コリドラスの卵を見つけたら?放置か隔離か、孵化までの日数と白い卵の見分け方
朝、水槽をのぞいたらガラス面や水草の葉に小さな丸い粒がぽつぽつと並んでいて、びっくりした方もいるのではないでしょうか。コリドラスの卵だとわかっても、このまま放置してよいのか、別の容器に隔離したほうがいいのか、孵化までの日数はどのくらいなのか、気になることが一気に押し寄せてきますよね。
しかも、1日たつと一部の卵が白く濁ってきたり、綿のようなカビが出てきたりして、ほかの卵まで大丈夫なのかと不安になるものです。有精卵と無精卵の違いや、コリドラスの卵の見分け方を知っておけば、白い卵・カビを見つけても慌てずに対処できます。
この記事では、海外の大学の研究室がまとめた飼育手順や、魚類のデータベースに載っている記録をもとに、孵化までの日数の目安、白い卵が出る原因、卵の取り方と隔離のやり方を順番に整理しました。パンダやピグミーなど種類による違いや、メチレンブルーを使うかどうか迷ったときの注意点にも触れています。先に結論をお伝えすると、卵を親の水槽に放置すると食べられやすいので、育てたいなら隔離が基本です。孵化まではおよそ2〜5日、白く濁った無精卵は1日ほどで見分けられるので取り除きます。孵化後1〜2日は餌がいりません(数値はいずれも目安です)。いま目の前に卵がある方も、ひとつずつ確かめながら読み進めてみてください。
この記事でわかることは、次の4つです。
- コリドラスの卵の特徴と有精卵・無精卵の見分け方
- 孵化までの日数の目安と1日ごとの変化
- 卵を放置せず隔離したほうがよい理由と卵の取り方
- カビ対策と孵化後の稚魚の餌・水換え
コリドラスの卵の特徴と孵化までの流れ
まずは、コリドラスの卵がどうやって産み付けられ、どんな見た目をしていて、何日くらいで孵化するのかを押さえておきましょう。ここを知っておくと、白い卵が混じっていても落ち着いて判断できますし、「まだ待つべきか、もう取り除くべきか」も決めやすくなります。資料によって対象の種類や条件が違うので、その違いもあわせて紹介していきます。
この章で扱うのは、T字の姿勢で進む少し変わった産卵のしかた、卵の大きさや色と付きやすい場所、有精卵と無精卵の見分け方、孵化までの日数と毎日の変化、そして白い卵やカビが出る原因の5つです。卵は1日ごとに見た目が変わっていくので、「今日はどこを見ればいいのか」がわかるように、日数の目安と見るポイントをセットでまとめました。数値はあくまで一般的な目安として読んでくださいね。
コリドラスが卵を産む仕組みとT字の産卵行動
コリドラスの産卵でよく知られているのが、オスとメスが「T」の字のような姿勢をとる行動です。魚類の国際的なデータベースであるFishBaseのブロンズコリドラス(青コリ・赤コリの仲間)の項では、オスがTの横棒になり、メスがそれに直角に並ぶ形になると説明されています(出典:FishBase「Osteogaster aenea, Bronze corydoras」)。
同じ項によると、オスはひげでメスの頭や背中を刺激し、メスは約20個の黄色っぽい卵を腹びれで抱えて、水中の石や植物に付けていきます。この流れが2〜3時間続き、合計で100〜200個ほどになるとのこと。さらに、同じ季節に何回も産卵できるとされています。気づいたときにはガラス面にずらりと卵が並んでいた、というのは、この行動が何時間もくり返されるからなんですね。
おもしろいのが受精のしかたです。コリドラスの仲間は「精子飲み」と呼ばれる珍しい方法で受精することが、1995年に報告されています。メスがオスのおなか側にある生殖孔に口を付けて精液を飲み込み、精子はメスの消化管を通り抜けて体の外へ出て、腹びれの間にためておいた卵に届いて受精する、という流れです。2025年に発表された明治大学などの研究チームの論文でも、この仕組みが説明されています。
