グッピーの稚魚の育て方|生まれた後の水槽と成長の管理
朝、水槽をのぞいたら小さな影が何匹も泳いでいた。グッピーを飼っていると、ある日突然この場面がやってきます。うれしい反面、「何をすればいいのか」を調べる時間もないまま一日が過ぎてしまう、というのもよくある話です。
結論から言うと、生まれた直後の稚魚に必要なのは、特別な餌でも高価な器具でもありません。強い水流と吸い込みを止めること、水質を動かさないこと、そして詰め込みすぎないこと。この3つがそろえば、グッピーの稚魚はかなりの割合で育ちます。逆に、この3つのどれかが崩れると、餌をどれだけ工夫しても数が減っていきます。
この記事では、生まれた当日にやることから、稚魚水槽の作り方、成魚になるまでの成長の推移、そして数を落とさないための密度管理までを順番に整理します。餌の種類や与え方は別の記事で詳しく扱うので、ここでは「どんな環境を用意するか」に絞って進めていきます。
- 稚魚が生まれた当日に手を入れるべき3つのポイント
- 稚魚水槽の水量・ろ過・水温をどう決めるか
- 生まれてから成魚になるまでの大きさと日数の目安
- 成長差と過密で数を落とさないための管理
稚魚が生まれた直後にやること
出産に気づいた時点で、多くの方はまず稚魚の数を数えようとします。気持ちはよくわかるのですが、優先順位としては後回しで構いません。生まれたばかりの稚魚にとって、最初の数時間でいちばん危険なのは親魚ではなく、水槽の中にすでにある器具だからです。
グッピーの稚魚は体長5〜8mmほどで生まれ、その場から泳ぎ出します。ジェックス(GEX)が公開している飼育解説でも「生まれた瞬間から普通に餌を食べることが出来ます」と説明されるほど、生まれた時点である程度できあがった魚です(出典:ジェックス グッピーの飼い方 繁殖)。ただし遊泳力は弱く、吸い込みや水流には抵抗できません。
この章では、当日のうちに決めておきたい3つのことを見ていきます。器具の手当て、親と分けるかどうかの判断、そして最初の24時間の考え方です。ここを押さえておけば、翌日以降はぐっと落ち着いて進められます。
数を数える前に水流と吸い込みを止める

最初に手を入れるのはフィルターです。外掛けフィルターや上部フィルターのストレーナー(水を吸い込む側の筒状のパーツ)には、生まれたての稚魚が通り抜けられる隙間があります。吸い込まれてしまえば、ろ過槽の中で見つかるか、そのまま姿を消すかのどちらかです。出産に気づいたら、真っ先に給水口へスポンジのプレフィルターを付けてください。市販のストレーナースポンジで十分です。
次に水流です。稚魚は流れに逆らって泳ぎ続けると体力を消耗します。排水口の向きをガラス面に向ける、シャワーパイプの穴を水面より上に出す、流量調整があれば絞る。どれか1つでも効果があります。稚魚が水槽の隅で流れに押されたまま踏ん張っているようなら、まだ強すぎるサインです。水流の見極め方はグッピー水槽の水流はどのくらい?で詳しく扱っています。
フィルターの方式によって手当ての仕方は変わります。外掛け式と上部式はストレーナーにスポンジをかぶせるのがいちばん早く、外部フィルターも同じ方法が使えます。底面フィルターは吸い込みの心配がほとんどありませんが、砂利の隙間に稚魚が入り込んで出られなくなることがあります。投げ込み式とスポンジフィルターは、そもそも吸い込み口がスポンジなので対策が要りません。稚魚を育てる前提で器具を選ぶなら、この2方式がいちばん手がかかりません。
もうひとつ、意外な落とし穴がヒーターです。カバーのないヒーターに稚魚が触れると火傷することがあります。カバー付きの製品を使っているなら問題ありませんが、むき出しの状態なら、この機会にカバーを付けるか設置場所を見直してください。フィルターの方式ごとの向き不向きはグッピー用フィルターの選び方にまとめてあります。
