ヒメダカと楊貴妃メダカの違いはどこ?色・生まれ・見分け方をやさしく整理
ホームセンターのメダカ売り場で、オレンジ色のメダカが2つの水槽に分かれて売られていて「ヒメダカと楊貴妃って、何が違うの?」と立ち止まったことはありませんか。どちらも黄色からオレンジ、赤っぽい体色なので、並んでいないと区別がつきにくいですよね。
ヒメダカと楊貴妃メダカの違いは、ひとことで言うと赤みの濃さと、品種が生まれた経緯です。ヒメダカは江戸時代から飼われてきた体色の変わり種で、楊貴妃は2004年に作り出された比較的新しい改良品種。見た目の違いは、真上から見たときの朱赤の濃さにいちばんよく出ます。
この記事では、ヒメダカと楊貴妃メダカの違いを比較表で整理したうえで、体色の仕組み、楊貴妃の作出の流れ、手元のメダカがどちらかを見分ける手順まで順番にまとめました。容器の色や室内飼育で赤みが変わる話、ヒメダカと楊貴妃の交配や混泳で起きること、目的別の選び方も扱っています。値段の違いや楊貴妃の丈夫さについては、それぞれ詳しい記事へのリンクを置いておきますね。
- ヒメダカと楊貴妃メダカの色・歴史・扱われ方の違い
- 真上から見る、容器を変えるなど手元で見分ける手順
- 混泳・交配の注意と、どちらも野外に放さない理由
- 目的に合わせてどちらを選ぶかの考え方
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| 基本データ | ヒメダカ | 楊貴妃メダカ |
|---|---|---|
| 学名 | どちらも Oryzias latipes(メダカの改良品種で、種としては同じメダカ) | |
| 体色をつくる細胞 | メダカは黒色素胞・黄色素胞・白色素胞・虹色素胞の4種類を持つ(2004年の総説では黒・黄・白の3種類が挙げられている) | |
| 体色を決める遺伝の型 | 黒色素胞をほとんど持たない劣性の型(bb) | 黄金メダカ→琥珀メダカ→楊貴妃と変化して作られた系統 |
| 野生のメダカの扱い | 環境省レッドリストで絶滅危惧II類(2012年掲載の環境省の資料)=どちらも野外に放さない | |
※学名・遺伝の型は筑波医療科学の総説「メダカの色素胞と体色変化」(2004年)、色素胞の4種類は基礎生物学研究所の要覧(2020年)、楊貴妃の系統はBE-PALの連載「今週のメダカ」、絶滅危惧II類は環境省の生息域外保全の取り組み事例による。
ヒメダカと楊貴妃の違いは色の濃さと生まれ方
ヒメダカと楊貴妃の違いを先にまとめると、ちがいは大きく3つあります。1つ目は体色で、楊貴妃のほうが朱赤が濃く、とくに真上から見たときの鮮やかさがはっきり違います。2つ目は生まれ方で、ヒメダカは江戸時代の図鑑にも描かれている古い体色の変わり種、楊貴妃は2004年に黄金メダカの流れから作り出された改良品種です。3つ目は扱われ方で、ヒメダカは手ごろな値段で大量に流通し、楊貴妃は観賞用の改良メダカとして色の濃さで選別されています。
一方で、どちらも種としては同じメダカなので、飼い方の基本はほとんど変わりません。楊貴妃には特別な飼育が必要だと身構えるより、色を楽しみたいか、気軽に飼いたいかで選ぶほうが現実的かなと思います。この章では、比較表で全体像をつかんでから、体色の違い、ヒメダカの成り立ち、楊貴妃の作出、飼い方と値段の違いの順に見ていきますね。
ヒメダカと楊貴妃メダカの違いを一覧で比較

まずは、ヒメダカと楊貴妃メダカの違いを1つの表に並べます。結論から言うと、表の中で見分けに使えるのは「真上から見た色」と「購入時の品種表示」の2つで、ほかの行は違いの背景を知るための情報です。
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| 比べる点 | ヒメダカ | 楊貴妃メダカ |
|---|---|---|
| 体色 | 黄色からオレンジ(緋色) | 朱赤。ヒメダカより赤みが強い |
| 真上から見た色 | 楊貴妃と比べると赤みが弱い | ヒメダカとは異なり鮮やかな朱赤 |