研究チームの論文では、メスが精液を飲み込むのは求愛の最中だと説明されています。T字の姿勢を含む一連の行動の中で、こうした珍しい受精が進んでいるわけですね。また、米国と英国の大学の研究室がまとめたコリドラスの飼育手順の論文では、この受精のしかたの結果として、1回に産み付けられた卵のかたまりは同じ父親から生まれたきょうだいになると書かれています。オスが複数いる水槽でも、ひとかたまりの卵は1匹のオスの子どもということですね。
産卵のきっかけについても触れておきます。野生のコリドラスは雨季に産卵するとされていて、FishBaseでも、雨季の始まりに水の性質が変わるときに産卵が起こると説明されています。先ほどの研究室の論文では、研究室の条件で給餌を1日2回、水換えを週2回に増やすと産卵と結びつくと書かれており、オス2匹にメス1匹の割合が理想と言われていることも紹介されています。
さらに、インド・コルカタで行われた研究では、11〜3月の水温14〜22℃の時期に繁殖が続き、産卵基質(卵を産み付ける場所)を冷やすと産卵が強く促されたと報告されています。これは現地の水槽やコンクリート槽での記録で、飼育の適温ではありません。研究室の論文の飼育水温は23〜27℃、FishBaseのブロンズコリドラスの適水温は25〜28℃です。また研究室の論文では、雨を思わせる純水に近い水で水換えをすると産卵が増えたという愛好家の報告も紹介されています。ただし、水温差の大きい水を入れると魚に負担がかかるので、水換えの水は水温をそろえるのが基本です。急に卵を見つけたときは、直前に水換えをしていなかったかを思い返してみると、次の産卵を予想するヒントになるかもしれません。
卵の大きさと色、産み付けられる場所
コリドラスの卵の大きさは、FishBaseのブロンズコリドラスの記述では約1mmで、色は黄色っぽいとされています。1つずつは本当に小さく、目を近づけないと水槽のガラスに付いた汚れや泡と見間違えてしまいそうなほど。ただ、何十個もまとまって付いていることが多いので、並んでいる様子で気づく方が多いと思います。
大きな特徴が、粘着力の強さです。ベルギーのゲント大学がブロンズコリドラスの卵の表面を電子顕微鏡で調べた研究では、論文の要旨によると、卵の表面が小さな突起で覆われていて、硬骨魚の卵としては珍しい構造だとわかりました。卵はとても粘着性が高く、研究者はこの性質が濁った水にすむことと関係しているかもしれない、と推測しています。ガラス面に付いた卵が簡単には落ちないのは、この粘着性が関係していそうです。
産み付けられる場所は、水槽のガラス面、水草の葉、石や流木などさまざまです。FishBaseでは「石や植物」、西インド諸島大学の動物ガイドでは「水草など」に卵を付けると書かれています。家庭の水槽では、ガラス面に点々と並んでいるのを見つけることがよくあります。目立つガラス面だけでなく、水草の葉の裏側や流木のくぼみなどにも付いていることがあるので、隔離するつもりなら水槽全体をひととおり見回しておくと取りこぼしが減りますよ。
少しややこしいのが色の見え方です。インドネシアのボゴール農科大学がパンダコリドラスの卵の発生を観察した報告(英文要旨)では、受精直後の卵は濃い茶色っぽく、胚ができてくると透明になっていくと書かれています。一方、西インド諸島大学の動物ガイド(学生が執筆したもの)では、ブロンズコリドラスの卵は孵化が近づくにつれて色がだんだん濃くなり、孵化前にはかなり濃い茶色になると説明されています。
同じ「コリドラスの卵」でも、色の変化がほぼ逆向きに書かれているわけです。種類の違いもあれば、観察した条件の違いもあるはずで、どちらが正しいというより、見え方には幅があると考えたほうがよさそうです。そのため、色だけで良し悪しを判断しないのがコツ。判断の軸にしやすいのは、次の見出しで紹介する「白く濁っているかどうか」です。
有精卵と無精卵の見分け方

コリドラスの卵を見つけた人がいちばん気になるのが、有精卵と無精卵の見分け方ではないでしょうか。ここで頼りになるのが、米国メリーランド大学と英国ケンブリッジ大学の研究室で2015年から使われている飼育手順をまとめた論文です。対象はブロンズコリドラスなど研究室で飼われているコリドラス数種で、家庭の水槽ではなく研究室の条件での記録ですが、卵の見分け方がはっきり書かれています。