親と分けるかどうかをその日に決める
次に決めるのが、稚魚を親と分けるかどうかです。グッピーは自分が産んだ稚魚も口に入れば食べてしまうため、確実に数を残したいなら分けておくほうが安全です。一方で、増えすぎを避けたいなら水草の茂みに任せて自然に淘汰されるのを待つ、という選び方もあります。
ここで大事なのは、どちらが正しいかではなく、その日のうちに決めることです。迷っているあいだに数が減り、あとから「やっぱり分ければよかった」となるケースが多いからです。決め方の基準は単純で、いま飼っている水槽にあと何匹受け入れられるかを数え、その数より多く残したいなら分ける、それ以下でよいなら分けない、という順序になります。
分ける方法は、産卵箱や隔離ケースに移す、稚魚用の別水槽を用意する、あるいは親を別容器へ移して本水槽を稚魚に使う、の3つです。手間はかかりますが、いちばん水質が安定するのは別水槽です。親が稚魚を食べる仕組みと隔離以外の対策はグッピーの共食いの原因と対策で整理しています。
最初の24時間は餌より水を優先する
生まれた直後の稚魚には、まだ腹に卵黄の名残があります。生まれてすぐ餌を食べられるとはいえ、当日から大量に与える必要はありません。むしろ食べ残しが底に溜まって水を汚すほうが、この時期は危険です。
初日は、ごく少量を1回与えるか、翌朝からにしても構いません。それより優先したいのは、水温と水質を動かさないことです。稚魚は成魚よりも水質の急変に弱く、pHの急な変化や温度差でそのまま落ちることがあります。別容器へ移すときは、本水槽の水をそのまま使ってください。新しく作った水を使うと、それだけで負担になります。
照明も少し気にかけてあげてください。生まれた直後の稚魚は落ち着ける場所を探すので、水草や隠れ家が何もない明るい容器だと、壁際に寄ったまま動かないことがあります。ウィローモスをひとつまみ入れる、浮き草を数枚浮かべるといった程度で構いません。隠れられる場所があると散らばって泳ぐようになり、餌を探す動きも早く出てきます。逆に、照明を一日中つけっぱなしにするのは避けてください。昼夜のリズムがないと、餌を食べる時間帯も乱れます。
初日にやってはいけない3つ:①新しく作った水に移す ②水槽をまるごと掃除する ③餌をたっぷり入れて安心する。いずれも「よかれと思って」やりがちですが、稚魚にとってはどれも水質の急変につながります。
稚魚水槽の作り方は水量とろ過で決まる
稚魚を別で育てると決めたら、次は容器です。専用の水槽を新しく買う必要はなく、使っていないプラケースや小型水槽でも十分に役目を果たします。ただし、水量とろ過の2点だけは適当に決めないほうがうまくいきます。
理由は単純で、稚魚が落ちる原因のほとんどが水質の悪化と水流の強さに集約されるからです。餌の種類で悩む方は多いのですが、実際に数を左右しているのは水のほうです。ここを整えてから餌の話に進むと、無駄な試行錯誤が減ります。器具にお金をかけるほど育つ、という関係でもありません。
この章では、水量の目安、ろ過方式の選び方、そして水温の考え方を順に見ていきます。どれも高価な器具は必要なく、手持ちの道具の使い方を少し変えるだけで対応できる範囲です。
水量は3〜10Lを目安に決める

稚魚用の容器は、小さすぎても大きすぎても管理が難しくなります。小さいと水質の変化が速く、大きいと餌が行き渡らず、稚魚が餌を見つけられないことがあるからです。実用的な範囲としては、20匹前後なら3〜5L、それ以上なら10L前後を目安に考えるとバランスが取れます。
この数字はあくまで一般的な目安で、水換えの頻度や餌の量で実際の限界は変わります。ひとつの考え方として、稚魚1匹あたり150〜250mLの水量を確保できているかを見てみてください。5Lの容器なら20〜30匹あたりが上限、という計算になります。産卵箱のような1L前後の容器は、あくまで数日間の避難所と考えて、早めに広い容器へ移すのが安全です。