| 歴史 | 江戸時代の魚類図鑑「梅園魚譜」に緋色のヒメダカの図がある | 2004年に広島県廿日市市の「めだかの館」で作出・命名 |
| 系統の関係 | ヒメダカとの交配では楊貴妃らしさがすぐに失われるため、別系統と考えられている | |
| 値段の傾向 | 手ごろな部類 | ベーシックなものは数百円から(匹数の単位は資料に記載なし)。楊貴妃をもとにした品種ではペアで数万円の例も |
| 派生した表現 | 黒い斑が入る斑入りヒメダカ | 透明鱗ひかり・光体形の東天光・楊貴妃ダルマなど |
| 楊貴妃系とされる系統 | — | 楊30(めだかの館の交配による一系統)・紅帝(めだかの館の血統は混ざっていない朱赤メダカの系統) |
| 飼い方の基本 | どちらも同じメダカなので、水温・餌・水質の基本は共通 | |
表の「真上から見た色」と「系統の関係」は、改良メダカを紹介するアウトドア誌BE-PALの連載の記述をもとにしています。同じ連載では、楊貴妃は黄金メダカから琥珀メダカを経て作られたもので、琥珀メダカを野生体色のメダカとすると、楊貴妃はそれに対するヒメダカのような関係にある、と説明されています。つまり、楊貴妃はヒメダカの色を濃くしただけのものではなく、別の流れの中でヒメダカと似た立ち位置に生まれた品種、というイメージです。
値段の行は、All Aboutの改良メダカの紹介記事にある「普及種のため、ベーシックなものでは数百円から販売されていますが、品種によってはペアで数万円で販売されるものも珍しくありません」という記述にそろえました。この「数百円」は1匹か1組かが書かれておらず、「ペアで数万円」は楊貴妃をもとに作られた品種の話として読むのが自然です。ヒメダカの値段がなぜ手ごろなのか、1匹あたりの相場がどれくらいかは、ヒメダカの値段の相場と安い理由をまとめた記事で詳しく整理しています。値段は時期・地域・お店で大きく変わるので、あくまで一般的な目安として見てくださいね。
この表から言えるのは、見た目で迷ったら「上から見る」、それでも迷ったら「お店の表示や血統を確かめる」の順で考えればよい、ということです。次の項目から、その理由を1つずつ見ていきます。
体色の違いは真上から見た朱赤の濃さ

ヒメダカと楊貴妃の見た目の違いは、真上から見たときの朱赤の濃さに最もよく出ます。資料も、とくに上から見た色合いを違いのポイントに挙げています。
BE-PALの連載では、楊貴妃メダカについて「体色の朱赤色が濃く、特に上から見た色合いはヒメダカとは異なり鮮やかで美しい」と紹介されています。また、All Aboutの改良メダカを写真つきで紹介した記事でも、楊貴妃は「それまで知られていたヒメダカよりも更に赤みが強く、詳しくない方がみれば金魚と間違えてしまうほど鮮やかな色彩」と書かれています。どちらの資料も、違いの軸を赤みの強さに置いている点が共通しています。
一方、ヒメダカの体色は資料によって「緋色」「黄色」と表現が揺れます。近畿大学の研究発表では、放流されたヒメダカについて「体色が黄色く、野生のメダカより目立ってしまう」と説明されていますし、岡山大学の資料では江戸時代の図鑑に描かれた「緋色のヒメダカ」と紹介されています。資料によって表現が分かれているのは、個体や飼育環境によって見え方に幅があるためかもしれません。
上から見ると差が出やすい理由
メダカの体色は、皮膚にある色素胞という細胞が作っています。基礎生物学研究所の要覧(2020年)では、メダカは黒色素胞に加えて黄色素胞・白色素胞・虹色素胞の4種類を持つと説明されています(2004年の筑波医療科学の総説では、黒・黄・白の3種類が挙げられています)。筑波医療科学の総説によると、黄色素胞はカロテノイドとプテリジンという色素を持っています。
なぜ上から見ると差が出やすいのかは、資料には説明がありません。上から見ると背中の色が面で目に入るので、濃さの差を比べやすいのだろうと考えられます。メダカを観賞するときの「上見」と「横見」の違いについては、メダカの上見と横見の違いと容器の選び方も参考になります。