この論文によると、受精卵は「半透明」で、無精卵は通常24時間以内に「不透明な乳白色」になるため、はっきり見分けられるとのこと。また、卵の20〜50%ほどは無精卵か正常に育たない卵で、その割合にはばらつきがあると書かれています。放っておくと傷んだ卵に厚いカビが生え、そのカビが健康な卵へ広がっていくため、見分けられる無精卵はできるだけ取り除くよう勧められています(出典:Chiang ほか 2024「Comprehensive Husbandry Protocol for Corydoras Catfish and Many Other Amazonian Species」)。
つまり、白く濁った卵が混じっているのは珍しいことではありません。いくつか白くなったからといって、全部だめになったわけではないので安心してくださいね。見分けるタイミングは、産卵から1日ほどたったころ。白い卵と半透明の卵を並べて見比べると、違いがぐっとわかりやすくなります。卵は小さいので、ルーペを使ったり、スマホのカメラで撮って拡大したりするのもひとつの方法です。
見分けのポイントを表にまとめました。
| 項目 | 有精卵 | 無精卵 |
|---|---|---|
| 見た目 | 半透明 | 不透明な乳白色に濁る |
| 時間がたつと | 中に丸まった稚魚の影が見えることもある | 綿のようなカビが出てくる |
| やること | そのまま残して見守る | スポイトやピンセットで取り除く |
表の「中に丸まった稚魚の影」は、同じ論文で、孵化前の稚魚はどれも卵の中で丸まっていると説明されていることにもとづいています。とはいえ、見え方には個体差がありますし、小さな卵の中まで見るのは慣れないと難しいもの。まずは「濁っていない卵は残す」「乳白色の卵は取り除く」と大まかに分けるだけで十分かなと思います。
よくある失敗例が、白い卵を見つけても「もう少し様子を見よう」と数日そのままにしてしまうパターンです。無精卵は待っても孵化しないうえ、カビの足場になってしまいます。迷う卵があれば1日だけ待って見比べ、はっきり白くなったものから取り除いていくと判断しやすいですよ。
白くなった卵からカビが広がるという悩みは、メダカの卵でもよく聞かれます。めだかの卵にカビが生えたときの白い卵の正体と予防策もまとめているので、ほかの魚の卵ではどう考えるのかを比べてみたい方は参考にしてみてください。
孵化までの日数と1日目から3日目の経過

孵化までの日数は、資料によって少しずつ違います。今回調べた資料に書かれていた記録を表にまとめました。種類や条件、資料の性格がそれぞれ違うので、右の列もあわせて見てください。
| 種類 | 記録された日数 | 条件・資料 |
|---|---|---|
| ブロンズコリドラス | 孵化まで5日(その3日後に卵黄を吸収) | 水温22℃・FishBase |
| ブロンズコリドラス | 約3〜4日 | 西インド諸島大学の動物ガイド(学生執筆) |
| ブロンズコリドラス(ベネズエラ系) | 収容後3日目に孵化(孵化率70〜75%程度) | インドネシアの養殖業者での報告・水温の記載なし |
| パンダコリドラス | 受精から約51時間 | インドネシアの大学の観察・要旨に水温の記載なし |
表を見ると、おおむね2〜5日ほどで孵化していることがわかります。パンダコリドラスの約51時間はおよそ2日、22℃で5日というのは表の中でいちばん長い記録です。水温が低いと孵化までの日数が延びやすいのは、魚の卵に一般的に見られる傾向なので、水温が低めの水槽では5日前後かかることもあると考えておくとよいでしょう。逆に「3日たったのに孵化しない=失敗」と決めつけるのは早すぎます。
ここで紹介している日数・水温・孵化率などの数値は、あくまで一般的な目安です。それぞれ対象の種類や飼育の条件が違う記録なので、あなたの水槽で同じ日数になるとは限りません。日数だけで判断せず、卵の色や濁り具合とあわせて見てください。