容器の形も少し関係します。背の高い容器より、底面積が広くて浅い容器のほうが、稚魚が餌にたどり着きやすく、酸素も取り込みやすくなります。特別なものを買わなくても、フタ付きの衣装ケースや大きめのプラケースで代用できます。ただし、必ず水槽用として洗剤を使わずに洗ったものを使ってください。
置き場所も決めておいてください。窓際は日中の日射しで水温が上がりやすく、床置きは冬場に冷えます。本水槽の隣に並べておくと室温の条件が同じになり、温度差が生まれにくくなります。フタは必ずしてください。稚魚は飛び出しませんが、水の蒸発が早いと水質が濃くなっていきますし、ほこりも入ります。密閉する必要はないので、隙間を残したフタかラップで十分です。
ろ過はスポンジか投げ込み式が基本
稚魚水槽のろ過は、吸い込みの心配がなく水流も穏やかな方式を選びます。具体的にはスポンジフィルターか、いわゆる投げ込み式フィルターの2択です。どちらもエアーポンプで動かすタイプで、吸い込み口がスポンジそのものなので稚魚が入り込みません。
ジェックスの飼育解説でも、稚魚の飼育には「エアーリフト式のフィルターを弱めで使用するかエアレーションのみを行います」と案内されています。エアーの量は絞り気味にして、水面がわずかに揺れる程度で十分です。ぶくぶくと激しく泡立つ状態は、稚魚にとっては強すぎます。
注意したいのが、新しく設置したろ過はすぐには働かないという点です。ろ材にバクテリアが定着するまでには2週間から1か月ほど、環境によってはそれ以上かかるとされており、その間はろ過能力があてになりません。本水槽で使っていたスポンジやろ材を絞って移植すると、立ち上がりがぐっと早くなります。これができないときは、餌を控えめにして水換えの回数で補ってください。
稚魚水槽の定番として長く使われている、エアーポンプで動かすスポンジ式のろ過です。吸い込み口がスポンジなので、生まれたての稚魚が入り込む心配がありません。
投げ込み式を選ぶなら、ろ材の交換がしやすいタイプが扱いやすいです。稚魚水槽は餌の食べ残しで汚れやすいので、中身を洗いやすい構造かどうかを見ておいてください。
水温は成長速度と生存率を左右する
稚魚の成長スピードは水温でかなり変わります。メーカーの飼育解説では、グッピーの適温は23〜26度、あるいは21〜28度といった幅で案内されています。稚魚を育てるなら、そのうち24〜26度あたりを保っておくと代謝が高く、餌をよく食べてよく育ちます。水温が20度を下回ると成長が目に見えて鈍り、体力の弱い個体から落ちやすくなります。
逆に、高ければ高いほどよいわけでもありません。28度を超えるような環境では成長は速くなりますが、水中に溶け込める酸素の量が減り、水質の悪化も早まります。稚魚は酸素不足に敏感なので、夏場は水温と水面の動きの両方を見ておいてください。水温別の目安はグッピーの適温は何度?で整理しています。
もうひとつ気をつけたいのが、本水槽と稚魚容器の温度差です。小さな容器は室温の影響を受けやすく、暖房を切った夜間に数度下がることがあります。合流させるときにこの差が大きいと、それだけで負担になります。稚魚容器にも小型のヒーターを入れるか、本水槽に浮かべる形の容器を使って温度を共有させてください。
稚魚水槽の最低ライン:水量3L以上・スポンジまたは投げ込み式のろ過・水温24〜26度・本水槽の水を使う。この4つが満たせていれば、あとは餌と密度の調整で育ちます。器具を買い足す前に、まずこの4つを確認してください。
グッピーの稚魚の成長過程と大きさの推移