ただし、楊貴妃の中でも色の濃さには個体差・系統差があります。色の薄い楊貴妃と、赤みの強いヒメダカを並べると、上から見ても迷うことはあり得ます。色だけで100%言い当てられるわけではない、という前提は持っておいたほうが安心ですよ。
ヒメダカは江戸時代からいる黒色素の少ないメダカ
ヒメダカは、野生のメダカが持つ黒い色素の細胞をほとんど持たないために、黄色からオレンジに見えるメダカです。そして、楊貴妃よりずっと古く、江戸時代から人の手で飼われてきた歴史があります。
筑波医療科学の総説では、メダカの黒色素胞の発現は常染色体上の1つの遺伝子(B・b)に支配されていて、典型的なメンデル型の遺伝をすると説明されています。黒色素胞を持つ野生型のクロメダカ(BB、Bb)が優性で、これをほとんど持たないものが劣性のヒメダカ(bb)という関係です。新聞社が公開している理科の学習教材でも、黒色の体のメダカと赤色の体のメダカの交配で、子はすべて黒色、孫は黒色と赤色が理論上3対1の割合で出る、という問題が使われています。ヒメダカが遺伝の話題で身近なのも納得ですね。
ヒメダカとクロメダカを掛け合わせたときの計算例
この遺伝の型を、飼育の場面に当てはめて計算してみます。黒い野生型(BB)とヒメダカ(bb)を掛け合わせると、子はすべて Bb になり、見た目は黒くなります。その子どうしを掛け合わせると、孫の組み合わせは BB・Bb・bb が理論上1対2対1。黒く見えるのは BB と Bb なので、黒の割合は(1+2)÷(1+2+1)×100=75%、ヒメダカ色に戻るのは残りの25%です。
たとえば孫が40匹育ったとすると、理論上は黒が30匹前後、ヒメダカ色が10匹前後という計算になります。実際の数は偶然でずれるので、あくまで一般的な目安です。逆に言えば、黒っぽい子が多く出たからといって、親のヒメダカに黒い血が入っていたとすぐに決めつけられるわけではありません。なお、この計算はヒメダカと黒い野生型の組み合わせの話で、楊貴妃との交配の結果を示すものではない点に注意してくださいね。
同じ総説には、ヒメダカをよく見ると、わずかに黒色素胞を持って斑入りになっているものがいる、という記述もあります。売り場のヒメダカの中に黒い点が散った個体が混ざっていることがあるのは、こうした遺伝の型の違いとして説明されています。
江戸時代から続く飼育の歴史
岡山大学のプレスリリースによると、江戸時代に作られた魚類図鑑「梅園魚譜(毛利梅園1798-1851)」には、緋色のヒメダカと白色のシロメダカの絵が載っています。また、広島大学などの研究グループは、86品種181匹の観賞メダカの全ゲノムを解析し、観賞メダカ品種が大阪・広島・高松など瀬戸内海に面した地域の野生メダカと遺伝的に近いことを報告しています(出典:国立遺伝学研究所ほか「観賞用メダカがどこから来て多様な体の色や形を育んできたのか」)。同じ資料では、江戸時代に関西・瀬戸内地域で発見されたヒメダカなどの野生メダカを品種改良した系統が全国に広がり、今の多様な品種ができあがったと考えられる、とまとめられています。
つまりヒメダカは、今の改良メダカの「ご先祖さま」にあたる存在のひとつ。楊貴妃と比べて地味に見えるかもしれませんが、メダカの歴史の中ではかなり大事な位置にいる品種なんです。
楊貴妃は2004年に黄金・琥珀系から作られた
楊貴妃メダカは、2004年に広島県廿日市市の「めだかの館」の大場幸雄氏が作出・命名した改良品種です。ヒメダカから直接作られたのではなく、黄金メダカから琥珀メダカを経て生まれた系統とされています。
BE-PALの連載によると、作出のきっかけは2003年の夏、黄金系のメダカを黒色の容器で飼っていた中に、変わった色をしたメダカがいたことだと言われています。その1匹のメスを親に交配が始まり、採れた6匹のF1から何度も交配を繰り返して、楊貴妃メダカの元親が作られたと言われています。同じ連載では、楊貴妃の登場以前は観賞魚としてのメダカといえばヒメダカ、白メダカ、青メダカ、斑メダカくらいしか知られておらず、楊貴妃がその世界に大きな衝撃を与えた、とも書かれています。
