるのかを、計算で確かめてみます。
計算はとてもシンプルです。オキシドール1mLには過酸化水素が25〜35mg入っています(濃度2.5〜3.5w/v%から換算)。これを水槽の水量(L)で割ると、1Lあたりのmg、つまりmg/Lが出ます。
たとえば水量10Lの容器に1mLを入れて全体に混ざったとすると、25〜35mg÷10L=2.5〜3.5mg/Lです。水量30Lなら0.83〜1.17mg/L、水量60Lなら0.42〜0.58mg/Lになります。
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| 水槽の水量 | オキシドール1mLを入れたときの過酸化水素の濃度 | 計算式 |
|---|---|---|
| 10L | 2.5〜3.5mg/L | 25〜35mg÷10L |
| 20L | 1.25〜1.75mg/L | 25〜35mg÷20L |
| 30L | 0.83〜1.17mg/L | 25〜35mg÷30L |
| 45L | 0.56〜0.78mg/L | 25〜35mg÷45L |
| 60L | 0.42〜0.58mg/L | 25〜35mg÷60L |
| 90L | 0.28〜0.39mg/L | 25〜35mg÷90L |
この表は、オキシドールを入れた直後に水全体へ均一に混ざったと仮定した計算です。実際には、入れた場所の近くでは一時的にもっと濃くなりますし、過酸化水素は時間とともに分解していくので、濃度は下がっていきます。あくまで一般的な目安として見てください。
水量は、水槽の外寸ではなく、実際に入っている水の量で計算するのがポイントです。底砂や石、流木が入っている分、水量は外寸から計算した容量より少なくなります。少なく見積もった水量で割るほど濃度は高く出るので、水量があいまいなときは、濃くなる側で考えておくと安心です。
また、この表は、使ってよい量の表ではありません。1mLという量は、計算しやすいように置いただけの数字です。次の見出しで、この濃度を生き物への毒性の値と並べると、なぜ使ってよい量を決められないのかが見えてきます。
毒性の値と並べると安全な量の幅が見えない
前の見出しで出した濃度を、公的機関がまとめた毒性の値や研究の濃度と並べてみます。結論を先に言うと、藍藻に効かせた濃度の時点で、すでに甲殻類や藻類の試験で影響が見られなかった最大の濃度(NOEC)を超えてしまいます。アオミドロに効く濃度を示した資料は見つからず、この量なら効いて安全、という幅を資料から示すことができません。
環境省の2016年の資料(過酸化水素のリスク評価・有害性情報の詳細資料)には、次のような値がまとめられています。
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| 濃度 | 何の値か | 対象の生き物 | 条件 | 出典 |
|---|---|---|---|---|
| 0.63mg/L | 繁殖に影響が見られなかった最大の濃度(NOEC) | オオミジンコ(甲殻類) | 21日間、流水式 | 環境省 2016年 |
| 0.63mg/L | 生長に影響が見られなかった最大の濃度(NOEC) | スケレトネマ属(珪藻) | 3日間、止水式 | 環境省 2016年 |
| 1.38mg/L | 生長が半分阻害される濃度(EC50) | スケレトネマ属(珪藻) | 3日間、止水式 | 環境省 2016年 |
| 2mg/L | 湖全体に加えた濃度。藍藻が数日で99%減り、緑藻などはあまり影響を受けなかった | 湖の藍藻・植物プランクトン・動物プランクトン | 湖全体に投入 | Water Res. 2012年 |
| 16.4mg/L | 半数が死ぬ濃度(LC50) | ファットヘッドミノー(魚類) | 4日間(96時間)、半止水式 | 環境省 2016年 |
この表を、前の見出しの換算表と重ねてみましょう。水量10Lに1mLで2.5〜3.5mg/Lですから、オオミジンコの繁殖に影響が見られなかった0.63mg/Lの、およそ4〜5.6倍になります。水量60Lに1mLでも0.42〜0.58mg/Lで、0.63mg/Lに近い値です。