では、産卵してから孵化するまで、卵はどんなふうに変わっていくのでしょうか。毎日の変化の目安を並べると、次のようになります。種類や個体によってずれるので、あくまで目安として見てください。
- 産卵当日〜1日目:無精卵が白く濁り始め、半透明の受精卵との差が出てくる。白い卵を取り除くのはこの日
- 2日目ごろ:受精卵の中で稚魚の体ができてくる。パンダコリドラスの観察では、器官ができるまでに46時間かかったと報告されている
- 3日目ごろ以降:卵の色が濃く見えたり、中で丸まった稚魚の影が見えたりする。早いものから順に孵化していく
1日目は、研究室の論文で無精卵が24時間以内に乳白色になるとされていることから、選別の日と考えるとわかりやすいです。2日目以降は、残した半透明の卵をそっと見守る期間。毎日のぞいて、新しく白くなった卵やカビが出ていないかだけを確かめれば十分です。3日目ごろの色の変化は、先ほど紹介したように資料によって書き方が違うので、「濃くなったから異常」「透明になったから異常」と考える必要はありません。
孵化した直後の稚魚は泳ぎ回らず、大きな卵黄を下にして底でじっとしています。これはパンダコリドラスの観察でも記録されている姿で、異常ではありません。ほとんど動かないので「死んでしまったのでは」と心配になりがちですが、この時期は卵黄の栄養で過ごしているので、しばらくはそっと見守ってあげましょう。
白い卵やカビが出る原因
卵が白くなる正体は、主に無精卵です。研究室の論文でも、無精卵は乳白色に濁ると説明されていました。受精しても途中で育たなくなった卵も、傷むとカビが生えると書かれています。そこに水カビが生えると、綿のような白い糸がふわふわと広がり、周りの健康な卵まで包み込んでしまいます。白い卵そのものより、そこから広がるカビのほうが厄介だと考えてください。
水カビがどんな見た目なのかは、グッピーの体に白い綿が付く水カビ病の原因と対処を見るとイメージしやすいと思います。魚の体に付くか卵に付くかの違いはありますが、白い綿のような見た目をつかむ参考になります。
では、なぜ白い卵が出てしまうのでしょうか。考えられる原因をいくつか挙げてみます。
ひとつめは、そもそも受精しなかったケースです。オスの数が少なかったり、オスがまだ十分に成熟していなかったりすると、受精しない卵が増えることがあります。インド・コルカタの研究では、繁殖に加わるまでの成熟に、メスは平均約1年、オスは平均約2年かかったと報告されています。オスのほうが時間がかかるので、迎えてまだ日が浅い若いオスばかりだと、準備が整っていないこともあるかもしれません。
ふたつめは、卵の付き方です。卵どうしがくっついてかたまりになっていると、中心の卵には水が通りにくく、傷みやすくなることもあります。ばらばらに産み付けられた卵より、重なり合った卵のほうが白くなっていないか、注意して見ておくとよいでしょう。
みっつめは水の汚れです。食べ残しやフンがたまった水ではカビが勢いづきやすい、と一般的に言われています。とくに隔離した小さな容器は水の量が少ないぶん、汚れの影響が早く出がちです。卵だけを入れているつもりでも、一緒に移した水草のかけらが傷んで汚れの原因になることもあります。
大事なのは、研究室のように管理された環境でも卵の20〜50%ほどは育たなかったという点です。白い卵をゼロにするのは難しいので、出さないようにするより「早く見つけて取り除く」ことを基本にしましょう。1日1回、卵の様子をチェックする習慣をつけるだけでも、カビが周りの卵へ広がる前に手を打ちやすくなります。
コリドラスの卵を孵化させる方法と稚魚の育て方
ここからは、実際にコリドラスの卵を孵化させたいときの方法です。放置するか隔離するかの判断から、卵の取り方、隔離容器の準備、カビ対策、孵化しないときの見直し、そして稚魚の餌と水換えまで、作業の流れに沿って紹介します。