改良メダカの紹介記事でも、楊貴妃は「多くの改良メダカのもととなった品種」と紹介され、メダカブームの礎となった品種と言っても過言ではない、とまで書かれています。今では楊貴妃をベースに、錦鯉のような色彩のものから、より赤さを追求したものまで、多くの表現に派生しています。
楊貴妃の中にも系統がある
同じ「楊貴妃」という名前でも、中身はひとつではありません。BE-PALの連載では、島根県のブリーダーが累代繁殖している「楊30」と呼ばれる系統や、広島県福山市で累代繁殖された「紅帝」と呼ばれる系統が紹介されています。紅帝は、めだかの館の楊貴妃の血統は混ざっていないものの、楊貴妃系統と言えば楊貴妃系統だろう、という書き方です。
このほか、光体形の「東天光」や、体が短くなる「楊貴妃ダルマ」、背中が光る「楊貴妃透明鱗ひかり」など、体形やヒレの変化を組み合わせた派生品種もあります。品種名の読み方や体形の分類で迷ったら、メダカの品種一覧を体色・ラメ・ヒレ・体型の4軸で見る方法で整理しておくと、売り場の名札が読みやすくなりますよ。
楊貴妃の美しさを保つには、朱赤色の濃い種親を選んで累代繁殖させることが大切だと、同じ連載でも強調されています。ここが、ヒメダカとの扱われ方のいちばんの違いにつながっていきます。
飼い方は同じで値段と扱われ方が違う
ヒメダカと楊貴妃は、飼い方の基本はほぼ同じです。違うのは、値段と「何を大事にして選ばれているか」という扱われ方のほうです。
どちらも同じメダカなので、水温・餌・水質といった基本の飼育条件は共通です。楊貴妃が「弱い」と言われることがありますが、確認できた範囲では楊貴妃だけが特別に弱いという資料は見当たらず、評判の多くは迎え入れたときの扱い方や、室内での飼い方の偏りから生まれていると考えられます。この点は楊貴妃メダカは本当に弱いのかを検証した記事で、導入時の水合わせや越冬まで詳しく扱っています。
一方、扱われ方ははっきり違います。ヒメダカは、手ごろな値段でまとまった数が売られ、餌用として販売されることもある品種です。楊貴妃は、朱赤の濃さを基準に親を選び、色を保つように繁殖されている観賞用の品種。同じオレンジ系でも、楊貴妃の値段には「色を選び抜く手間」が含まれている、と考えるとイメージしやすいかもしれません。
餌用として売られていたヒメダカを飼うとき
餌用として売られていたヒメダカを観賞用に迎えることもできます。迎えたら、水合わせを丁寧にして、しばらくは別の容器で様子を見るのが無難です。飼い方そのものは楊貴妃と変わりませんが、安いから雑に扱ってよい魚ではない、という点は覚えておきたいところですね。
まとめると、飼育の難しさで選ぶ必要はあまりなく、予算と「どれだけ色を楽しみたいか」で選べば大丈夫です。次の章では、手元のメダカがどちらかを見分ける手順と、色を楽しむための注意点に進みます。
ヒメダカと楊貴妃の違いを見分けて選ぶコツ
ここからは、ヒメダカと楊貴妃の違いを知ったうえで、実際にどう見分け、どう選び、どう飼うかを扱います。結論は、色で見分けるときは「真上から・同じ条件で・何匹かまとめて」見ること、そして確実さが必要なら色よりも購入時の表示や血統を優先することです。メダカの体色は背景の色に合わせて短時間で変わることが研究で示されているため(野生型のクロメダカの実験)、条件をそろえて比べるほうが判断がぶれにくくなります。
また、ヒメダカと楊貴妃は同じメダカなので、一緒に飼えば交配します。楊貴妃の色を残したい人と、気にしない人とで、飼い方の答えが変わる部分です。この章では、見分ける手順、容器の色と室内飼育による赤みの変化、混泳と交配、目的別の選び方、そして野外に放してはいけない理由の順に整理していきます。
手元のメダカがどちらかを見分ける手順
手元のオレンジ色のメダカがヒメダカか楊貴妃かを見分けるには、色を比べる条件をそろえてから、真上から見るのが基本です。ここでは、この記事の資料から組み立てた手順を順番に並べます。
- 購入時の品種表示やレシート、譲ってもらった人の説明を確かめる
- 目安として一晩、同じ容器に置いて明るさと背景の色をそろえる
- 真上から、何匹かまとめて赤みの濃さを比べる