育てはじめると気になるのが、いまの大きさが順調なのかどうかです。グッピーは成長が速い魚で、条件がよければ2〜3か月で親と変わらない姿になります。ただし個体差と環境差が大きく、同じ日に生まれた稚魚でも1か月後には倍近い開きが出ることがあります。
目安を知っておくと、遅れているのか、それとも環境に問題があるのかを切り分けやすくなります。全体が一様に遅いなら水温や餌の量、一部だけが遅いなら個体差か餌が行き渡っていない可能性、という読み方ができるからです。
ここでは大きさと日数の目安、体色や体形が出てくる時期、そして成長が遅い個体の見方を順に整理します。数字はいずれも一般的な目安であり、実際には水温・餌・密度で前後することを前提に読んでください。
生まれた日から成魚までの目安

生まれた時点で5〜8mm、生後1か月で1.2〜1.8cm前後、2か月で2〜2.5cm、3〜4か月で3〜4cmというのが、よく紹介される推移です。メーカーの飼育解説ではオスの体長を3〜4cm、メスを4〜6cmとしており、後半になるほど雌雄の差が広がっていきます。
繁殖が可能になるのは生後3か月前後からで、ジェックスの解説でも「生後3~4ヶ月程たってかつ水質が安定してくると産仔しやすくなります」と説明されています。つまり、生まれた稚魚を放置すると3か月後には次の世代が始まる計算になります。増やすつもりがないなら、この時期までに雌雄を分けるかどうかを決めておく必要があります。
もうひとつ知っておきたいのが、オスとメスで成長の終わり方が違うことです。オスは早い段階で成長が止まり、そのぶんのエネルギーを尾びれと体色に回します。メスは成熟してからも体を大きくし続け、最終的にオスよりひとまわり大きくなります。生後2か月あたりで「大きい個体と小さい個体に分かれてきた」と感じることがありますが、その一部は成長差ではなく雌雄の差です。判断を焦らず、尻びれの形が変わってくるかどうかも合わせて見てください。
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| 時期 | 体長の目安 | このころの様子 | 管理で気をつけること |
|---|---|---|---|
| 生まれた日 | 5〜8mm | すぐ泳ぎ出す・餌を食べられる | 吸い込みと水流を止める |
| 1週間 | まだ1cm未満のことが多い | 泳ぎが安定してくる | 食べ残しを毎日取り除く |
| 1か月 | 1.2〜1.8cm | 体つきに差が出はじめる | 密度を見直す・容器を広げる |
| 2か月 | 2〜2.5cm | 雌雄の区別がつきはじめる | 成魚の口に入るか確認して合流を検討 |
| 3〜4か月 | 3〜4cm | 体色と尾びれが完成に近づく | 繁殖が始まる前提で雌雄を管理 |
体色と体形が出てくる時期
生まれたての稚魚はほぼ透明で、品種の特徴はまったく見えません。体色が乗りはじめるのは、早い個体で生後3〜4週、多くは1か月半を過ぎたころからです。尾びれの模様が広がるのはさらに遅く、2か月前後になってようやく品種らしさが見えてきます。
この時期に「思っていた色と違う」と感じることがありますが、多くの場合はまだ発色の途中です。とくにオスは、成熟に向かうにつれて色が濃くなり、尾も伸びます。判断を急がず、少なくとも3か月は様子を見てあげてください。品種ごとの色の出方についてはグッピーの種類一覧と人気品種が参考になります。
発色の出方は品種によっても変わります。単色系は比較的早く色が乗り、グラス系やモザイク系のように尾びれの模様で見せる品種は、模様が完成するまでに時間がかかります。親と同じ柄が出るとも限りません。グッピーの色柄は複数の要素の組み合わせで決まるため、同じ両親から生まれた稚魚でも表現に幅が出ます。この幅こそが繁殖の面白さでもあるので、色が揃わないことを失敗と考えないでください。