卵を見つけてから最初の1日にやることは、意外と多くありません。残すか移すかを決めて、移すなら容器を用意し、白くなった卵を取り除く。この3つができれば、あとは毎日の観察と水の管理が中心になります。ただ、容器が小さいほど水が汚れやすく、ちょっとした食べ残しや傷んだ卵がきっかけで全体が崩れることもあります。どこでつまずきやすいのかも、よくある失敗例とあわせて見ていきましょう。
卵を放置すると食べられやすい理由
結論から言うと、コリドラスの卵を親の水槽に放置すると、食べられやすくなります。研究室の論文では、大型の種類について、親と同じ水槽に卵を残した場合、育った稚魚は「めったに得られなかった」と書かれています。論文ではその理由を、親が卵や孵化した直後の稚魚を食べたためと考えられる、と推定しています。
コリドラスは底をつつきながら餌を探す魚なので、底でじっとしている孵化直後の稚魚は、餌を探す親の口に入りやすいのかもしれません。また、混泳している魚が卵や稚魚を食べてしまうこともよくあります。小型の魚でも、口に入る大きさの動くものは餌と見なしがちです。ガラス面の卵が日に日に減っていく、というのはよくある話ですね。
ただし、例外もあります。同じ論文では、小型のピグミーコリドラス(C. pygmaeus)とハスタトゥス(C. hastatus)は自分の卵や稚魚を食べにくいようで、研究室では卵を親の水槽に残すことが多かったそうです。この2種では、特別な手当てをしなくても毎回少数の稚魚が大人まで育ったと書かれています。ただし、隔離した場合ほど多くは育たない、とも添えられています。
なお、同じ論文によると、この2種は稚魚の育成が大型の種類よりずっと難しいとのこと。親の水槽に残すことが多いのは、親が食べにくいという理由に加えて、そうした事情もあるようです。ピグミーを飼っていて卵を見つけた場合は、親の水槽のまま様子を見るという選択も十分ありえます。
まとめると、考え方は2通りです。数匹でもいいから育てたい、できればたくさん育てたいと思うなら、卵を別の容器へ隔離するのが基本。一方、「自然に任せて、数匹残ればうれしい」という考え方なら、放置もひとつの選択肢になります。ピグミーやハスタトゥスのような例外を除けば、隔離したほうが稚魚が残りやすいと考えてよさそうです。
どうするか迷ったら、卵の一部だけを隔離容器に移し、残りは親の水槽に置いておくのもアリかなと思います。隔離の手間がどのくらいかを試しつつ、親の水槽に残した卵がどうなるかも見られるので、次に卵を見つけたときの判断材料になりますよ。
卵の取り方と隔離容器の作り方
隔離すると決めたら、まずは卵を傷つけずに取り外すところからです。コリドラスの卵は、ゲント大学の研究で非常に粘着性が高いとされているとおり、卵はしっかり付いています。無理に引きはがすとつぶれるおそれがあるので、力をかけすぎないようにしましょう。ここで紹介するのは、愛好家の間で一般的に行われている取り方です。
- 水槽の水を入れたカップや小さな容器を用意する
- 指の腹やプラスチックのカードの縁を卵の横に当て、ガラス面からそっと転がすように外す
- 外れた卵は水の中でカップに受け、空気に長く出さないようにする
- 水草に付いている卵は、葉ごと切って移してもよい
コツは、上から押しつけるのではなく、横から少しずつ力をかけること。卵がころんと外れたら、水中でカップを下に添えて受け止めます。水面の上まで持ち上げて運ぶと、乾いたり落としたりしやすいので注意してください。カードを使う場合は、洗剤の付いていない清潔なものを選びましょう。水草ごと移す方法は手軽ですが、傷んだ葉は水を汚す原因になるので、葉の状態も見ておくと安心です。
次は容器です。お手本になるのが、研究室の論文に書かれている育成容器。研究室では、約19Lの透明なプラスチック容器に、すでにバクテリアの付いた小型のスポンジフィルターを1つ入れ、掃除しやすいよう底砂は敷かずに使っています。稚魚は体長1cm以上になるまで、この容器で育てるそうです。