- 黒い斑の入った個体や白っぽい個体は、色の比較から外して別に考える
- 迷う個体は「どちらか分からない」として分けて管理する
1つ目の表示の確認が、まず頼りになります。楊貴妃は色の濃い親を選んで殖やされる品種ですが、個体や系統によって色の濃さには幅があり、色が薄めの楊貴妃もいます。色の見た目は、あくまで補助の判断材料だと考えておくのがよいかなと思います。
2つ目で条件をそろえるのは、メダカが背景の色に体色を近づける「背地適応」という性質を持っているからです。筑波医療科学の総説では、野生型のクロメダカを使った実験で、白い背景から黒い背景へ移したメダカの体色が1〜2分のうちに白から黒へ変化する様子が紹介されていて、黄色素胞もほぼ黒色素胞と同じ傾向の反応を示すと書かれています。違う容器から取り出した直後に比べると、それだけで色が違って見えてしまうことがあるんです。ただし同じ総説では、数日にわたって同じ背景に置かれると色素胞の数そのものが変わる、という長い時間の変化も説明されています。長く飼っていた容器の影響は一晩では消えきらない可能性があるので、一晩はあくまで目安と考えてください。
4つ目は、色の濃さの比べ方を乱さないための手順です。前の章で触れたように、ヒメダカの中には黒い斑が入る斑入りの個体がいます。また、All Aboutの記事では、古くはヒメダカに若干混じる、メスしか存在しないシロメダカも一部のマニアの間では知られていた、と書かれています。こうした個体は赤みの濃さで比べる対象にならないので、いったん外して考えるのが無難です。
稚魚のうちの色でヒメダカと楊貴妃を見分けられるかを示した資料は、見つかりませんでした。品種を分けて残したいなら、色に頼らず、親の容器ごとに卵や稚魚を分けて容器にラベルを貼っておくのが確実ですよ。
容器の色や室内飼育で赤みは変わる

楊貴妃の赤みは、飼う場所によって変わることがあります。室内飼育で黄色っぽくなることは資料に書かれていて、容器の色の影響も、ほかのメダカの研究から考えると起こり得ます。買ったときより色が薄くなったと感じたら、品種を疑う前に飼育環境を見直してみてください。
先に断っておくと、楊貴妃で容器の色の影響を調べた資料は見つかりませんでした。手がかりになるのは、野生型のクロメダカについての研究です。筑波医療科学の総説によると、メダカの体色変化には、色素胞の中で色素の粒が集まったり広がったりして短時間で起こる変化と、長期間同じ背景に置かれることで色素胞の数や形が変わる変化の2つがあります。
短時間の変化については、黄色素胞もほぼ黒色素胞と同じ傾向の反応を示すと書かれています。一方、長い時間の変化として説明されているのは黒色素胞の話で、クロメダカを白い背景に数日間置き続けると黒色素胞の数が減って体色はさらに白っぽくなり、黒い背景に長く置くと黒色素胞が発達する、という内容です。この2つから、楊貴妃でも明るい色の容器では短い時間のうちに色が淡く見えやすい、ということは起こり得ると考えられます。ただ、長く飼ったときに赤みそのものがどう変わるかは、資料からは分かりません。
ちなみに、BE-PALの連載では、楊貴妃の作出は黄金系のメダカを黒色の容器で飼っていた中に変わった色の個体がいたことから始まったと言われています。黒い容器がその色の出方にどう関わったのかまでは、資料からは分かりません。
室内で飼うと朱赤が黄色っぽくなることがある
BE-PALの連載では、通常の楊貴妃メダカを室内で飼育していると朱赤色が黄色っぽくなっていく、とも書かれています。その中で「紅帝」と呼ばれる系統は、ほかの楊貴妃の系統に比べて室内でも朱赤色が濃くなる傾向がある、と紹介されています。室内の水槽で楊貴妃を飼うなら、系統によって色の出方が違うことを知っておくと、がっかりしにくいかもしれません。
色を楽しみたいなら、背地適応の性質から考えて、黒っぽい容器を使うのはひとつの方法です。発泡スチロールの白い容器を使っているなら、塗らずに発泡スチロールの内側を暗くする方法も参考になります。ただし、色揚げ用の餌の与えすぎは体調を崩す原因になり得るので、色だけを追いかけすぎないようにしてくださいね。