体形については、背骨の曲がりなど生まれつきの特徴が育つ過程で目立ってくることがあります。こうした個体は成長が伸びにくかったり、泳ぎに負担がかかったりすることがあります。無理に成長を促そうとするより、餌が取りやすい位置に落としてあげるなど、負担を減らす方向で世話をしてあげてください。
成長が遅い個体をどう見るか
同じ日に生まれた稚魚のあいだで差が出るのは、ごく普通のことです。原因の大半は餌が行き渡っていないことにあります。大きく育った個体が先に食べてしまい、小さい個体は残りしか食べられない。この差が日々積み重なって、1か月後には目に見える開きになります。
対処としては、餌を一度にまとめて入れるのではなく、少量を複数回に分けて広い範囲に落とすのが効果的です。給餌回数を増やせば、小さい個体にも順番が回ってきます。それでも差が大きくなるようなら、大きさで容器を分けるという方法もあります。
具体的な回し方としては、1日3〜4回に分けて、1回あたり数十秒で食べ切れる量を落とします。落とす場所も毎回変えて、水面の1か所に固めないようにしてください。粉状の餌は水面に浮いたまま広がりにくいので、指先で少し湿らせてから散らすと沈みながら広がります。食べ残しは必ずその日のうちにスポイトで回収してください。回数を増やすぶん、掃除もセットで増えると考えておくと管理が破綻しません。
一方で、全体の成長が一様に遅い場合は、環境側を疑ってください。水温が低い、水質が悪化している、密度が高すぎる、のいずれかであることがほとんどです。個体差なら一部だけ、環境の問題なら全体が遅れるという見分け方を覚えておくと判断が早くなります。
密度と成長差を管理して数を落とさない
稚魚を落とす原因を並べていくと、水質の急変、水流と吸い込み、そして過密の3つに集約されます。前の2つは器具で解決できますが、過密だけは飼い主が数をどう扱うかで決まります。ここが稚魚育成でいちばん判断の要るところです。
グッピーは一度に20〜50匹の稚魚を産むことがあり、しかも一度の交尾で複数回の出産が続きます。最初の1か月を乗り切った稚魚は、そのあとほとんど落ちません。つまり、生き残った数がそのまま将来の飼育数になるということです。この見通しを持っておかないと、数か月後に水槽が回らなくなります。
この章では、過密が成長に与える影響、大きさで分けるべきかどうか、そして稚魚が落ちたときに何から疑うかを整理します。増えたあとの行き先についてはグッピーが増えすぎる原因と対処法もあわせて読んでみてください。
過密は成長そのものを止める

密度が高い状態が続くと、稚魚は成長が鈍ります。水質の悪化で餌の食いが落ちること、酸素をめぐる競合が起きること、そして常に他の個体と接触するストレスがかかることが重なるためです。餌を増やしても解決せず、むしろ水がさらに汚れて悪循環になります。
見分け方としては、水面近くで口をぱくぱくさせる個体が出てきたら酸素が足りていない合図です。また、餌をやってもすぐに散ってしまう、底に沈んだまま動かない個体が増える、といった変化も密度が高いときによく見られます。こうしたサインが出たら、容器を広げるか数を分けてください。
本水槽への合流を早める、という解決策もあります。稚魚が成魚の口に入らない大きさになっていれば、広い水槽のほうが水質も安定します。合流の目安については別記事で詳しく扱いますが、体長が1.5cmを超え、泳ぎがしっかりしていることが基本の条件になります。水槽サイズ別の適正数はグッピー水槽は何匹が適正?で計算の考え方を示しています。
ただし、合流を急ぎすぎると別の形で数が減ります。隔離していた容器では元気だったのに、本水槽へ戻したあとに中くらいの大きさの個体から落ちていく、という報告は珍しくありません。原因としては、本水槽との水質差、成魚に追われるストレス、餌が取れないことなどが重なっていると考えられます。合流させるときは一度に全部ではなく、大きい個体から数匹ずつ移して様子を見るほうが安全です。