そして、藍藻を狙った湖での濃度2mg/Lは、すでにオオミジンコと珪藻の0.63mg/Lの約3倍です。湖の研究では、緑藻はこの2mg/Lではあまり弱りませんでした。ただ、同じ環境省の資料には、OECDとEUの評価が緑藻のクロレラの3日間の生長への無影響濃度0.1mg/Lを根拠にしていることも書かれています(環境省の評価Ⅱでは、この藻類の値は定量的な値としては用いないとして外されています)。条件で結果が変わるので、アオミドロにどの濃度で効くのかは、今ある資料からは決められません。
ここで公平にお伝えしておきたいのは、それぞれの値は条件がまったく違う、ということです。オオミジンコの0.63mg/Lは、21日間ずっと同じ濃度にさらし続けた試験の値です。湖の研究では、過酸化水素が数日で水と酸素に分解し、動物プランクトンは大きな影響を受けなかったと報告されています。ですから、0.63mg/Lを超えたらすぐに生き物が死ぬ、という意味ではありません。
逆に、0.63mg/Lが安全の線というわけでもありません。環境省はこうした値に不確実さの係数をかけて、水生生物への影響が出ないと予測される濃度(PNEC)を0.013mg/Lと導いています。換算表の濃度は、どの行もこれを上回ります。
表の値は、どれも観賞魚や観賞エビそのものの値ではありません。ファットヘッドミノーはメダカとは別の魚で、半数が死ぬ濃度(LC50)は安全な濃度ではなく、半分が死んでしまう濃度です。水槽の生き物に当てはめるときの目安として、あくまで参考程度に見てください。
それでも、藍藻に効かせた濃度が試験の無影響濃度をすでに超えていて、アオミドロに効く濃度の資料も無い以上、この量なら安全という線を引ける資料は見当たりませんでした。数字で見ると、オキシドールを水槽に入れるのは、思っている以上に狭い道を歩くことなんですね。
環境省の資料は、こちらで公開されています(出典:環境省 優先評価化学物質のリスク評価(一次)生態影響に係る評価Ⅱ 有害性情報の詳細資料 過酸化水素)。
オキシドールでアオミドロを消す前のリスクと代案
ここからは、それでもオキシドールでアオミドロを消したいと考えたときに、どんなリスクがあるのか、そしてオキシドールの代わりに何をすればよいのかを整理します。前の章の計算で見たとおり、アオミドロに効く濃度を示した資料は無く、藍藻に効かせた濃度でもすでに試験の無影響濃度を超えていて、資料で確かめられる安全な幅がありません。とくに心配なのは、エビのような甲殻類、メダカや熱帯魚、そして水槽の水をきれいに保っているろ過バクテリアへの影響です。毎日添加やスポットでかける方法、入れすぎてしまったときの考え方も順に見ていきます。そのうえで、手で取り除く、光と栄養を減らす、観賞魚用として作られた除去剤や、アオミドロを食べる生き物に任せるといった、量と使い方がはっきりした方法を選ぶほうが、遠回りに見えて結局は早いという結論にたどり着きます。
エビやメダカの水槽で心配されること

エビやメダカがいる水槽では、オキシドールを入れるのはとくに慎重になったほうがよいです。理由は、観賞エビの値が見つからない中で、同じ甲殻類のミジンコの繁殖への影響を21日間みた試験があり、その値が換算表の濃度と近いからです。
前の章の表で見たとおり、甲殻類のオオミジンコでは、繁殖に影響が見られなかった最大の濃度が0.63mg/Lでした。魚のファットヘッドミノーで半数が死ぬ濃度は16.4mg/Lですが、こちらは4日間の死亡を見た値で、試験の長さも見ている影響も違います。そのため、どちらが何倍弱いと単純には比べられません。ミジンコとヤマトヌマエビのようなエビも、同じ甲殻類とはいえ別の生き物です。
ヤマトヌマエビやミナミヌマエビ、レッドチェリーシュリンプといった観賞エビそのものの毒性の値は、今回調べた公的資料や研究の中には見つかりませんでした。ですから、エビにとって何mg/Lまでなら大丈夫とは、誰も言えないのが実情です。分からない以上、甲殻類の値が低く出ている、という手がかりを重く見ておくのが生き物ファーストの考え方かなと思います。
メダカについても、メダカそのものの値は資料にありません。屋外のメダカの容器にアオミドロが出たときは、メダカが食べるかどうかや、稚魚に絡む心配のほうが気になる方も多いはず。そのあたりは、アオミドロとメダカの関係を稚魚への影響まで含めて整理した記事で詳しく扱っています。
容器が小さいほど、同じ1mLでも濃度は高くなります。たとえば水量10Lのメダカ鉢では、1mLで2.5〜3.5mg/Lになる計算でした。屋外の小さな容器ほど、オキシドールの量の数字は危うくなる、と覚えておいてください。