ここでのポイントは、スポンジフィルターを入れる前に洗わないこと。表面に付いている微生物を稚魚がつまんで食べるからだと説明されています。本水槽ですでに使っているスポンジフィルターがあれば、それを移すと準備が早く済みますが、本水槽のろ過能力が落ちることがあります。本水槽に病気の兆候があるときは、病原体を持ち込むおそれがあるので避けてください。底砂を敷かないのも、白い卵や食べ残しを見つけやすく、スポイトで吸い取りやすくするための工夫です。
とはいえ、19Lの容器をすぐに用意するのは大変、という方も多いと思います。家庭で始めやすいのは、本水槽に浮かべるタイプの産卵箱や隔離ケースです。本水槽の水がそのまま使えるので、水温や水質を合わせる手間がかかりにくく、まず試してみるにはちょうどいい方法かなと思います。ケースの種類や選び方は、グッピー用の産卵箱や隔離ケースの選び方と100均での自作手順にまとめているので、コリドラスの卵に使う場合も参考になりますよ。
隔離容器のポイントは、底砂を敷かずに掃除しやすくすること、洗っていないスポンジフィルターで微生物ごと移すこと、そして水温を本水槽とそろえることの3つです。浮かべるタイプの隔離ケースなら、最後の点はほぼ自然に満たせます。
小さい容器ほど水が汚れやすいので、エアレーションを弱めに当てて水を少し動かしておくと安心です。強すぎる水流は卵や稚魚を転がしてしまうので、泡がぽこぽこ出る程度で十分でしょう。別の容器に新しい水を用意するときは、カルキ抜きをして水温を本水槽にそろえてください。研究室の論文でも、塩素は有毒だとされています。必要な量や待ち時間の考え方はコリドラスでも同じなので、メダカ向けに書いたカルキ抜きの必要な量と待ち時間の目安で確認しておくと迷わずに済みます。
本水槽に浮かべて使う産卵箱や隔離ケースは、水温を本水槽とそろえやすいのが利点です。容器の中の水を動かすなら、エアーポンプにつなぐ小型のスポンジフィルターが候補になります。サイズが水槽や容器に合うか、価格や在庫は、購入前に各ショップでご確認ください。
カビを防ぐ管理とメチレンブルーの注意点
カビ対策の基本は、白くなった卵をこまめに取り除くことです。研究室の論文でも、見分けられる無精卵はできるだけ取り除くよう書かれています。スポイトで吸い取るか、ピンセットでそっとつまんで、1日1回は様子を見ましょう。あわせて、容器の水を清潔に保ち、エアレーションで水を少し動かしておくと、カビが付きにくい環境に近づきます。
取り除くときは、白い卵だけをピンポイントで狙うのがコツです。かたまりの中にある白い卵は、周りの半透明の卵ごと吸い込みやすいので、スポイトの先を近づけて少しずつ吸うか、ピンセットで白い卵だけをつまみます。もしカビの糸が隣の卵に絡んでいたら、その卵も様子を見て、白く濁っているなら一緒に取り除いたほうが安心です。
カビ予防といえば、メチレンブルーを思い浮かべる方もいるかもしれません。海外の繁殖家の情報では、卵のカビ予防にメチレンブルーを少量入れるやり方が紹介されることがあります。ただ、ここは注意が必要なところです。
国内で売られている動物用医薬品の一例として、キョーリンの「観賞魚用メチレンブルー液」の使用説明書を見ると、効能・効果は観賞魚の白点病、尾ぐされ症状、水カビ病の治療とされていて、「定められた目的にのみ使用すること」と書かれています。卵への使い方はこの説明書には書かれていません。つまり、卵に使うのは説明書に書かれた使い方ではない、ということです。卵に対する効果や安全性は、この説明書からは確認できません。
同じ説明書には、薬浴中にろ過器を使うと効果が下がるのでエアーを使うこと、水草は枯れるおそれがあるので薬液槽に入れないことも書かれています。本水槽に直接入れると水草が枯れるおそれがあるうえ、ろ過バクテリアへの影響も心配されることがあります。卵が水草に付いたままの場合や、本水槽ごと薬を入れようと考えている場合は、とくに慎重に考えたいところです。
メチレンブルーを卵に使うかどうかは、まず製品の説明書を読み、購入した販売店に相談してから決めてください。正確な情報は公式サイトや製品の説明書をご確認ください。私としては、薬に頼る前に、無精卵をこまめに取り除く管理を優先するのがよいと考えています。