大きさで分けるべきかどうか
成長差が開いてきたとき、大きさごとに容器を分けるかどうかは悩ましいところです。分ければ小さい個体にも餌が回り、追い立てられることもなくなります。一方で、容器と手間が増え、水換えの負担も倍になります。
判断の目安としては、大きい個体が小さい個体を追い回している、または体長差が2倍を超えているなら分ける価値があります。それ以下なら、給餌の回数を増やして餌が行き渡るようにするだけで改善することが多いです。グッピーは稚魚どうしで襲い合う様子が目立つ魚ではありませんが、体格差が極端になると餌の取り合いで差が固定されます。
分ける場合も、水は必ず同じものを使ってください。片方だけ新しく水を作ると、そこで水質差が生まれます。既存の容器から水を分けて、足りない分だけ本水槽の水を足すのが安全です。
稚魚の世話で効果が大きいとされるのが、「毎日底を見る」というごく地味な習慣です。食べ残しと糞が溜まっていないか、動きの鈍い個体がいないか。スポイトで底のごみを吸うついでに水も少し入れ替わるので、この習慣だけで水質はかなり保てます。
稚魚が落ちたときに疑う順番
数が減りはじめたときは、思いつく順に対処するとかえって悪化します。確認する順番を決めておいてください。まず水温、次に水面の動き(酸素)、そして水の汚れ、最後に餌の量と密度です。上から順に、影響が速く出るものを並べています。
水温は温度計で測れば一目でわかります。暖房を切った夜間に下がっていないか、直射日光で上がっていないかを確認してください。次に水面を見て、まったく動きがないようならエアレーションを足します。水の汚れは、底に食べ残しが積もっていないか、水がにごっていないかで判断できます。
ここまで問題がなければ、餌の量と密度を疑います。与えすぎで水を汚しているケースと、行き渡らずに痩せているケースの両方があるので、稚魚の腹部を見て判断してください。腹がへこんでいるなら回数を増やし、底に餌が残っているなら量を減らします。原因が特定できないまま全量の水換えや薬の投入をするのは、かえって負担を大きくします。
環境に問題が見当たらないのに特定の個体だけが弱っていくときは、病気の可能性も出てきます。体表に白い点が付く、ひれが溶けたように欠ける、体をこすりつける、といった症状は環境の問題では説明できません。この場合はその個体を別容器へ移し、静かな環境で様子を見てください。薬を使う判断は、症状が何なのかを見極めてからです。稚魚は成魚より薬の影響を受けやすいので、自己判断で複数の薬を混ぜて使うことは避け、製品表示や魚を診られる専門家の助言に従ってください。
数を落とさない4点:①吸い込みと水流を止める ②本水槽の水を使い、水質と水温を動かさない ③1匹あたり150〜250mLを目安に詰め込まない ④毎日底のごみを吸い出す。器具を買い足すより、この4つを守るほうが効きます。
グッピーの稚魚の育て方に関するよくある質問(FAQ)
グッピーの稚魚が生まれたら、まず何をすればいいですか?
順番としては、①フィルターの給水口にスポンジを付けて吸い込みを止める、②排水の向きや流量を調整して水流を弱める、③親と分けるかどうかを決める、の3つです。稚魚の数を数えるのはそのあとで構いません。
餌は初日から大量に与える必要はありません。生まれた直後の稚魚には腹に卵黄の名残があり、当日はごく少量か、翌朝からでも間に合います。それよりも水温と水質を動かさないことのほうが大切です。別容器へ移すときは、必ず本水槽の水をそのまま使ってください。
稚魚専用の水槽は必ず用意したほうがいいですか?