また、水草についても、過酸化水素にどこまで耐えられるかを示した公的な値は見つかりませんでした。アオミドロが絡みついているのは、多くの場合ウィローモスや水草の上です。アオミドロだけを枯らして水草は無事、という都合のよい線引きができる資料はない、と考えておくのが無難です。
ろ過バクテリアへの影響と毎日添加の落とし穴
水槽 オキシドール バクテリア、と心配になる方もいると思います。結論から言うと、過酸化水素はろ過バクテリアの働きを弱めることがあり、1回入れてすぐ下がった場合より、一定の濃度を3時間保った場合に影響が大きく出たという研究があります。
デンマーク工科大学の研究者らが2010年に学術誌Aquaculture Researchに発表した研究では、養殖用の循環ろ過システムのろ材を過酸化水素にさらし、アンモニアや亜硝酸を分解する働き(硝化)がどう変わるかを調べました。ろ材を容器に入れて調べた試験では、過酸化水素の濃度は時間とともに指数関数的に下がっていき、30mg/Lまでの1回の投与なら、硝化の働きはすぐに回復したそうです。
一方で、平均10〜13mg/Lの濃度を3時間保ったところ、有機物の多いシステムのろ材では中程度に、有機物の少ないシステムのろ材では硝化が強く妨げられました。さらに、試験規模のシステム全体を約12mg/Lで3時間処理すると、2種類のろ材とも分解の働きが大きく落ち、24時間たっても元の状態には戻っていなかったと報告されています。
この研究は養殖の設備での結果で、家庭の水槽とは規模も水の汚れ方も違います。研究の濃度(10〜13mg/L・約12mg/L)は、前の章の換算表(1mLで最大3.5mg/L)より高く、家庭の水槽で同じ影響が出るとは言えません。それでも、1回入れてすぐ下がるのと、一定の濃度が続くのとでは、バクテリアへの影響が違うという点は、水槽でも参考になる考え方です。
そこで気をつけたいのが、毎日添加です。アオミドロは1回では消えにくいので、毎日少しずつ入れ続けたくなります。でも、毎日入れるということは、過酸化水素がある状態を毎日つくり続けることでもあります。毎日添加がろ過バクテリアにどう響くかを調べた資料は、今回の調べでは見つかりませんでした。分からない以上、慎重に考えておきたいところです。ろ過バクテリアが弱ると、アンモニアや亜硝酸が分解されにくくなり、魚やエビにとっては藻よりも厄介な水質の悪化につながるおそれがあります。
立ち上げたばかりでバクテリアが少ない水槽ほど、影響は出やすいと考えておくのが安全です。アオミドロが目立つのは、立ち上げから間もない時期や、ろ過が追いついていない時期であることも多いので、なおさら注意したいところですね。
スポットでかける・入れすぎたときの考え方
黒髭苔にオキシドールを直接かける方法を聞いて、アオミドロにもスポットで使えば安全では、と考える方もいるかもしれません。ただ、スポットでかけても、入れた過酸化水素は最後には水槽の水全体に広がります。
スポットでかけるというのは、かけた場所のまわりだけ一時的に濃くする方法です。そのぶん、かけた場所にいるエビや、すぐ横の水草には、全体の計算より高い濃度が当たることになります。そして、分解を考えずに全部が混ざったと仮定すれば、前の章の換算表が水槽全体の濃度の上限の目安になります。つまり、スポットだからといって、水槽に入れる量が減るわけではないんですね。
しかもアオミドロは、水草や流木、石の表面に広く絡みついて増える藻です。黒髭苔のように一か所に固まっていることが少ないので、スポットで全部にかけようとすると、結局はかなりの量を使うことになりがちです。
もしオキシドールを入れすぎたかもしれないと感じたら、魚やエビの様子をよく観察してください。いつもと様子が違う変化があれば、まずは水換えで濃度を下げるのが基本の考え方です(記事の整理で、オキシドールの添付文書に水槽での対処の記載はありません)。
水換えは、新しい水の温度や水質を水槽の水に合わせてから行い、カルキ抜きも忘れずに。過酸化水素は時間とともに分解していきますが、分解を待つより、薄めるほうが濃度を下げやすいです。生き物の様子が戻らないときは、無理をせず、観賞魚を扱う専門店に相談してください。
なお、入れすぎかどうかを判断するときも、前の章の換算表が役に立ちます。入れた量と水量から濃度を出し、甲殻類の0.63mg/Lや藍藻向けの2mg/Lと比べてみると、どのくらい慎重になるべきかの目安がつかめますよ。