薬の説明書のどこを読めばいいのかは、グッピーの白点病の記事で紹介しているメチレンブルーの表示の確かめ方が役に立つと思います。量の数字だけを拾うのではなく、効能や使ってはいけない対象、使うときの注意までひととおり目を通しておくと、思わぬトラブルを避けやすくなります。
孵化しないときに見直すこと

何日たっても卵に変化がない、気づいたら全部白くなっていた……そんなときは、次の順番で見直してみてください。
- 卵が白く濁っていないか(無精卵の可能性)
- カビが広がっていないか
- 水温が低すぎないか
- 容器の水が汚れていないか、カルキ抜きを忘れていないか
- まだ日数が足りないだけではないか
まず確認したいのは、卵の色です。産卵から1日ほどで乳白色に濁った卵は、研究室の論文の説明に照らすと無精卵の可能性が高く、待っていても孵化は期待しにくいでしょう。白い卵の周りに綿のようなカビが出ていれば、近くの半透明の卵にも広がりかけているかもしれません。白い卵とカビの部分を取り除き、残った半透明の卵だけを見守ります。
次に水温です。FishBaseのブロンズコリドラスの記録では、22℃で孵化まで5日かかっています。水温が低めだと日数が延びやすいので、隔離容器の水温が本水槽より下がっていないか、水温計で確かめてみてください。容器を本水槽の外に置いている場合は、部屋の温度の影響を受けやすくなります。
水の状態も見直しポイントです。新しく用意した水のカルキ抜きを忘れていないか、小さな容器で水が汚れていないかを確認しましょう。そして見落としがちなのが、単にまだ日数が足りないだけ、というパターン。先ほどの表のとおり、記録された日数には2〜5日ほどの幅があります。半透明のままの卵があるなら、もう少し待ってみる価値はありますよ。
繁殖を続けたいなら、親の側も見直してみましょう。オスとメスの割合はオス2:メス1が理想と言われ、インドネシアの養殖業者の報告でもこの比率で産卵させています。また、コルカタの研究では、オスが繁殖に加わるまでに平均約2年かかったと報告されているので、若い個体ばかりだと受精しにくいこともあります。同じ研究では、好条件での産卵の間隔は平均10.4日だったと報告されているので、今回うまくいかなくても、次のチャンスは意外と早くやってくるかもしれません。
親魚の元気がない、卵の周りだけでなく親の体にも白いものが付いている、といった場合は、卵より先に親の体調を確かめたほうがよいこともあります。判断に迷うときは、購入したショップや魚を診られる動物病院に相談してみてください。最終的な判断は専門家にご相談ください。
うまくいかなかったときこそ、産卵に気づいた日、水温、白くなった卵の数、孵化した日をメモに残しておくのがおすすめです。何回か記録がたまると、あなたの水槽ではどのくらいの日数で孵化するのか、どの条件で白い卵が増えるのかが見えてきて、次の見直しがぐっと楽になりますよ。
孵化後の稚魚の餌と水換え

無事に孵化したら、次は稚魚の育て方です。最初に覚えておきたいのは、孵化してすぐは餌を与えなくてよいということ。研究室の論文では、孵化後1〜2日は卵黄を吸収するので餌を与えないとされています。早く大きくしたくて餌を入れたくなりますが、食べられない餌は水を汚すだけなので、ここはぐっとこらえましょう。
ただ、この期間も資料によって幅があります。西インド諸島大学の動物ガイドでは孵化後2〜3日は卵黄の栄養で過ごすとされ、FishBaseでは22℃で孵化の3日後に卵黄を吸収し終えると書かれています。パンダコリドラスの観察では、生後5日で卵黄がなくなったと報告されています。日数だけで決めるよりも、おなかの卵黄が小さくなり、稚魚が底を動き回り始めたら餌の合図、と様子を見て判断するのがよいと思います。