必ずしも必要ではありません。水草を厚く入れた本水槽で自然に育てる方法もあり、母魚にも稚魚にもストレスがかかりません。ただしこの方法では残る数が読めず、思ったより少ないことも多いことも起こります。
確実に数を残したいなら、別の容器で育てるほうが結果は安定します。新しい水槽を買う必要はなく、3〜5Lのプラケースにスポンジフィルターを入れるだけで役目を果たします。大切なのは容器の立派さではなく、水量とろ過と水温がそろっていることです。
稚魚水槽の水換えはどのくらいの頻度でしますか?
容器が小さいほど頻度は上がります。3〜5L程度の容器で20匹前後を育てているなら、1日1回スポイトで底のごみを吸い出し、その分の水を足すという方法が扱いやすいです。これだけで実質的に少量ずつの水換えになります。
まとまった量を換えるときは、一度に3分の1程度までにとどめてください。稚魚は水質の急変に弱く、大量に換えると温度差やpHの差でダメージを受けます。足す水は本水槽の水を使うのがいちばん安全です。水換え全般の考え方は本サイトの水換えの記事もあわせて参考にしてください。
稚魚の成長が遅い気がします。何を見直せばいいですか?
まず、遅れているのが一部か全体かを見てください。一部だけなら餌が行き渡っていない可能性が高く、給餌を少量ずつ複数回に分ければ改善することが多いです。体長差が2倍を超えるようなら、大きさで容器を分ける方法もあります。
全体が一様に遅い場合は環境側の問題です。水温が適温の範囲(24〜26度あたり)から外れていないか、密度が高すぎないか、水が汚れていないかを順に確認してください。とくに水温の影響は大きく、20度前後まで下がると成長が目に見えて鈍ります。なお、これらの数値はあくまで一般的な目安で、品種や個体によっても成長のペースは変わります。
何匹くらい残すのが現実的ですか?
いま使っている水槽が受け入れられる数から逆算してください。グッピーは生後3か月前後で繁殖できるようになるため、残した稚魚がそのまま次の世代を産みはじめます。残す数を決めずに全部育てると、数か月で手に負えなくなることがあります。
目安として、60cm水槽であれば成魚で20〜30匹程度が管理しやすい範囲です。それを超えそうなら、水草に任せて自然に数を絞る、途中でショップや里親に引き取ってもらうといった選択を早めに考えておいてください。飼育している魚を川や池へ放すことは、どんな事情があっても行わないでください。
まとめ|稚魚は水と密度で育ちが決まる
グッピーの稚魚は、生まれた時点ですでに泳げて餌も食べられる、比較的育てやすい魚です。それでも数を落としてしまうのは、たいてい餌の種類ではなく環境が原因です。吸い込みと水流を止め、水質を動かさず、詰め込まない。この3つが土台になります。
稚魚水槽は特別なものを買わなくても構いません。水量3L以上、スポンジまたは投げ込み式のろ過、水温24〜26度、そして本水槽の水を使うこと。この4点がそろっていれば、あとは餌と密度の調整で育っていきます。ろ過は新設だとすぐには働かないので、本水槽のろ材を分けてもらうと立ち上がりが早くなります。
成長の目安は、1か月で1.2〜1.8cm、2か月で2〜2.5cm、3〜4か月で3〜4cmほどです。差が出るのは普通のことで、一部だけ遅いなら餌の行き渡り、全体が遅いなら水温や密度を見直すという切り分け方が役に立ちます。数値はいずれも一般的な目安なので、自分の水槽の様子と合わせて判断してください。
そして最後に、残す数を先に決めておくこと。生後3か月で次の世代が始まるという時間感覚を持っておけば、増えすぎて困る事態は避けられます。稚魚の時期は数週間で過ぎてしまいますが、そのあいだの環境づくりが、この先何か月分の飼育のしやすさを決めます。