同じ楊貴妃でも、室内では朱赤が黄色っぽくなる系統があり、白っぽい容器では色が淡く見えやすいと考えられます。ヒメダカか楊貴妃かを判断するときは、目安として一晩、同じ容器でそろえてから比べましょう。
比べるための容器や、色を楽しむための容器を新しくそろえるなら、内側が黒っぽいメダカ用の飼育容器が選びやすいかなと思います。
混泳と交配で楊貴妃らしさは薄れる
ヒメダカと楊貴妃は一緒に飼うことができますが、同じメダカなので交配します。楊貴妃の色を残したいなら、繁殖期には容器を分けるのが基本です。
BE-PALの連載では「ヒメダカとの交配では楊貴妃メダカらしさがすぐに失われてしまう」と書かれ、だからこそ楊貴妃とヒメダカは別系統だと判る、と説明されています。楊貴妃の濃い朱赤は、色の濃い親を選び続けることで保たれている性質です。そこにヒメダカの血が混ざると、選び抜いてきた色の濃さが薄れやすいのだろうと考えられます。
近畿大学の研究発表でも、メダカは体色(黄色か黒褐色か)に関係なく産卵・交配の相手を選ぶことが確認されています。これは野生メダカとヒメダカについての研究ですが、メダカが体色で相手を選り好みしない性質を示すもので、ヒメダカと楊貴妃を同じ容器で飼えば交配は自然に起こり得る、と考えておくのが安全です。
混泳そのものは問題になりにくい
ヒメダカと楊貴妃は同じメダカなので、体の大きさがそろっていれば、一緒に泳がせても大きな問題にはなりにくいと考えられます。観賞だけが目的で、繁殖や色の維持を気にしないなら、混泳は十分楽しめる組み合わせです。
ただし、繁殖期に同じ容器にいれば卵が混ざります。生まれた子は「ヒメダカ」とも「楊貴妃」とも言えない個体になるので、人に譲ったり販売したりするときに品種名を付けないよう注意が必要です。オスとメスの見分け方や繁殖の基本は、品種が違っても共通なので、繁殖を考えている人は容器を分けてから始めてくださいね。
卵を親の容器ごとに分けて管理するなら、メダカが卵を産みつける産卵床があると、卵を別の容器へ移しやすくなります。
目的別に選ぶならどっちがいいか

ヒメダカと楊貴妃のどちらを選ぶかは、「何を楽しみたいか」で決めるのがおすすめです。飼いやすさの差は小さいので、目的に合うほうを選べば後悔しにくいと思います。
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| こんな人・目的 | 向いている品種 | 理由 |
|---|---|---|
| まずは気軽にメダカを飼ってみたい | ヒメダカ | 手ごろな値段でまとまった数を迎えやすい |
| 子どもと一緒に遺伝や繁殖を観察したい | ヒメダカ | 体色の遺伝が教材にも使われ、黒い野生型との違いが分かりやすい |
| 上から見て鮮やかな赤を楽しみたい | 楊貴妃 | 真上から見た朱赤の鮮やかさがヒメダカと違う |
| 改良メダカの入り口として選びたい | 楊貴妃 | 多くの改良品種のもとになった定番の品種 |
| 室内の水槽で赤みを楽しみたい | 楊貴妃(系統を確かめる) | 室内では朱赤が黄色っぽくなる系統があり、系統で差がある |
メダカを初めて飼う人なら、ヒメダカはとても良い選択肢です。値段が手ごろなので、容器の大きさや餌の量を学ぶ段階で多少つまずいても、気持ちを立て直しやすいんですね。慣れてきたら楊貴妃に挑戦する、という順番も自然です。
最初から色を楽しみたいなら、楊貴妃から始めても大丈夫です。改良メダカの定番として流通が多く、売り場で見かける機会も多い品種です。初心者向けの品種をもう少し広く比べたい人は、メダカ初心者におすすめの品種を丈夫さと入手しやすさで選ぶ記事も合わせて読んでみてください。
どちらを選ぶにしても、迎える数と容器の大きさは先に決めておくと安心です。品種の特徴やおすすめの選び方は、販売店によって説明が異なることもあるので、正確な情報は販売店やブリーダーの案内も確認してくださいね。
どちらも川や池に放してはいけない理由