餌については、研究室では、すりつぶした顆粒の人工餌、解凍した冷凍ベビーブラインシュリンプ、生きたマイクロワーム、ジェルフードを日替わりで1日2回与えています。何種類も用意するのが難しければ、手に入りやすいものから始めて大丈夫です。冷凍ではなく、ブラインシュリンプを自分で孵化させて与える方法もあり、ベタの稚魚向けに書いたブラインシュリンプの孵化と塩抜きの手順は魚の種類を問わず同じなので、そのまま参考にできます。
管理の面では、食べ残しを毎日取り除き、1日おきに50%の水換えをするのが研究室のやり方です。大型の種類では、この方法で生後1〜2か月を乗り切れると書かれています。ただし、これは研究室の条件での話。家庭の容器では、水の量や汚れ具合を見ながら、水換えの量と回数を加減してください。水換えの水は、カルキ抜きをして水温をそろえておくのを忘れずに。
稚魚は体長1cmを超えるまで別の容器で育てるのが、研究室の手順です。また、少数の稚魚に背骨の曲がる奇形が出ることがあるとも書かれています。孵化前はどの稚魚も卵の中で丸まっていて、孵化後すぐにまっすぐにならない個体がこれにあたるそうです。すべての稚魚が同じように育つわけではないので、もし見つけても自分の管理を責めすぎないでくださいね。
小さい容器は水の量が少ないぶん、食べ残しが少しあるだけで水質が崩れやすくなります。稚魚の動きが鈍い、餌への反応が悪いといったときは、水の汚れを疑ってみましょう。水槽の亜硝酸が下がらないときの原因と水換えの目安を読んでおくと、水質が崩れたときにも慌てずに対処しやすくなります。
ブラインシュリンプを自分で孵化させて与えるなら、乾燥した卵(エッグ)を用意しておくと、稚魚の餌の時期に合わせて使えます。内容量や価格は、購入前に各ショップでご確認ください。
コリドラスの卵についてよくある質問
卵を移さずに、親のほうを別の水槽へ移してもいいですか?
考え方としてはどちらでもかまいません。卵が広い範囲に付いていて取り外しにくいときは、親を移すほうが楽な場合もあります。ただし、混泳魚も一緒に移す必要があり、本水槽ごと卵の管理に使うことになります。卵を小さな容器へ移すほうが、管理する水の量が少なくて済みます。
冬でも産卵しますか?
研究室の論文では、特別な誘発をしなくても、オスとメスを一緒に飼う水槽で年間を通して散発的に産卵したと書かれています。インド・コルカタの研究では、水温14〜22℃の時期に繁殖が続いたと報告されています。冬だから産まない、とは言い切れないので、季節を問わず卵がないか見ておくと安心です。
稚魚はいつごろ親の水槽に戻せますか?
研究室の手順では、体長1cm以上になるまで別の容器で育てています(この1cmは育成容器で育てる目安で、戻す時期を示した数字ではありません)。戻す時期は、親や混泳魚の口に入らない大きさまで育ってからにすると安心です。1cmでは混泳魚によってはまだ食べられることがあるので、迷うときは遅めにしてください。戻すときは、急な水温や水質の変化を避けるため、本水槽の水に少しずつ慣らしてから移すとよいでしょう。
コリドラスの卵を無事に孵化させるためのまとめ
最後に、この記事のポイントをまとめます。
- コリドラスの卵は約1mmで粘着力が強く、ガラス面や水草、石などに産み付けられる
- 受精卵は半透明、無精卵は1日ほどで乳白色に濁るので、白い卵は早めに取り除く
- 孵化までの日数は、今回調べた資料ではおおむね2〜5日で、水温が低いと延びやすい
- 親の水槽に放置すると食べられやすいので、育てたいなら隔離が基本(ピグミーなどは例外的に親が食べにくい)
- 孵化後1〜2日は卵黄で育つので餌は不要で、卵黄が小さくなって動き始めたら与え始める
コリドラスの卵を見つけたら、まずは放置するか隔離するかを決め、1日たったら白い卵を取り除く。この2つを押さえるだけでも、孵化までの見通しはかなり立てやすくなります。白い卵が混じるのは珍しいことではないので、半透明の卵を信じて数日見守ってみてください。小さな稚魚が底を動き回り始める日を、楽しみに待ちましょう。


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