先に手で取り除き光と栄養を減らすのが基本
オキシドールの代わりに何をすればいいのかというと、いちばんの基本は、手で取り除くことと、アオミドロが増える原因を減らすことです。地味ですが、量も濃度も気にしなくていい、生き物への薬の影響を考えなくてすむ方法です。
アオミドロは長い糸状なので、手で取り除きやすい藻でもあります。割り箸や歯ブラシをくるくると回して巻き取ると、まとまって取れやすいです。水草に絡んでいるときは、水草ごと取り出して、水槽の外でていねいにほどいてあげましょう。巻き取った後に細かい切れ端が残ると、そこからまた増えることがあるので、取り残しはネットですくうと安心です。
取り残しをすくうときは、観賞魚用のネットがひとつあると便利です。価格や在庫は、購入前に各ショップで確かめてくださいね。
取り除いた後は、増える原因を減らします。アオミドロに限らず、コケは光と栄養(魚のフンや食べ残しから出る成分)があるところで増えます。見直したいのは次のような点です。
- 照明の点灯時間が長すぎないか
- 窓際などで直射日光が当たっていないか
- エサの量が多く、食べ残しが出ていないか
- 水換えの間隔があきすぎていないか
屋外のメダカの容器のように、日当たりを変えにくい場所もありますよね。そういうときは、すだれで一部を日陰にする、浮き草で水面の一部を覆うといった工夫で、光を少し和らげる方法があります。
光と栄養の見直し方は、アオミドロを食べる魚やエビの選び方をまとめた記事でも、生き物に任せる前の準備として触れています。オキシドールで一気に消すより時間はかかりますが、増える理由を減らしておかないと、どの方法を使っても戻ってきてしまいます。
観賞魚用の除去剤や生き物に任せる選び方

手で取るだけでは追いつかないときは、観賞魚用として作られたコケ除去剤や、アオミドロを食べる生き物の力を借りる方法があります。オキシドールとの大きな違いは、どちらも使い方や向き不向きが、メーカーや飼育の情報としてある程度わかっていることです。
観賞魚用のコケ除去剤には、商品の説明にアオミドロの名前を挙げているものがあります。メーカーが水槽で使うことを前提に、量や使える水槽の条件を示しているので、エビや水草がいる水槽で使えるかどうかを、表示で確かめてから選べるのが安心な点です。具体的な製品と、水量からの量の計算、緑の糸状のコケがアオミドロかどうかの見分け方は、アオミドロ除去剤の選び方と量の計算をまとめた記事で整理しています。
生き物に任せる方法は、薬を使いたくない水槽に向いています。ただし、どの生き物もアオミドロを好んで食べるとは限りませんし、水槽の大きさや一緒に飼う魚との相性もあります。選ぶときは、ショップで実際の様子を聞いてみるのもよいと思います。
ここまでの方法を、オキシドールと並べて整理すると次のようになります。
→ 横にスクロールできます
| 方法 | 水槽で使う量や使い方の情報 | エビ・魚への配慮 | 向いている場面 |
|---|---|---|---|
| 手で取り除く | 量の心配がない | 生き物への薬の影響なし | どの水槽でもまず最初に |
| 光と栄養を減らす | 照明時間・エサ・水換えの見直し | 生き物への薬の影響なし | 再発を防ぎたいとき |
| 観賞魚用のコケ除去剤 | メーカーが量と条件を表示 | 表示でエビ・水草への可否を確認 | 手で取りきれない量のとき |
| アオミドロを食べる生き物 | 薬は使わない | 混泳の相性を確認 | 薬を使いたくない水槽 |
| オキシドール | 水槽で使う量は添付文書に記載なし | ミジンコで繁殖への影響を調べた試験あり(21日間) | 水槽の水への投入はおすすめしにくい |
どの方法を選ぶにしても、ひとつで終わらせようとせず、手で取る、原因を減らす、必要なら除去剤や生き物を足す、という順番で組み合わせるのがコツです。最終的な判断は、観賞魚を扱う販売店やメーカーなどの専門家にご相談ください。
商品の説明にアオミドロの名前を挙げている観賞魚用のコケ除去剤には、次のようなものがあります。エビや水草がいる水槽で使えるか、量の目安はどのくらいかを、購入前にパッケージや公式の説明で確かめてから選んでください。
アオミドロとオキシドールについてよくある質問
オキシドールは分解すると酸素になるので、魚には良いのでは?