ヒメダカも楊貴妃も、飼えなくなったからといって川や池に放してはいけません。野生のメダカと交雑して、その土地のメダカが長い時間をかけて受け継いできた遺伝的な特徴を壊してしまうおそれがあるからです。
環境省の資料(2012年の掲載)では、メダカは環境省レッドリストで絶滅危惧II類とされています。そのうえで、メダカは日本各地で別々の地域集団に分かれていて、生息している地域の異なるメダカを放流すると本来その土地に生息していたメダカと交雑し、何万年もかけて形成された地域ごとの遺伝的多様性が失われてしまう、と説明されています。同じ資料には、飼育用の品種であるヒメダカが放流されている例も見受けられる、という記述もあります(出典:環境省「絶滅のおそれのある野生動植物種の生息域外保全|取り組み事例|メダカ」)。
近畿大学の研究発表では、ヒメダカは体色が黄色く目立つため、放流されるとある程度は捕食されるものの、生き残った一部は野生メダカの群れに混じって繁殖に参加することが分かった、と報告されています。そして「ペットショップで購入したり、他の場所で採ったりしたメダカを絶対に放流してはいけません」と呼びかけています。東京都教育委員会の教材でも、観賞用に流通しているヒメダカなどが放流されたことで在来のメダカとの交雑が進み、純すいな在来のメダカが減少している地域もある、と紹介されています。
楊貴妃も同じメダカなので、考え方は変わりません。増えすぎたときは、容器を増やす、知人や地域の愛好家に譲る、購入したお店に相談するなど、飼育の中で行き先を見つけてください。最終的な判断に迷うときは、お住まいの自治体や専門家に相談するのが確実です。
ヒメダカと楊貴妃の違いについてよくある質問
紅帝や楊30も楊貴妃メダカの仲間ですか?
BE-PALの連載では、どちらも楊貴妃メダカの一系統として紹介されています。楊30はめだかの館の交配による楊貴妃を島根県のブリーダーが累代繁殖している系統で、紅帝は広島県福山市で累代繁殖された朱赤メダカの系統です。紅帝はめだかの館の楊貴妃の血統が混ざっていないとされ、室内でも朱赤が濃くなる傾向があると紹介されています。
楊貴妃メダカはヒメダカより弱いのですか?
確認できた範囲では、楊貴妃だけが特別に弱いという資料は見当たりません。どちらも同じメダカなので、水温・餌・水質の基本は共通です。弱いという評判の多くは、迎え入れたときの扱い方や、室内での飼い方の偏りから生まれていると考えられます。体調の変化が続くときは、販売店や専門家に相談してください。
ヒメダカと楊貴妃の子どもを楊貴妃として売ってもいいですか?
おすすめしません。ヒメダカとの交配では楊貴妃らしさがすぐに失われるとされているため、親が混ざった子は楊貴妃とは言えません。人に譲るときは「ヒメダカと楊貴妃の交雑」と正直に伝え、品種名を付けずに渡すのがトラブルを防ぐ方法です。
ヒメダカと楊貴妃の違いを知って選ぶためのまとめ
最後に、ヒメダカと楊貴妃の違いをもう一度整理しておきます。
- 違いは赤みの濃さと生まれ方。楊貴妃は真上から見た朱赤が鮮やか
- ヒメダカは黒色素胞をほとんど持たない劣性の型で、江戸時代から飼われてきた
- 楊貴妃は2004年に黄金・琥珀系から作られ、ヒメダカとは別系統
- 飼い方の基本は同じで、違うのは値段と色を選び抜く扱われ方
- 見分けるときは同じ容器で一晩そろえてから、真上から比べる
- 楊貴妃の色を残すなら繁殖期は容器を分け、どちらも野外には放さない
ヒメダカと楊貴妃は、どちらが上というより、楽しみ方が違う品種です。気軽に数を飼って遺伝や繁殖を観察するならヒメダカ、上から眺める赤の美しさを楽しむなら楊貴妃。どちらを選んでも、メダカを飼う基本は同じなので、まずは容器と水づくりを整えるところから始めてみてくださいね。
この記事の内容は、執筆時点で確認できた資料をもとにした一般的な目安です。品種や系統の特徴は販売店やブリーダーによって説明が異なることもあるため、正確な情報は公式サイトや販売店の案内をご確認ください。飼育や繁殖で迷うことがあれば、最終的な判断は専門家にご相談ください。


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