湖での研究では、加えた過酸化水素は数日のうちに水と酸素に分解したと報告されています。ただ、分解される前の過酸化水素が、甲殻類や藻類、ろ過バクテリアに影響しうることは、この記事で見てきたとおりです。酸素を増やしたいときは、エアレーションなど水槽用の器具で増やすほうが、量の心配がなく安全かなと思います。
アオミドロが絡んだ水草だけを、水槽の外でオキシドールに浸けてもいいですか?
水草が過酸化水素にどこまで耐えられるかを示した公的な値は、今回調べた資料には見つかりませんでした。水槽の外でも水草がどうなるか分からないので、おすすめしません。まずは水草を取り出して、手でアオミドロをほどき、水でよく洗い流す方法から試すのがおすすめです。
藍藻ならオキシドールは効きやすいのですか?
研究では、藍藻(シアノバクテリア)は緑藻や珪藻より過酸化水素に弱いという結果が出ています。ただし、水槽で使う量が示されていない点や、エビやろ過バクテリアへの心配は、藍藻の場合も同じです。相手が藍藻かアオミドロかで向いている対策が変わるので、まずは見分けてから、観賞魚用の対策を選んでください。
アオミドロにオキシドールを使うか迷ったときのまとめ
アオミドロにオキシドールを使うかどうかは、量の数字で考えると答えが見えやすくなります。最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。
- オキシドールは過酸化水素2.5〜3.5w/v%の傷の消毒薬で、水槽で使う量は添付文書に書かれていない
- 研究では、過酸化水素は藍藻に効きやすく、調べられた緑藻や珪藻は比べると影響を受けにくい(アオミドロ自体の研究は見つからなかった)
- オキシドール1mLは、水量10Lで2.5〜3.5mg/L、60Lで0.42〜0.58mg/Lになる計算
- 甲殻類のオオミジンコでは、0.63mg/Lが繁殖に影響が見られなかった最大の濃度(21日間の試験)
- 養殖の設備で10〜13mg/Lを3時間保つと、ろ過バクテリアの働きが落ちたという研究もある
こうして並べてみると、アオミドロに効く濃度の資料は無く、水槽で入れがちな量でもミジンコの試験の無影響濃度に近いか上回ります。ろ過バクテリアについても影響の有無を言い切れる資料は無く、この量なら安全といえる線を資料から引くことはできませんでした。薬箱のオキシドールは手軽に見えますが、水槽の水に入れるのはおすすめしにくい、というのがこの記事の結論です。
遠回りに見えても、まずは手で取り除き、照明時間やエサの量、日当たりを見直して増える原因を減らしましょう。それでも追いつかないときは、観賞魚用として量と条件が示されたコケ除去剤や、アオミドロを食べる生き物の力を借りるのが、量と条件が示されているぶん判断しやすい選び方です。
水槽の状態は一つひとつ違うので、ここで紹介した数字は、あくまで一般的な目安として受け止めてください。製品の正確な情報は公式サイトをご確認いただき、迷ったときは販売店やメーカーに相談しながら、あなたの水槽に合う方法を選んでいってくださいね。


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